書きたい部分は書けたし、次に書きたいのは神野事件だけど、そこまでを書かなければ……。
今回は、保須市での事件後のあれこれ。
ザギの出番はあまりない。
轟が結構闇落ちしててヤバいことになっています。
あとエンデヴァーへの扱いが悪い。
注意!!
それでもOKって方だけどうぞ。
いいですね?
あちこちボロボロになってしまい色んなインフラ整備の会社がクソ忙しくしないといけない事案が起こった保須市。
そうでなくても超常能力の個性を持つことが一般的になった都合上、物が壊れる事案が起こりやすい時代なので少々壊れるぐらいでは騒がれないが、ここまでの規模になったら話は別だ。
保須市の一角だけが天気予報と違い絶賛気温が上昇していた。
「緑谷に治してもらっておいて礼のひとつも言えねーのか?」
「ぐ……。」
自分の個性のように燃え上がる感情のせいで温度調整がうまくいっていないエンデヴァーが気温上昇の原因だ。
轟が大きな氷塊をいくつか作って気温を下げようとしているが、溶ける方が速く、増産しないといけなくなって轟の機嫌も悪くなっていた。もう実父のエンデヴァーを見る目がヤバいことになっている。
エンデヴァーがこんなに感情がおかしくなっている理由は、ザギによって地面に上半身を埋められて犬神家状態にされている間にステインの逮捕と脳無の群れを収容トラックに詰めて運搬されるまでの出来事が済んでしまったからだ。
もちろんザギに手も足も出せずに文字通りの完敗させられたうえで、多くの目がある中で醜態を晒す羽目になった羞恥と屈辱も原因に入る。ただプロヒーローとしての実績になることが自分無しで済んでしまったことへの納得いかない感が強くてそっちの方が激情の主な原因になっているようだ。
地面から引っこ抜かれて意識が戻るまでの間に出久がヒーリング能力を使って傷を癒したので、ダメージは頭から足まで泥まみれになったこととコスチュームの損傷ぐらいで済んでいるため、エンデヴァーの治療後半べそかいて小動物のようにビクビクして縮こまった出久を庇って状況を話す息子と自分の事務所のサイドキック達や他のプロヒーロー達や警察・消防関係者達の説得もあって感情のままに出久の中に潜むザギに怒鳴れなかった。
これじゃあどっちが悪役(ヴィラン)か……。
エンデヴァーは世間体を優先したが、抑えきれない感情のせいで個性が若干暴走してしまって今がある。
ちなみに出久はグラントリノが保須市外の病院に収容された怪我人達の治療の手助けに行かせるために二人で保須市から離れている。
「ザギにまた一発入れてもらって温度下げさせてもらった方が速いか?」
「やめろ!」
物理的にまた意識を失わせて病院or事務所送りにするかという意味を込めて言葉を口にする息子につい叫んでしまうエンデヴァー。
体育祭で一発殴られた痕は今は治っているが、またあんな大げさな腫れ上がりかたとグーパンの痕がくっきり残った有様にされるのは絶対ご免だった。パトロールなどで外に出て一般人の目に移るたびにヒソヒソされたり、小さい子供には思いっきり指差されて子供特有の加減のできていない大きさの声と遠慮無しの疑問を親やそれ以外の保護者にぶつけているのを耳にしていて屈辱に震えるのを堪えたのも嫌な記憶として残っている。
「だったら落ち着いて温度下げろ、クソ親父。」
「……焦凍。最近のその態度はなんだ? なにがあった?」
「別に。ザギを見習っただけだ。」
「なぜアイツ!? 見習う部分がどこにある!?」
「ザギは俺に教えてくれたんだ。なりたいもんになるには使えるもんを全部使うぐらいの覚悟を持つってことをな。だからクソ親父。引退はできるだけ長引かせろよ。でもって引退後もヒーロー活動以外で灰になるまで稼げよ。本とか出して印税が長期で入るようにしてくれてもいいぞ。」
「しょうとーーーーーーーー!?」
「じゃねーと…、それなら冬美姉と夏兄をどーにかして使って……。」
「待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て!!」
真面目な顔で真剣にヤバいことを考えている様子を隠しもしない息子に、さすがに青ざめるエンデヴァー。
百歩譲って使えるものは全部使うぐらいの覚悟を持つのは許すとしても、父親である自分以外の実の家族まで使い潰そうとするのはいくらなんでもヤバすぎる。そこまでいったらもはやヴィランだ。
理想の個性の組み合わせで生まれた末っ子の焦凍が生まれてから、他の子達へのネグレクトや妻を蔑ろにし、そこまでしてヴィランを輩出する結果になったらヒーローという浅い歴史の最悪の汚点として残り続けてしまう。
№1ヒーローどころか、№1ヴィランの爆誕なんてシャレにならない。
「俺の稼ぎやコネは好きにしていい!! だが冬美と夏雄は……あとお前の母さんの冷もダメだ!! それだけは約束しろ!! 俺がお前が求める物を全て用意してやる、だから俺だけを使い尽くせと!!」
「いいのか?」
轟がエンデヴァーの顔をまっすぐ見た。
その顔は、エンデヴァーの言葉を守ってもいいが、言った本人であるエンデヴァーも厳守しろという圧が込められている。
氷より冷たい、下手なヒーローもヴィランも真っ青になりそうな圧を出してくる怖い息子に、言った本人であるエンデヴァーは思わず言葉を撤回しそうになったが、なんとか堪えた。
「任せろ!」
そう答えた。答えるしかないのだ。
周りを守るにはこれしかない。自分の息子という厄災が周囲を喰らい尽くさないようにさせるには、父である自分がエサになるしかないのだと。
「約束、破ったら分かってるよな?」
小首を傾げてジッとエンデヴァーの目を見つめて真顔で聞いてくる焦凍に、エンデヴァーは思わず後ずさりしかけたがこれも堪えた。
まるで獣だ。若く狩りを覚えたばかりだが、賢い獣だ。自分が飢えないように捕えた獲物を上手く生かさず殺さずに長い時間食べ続けることを考えているとても賢い恐ろしい獣。
エンデヴァーは、この時初めて思い知った。
自分が様々な無理を押し通して誕生させた、自分の代わりに№1ヒーローにさせるための最高傑作の実子が、育ち方次第でとんでもない怪物になる逸材にでもあったということを。
№1ヒーローになる事だけを強要した結果が今の息子だというのを認めたくないが、ここで約束を反故にすればこの息子は何をしでかすか分からない。
自分がエサとなることで首輪役も担って、なんとか軌道修正をしなければ!
「分かっている。心配せずとも、そんなことにはならん。」
エンデヴァーは、そう答えることで怪物になりかけている息子を引き留めることを選んだ。
「…ならいい。」
エンデヴァーの返事を聞いて、轟はとりあえず納得したように言葉を漏らしエンデヴァーから体の向きごと顔の向きを変えた。
一連の会話の間にエンデヴァーによる気温上昇は治まっていた。氷塊が少し残ったが、気温を下げるほどではなく、しばらくすればすぐに溶けて無くなるだろう。大きめの氷の塊がいくつも溶けたことで地面がビショビショに濡れて水たまりがいくつも出来てしまったからインフラ整備の手間を増やしてしまったかもしれない。
***
「ごめん! そして助けてくれてありがとう!!」
「飯田くん…。」
ステインの個性によって身動きが取れず、人質にされた飯田だったが、ザギによってステインが半分精神崩壊状態に追い込まれたことで助かった。
傷は浅いが怪我は負っていたいたため、念のため病院で診察を受けて適切な治療を受けて感染症などの問題もないとお墨付きを貰ってから出久がヒーリングによって傷を速く癒してもらった。
飯田は自分のせいで多くの人に迷惑を掛けたことに対して今回指名してくれたプロヒーロー事務所や駆けつけていたプロヒーロー達にも事務所を通して謝罪をし、警察や消防関係者にも深く頭を下げて謝罪した。
飯田の真摯な態度と謝罪の姿勢、そして飯田がインゲニウムの弟で仇を前にして感情を抑えられなかったことを理解されたので大事にはならなかった。
もちろん出久にも謝罪し、飯田の勢いでつい戸惑ってしまう出久だったが飯田の事情を知っているからどう声を掛けたらいいかと迷った。
「僕は情けない…! 自分の感情を制御できなかったせいで多くの人に多大な迷惑を掛けてしまったんだ。こんな姿…、兄さんは失望してしまうだろうな…。」
「そんな! インゲニウムが飯田くんに失望するなんて…。」
「僕は兄さんのような規律を重んじるヒーローになりたかった……。でも、僕は……。」
「どうしてそんなこと言うんだよ!」
「み、緑谷くん?」
「インゲニウムがやってきたこと、積み上げてきた実績、たくさんの人をどれだけ助けたか、弟の飯田くんが一番見てきただろ!?」
「あ、当たり前だ! 僕は家族だ! ずっと兄さんを見てきた!」
「じゃあ、インゲニウムが君のことを許さないって思うの!?」
「!」
「誰だってそうだよ…。最初っから失敗しないなんて無理だ。だから……、許して…、それでもう間違えないって…学ぶんじゃないか! インゲニウムだって最初から成功してたわけじゃないってことを、ずっと見てた飯田くんが知らないわけないだろ!?」
「あ…。」
出久に説かれ、飯田はハッとした。
今でこそ大きくなったインゲニウムの活動内容も、最初は成功していなかった。派手さに欠け、機動力だけが長所のヒーローが成り上がるのは大変だ。そんな中でヒーローとしての実績を積みつつ、自分と同じような移動能力や機動力の個性で苦労している人々の助けになろうと自分が中心になって多くのサイドキックによるチームの運営と、人材育成なども行い社会に貢献するまでに大きく展開していった。
そこまでに至る苦労を飯田は家族として見守ってきた。そしてそんな兄のようなヒーローになりたいと夢見て雄英に進学した。
憧れであり大切な家族であったインゲニウムの未来を奪った敵を前にして理性を失った失敗を、インゲニウム本人が失望して見放すだろうか?
それは飯田本人がよく知っている。
兄なら、きっと叱りつつも失敗を次に活かすよう教えて前を向かせてくれるだろう。
「そうだ………、うん! ありがとう…、うぅ…、ありがとう! 僕は…、大切なことを……忘れてた…!」
ボロボロと泣き出す飯田。
「まずはちゃんと兄さんに話して、怒られてくるよ! そしてまた前を向いて励むさ! 僕は僕の理想とする夢…、兄さんのようなヒーローになるために!」
「その意気だよ!」
涙を拭って決意を新たにしたらしい飯田の言葉に、出久は嬉しそうに笑った。
「あ、すまない! ザギくんにもきちんとお礼を言っていなかった! ありがとう! 君のおかげで僕は助かったんだ! 本当にありがとう!」
〔助ける気はなかったぞ〕
ザギの本音である。
別に飯田が生きようが死のうがどっちでもよかった。
まあいなくなると学級委員の席が空くから面倒ということだけは懸念点だったが、そこまで重要ではなかった。
ステインを半精神崩壊状態に追い詰めてやったのは、出久に二度も襲いかかってきたことや怖がらせたことなどが許せなかったからだ。
だから報復のために、ステインが重要視している狂った英雄への思想を刺激してやるために色々と言ってやっただけだ。
それであっさり半分精神崩壊状態になったのだから、ステインの脆さには本当に拍子抜けしたし、世間を騒がせる凶悪犯なのにあっけなさ過ぎてつい失望した。
ザギが語った英雄達と絆が起こした奇跡の話と、悪党の宇宙人の話が相当効いたらしいが、それぐらいあっさり崩れる程度の思想でよく英雄回帰の思想の下に罪を重ねられたものだと思う部分があるが、それが正しいと信じ込んでしまうと人間はどんな残酷なことでも平然と行うという性質を思い出したら別に不思議ではなかったとザギは思った。
宗教絡みの争いではよくある事例だろう。そういうのを洗脳とも言うかもしれない。
信じるものが全てで、それ以外を悪だ断じて行動する。そこに悪意はなく、善意だと思い込んでいるからたちが悪くなる。
重度の食物アレルギー症状を持つ人間に、ただの食わず嫌いだと断じたり、慣れれば治るとにわか知識でアレルギーの原因食材を食べることを強制する善意の押しつけも似たようなものか。それでアレルギー原因食材を意図的に混入して食べさせて生死を彷徨わせて、最悪死亡したら善意であったとしても知っていて警告を無視してやったことだから殺人罪になる。
悪気は無かったじゃ済まされないことがある。正しいことのためだと言って信じて悪事をすることを正当化はできない。
英雄になるかもしれなかった、英雄が生まれるまでの過程に関わるかもしれなかった、ひとつひとつはちっぽけでも多くの絆が大きな希望となる奇跡を起こす可能性を秘めていた。
その可能性を考えることなく、理想に反するからと命と未来を奪ったことは、すべての希望に繋がる可能性を完全に潰すだけの行為にしかならなかった。それを理解したステインは泣き崩れ半分精神崩壊状態になった。
〔つまらない奴だった〕
ザギのステインへの評価はそんなものだった。
***
そんなこんなで保須市の事件はひとまず終わりを告げる。
そんな最中で監獄タルタロスに収容されたステインだが、逮捕されて様々な拘束具で雁字搦めにされても、タルトロスに収容されてからも大人しく暴れることなくひたすら泣いていたらしい。
逮捕によって命は助かったが再起不能にされて重い障害を残した元プロヒーロー達や被害者遺族からの裁判に向けて、それまでの検察側の証拠と被害者や現場目撃者達からの証言などなど、逆に罪が重いから裁判までの準備が長引きそうらしい。もちろん裁判そのものも何度もやらないといけなくなるので時間がかかることが想像できる。
なのだが当のステインがまったく聴取や反省の言葉が出せる状態じゃなく、泣きっぱなしで時折嗚咽と共にこれまで殺傷したプロヒーローの名前やヴィランの名前を口にして懺悔しているという報告もありそれを反省していると取るべきかどうかで検察や弁護士が頭を悩ませた。
ステインの思想やこれまでの犯行を考えると反省するとは非常に考えにくく、いったいなにがあったんだ?とステイン逮捕までの流れの目撃者のプロヒーロー達や警察・消防関係者達に聴取が行われたりした。
それで職場体験中の雄英の生徒のひとりに宿る別人格らしき存在がステインを言い負かして、結果ステインが泣き崩れて現在の状態になってしまったということが分かった。
精神にダメージを与える個性を用いた精神崩壊という可能性も考えれたが、集めた情報の内容から本当に言い負かされて今まで自分がやってきたことが間違いだったと思い知らされて半分ぐらい精神が壊れたということらしい。
あのステインが自分のやってきたことが間違いだったと認めるほどの言葉とはどんな内容だったのか。それについて興味を持つ犯罪心理学者や評論家や警察内部組織などなどがステインを言い負かしたという人物のことを調べようとし始めた。
ヒーロー殺しステインの逮捕や保須市での謎の怪人達による破壊活動の大ニュースで世間が騒然としつつ、一方でSNSを中心としたネット上で、№2のヒーローのエンデヴァーが手も足も出ないほど圧倒されて、最後に地面に上半身を刺すように埋められて犬神家状態にされるまでの動画が拡散され、ヒーロー協会からの規制をかけらたSNSなどの運営側が問題の動画や文面を即削除して閲覧不能にしたり、アカウントロックをして拡散抑止しようとしたが、動画製作のフリー素材や手書きでキャラを置き換えたりしたパロディ動画として元ネタがなんだったのかを匂わせる代物が出回るようになり、これまた規制、削除、アカウントロックなどのイタチごっこでしばらくSNSを駆使する人々の生活が普通になったことと、動画サイトでチャンネルと動画製作で生計を立てている者達や、逆に規制されることを拡散して面白がっている者達によって流行ネタにされてしまうことになった。
***
保須市の事件の最中に時間を少し遡る。
「爆豪くーーーん!?」
ベストジーニストの事務所にて、ベストジーニストが思わず叫んだ。
スマフォ片手に腹をもう片手で押さえて床に倒れた爆豪を発見したからだ。
スマフォの画面には、ついさっきアップされたエンデヴァーが手も足も出ずに負けて犬神家されるまでの流れの動画を紹介しているSNS。
エンデヴァーが誰にこんなことをされたのかはまだ広まっていないが、この拡散速度では時間の問題だろう。
「…………ちきしょう……、…んなことになんなら…目ぇ離すんじゃなかった……。」
コスチュームのアイマスクに染みても溢れる涙が床に染み出てる。
「う~ん…、それはそれでストレスの原因になったのではないかな?」
「グハッ!?」
「ああ、ごめん!! いらないことを言ってしまった!!」
出久から離れない方よかったと後悔している爆豪に、うっかりトドメになる言葉を言ってしまったベストジーニストであった。
轟はザギに感化されてしまってヤバい方向に手段を選ばなくなってきてて、さすがのエンデヴァーもヤベェとやっと危機感を覚えて家族を守らねばとちょっと改善の兆しが?
……まだ無理かもですが。
なお、ザギが意図的に轟を闇落ちさせたわけではありません。
飯田がどう立ち直るかを考えて、出久がインゲニウムのことをあげて説得した流れにしました。
原作でも病院で弟に飯田家に遺伝しているエンジンの個性を強化する方法を伝授するぐらいだし、原作中での彼のやってきたことを考えたら飯田の失敗を責めて失望はしないと思ったので。
ザギにとってステインは、雑魚。
ヒーローよりつまらない奴ってぐらいにしか思ってない。
あとエンデヴァーの犬神家状態までにされる動画が出回ってネットタトゥー化したのは、あの場に隠れていた野次馬迷惑系一般人がスマフォとかで撮っていたからです。
あとで警察やレスキューに見つかってしこたま怒られつつ、それさえもネタにしてSNSや動画サイトにアップしちゃったという現実でもよくある話みたいにしました。
爆豪はそのアップされた内容を見ちゃって胃痛で倒れる。
次回は、職場体験後の話の予定。