原作だとなんかあんまり間がなかったような記憶がありますが、二次試験まで準備もあっただろうし合格枠が少ないうえに先着クリアとはいえ時間がかかる可能性もあるので二次試験までの小休憩というオリジナルエピソードにしました。
イナサと絡みますが、うっかり地雷を踏んでイナサがザギに……。
さすがにエンデヴァーとかほどのことはされませんのでご安心ください。
それでもOKって方だけどうぞ。
いいですね?
〔退屈だ……〕
ザギは、そう感じていた。
この地球に来てから出久のためにとピリピリしていた時期が続いていたが、なんやかんやあって少しずつ変化がありつつピリピリも続いていたがふとすると慣れてきたことによる飽きという奴が来る。
そうなると退屈という感覚が襲い掛かってくる。
地球人の寿命が霞み程度になるほど遥かに長い時間を自分の強化のために費やすなど何度も行ってきたが、別の地球でのノアとの対決で完全敗北で色々折れたせいかなんかもういいや…って自暴自棄になった。そんな時に4歳の出久と出会って今に至る。
スペースビーストを撒けば退屈しのぎにはなるだろうが、ザギの中ではそれ以上に出久に嫌われる方が嫌だという絶対に逆転しない天秤があってできない。
ザギが出久に力を貸す体制を整えていったことで出久がニコニコ嬉しくて事あるごとにザギに感謝してくれるのは、染みついた癖でつい素っ気ない態度になってしまうがムズかゆくて胸のどこかが熱を持つような奇妙な感覚を感じるようになった。その感情がなんであるかをザギはイマイチ理解できていないのが残念である。
仮免試験の一次試験は、受験生の多さと合格率の低さが相まって凄い速さで先着クリア者が集まる小休憩所に溜まっていった。
出久達が披露したサイキック竜巻に混ぜたモギモギ+氷のつぶて+粘着テープが他の受験生のクリアにも貢献したようで雄英受験生が会場を去った後からクリアした受験生が雄英受験生が去った後から入ってきたクリアした受験生が出久達にそのことを感謝するように茶化した言い方で声をかけてきたぐらいだ。嫌味っぽいのは雄英への妬みや自分は合格を勝ち取るんだという宣戦布告と自分自身への鼓舞が込められているのだろう。
先着クリアした者達の中には、真堂のいる傑物学園高校からの受験生達と、イナサを含めた士傑高校の生徒が多くを占めていた。特に士傑は『東の雄英。西の士傑』と評されるほどのヒーロー科のある名門の学校として有名だったから一次試験突破率の高さも納得できる逸材揃いだ。当然だがその中に夜嵐イナサもいた。あの後彼もクリアできたようだ。
士傑かどうかは、彼らが身に着けている制服の帽子やブレザーなどで見分けられる。彼らの学校は規律が厳しい校風らしく、まだ学生である彼らもヒーローコスチュームを身に着けつつ士傑のトレードマークとなる制服の一部は身に着けることが義務なのかもしれない。
だがさすがに雄英の1年生のひとクラス全員が一次試験を突破するほどの実績は残せなかったようで、一次試験前に見かけた受験生の何人かがいなかった。
先着クリア者が集められる場所は簡易休憩室になっており、飲み物と折り畳みの机と椅子が用意されていて先に来た者達が座っていたり飲み物で一息ついていたりしていた。
もちろん雄英からの受験生である出久達も二次試験までの時間まで休憩していた。
「ウヒャーーーハハハハハ! 俺の個性めっちゃ役立ったろ⁉ 竜巻に当たった奴らの顔見たろ! 嘘だろ⁉ってマジ顔! SNSであげてバズ狙えそうーな傑作顔じゃなかった⁉」
竜巻作戦で出久の次に功労者になったのは間違いなく峰田だ。
峰田のモギモギの弾力に富む粘着力を四方八方に飛び散らせたことで行動不能になってクリア不能になった受験者が続出したのだから。
そのことに目をぎらつかせて興奮しっぱなしで叫び散らす峰田。自分が身体的にも個性の面でも劣っているという自負があったため、これだけの成果を出せたことで興奮が止まらないのだろう。
その様にクラスメイト達はさすがにドン引いているほどだ。
「落ち着けやクソブドウ。」
「ブベッ⁉」
一向に興奮が収まらない峰田に爆豪がかかと落としをして強制的に黙らせにかかった。
「うぐぐ…、な、なにすんだ⁉」
「ちっとばっかし役に立ったからってギャーギャー勝ち誇ってんじゃねーぞ、周り見ろ。」
「!」
頭をさすりながら怒る峰田だったが爆豪に顎に示されて、周りを見回すと、この場にいる他校の受験生達の殺気の混ざった鋭い視線が峰田に集まっていた。
峰田は一瞬にして青ざめ、ごくりと唾をのんだ。
「あー…、こりゃ次の試験で集中攻撃待ったなしだろーな…?」
「峰田から離れた方が良さそう。」
「同感。」
「精神面でヒーローの適正無しって同類に見られるのもな~。」
「見捨てないでー--! 自惚れてましたー--! すみませんでしたー--! 許してくださいーー!」
峰田からわざとらしく距離を取ろうとするクラスメイト達に、峰田が涙と鼻水を溢れさせんばかりに泣き叫んで許しを求めた。
「あの竜巻は緑谷とザギの力で作ったんだろ? だったら峰田だけじゃダメだったんじゃねぇのか?」
「うぐっ⁉」
轟の言葉がグサリと峰田に刺さる。
「まったくもってその通りだ。」
「峰田ちゃんの貢献も大きいけど、一番はあの竜巻そのものを作って精密にコントロールしていた緑谷ちゃんが一番頑張ったことを忘れているわ。自惚れちゃだめよ?」
「俺もテープを竜巻に入れたから気持ちはすっげー分かるけど、天狗になったらダメだって授業でも釘刺されまくってんだろ? 覚えてねーの?」
「ここ(休憩所)でのことも試験対象で峰田だけ不合格ってなっても不思議じゃなくない? そういうのも加味してってことだったら峰田終わったね!」
「その通りですわ。」
「オーーーーノーーーーーーー!!」
轟に続けとばかりにグサグサ来るダメ出しをしてくるクラスメイト達に、ついに峰田は床にうずくまって大号泣した。
「落ち着いて峰田くん! ここでのことは試験対象外だからだいじょうぶだよ!」
「それ、ザギ調べか?」
「うん。」
ザギに頼んで念のため超能力で試験会場の動きを見てもらっていた。カンニング目的ではないが、万が一ヴィランが潜伏していて……なんてことがあったら最悪だからだ。USJでの訓練授業と林間合宿での前例があるためそこが気になったのだ。
このことは予め試験前に雄英側と試験実施する側と話し合いをしているので反則ではない。
監視カメラや盗聴器などの発見に特化した個性の受験生もいるので、そういったことにも対応しているのだ。
「命拾いしたな、ブドウ。」
「うおおおおおおん! 悪かったよ~~~! 緑谷~~~! お前が一番頑張ってたんだよ~~~! クリアできたのお前のおかげだよ~~~!」
『〔汚い〕』
「ぎゃー--⁉」
「ザギーーー⁉」
顔を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにして起き上がり、ここでの峰田の天狗っぷりが採点対象にならないということを告げた出久に抱きつこうとした峰田をザギが念動力で軽く飛ばして阻止した。
ちなみに出久は今パワードスーツの頭部を外している。首と顎の下と後頭部辺りまではアーマーで覆われているので、ちょうど頭部を外した状態だ。飲み物を飲むのに邪魔なので外していたのだ。
「どうもっす!」
「うわっ⁉ びっくりしたー-! って、君は…。」
そこへズカズカやってくる大柄な男。
夜嵐イナサであった。
あらためて見ると体もデカいが声もデカい。
「自己紹介が遅れました! 自分、夜嵐イナサっす! 一次試験じゃ完敗をきしましたよ! でもいい経験になった! それについてありがとうございます!」
そう大声で言い、ついには地面に頭が激突するほどのお辞儀をするイナサ。
礼儀正しいのか、そうじゃないのか……。ただ勢いだけはあるらしい。
〔風を操れるからか? ……うざさはオールマイトに近い。……コイツはいらん〕
勢いで来るという点がオールマイトを彷彿とさせてしまい、イナサへの心象が早々に悪くなるザギ。
「だ、だいじょうぶ⁉ 頭思いっきり…。」
「心配無用! いつものこと! それにしても……、思ったより…。」
地面に頭を思いっきりぶつけたのに汚れてはいても怪我しないほどの石頭らしいイナサは、出久の顔をジッと見下ろして考え込むような仕草をした。
「…なんかイメージと違うっすね。」
「えっ⁉ なにが⁉」
「あぁ⁉ テメー! ザギのイメージのまんまだと思っとったんか⁉」
ヤバいと感じて二人の間に割り込む爆豪。
ザギが怒るとヤバいと思ったので咄嗟の判断だ。
「まあ、そうっすね! そう思ってたら全然…。なんかやさしそ~~~ってか、想像以上に地味~~っで、なんかちが…。っ⁉」
『〔うるさい。黙れ。離れて潰れろヒヨコ以下が〕』
「わー--! やめてザギ!」
イナサが素直な出久への印象を話しているとザギがホログラム姿で出てきて、次の瞬間には念動力で地面にうつ伏せで叩きつけられるように押さえつけられていた。
顔面を地面に押さえつけれているせいで呼吸がままならないのか、四肢をばたつかせようとしているがまるで全身に重石をしたように念動力が襲い掛かっているらしくまともに動けないイナサの有様に、同じ士傑の生徒達が青ざめて駆け寄ってきて助けようと手を出すが全く持ち上がらない。地球そのものを引っ張っているかというほど張り付いていてビクともしない。
「イナサー--! すまない! こちらの監督不行き届きだった! だから頼む!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! お願いザギ! とめて! 僕は気にしてないから! お願いだからー--!」
『〔出久を貶した〕』
だから万死に値すると言わんばかりに自分の首の下を拳を握って親指だけ立てた片手で横にスライドさせる仕草をするザギ。
それと共にイナサを押さえつける念動力の力が強まってきているのか聞いちゃいけない嫌な音が微かに聞こえてくる気が……。
「そこまでの悪い言い方がじゃなかったと思うよ⁉」
「おい! 出久を泣かせてどーすんだコラ! 本気で嫌われんぞ⁉」
「ザギ! デクくんを悲しませないで! ザギが一番嫌なのはそれやん!」
『〔……〕』
最後の爆豪と麗日の言葉が利いたのかザギは、渋々イナサを解放した。
顔を上げたイナサは必死に呼吸をし、彼以外は1年上の先輩達である同学校の受験生達に助け起こされた。
「漬物の気持ちが分かった気がしたっす……。」
「えびせんべいの気持ちよりマシで良かったね~。」
「それは絶対に死ぬ!!」
士傑からの受験生の一人である現身ケミィの言葉にシャレにならんと思わずツッコみを入れる毛むくじゃらの生徒、毛原長昌。
(※えびせんべいは、せんべいの生地に加工して粉末状にしたえびを混ぜたタイプや、専用のプレス機でえびそのものを潰して焼いて作るタイプなどがある。ケメィが言っているのはプレス機で作るやつのこと)
「ザギの地雷が、宿主という噂はまことだったのか…。」
眼鏡をかけた士傑の生徒が青ざめながらそう呟いていた。
そうしてチラッと目線をザギの方にやると、ザギが赤い両目をぎらつかせながら獣のように喉を鳴らしていた。そんなザギを落ち着かせようと必死に出久がザギに声をかけている。
出久がああして防波堤になっていなかったらこの場にいる人間……、それどころか最も最悪な場合地球に害が及ぶほどの暴力や破壊を行うことができるのだ。
神野の事件で生中継されてあらゆる投稿サイトなどに出回ったザギの真の姿(大きさ)のことは、この場にいる受験生達も皆知っている。
体育祭と保栖市でのエンデヴァーの一件でも悪い意味で有名になっていたが、ザギが個性というカテゴリで収まらない何か圧倒的な存在だということはすでに周知されているのだ。
けれどザギが機嫌を損ねたり、癇に障ることがなければザギの宿主以外にはほとんど無関心であることも試験前に予め伝えられていた。
ザギが仮免試験に関心がなく、あくまでも受験を受けるのは宿主である緑谷出久という雄英の生徒であることを知ってもらうためだ。
だが絶対守るべき注意事項として……、緑谷出久に悪意を持って危害を加えることと、悪口などを言うなどをした場合はやった側がザギの怒りを買って何かされても苦情は受け付けないということだ。
実際試験中はザギは動かなかったが、試験前に真堂がちょっかいをかけに来た時に睨みと圧をかけて追い払ったり、イナサが出久の顔立ちを見て率直な感想を言ったところ過保護を発揮して念動力で押さえつけられてしまったりした。
そして出久とそれ以外のごく一部の人間の言葉しかまったく聞かないときた。
ザギは、緑谷出久限定の極悪な過保護。
その噂は真実であることをその目で見て、一部が短時間の間にその身で味わう羽目になったのであった。
一次試験クリアするキャラをどうするか悩んで、名前は出てませんが肉倉はクリアした形にしました。
竜巻で一か所にいるのはいられなかったのと、個性の特性の都合で受験者達を行動不能にさせる見せしめができなかったとか。確か肉倉の集中力が途切れるなどしたら個性が解除されちゃうんでしたっけ?
さっさと相手を肉塊にするか、モギモギなど混ざりの竜巻で行動不能になった受験生にボールを当ててクリアしたかも?
イナサは、無自覚に地雷踏みそうだし暑苦しいからオールマイトを彷彿とさせてザギからは嫌いって認識されるタイプってことにしました。
出久の顔を見てザギのイメージと違うことを悪気なしで素直に言っただけで出久を貶す気なんてイチミリもありませんでした。むしろ一次試験で一対一で軽く組み合った時の力の差から経験を得られたので感謝している。
現身は本人だし、肉倉もいるし……、二次試験の救助はどうするか……。
この二人の個性で救助活動となると、何ができるか…。
現身は救助された人達の精神状態の緩和ケア。
肉倉は救助対象者の人体を変形させることで狭い場所からの安全な救助と担架などを使わないで済む安全な怪我人の搬送かな?