体からエネルギーが不足している感じがずっと続いている。
今回は、前回の続き。
ザギの過去の悪行を夢で見た出久の様子と、ザギからの重い言葉。
なんかどっちもどっち?
腐向けではないです。念のため。
それでもOKって方だけどうぞ。
いいですね?
「あっ、おはよ…、って、うわー--⁉ デクくん、だいじょうぶ⁉」
麗日が教室で出久の顔を見て真っ先に駆け寄ってきて声をかけた。
出久の顔は、パンダかというほど酷いクマができており、肌の色も悪くなっていたのだ。
あまりの顔色の悪さとだるそうに猫背になった有様に、他のクラスメイト達もギョッとしていたほどだ。
「緑谷くん、顔色が悪いじゃないか⁉ 体調が悪いのならすぐに先生に知らせて病院受診をした方が…。」
「ザギが憑いとんのに病院でどーにかできんだろーが。コイツ、一回も風邪もインフルもしたことねーぞ。」
「なるほど! ザギのおかげで緑谷くんは病気にならないのか! だとしても今この顔色の悪さはどうなるんだい⁉」
「心配かけてごめんね…。ちょっと夢見が悪かったっていうか……。」
「それでこんな衰弱するんか?」
爆豪が無理をして笑う出久の顔を覗き込むように見てから、出久の背後にいるザギを見た。
ザギは、心当たりがなくて答えようもなく黙っていた。しかしザギはザギで出久を心配している。肉体を共有しているから肉体に問題が起こればザギはすぐに感知するのだが、どうも精神的な部分から来る体調不良であるためできるだけ出久の精神に干渉しないことを決めているザギには原因が現段階では分からなかったのだ。
最初の頃、出久をヒーローにさせないためにヒーローになろうとする情報を記憶から抹消したりしたが、未来を見たせいでいくら記憶を操作しても軌道修正が無理だと分かったため雄英に入って以降は止めていた。
原因がつい昨晩見た、ザギの過去の記憶の断片の…恐らく最も最悪なザギの悪事と罪の軌跡だとは出久も口に出せなかった。
口に出して説明できるかどうかも自信がもてないほど酷い内容だったというのもある。
あと……。
(ザギに直接聞くのが怖い…)
あの夢を見てから出久の心を占めているのは、そればかりだった。
ザギの長い長い年月の断片を切り抜きみたいな形で夢で見てきた。
きっとあれは真実。ザギが実際に行ったことだと確信が持てるほどリアル過ぎた。
だからこそ自分では自分のことを語りたがらないザギの口からザギの過去の行いを聞くことで夢として見たザギの罪を受け止められるかどうか不安になったのだ。
自分だけはザギを許すと決めた。ザギと一蓮托生で離れられない運命を受け入れると決意した。ここで挫けてしまったらそれまで口に出したことが全て嘘となりザギを傷つけてしまうかもしれない。
それが怖いのだ。
やり方はどうあれ自分のために色々尽くしてくれるザギを裏切りたくないから。
都合の良いことばかり言っておいて土壇場で急ブレーキがかかってしまっている己の弱さに出久は激しく落ち込んでしまい顔色の悪さとして出てしまったのだ。
賢いザギに悟られている可能性が高いがザギが聞いてこないので、それに甘えているのも情けないと思ってしまっていた。
「おはよう、A組の諸君! って、うわおおお⁉ 緑谷少年、その顔色どうしたの⁉」
「…何があった緑谷。」
結局精神的な体調不良が回復せず、クラスメイトのみならず教師達にも心配された。あまりに顔色が悪すぎるので休めとまで言われるほどだ。
そして真っ先に疑われるのはザギ。
ある意味原因だが原因じゃないことを隠して出久はひたすらザギを庇った。
逆にそれが疑惑を深めているが、よっぽど触れられたくない事情があるのだろうと大人達は深読みし、出久が自分から打ち明けるまで追及はしないという結論を出した。
そんな風に無理を押し通した出久だが、いくらザギによって体が超人化しているとはいえ限界があるのだ。そのためヒーロー科の訓練授業中にめまいを起こして倒れてしまった。
「緑谷! 体調管理もプロの基本だ。今日は休め。」
「いえ、僕はまだ…。」
「基本だと言っただろう? できないなら除籍だ。」
「……はい。」
相澤に叱られ俯いて返事をしグラウンドから寮に向かう中、ザギが心配そうに出久を見下ろしていた。
「…ごめん。君のせいじゃないから…ね?」
出久は無理やり笑顔を作ってザギにそう言うが、表情が変わらないザギの雰囲気から明らかに嘘を見破られていると分かってしまった。
「ごめん…。ダメなのは僕だから。……今はなんていうか…、勇気がないって言うのかな? 踏み出せないっていうか…。」
『〔…出久〕』
「っ…。」
正面に移動してきて出久の顔にくっつきそうなほど顔を近づけてきたザギの声色に思わず出久は肩が跳ねた。
『〔出久を苦しめているのは誰だ?〕』
その誰かとは、ザギだ。
……と出久は言えなかった。
ザギは純粋に出久を苦しめる対象に怒り、排除すべきと考えて声色にそれが出ているだけだ。
そんなザギの気持ちも行動も嬉しい。だが原因がザギ本人にあるということを出久は口に出すことができなかった。
「ありがとう。僕って、ザギに助けてもらってばっかりだね。……ねえ、ザギ。僕は……君に…。」
『〔?〕』
「ううん…、なんでもない…。」
今の出久にはできなかった。
出久は寮の自室に戻ってカバンを降ろしてから、そのままベッドに横になった。
少しでも顔色が良くなるよう、瞼を閉じる。
寝不足なのに眠れなくても瞼を閉じるだけで違うという話を聞いたことがあるからそうしてみた。
ザギがベッドの横に膝立ちの体勢で出久の顔をジッと見ている。
ホログラムの姿だから実体がないから重さもないのでベッドの上に肘が乗ってても何の影響もない。全く邪魔にならないから出久がザギの存在を知らない状態だった時からこっそり添い寝までしていたらしいのだから今更であるが、今はとてつもなくザギの視線が気になる。
頭に色濃く残って忘れるなんてできないザギの血塗られた過去の映像が原因で今こうなっているのだが、ちょくちょくザギの過去を夢という形で見ていた時にザギが全くそのことに触れてこなかったことから、ザギは出久がザギの過去を夢として見て知り始めたことを知らないようだった。
そうでなければ今こうしてザギが出久を苦しめている原因について問うて来るという理由に繋がらない。
だからザギは本当に出久がザギの過去を夢で見て知ったことを知らないのだ。
『〔出久〕』
すると声色が怖いものじゃなくなったザギが名前を呼んできた。
出久が瞼を開けると、ザギが両腕をベッドの端に乗せてその上に顎を乗せて首をかしげるような体勢になっていた。
『〔オレは、出久だけでいい〕』
「へ?」
『〔違うな…、出久だけいれば他はどーでもいい〕』
「何言っちゃってんのー---⁉」
爆弾発言、または突然の告白(?)に出久は思わず飛び起きて叫んでしまった。
『〔前に言っていただろう? 『今ここにいることを後悔しないでくれたらいいな』、と。後悔はもうない。出久のためだけにオレは存在できればいい。それだけで十分だ〕』
「ザギ…。」
とてつもなく重たいザギからの言葉に、出久は声が震えてしまった。
恐怖とかそういう意味で声が震えてしまったのではない。
恐らくであるがザギの内側で大きな変化が起こっている、あるいはその最中なのだろうと出久は考察した。
その結果今の段階で出した答えが〈出久以外はいらない〉、〈出久のためだけに自分は存在する〉というなんとも極端なものになったのだろうと。
「重たいよ…。」
顔を手で覆って思わずそう言葉が出てしまうほど重たい感情と想いだ。
ザギなりにそれまでの血塗られた生き方を捨てて、とんでもない軌道修正したことで出した答えなのだろう。
しかし重たい。言葉だけをそのまま受け止めると重たいとしか認識できない。
ジャンルとして振り分けるとしたら、ヤンデレとか、狂信とか、執着とか……、色恋沙汰抜きであるのは間違いないがザギのこれはやっと自分以外の他者を思いやることを覚えたがやり方を間違えている情緒難な子供のように見える。
悪気は一切ないのだ。ザギなりに懸命にそうしたいと考えた結果の答えなのだ。
自分でザギを受け入れるということを色々言った手前、その言葉を嘘にしたくないから絶対否定したくないのは出久の気持ちだ。だから悩みすぎて体調が崩れてしまったが。
「…もっと言い方っていうか…、表現の仕方とか…、うーん…。でも、ザギはそうしたいんだよね?」
顔から手をどけてザギの顔をまっすぐ見て問うと、ザギは頷く。
本当に素直に頷く様子は、幼い子供のそれだ。
ザギは……、長い長い間孤独だった。孤独であることを強さ身に着けるための強さとしてきた。寂しいとかそういう感情を不必要としていたのだから他者を利用する以外で慣れあうことすらしなかったのだ。
今はどうだろう?
ちっぽけな生命体に過ぎない出久以外はいらない、出久のために自分は存在していると言い切れるほどにそれまでの孤独に強さだけを求めてノアを倒すことに固執していた姿はどこへやらだ。
これが本当のザギなのか?
それともノアに完全な敗北をしたことで折れてしまい、自暴自棄になっていたところで出久と出会うことで変化が起こったからなのか?
恐らく後者の方であると出久は考える。
ハッキリ言ってこんな重たいことを地球上の何者よりも圧倒的に強すぎる遥か遠い宇宙から来た存在であるザギに言われたら、普通の精神の持ち主なら引くか、恐れをなすか……。
けれど、出久は……。
「うー-ん…、なんて返したらいいのかな? でも……、ザギがそう言うってことは僕のこと好きってこと?」
その好きという言葉は、恋愛的なものではなく、広い意味での愛情や親愛や友愛に分類されるものだ。
出久はザギを怖いとは感じていない。
『本当に、緑谷が好きなんじゃなぁ?』
その時、職場体験でグラントリノに言われた言葉の一部をザギは思い出した。
その瞬間、ザギは急にばつが悪くなったような、照れ隠しをするような挙動をし始めて最後には出久に背中を向けて床で胡坐をかいて座り込んでしまった。
恥ずかしくて勝手に拗ねた子供みたいな挙動に出久は思わず小さく吹き出してしまった。
出久に笑われてザギの肩が跳ねたが、それでもザギは背中を向けたまま背中を丸める。
落ち込んでいるのかもしれないが、出久はそんなザギの様子すら笑みを深める要素になってしまっていた。
「ごめんごめん。君のことを馬鹿にして笑ってるんじゃないから。ただ……、なんていうか…、赤ちゃんとか小さい子供とか犬とか猫の可愛い挙動でクスッてなっちゃったみたいなアレで…。あっ! ごめん! ザギのこと赤ちゃんとか犬とか猫だなんて思ってないから! 違うから!」
〔……オレはいったいなにをやっているんだ? いつからこんなアホになったんだ?〕
ふと我に返ったかのようにそんなことを考えてしまったが後の祭りである。
〔まあいいか。出久のだけいればそれでいいし、出久のためならオレはなんでもする〕
だが一度決めたことは変える気はなかった。
そうこうしていると、出久の携帯に着信が入った。
オールマイトの音声を使った着信音が鳴り響き、出久は慌ててカバンから携帯を取り出して電話に出た。
「もしもし。わっ、…オールマイト⁉ どうしたんですか? えっ……?」
電話相手はオールマイト本人であった。
途端ザギは不機嫌になったが続く出久の言葉を聞いて固まった。
「インターン先の許可がもう⁉ しかもオールマイトのサイドキックだった、ナイトアイの事務所って⁉ グラントリノが言ってたことってそういうことだったんですか⁉ えっ、向こうからのオファーもあって? それって……、ああ、そうですよね……。はい、はい…、分かりました。き、気を引き締めて……行きます!」
どうやら出久のインターン先の受け入れと許可が出たうえに、インターン先はオールマイトの元サイドキックだったヒーロー、ナイトアイという人物の事務所だというのだ。
しかも向こうから出久個人を呼びたい理由があるらしく、オールマイトが深く関わる内容であることが先ほどの出久の言葉が読み取れた。
それはそれとして。
〔……さて、どう潰してやろう〕
早速ザギは、インターン先をどう料理するか考え始めた。
実際に生きた年数はザギが圧倒的に長いけど、精神面では出久の方が保護者的目線になってるイメージで書いてます。
ザギに対して子供っぽいな~っ、可愛いじゃんっクスってなる感じ。
ザギは最初の頃と違い出久の記憶に干渉しなくなっています。
出久に抵抗力ができてしまったのもありますが、ザギから手を出さなくなったという理由もあります。
そのためザギは出久がザギの過去を夢で見て知ったことを知らない。
最後はこぎ付けみたいにインターンの話になりましたが、これで一応ナイトアイのところに行けるようなったでいいのかな?
ナイトアイとのやり取りをどう書こうか……。