今回は期末試験開始の予告以外にあまり進展はしてません。
でも、最後の方であの方らしきものが……?
それでもOKって方だけどうぞ。
いいですね?
「憂鬱だ~……。」
「は~~~…。」
デカいため息を吐いているA組クラスメイトの一部。
彼らに共通する事柄があった。
それは。
「期末試験、マジ憂鬱!」
勉学が苦手なことだ。
しかしここはヒーロー養成に特化したトップ進学校。現役プロヒーローが教師を勤め最新の技術を惜しげもなく盛り込んだ体作りとヒーローとしての心がけなどを基本としたヒーロー科という学科に加えて、ヒーローとしての活躍できる範囲を増やすためにも頭脳面での教育も中々に厳しい。
まあ要するに普通の学校にある基礎教科も入学試験と入学後の定期的な試験のテストに必須科目として盛り込まれているのだ。
なので実技で成績を残せても筆記で成績が芳しくないと卒業が危ぶまれてしまうのだ。成績が良くても学校内外での素行の悪さで退学、留年もあり得るがそれは別問題として横に置いておく。
入学試験を乗り越えられたが、元々の苦手を克服していない勉強苦手派達の重苦しいため息が出続ける。
ちなみに出久と爆豪は、現成績上位に普通に入っている。オタクだが元々頭が良いのとストイックな天才肌。轟も飯田も高い順位にいるが、A組で成績トップは八百万だ。八百万の個性は脂質(カロリー)を燃料にして生体以外の物質の構成を理解することで肉体からその物質からなる物体を創造するものだであるため、その性質の都合上古い知識と新しい知識を脳に詰め込まないといけないので、必然的に筆記試験での成績が良くなるのだろう。まあ元々お金持ちのお嬢様だからとてつもなく整った体制で厳しく教育されたという背景もあるかもしれない。
だが好き嫌いと得意不得意を言い訳にしても、学校生活と送っていたら迫り来るのが期末試験。
赤点になればまず追試が待っているし、最悪成績不十分で除籍処分や留年の可能性に繋がってしまう。
だが今年の期末試験は、少し事情が異なるようだ。
「期末試験で赤点となった者は、夏の林間合宿不参加とする。」
夏休み返上で行われる林間合宿。
これはプロヒーローの指導のもと、ただでさえ短い高校生活の中でヒーローとなるまでの力を付けさせるための強化をするための詰め込み強化を行うための合宿だ。
もちろん強化訓練の隙間に高校生らしい楽しいイベントも盛りだくさんで思い出作りの大切さもあるが、これに参加できないのは将来に大きく響く。
なので相澤の宣告を聞いた生徒達の緊張と不安が一気に高まる。特に試験に自信がない者達は滝汗状態だ。
しかも最初の中間試験と違い、雄英で実施されるヒーロー科の本気の期末試験には筆記試験だけじゃなく実技の試験も含まれていた。
実技試験は試験当日ならないと内容は分からないが、№1ヒーローのオールマイトを輩出した実績のある有名トップ進学校の実技試験なのだから一筋縄ではいかないであろうことは想像がつく。
更に今年に至っては、出久の中にとんでもない力を持つザギというかつてないイレギュラーが存在した。
それに対応するため期末試験の構成に雄英の教師陣は徹夜するほど頭を悩ませることとなった。
〔あー……、ここ(雄英)から余所に出久を移す方がいいような気もしてきた〕
専門学校ではないものの、特殊な科目と授業内容の雄英校を見てきてザギは真剣にそう考えていた。
普通の高校ならここまで中間期末の試験で冷や汗とストレスに悩まされないだろうと考えたからだ。もちろん普通の学校であろうとその後の進路に関わるのでやはりストレスになるには違いないのだが……。
単純にザギは出久をヒーローにさせたくないのと、自分の未来予知で確定されたヒーローになる未来を一瞬でも実現させたらすぐに引退させる流れに持って行くことを常に考えているほどに出久の今の環境を良く思っていない。
雄英で学ぶことでヒーローになる未来という流れが確定しているのではない。過程を観測していないがヒーローになるための学び舎は他にもあるし、ヒーロー科を選ばずとも本人の努力次第でヒーローになることも可能だ。ただし余計に狭き門になるだけだ。
いっそ更地にするか、日本の一部ごと消し去るか。
「緑谷。放課後、職員室に来い。断れない予定があるなら先に言え。」
「えっ!?」
期末試験で赤点になった時のペナルティを伝えた相澤が出久にそう言って教室を出て行った。
「…たぶん期末試験のことだろ。」
「なんで分かるの?」
「ったりめーだろ。テメーの中のとんでもねー奴がいる状態で期末試験の実技をどーすんだ?」
「あっ!」
「最近危機感なさ過ぎんだ!」
最近ザギと多少や取りが可能になったせいか、危機感が薄れていると感じた爆豪が叱る。
叱られてシュンッとした出久は爆豪に謝った。
右腕が勝手に動こうとしたが、これは必要な事だと爆豪は強気な睨みで右腕を見た。
「テメーは出久をどーしてーんだ? なんもしない、なんもできないニートナードにすんのか? ああ?」
「ちょっ、そんな将来僕は嫌だよ!」
「だとよ。出久の要望をちゃーーんと聞いて行動しろよ? ザギ?」
今までと違い、強気に出る爆豪は嘲笑さえした。
ザギの右腕が拳を握るが、振り上げようとして途中で止めた。
〔……出久に不幸になって欲しくない〕
それはたぶん本心。
だから自分がくだらないと思うヒーローにさせたくないし、出久に危害が及ぶと感じればすぐに守ることをしてきたつもりだった。
だがしかし、それらが無意味で終わるどころか、出久の不幸に繋がるとしたら……?
〔出久の……幸せ………〕
なぜかザギはそれを想像できなかった。
なぜだと自分で自問自答しても答えは得られない。
〔オレがやるべきこと……、出久の願い……〕
最高のヒーローになる夢を叶えるために雄英に入学した出久。その夢はぶれる様子は無い。どこまでもまっすぐだ。
それ以外になることは、ヒーローになる夢が絶たれる状況になってから考える程度に頭の隅だ。
ザギが視た未来の出久の姿が現実にさせようとする強制力が働いているのか……。
それらを置いておいても今の出久は果たして幸せなのか?
〔待て! 出久の幸せに、オレが邪魔になってる!?〕
今までやってきたことを思い返したら出久がそれを幸せを得ていたかと言ったら否だった。
むしろ泣かせてしまっていた。泣かせたくないのに。自分が泣かせる原因になっていた。
〔何をやっているんだオレはーーーー!?〕
自分らしくないという思いを吹っ飛ばす勢いで、ザギは出久の幸せになることをしていないことに気づいた衝撃で頭を抱えた。
〔ど、どうすれば…、出久が幸せになれる? 出久は何を欲しがって……〕
『僕は、ザギのことをもっと知りたいと思ってます』
ふと職場体験で出久が言った言葉を思い出した。
〔出久は、オレのことを知りたがっている……。だが…〕
それはこの地球に来る前にやってきたことを伝えることにもなる。
出久に出会うまでに何をやり、何を犠牲にして今のザギがいるのかを……。
それを知られて、出久がザギをどう思うのか。
『ザギは、ザギさんだよ。ノアじゃない。』
4才の未熟な時に無理矢理見せたザギの行いの記録を脳に流し込んだ苦しみの中で、出久がザギに向けて放った言葉。
それが今ここにいるザギになる大きなきっかけだったのは間違いない。
その言葉をくれたらから出久の命を救うためにノアの真似をして憑依合体して傷を癒して死に瀕した出久の命を助けた。加減が分からなくて当時の記憶をすべて無くさせてしまったが……。
記憶さえ残っていれば……、ここまでザギがぐずぐずせずにいられただろうか?
それとも大人への成長過程で知識が増えて感情表現も豊かになったことでザギの罪状を理解して、前言撤回されて嫌われていただろうか?
けれど、出久はザギのことを知りたがっている。
〔本当に……オレらしくない……。何を恐れている? 出久がオレを拒絶する。たったそれだけのことが恐ろしい? どうしてそうなったんだ、オレは? オレは…〕
「ザギ?」
「おい、出久、おま…。」
すると出久の右目から涙が溢れ出て頬を伝い落ち始めた。
〔クソ……! またか! どうしてこうなる!?〕
涙を流せぬザギの代わりに、出久の右目から涙が流れ出る現象。
グラントリノの事務所で起こった、ザギにとっては不測の事態だった。それがまた起こった。
右腕だけを自分の本当の腕に変化させている影響なのか右目からしか涙が出ない。
「ザギ? 辛いの? 苦しいの? だいじょうぶ?」
「ああ?」
爆豪は知らないので思わず顔をしかめた。
「たぶんこれ…、ザギが泣いてるみたいなんだ。僕の体を通して……。」
「どしたん、デクくん!?」
右目からだけボロ泣きしている奇妙な状態に麗日だけじゃなく、他のクラスメイト達もびっくりして心配して集まってきた。
「いいよ。いっぱい泣いていんだよ。悲しい時、辛い時、苦しい時……、僕の体を使って発散してくれていいって言ったよね? だから気持ちが落ち着くまでいっぱい泣いて良いから。」
出久は、左手で右腕を優しく撫でながらザギにそう語りかける。
その表情は慈愛に満ちており、ザギを心から心配して自分が犠牲になることを厭わない姿勢だ。
〔オレの全部を知った出久は……、もしかしたら…〕
また、あの時のように言ってくるかもしれない。
ザギはザギ。ザギのこれまでの頑張りはザギの物。それら全てはノア(神)ではないのだと。
4才の未熟な精神と頭で出された言葉だったが、それはきっとザギが欲しかった物。何のために強くなり、ノアに打ち勝とうと全てを喰らい尽くして糧にして、多くの悲劇を起こしてでも力を取り戻して復活を果たそうとしたことも全て。
全ては、自分(ザギ)が自分(ザギ)であること。
自分がノア(神)の代わりにノアが過去に行った同じ事をやれと命じられるだけの道具じゃなく、自分(ザギ)として見て欲しかった、ノア(神)ではなく、自分自身を。
〔……もう隠し続ける意味はない〕
ずっと黙っていることの意味はないと考えている。
いつか知られる。いつか記憶が戻るかも知れない。それに怯えて何も話さないままビクビクと怯えていいのかと。
出久は、ザギのことを知りたがっている。
〔オレも……、出久ともっと……〕
会話をしてみたい
それはザギの本心だ。
右腕の動きやイエスノーカードや筆談である程度のコミュニケーションはしていたが、たったそれだけでもザギこれまで感じたことない満足感があった。
なぜ満足したのかはよく分からないが、もっと、もっと……多く、深く……、もっとちゃんとしたやり取りをしてみたくなる不思議な感覚。
知られて拒絶される恐怖と同時に、その欲求も湧いて出てきていた。
奇妙でザギにとっては初めての感覚で戸惑った。
〔ああ……、オレらしくない〕
だが不思議と、自分らしくなくなっていくことが怖いと感じないのだ。戸惑いはあっても。
〔ノアの野郎に知られたら笑われるか? ……ま、別に…〕
《フッ……》
〔!?〕
覚えがある気配を一瞬だけ感じた気がして、ザギは一気に現実に引き戻された。
〔まさか………? いるのか? どこに!?〕
出久越しに周りを確認したが、その気配はもう存在しなかった。念のため広範囲を超能力で探知したが見つからなかった。
単なる気のせいだったのだろうか。気にしすぎで幻聴でも聞いたのか。
〔いるとしたら……。ノア……、あの野郎…………、笑いやがったな!?〕
今の自分を見たらノアが笑うだろうかと自分への自虐で想像していたが、本当のこの場にノアがいるのだとしたらさっきのあれはザギのことを本当に笑ったということになる。
それも馬鹿にするような感じではなく、微笑ましい物を見て口元が緩むような……、そんな気軽に優しい感じで……。
〔あああああああああああ!? いるならいるってハッキリしろーーーーー!!〕
気のせいだったのかそうじゃないのか、ザギは別の意味で頭を抱えた。
そのせいか出久の右目から出ていた涙は止まった。
期末試験編の前?
勉強苦手組はどんな学校でもいると思われる。得意科目って言葉もあるし。
八百万は個性の都合もあるでしょうが、とにかく大量の知識を脳に詰め込んで理解する能力が要されるため、筆記の試験は好成績になるのは仕方ないのかなと思う。そもそもお嬢様だし。
原作でこの場面見て、峰田が以外と高い順位にいることに驚いた記憶がある。異性にモテるための努力したのかな?
ザギはいつも通りウダウダ悩み、自分らしくないと自虐してる。
つい涙も出ちゃったけど、出久に慰められる。泣いた理由はやっぱりまだ自覚してない。
そこに覚えがある気配を感じて我に返るが、その存在を確認できず。
しかも微笑ましい物を見た時のように笑われたのが癪に触るし、羞恥心で大変なことに。おかげで涙は引っ込んだ。
さて、あの銀色の方が本当にいたのか?
それは、後々に。
次回から期末試験の実技演習を予定しているけど、完全オリジナルを予定しているので執筆に苦戦しそうです。