おかげでうっかり生活のリズムが狂ったり、徹夜しちゃう。(体調不良の悪循環)
今回は、前回からの続き。
カレー作りだけどあんまり進展してません。
本当は洸太のことで進展をさせたかったのですが、書いてたらこうなった……。
ザギがいつも通りウダウダしてたり、出久も出久で前回のことでショックを受けてたけど仲直り?
それでもOKって方だけどうぞ。
いいですね?
「おい……、いつまでそこでキノコ生やしてる気だ?」
爆豪が膝を抱えて座り込んでる出久に声を掛けた。
時間は昼頃。訓練の後であるが忙しなく生徒達が動いている。
林間合宿は、肉体の強化以外の訓練も組まれていた。
いわゆる野外での学習も教育と身につけて損はないということだ。実際、義務教育の小学校や中学校にも野外での学習があるのだから日常と違う体験でしか得られない刺激で情緒面や肉体的な刺激による成長を促すだけじゃなく、もしもの時に備えて覚えておくと良い防災や多少のサバイバル知識は持っておいてもしもの時が来た時に備えておいて良いだろう。無知よりは遙かにマシだが、中途半端な知識で身を滅ぼすかも知れないがそこは自己判断や運にも左右される部分も大きいであろうし、結局のところ覚えておいて損はない。
なので林間合宿の初日以外の食事は、生徒達が野外炊飯を行う。
調理の技術を身につけるのはもちろん、同級生とのコミュニケーションや、自分の食い扶持は自分でという親という庇護下から離れたときの現実を早々に覚えておくということだろ。まあ、麗日のように進学のために上京して安い賃貸で貧乏一人暮らしな例もあるが、それはそれだ。
昼食作りのために用意されたカレーの食材を渡され、恐らくキャンプや日帰りバーべーキュー用の野外のかまどであろう場所でキャンプ用の飯ごうやカレーを煮るための大鍋を使うのだが、もちろん火起こしから始めることになる。
こういう時に便利なのが他ならぬ火を扱える個性であろう。あと八百万の個性で着火する道具を創造することもだ。
あえて不便さを楽しむ本気のキャンパーやサバイバルの達人のやり方じゃなくとも、知識が無い中で使える個性がこの場になかったら火起こしから苦闘することになったかもしれない。なのでA組はかなり恵まれていた。残念ながらB組は別の区間で訓練と調理を行っておりB組側の個性の詳細や個人個人の能力の詳細は分からない。
爆破の個性を持つ爆豪がこの場で除外なのは、強化訓練の影響で個性を発揮する両手を痛めていて包帯グルグル状態だったからだ。両手なので何をするにも痛みを感じるようで当人は顔に出さないよう堪えているがかなり苦しそうだ。
ザギから明かされた話のショックからまだ立ち直りきれない出久は、ズーンと沈んだ様子ながら調理に参加しているが、なにせ雰囲気が……。そこだけ重い。
それぞれの訓練に一生懸命で出久とザギの間に何があったのか知らない面々は、気になって仕方ない一方で踏み込んではないけないとも感じて下手に声をかけられなかった。
それにザギもザギでホログラムを出していない。
もうそれだけで二人の間に問題が起こったことが察せられてしまった。
強化訓練でヘトヘトだし、一部の生徒は個性の多用が原因でその箇所を治療しているぐらいだ。
だがこれも訓練の一環だと割り切ってカレーとサラダを完成させた。
キャンプや学校の家庭科や野外での学習で飯ごうをや簡単な料理は作った経験はあるので、そのおさらいに近いが、手先の器用な者や爆豪のような早熟の天才がいたこともあって素人料理だがまあまあな味に仕上がった。
まあ、訓練の疲労による空腹も最大の調味料になった部分もあるが、おかわりして完食するぐらいには食べれる味であった。プロヒーローになるための強化訓練のための合宿中にプロの料理人やこだわりの調理方法を行う暇はないのだ。
昼食が終われば調理器具と食器などの洗浄と火などの後片付けも含めて野外炊飯の訓練は終わる。
そして休憩の後に午後からも訓練が始まる。
しかし……、色んな時間を削られるよりハードモードな状態の生徒が一部いた。
それは期末試験で赤点、追試を言い渡された生徒達だ。
削られる時間を使って補講を行うことが課せられているのだ。つまり休憩時間も、睡眠時間も他の生徒より少し削られている。健康被害が出ない程度のギリギリを攻めてくる。
その赤点生徒達の嘆きが上がるが、赤点にならなかった生徒達にはどうすることもできない。できても少ない休憩や睡眠前に愚痴を聞いてあげるぐらいしかできない。変に手助けなんてすれば相澤のキツイお説教が待っている。
訓練はそれぞれに合せた内容で組んでいるのだが、人によっては体への負荷が変動してしまう。個性の都合である。
「うぅ~。ふらふら…、うっ、気持ぢ悪い…。」
「だいじょうぶ?」
水場でふらつく麗日を見つけた出久が駆け寄って背中を摩った。
「ご、ごめん…。もう出す物も出しててでんの…。」
浮遊による酔いに慣れるための訓練とはいえ、元々酔いやすい体質改善は中々厳しい。絶え間ない吐き気と、耐えきれずに吐き続ける影響で体調に影響が出ていた。
顔色が目に見えて悪く、心なしかゲッソリした顔をしていた。
「頑張れば……、克服できるはず…。」
「元々の体質を変えるって難しいからね。変えられない人は本当に変えられないって聞くし。みんながみんな個性が体に合っているとは限らないって論文も…。」
「ううん。喉元過ぎればって感じ。本当に最初よりも慣れてるって感じてるよ。日常生活で自分に個性を使わないせいってのもあるかも。」
「それは…あるかもだね。」
揺れに慣れるというのは実際にある。長期間陸地を離れて船に揺られる生活の船乗りなどはまさにその部類だろう。長期間の揺れに体が慣れ過ぎて、逆に揺れない地上に慣れず陸酔い(おかよい)という症状を起こすことがあるほどだ。
陸酔いについては別の原因の場合もあるが、それは置いておく。
「毎回酔い止め飲むのも効率悪いし…、もろもろの負担とか考えたら体慣らすのが現実的かなって思うんよ。」
「それは確かに。」
「デクくん、…ザギと何かあった?」
「えっ?」
「午前の訓練中に何かあったのんじゃないかってみんな気にしてたし、ザギも出てきてへんし。良くないことがあったのかなって…。」
「それは…その…。」
「しんどいことあるなら助けを求めて欲しいって言ったよね? 頼りにならないかもだけど、絶対見捨てないからって。」
「えっと…。」
「第三者の意見も聞かんと、問題解決の糸口も見つけられんと思うよ、ザギ!」
立ち上がった麗日が出久の中にいるザギを指差すようにビシッと出久の胴体に人差し指を向けた。
〔……他人事だと思って。いや…、他人事だが…〕
麗日のもっともな言葉に出久の中でザギは頭を押さえてしまう。
そんなことは言われずとも分かりきっているが、行動に起こせない意気地無しなのはザギ自身なのだ。ザギが悪い。
正直なところ、出久以外の話を聞くのも面倒くさいと思っているが、今のままでは出久と共にいるのは困難になってくることが分かっているのでザギが歩み寄る姿勢にならないといけない。
だが出久に触れるもの、出久に関わる全てが気にくわないという感情が湧く。
それが妥協するという行動を起こすことを阻害する。
〔ぐ……、なんだこのムズムズする奇妙な感覚は……。優先すべきことは頭では理解してるのに動けない! もっと早く動けるはずだった。それを選んだのもオレだ。なぜこうもオレは……。オレらしくないことばかり!〕
頭をかきむしりたくなる今まで感じたとがないムズ痒さに混乱状態陥るザギ。
〔分かっている! 理解している! 出久のためにやるべき行動も、出久が何をすれば喜ぶのかも、ずっと、ずっと、出久が4歳の時に出久の中に入ってから見てきた聞いてきただろうが! オレは、いったいなにをやろうとしてる? なにをやりたかった? オレの選択の間違いで何度も出久を泣かせて、怒らせて、…………オレがやってきたことは、何も…、何の意味を……〕
「…違うよ。ザギ。」
〔!〕
「僕はずっと君のことを知らないまま過ごしてた。君が君の存在を知られないように立ち回っていたのもあるだろうけど、僕も薄々は感じていた。おかしいって思うときがあっても、流したのは僕だ。早く疑っていれば、もっと早く君とコミュニケーションを取れたはずだったと思う。……もう過ぎたことだし取り返しがつかないけど、空いた穴を埋めることはできないかな? ザギ、僕は君が過去に何をしてたのか、君がどうして強さを求めて……、最終的に負けてしまったことも何も知らない。たぶん僕の視点から見たら君の行いは悪いことばかりだったんじゃないかって容易に想像できるよ。……体育祭での君の台詞や、ステインに語っていたって話の内容からそう思った。」
〔……〕
「けれど……、君は今の僕を導いてくれた大切な存在なんだ。分かる? 僕は無個性で、無意味に夢ばかり語るばかりで、好きなものに固執することで現実逃避していただけの大馬鹿な無能だった。でも、君が僕の夢へ昇る階段を開けてくれたんだ。君がいなかったらどうなってたんだろうって、少し想像するだけで怖ろしくなる。だって僕は何の取り柄も魅力も無い夢見るだけの馬鹿だったから。夢以外のことにたくさんある可能性に目を向ける力さえなかった。僕は、一生を掛けても君に返しきれない恩がある。ねえ、ザギ。僕は、君が望む何かのために力になりたいって思ってる。もらってばかりじゃダメだって思ってるから、僕はザギのためにできることを考えてる。でも、ザギのことを知らなすぎるから、どうしたらいいか分からなくて……。君が話してくれるまで待ちたいって言った手前だけど、本当は今すぐ知りたいって思ってて……、だってザギのことを知らないと僕はザギにとって何が嫌なのか、何をしてあげるのが一番良いのかも分からないから。……ワガママ言ってごめん。」
〔……違う〕
すると出久の眼前にザギのホログラムが現れた。
しかし地面に座り込んで膝を抱え、顔を伏せている体勢だった。まるで今のザギの心情を表わすように。
「ザギ?」
「で、デクくん!」
「あっ…。」
麗日が驚いて声を掛けると、出久は右頬を濡らす涙に気づいた。
右目からポロポロと涙が溢れて出久の頬を濡らして顎から地面に水滴が落ちていっていた。
「…泣いてるの? ザギ。」
出久がザギの前で自分の両膝をついてザギに話しかける。
ザギが無意識で出す涙が出久の体を通して流れ出ることは職場体験の時から始まった現象だった。
ホログラムの姿だがザギの体には涙を流す器官がないのか、それともホログラムを出すしかないので涙を出すには出久の目を使うしかない。一体化しているため必然的に影響が出久の体に出るのだ。
ザギは泣いたことなどない。涙を流す器官が最初からない。自己進化を経ても必要だと思わず、後付けすることもなかった。
ザギが加減が分からずに出久の体を変異させた結果、ザギの感情が出久の体にザギの感情が生理現象として表に出るようになった。
ザギは自分が泣くことを自覚していない。だがザギの影響で涙が出ているのは分かっているが、原因を理解できていない。
泣きたいときはいくらでも泣いていいと出久は言っていた。
泣くことで出久に負担がかかるのをザギは良しとしていないのに、涙は止まらない。
勝手に流れ落ちる涙は、出久のそばかすのある右頬を濡らし続ける。
『〔……分からない〕』
「なにが分からないの?」
『〔オレには…、涙を出す器官はない。必要ないはずだと考えていた。だからどうして出久を通して涙が止まらないのか、その理由も分からない。どうすれば、涙を止められるのか……分からない〕』
「ザギ…。」
『〔生まれた時から多くを学んだ。強くなる方法を見つけるために学んだ。相手をどうすればうまく扱えるか。どうすれば思い通りにできるか。何をするのが最適か……。どうすれば早く目的を達成できるか……。学んだ知識に基づいて最良の手段を選んできた……はずだった。だが、オレのやってきたことは……、積み上げてきたことは……、何の意味もなかった〕』
自分を創造した来訪者達のこと。
自分が生まれるきっかけとなった本物(ノア)を倒したくてたまらなかった感情。
戦いの果てに失った肉体と力を取り戻すためにひとりの人間の人生全てを奪ってから正体を隠して溶け込み、利用するために暗躍したこと。
完全復活の末に、自分の行いの端で絆を繋げてきた者達が起こした奇跡が奇跡の使者(ノア)の完全復活に繋がったこと。
その奇跡を前に文字通り圧倒的な力の差で敗北したこと。
自己進化によって強くなり、創造主の望みを叶えるために自分で考えて行動して積み上げた屍の山は文字通り数え切れない。
その果てに待っていたのが、自分の基になった本物(ノア)に完全に負けてしまうという結末だった。
どこで間違えたのか。何が必要だったのか? 何が不要だったのか?
過ぎてしまったことは取り返せないし、いくら考えてもザギには分からなくて自暴自棄になった。
もしも、出久に出会わなかったらどうなっていただろう?
出久が自分を肯定する言葉をくれなかったら?
本物(ノア)に似せて造られた贋物ではなく、ザギはザギだと認められたことが今ここにいるザギになるきっかけになった。
自暴自棄の勢いで当時4歳の出久を死なせかけたから、急いで自分が宿ることで傷を塞いだがそのせいで記憶喪失にさせた上に、肉体が実質ザギ仕様に造り変わってしまったりしたうえに、出久のためにと思ってやったことの数々で出久とその周りを苦しめた前科もこしらえてしまった。
16歳になった今の出久が再度ザギの過去を知ったら、前言撤回で否定の言葉をもらう結果になったら……?
『〔……無理だ〕』
「ザギーー!?」
「涙の勢いが大変なことに!?」
出久に拒絶されるかもと想像したら、出久の右目から出る涙が勢いを増したため近くにいる麗日は驚き出久は焦った。
「ザギ、せめてこれだけ聞いて!」
出久がザギに言い聞かせるように声を張り上げた。
ザギが驚いて顔を上げた。
「僕は……、ザギに出会えて良かったって思ってる。ザギがいてくれて良かった。僕のために今こうして一緒にいてくれて、本当にありがとう。だから……、今ここにいることを後悔しないでくれたらいいな。」
出久はそう言って精一杯笑い、ザギのホログラムを抱きしめるように腕を回した。
実体が無いので抱きしめることはできないからすり抜けてしまうが、それでも懸命に伝えたい感情を表わすように力一杯抱きしめるようにした。
〔…………まさか、そんな言葉をもらうなんてな……〕
ザギは、感触を得られないホログラムの姿であるが、出久から新たにもらった言葉をじっくり噛みしめるように目を伏せて出久の体を抱きしめ返すように腕を回した。けれど実体がないホログラムだからすり抜けてしまうが、それでも抱きしめ返したくなった。それだけだ。
勢いを増した出久の目から流れる涙は勢いを無くしたが、静かに流れて零れ落ちる涙になっていた。
その涙が悲しみや絶望感から流れる涙では無く、自分の中で何かが報われた、救われたと感じた喜びなどの感情による涙だということをザギはまだ自覚していない。
近くでそんな二人を見守っていた麗日は二人の関係が進展したことを感じて、嬉しそうに顔をクシャクシャにして泣きそうなっていたが空気を壊さないよう必死に感動の涙が出そうなのを堪えていた。
その様子を少し離れた木の陰から見ている小さい人影があった。
それが洸太であったのだが、ザギはそれどころじゃなく、気づきもしなかった。
なぜか麗日の出番が増やしている自分がいる。
まあ、一応このネタのヒロイン枠だし……。
爆豪とは別目線でズケズケ発言する立場になってるような?
予定と違って出久のザギへの気持ちを話して聞かせる回になった。
出久は、ザギのやってきたことにはショックを受けてるけど一方でザギへの感謝と恩があるって正直な気持ちがある。
ザギによって超人化しなかったら社会的に生きるのが難しい無個性であることや自分が夢を語るだけの弱者だったって自覚があるから、夢を叶える道を作ってくれたザギへの感謝とザギがいないと困るって邪な心もある。
そういった理由で出久なりにザギへ恩返ししたいって気持ちがあるからザギのことを詳しく知りたいって思ってるけど、ザギが話したくないって拒絶してるから話したくなるまで待つって言ってたけど、本当は聞きたくて仕方が無かったという告白。
どういう経緯だったかとか詳細は現時点で不明だが、過去にやったことの積み重ねでザギが因果応報を受けて完全に敗北したというのをざっくり聞いて、それを経て今ココにいることを後悔しないで欲しいと願った。
あれ~?
なんか全体的に出久も出久で独善的だってことと、出久なりにザギを必要とする理由が利己的だってことになったような?
それで結果的に自分がノア代替え品としてじゃなくザギとして必要とされているという、ザギの救いになったかな?
これで一応出久がザギの過去を受け止める覚悟があるって書けたかな?
どっちにしろ分離不可能だってことを踏まえて。