ヒロアカ×ダークザギ  ネタ   作:蜜柑ブタ

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活動報告で書いた内容となります。

そのため通形ミリオ(ルミリオ)ファンの方は注意!!



ネクサスでのスペースビーストとの戦いにナイトレイダーとかがどう対応していたかを、人間として潜伏していたザギが見聞きして体験した内容の一部をもとにした体験型疑似世界を通形が体験するという謎な回です。

あくまでザギがネクサスでの出来事の一部を編集して、実話をモデルにした体験型映像作品みたいに落とし込んだ疑似世界に通形が登場人物のひとりとして入り込んでから始まるという感じです。
ヒーロースーツ着用や、個性は使えるものとするなど設定を通形に寄せている。

残酷な表現や、人死にの描写が過激な箇所があります。
苦手な方は見ることをお控えください。



そして全然インターン回が進まない!
まだ次の日にすらなってないんです!




それでもOKって方だけどうぞ。







いいですね?






第75話  未知の災いを倒して多くを救う過程には

 

 

 

 インターン初日は、ざっくりまとめると事務所所長のナイトアイとの挨拶とインターン生でナイトアイの弟子である通形との挨拶で終わった。

 ナイトアイは、ザギから手痛い脅しを受けるし、ザギの頑なさを甘く見ていたと痛感して頭を抱えた日となった。

 インターン中は、決めた期間内は学業を休んでインターン先でお世話になりプロヒーローのひとりに数えられる形で実戦経験を積む。

 本来1年生の内にインターン制度は使えなかったのだが、今年に限っては特別に1年生のうちにインターン制度を使うことが許されることとなった。

 ただし仮免試験を合格していることが絶対条件のひとつにするなど、制度を使用するための条件を満たす必要があるので雄英の1年生の中でインターン制度を使うことができた生徒は数えるほどしかいない。

 出久もそのひとりだ。

 ザギというとんでもないカードを持っていることもあってオールマイトとグラントリノからナイトアイがインターン先として申し出たという滅多にないことが起こったため出久はその申し出を断る利用もないからこうしてやってきた。

 不機嫌MAXのザギにナイトアイが所持しているオールマイト限定グッズを壊されるという幻覚を見せられたせいでナイトアイはまず心を挫かれかけ、出久はガチギレし、ザギは出久に怒られたことで一時反省した様子を見せたがすぐに立ち直ってふてぶてしくなった。

 それまでのナイトアイなら厳しく矯正する指導をして、見込み無しなら夢を諦めさせるよう心を挫くことさえ厭わないだろうが、相手が悪かった……。

 力でも精神面でもねじ伏せられる相手じゃない。実物大(※50メートル)を抜きにしてもだ。

 

 しかしナイトアイは、その晩に教え子である通形ミリオが精神崩壊しかける事態に見舞われることをまだ知らない。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ナイトアイの事務所は街中にあるせいか外観は立派なオフィスビルだ。

 中は、ナイトアイの事務所で働くサイドキックのヒーロー達と事務職員などの縁の下の力持ちの職員達が働く環境が整っている。

 繁忙期や大きな事件で家に帰れない時のために簡易宿泊部屋も用意されており、防災に備えた設備と備蓄もしっかりある。

 インターン生はインターンの期間中、簡易宿泊部屋の一画を借りて寝泊りするということを伝えられ、通形が出久を指導すると自分から言った手前、同室で寝泊りすると布団と枕を持ってきた。

「明日からインターン本番だけど、その前に親睦でも深めようか!」

 敷いた布団の上にあぐらをかいて通形が出久に明るく声をかける。

 就寝時間までまだ時間があるからだ。

 ザギがギロッと通形を睨むが通形はなんのそのとキラキラ笑顔だ。

「し、親睦と言いましても……、どうしたら…。」

「う~~ん…、そうだな~~~、じゃあザギのことを知りたいな。」

「!」

『〔……〕』

「伝え聞いた話とかテレビで報道された内容とか程度しか知らないからさ、これも何かの縁だと思って。だって純粋に気になるじゃん?」

 通形はザギのことを純粋な興味でザギのことを知りたいと思っているだけで、悪意はないことを表情や言葉に乗せる。そこに嘘偽りはない。

 ザギもそれを感じ取っているから忌々しく思っていた。

 出久が困った顔でザギを見上げる。ザギは出久の気持ちを読み取って、頷いた。

 それは出久が知っている範囲でのザギのことを通形に伝えてもいいという意味だ。

「いいの?」

 出久が念のため聞くと、ザギは肩をすくめて見せた。それは通形のことなんてどうでもいいという意味を込めている。教えてやってもいいが、だからといって親睦を深める気はないということだ。

 出久はザギのその心境を感じ取り、少し迷ったが、通形に向き直って口を開いた。

 どこまで話していいかは、ザギの様子を見ながら考えて話した。

 とてもじゃないが話せなかった……という内容があって、そこだけは話すことを出久が嫌だと思ってしまい話すことができなかった。

 特に夢を通して見たザギの過去。宇宙を渡り歩き、いくつもの星を、銀河を滅ぼし、そこに住まう知的生命体をあらゆる手を使って喰いつくしてきたこと。特に絶望や恐怖といった負の感情を引き出すために手間をかけた部分だ。どんな心境ならあんなことを平然と、嬉々として行えるんだといくら叫んで問いかけても足りない。惨すぎる内容だったから出久の言語力で表現して伝えられる自信もなかったのもある。

 その時、ふと通形が気になったことを問いかけてきた。

「つまり俺達が住んでいる地球とは別の地球があるってことか? ザギは、その地球にいたことがあるってこと?」

「宇宙は広いですし…、地球は地球でも違う地球があっても不思議じゃないのかもしれませんよ?」

「俺達の知らない地球での出来事を知っているならそうなんだろうなぁ? ザギ。その地球ってどんなところ?」

 通形がザギに話を振った。

 出久は一瞬焦ったが、そっぽを向いていたザギがゆっくりと通形を見た。

 苛立った様子だが何か言いたげな様子にも見えた。

「そこって個性とか、ヒーローとかっているの? 俺達にとっては当たり前なことが当たり前じゃない地球って気になる。」

『〔……見たいか?〕』

「ザギ?」

 まさかの返答に出久は目を見開いてザギを見た。

 思わぬザギからの言葉に通形も一瞬固まったが、すぐに笑顔になりずいずいと膝立ちでザギに近寄った。

「見ることができるのか?」

『〔……あくまで過去に実際にあった出来事に登場人物として疑似介入する体験をするだけだ〕』

「そんなことができるのかい⁉ ぜひ、やってみたい!」

『〔お前の掲げる理想はなんだったか?〕』

「?」

「通形先輩のヒーロー像のこと? ルミリオ……、ありったけたくさんの人々を救うって願いを込めたヒーロー名…でしたよね?」

「うん! そうだよ! 覚えててくれてうれしいなぁ!」

『〔卵以下のヒヨコが〕』

「へっ?」

「ざ、ザギ…。」

 最近聞かなくなったザギの口から出る悪口。

 体育祭で散々言い放った悪口だ。それはヒーローの卵である雄英の生徒全員に向けたザギ嫌悪と苛立ち。

『〔何かを救うために……、そこに至るまでの過程を知らない。すでに安全な足場が出来た中で安心してそう言っているだけだ〕』

「なっ…。」

 さすがの通形も笑顔が消え、絶句する。

 するとザギが右手を手を差し出す。

 奇妙な紫の輝きを放出し始める実体のないホログラムの手だが、嫌な予感をヒシヒシと予感させる。

『〔これはオレが見た。聞いた。体験した。その地球での物語の欠片から作ったお前が体験する別の地球。これに

耐えて、それでもその笑顔を保って、ありったけのたくさんの人間を救えると自信を保てるのなら、お前はヒヨコ以下じゃない〕』

 ザギは、淡々とそう伝える。

 出久は顔を青くし、自然と体が震えた。

 出久は予感した。ザギが通形に体験させようとしているのは……。

「……分かった。俺は君に少しでも認められたいから…、どんと来い!」

 通形がザギのホログラムの右手を掴んだ。

 実際には掴めないのだが、ザギのホログラムの右手に集まったエネルギーに触れればそれで十分だった。

 通形の意識は一瞬にして別の世界へ飛ばされた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 酷い埃っぽい臭いと、焦げ臭さ。

 その中に生臭さと鉄の臭いが混ざっているの感じながら通形は目を開けた。

 そこは森に囲まれているが恐らく人が住む場所だった……場所。

 そこかしこに家屋だったと思しき瓦礫の山と、くすぶる小さな火と煙。

 その光景に唖然としていると耳をつんざく、女の悲鳴。

「どこだ⁉」

 ミリオは、ヒーローになるべく鍛えてきた行動力で悲鳴が聞こえた方角へと走った。

 走っている最中も悲鳴は断続的に聞こえるが、徐々に悲鳴が小さくなっていくのが分かり焦りが募る。

 そして、通形はたどり着いた。

 

 虫とも爬虫類とも見て取れるヒグマよりも大きな謎の怪物が馬乗りになって人間のはらわたを貪っている光景に。

 

 あまりの苦痛と喉の奥からあふれ出る血で、もう声も出せないが、食べないでくれと残る力で抵抗しているのは……、まだ二十代そこいらの若い女性。

 その傍らには彼女の持ち物だと思われる小さなカバンが落ちており、マタニティマークがひっかけられていた。

 つまり目の前の怪物がこの女性の腹を狙ったのは……。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 一瞬にして頭に血が上り冷静さを一瞬にして失う怒りに任せて怪物に飛び掛かる通形。

 激情のままに手加減ひとつなく打ち込まれた通形の拳は、昆虫の甲殻のような形状をした怪物の横っ面に命中した。

 だが怪物はまったく気にも留めない様子で口を動かし続ける。

 通形はせめて女性の上から怪物をどかそうと攻撃を繰り返すが、怪物はまったく微動だにしない。

 個性の透過を使って甲殻の中を直接攻撃すると途端に怪物の内部から溶解液と思われる物質が放出され、突っ込んだ腕を慌てて引き抜くとジュージューと焼け爛れる皮膚と肉が無残にも地面に滴り落ちる有様になった。

 やがて怪物に挑み続ける通形を見つめながら、女性は目を開けたまま力尽きた。顔を濡らす涙と口と鼻から溢れ出た赤黒い血で汚れて酷な最後であったことが嫌でも分かる顔だった。

 その壮絶な女性の最後を目の当たりにし、通形の感情はさらに揺さぶられる。

 絶叫しながら怪物を攻撃する。利き腕が溶けているのも構わず拳と膝が潰れるほど攻撃しても傷ひとつ付かない恐ろしい強度を持つ怪物は、通形をまるでいないものとして気にかける様子を見せず、すでに命を失った女性を喰らい続けていた。

 

 

 すると場面が変わった。

 通形の傷も無くなり、どこかの会議室のようだ。

 通形は、その会議室の椅子のひとつに座っていた。この疑似世界では通形も登場人物の一人として数えられている。

 見たこともない軍服のような服装の人々。日本人のようだが自衛隊とかではないようだ。その中で通形だけヒーロースーツだからかなり浮いているのだが、周りはそれが当たり前のように受け入れていて傍から見ると奇妙でしかない。

 しかし右腕はグルグルのギプスで固定されており、痛みと傷が癒えるときの感じる熱さがあり、あの後何らかの治療で右腕が修復されたと考えられる。

 会議の議題に上がっているのは、あの時通形が倒せなかった怪物のことだった。

 プロジェクターに映された怪物を見た途端、通形の脳裏に生きたまま腹から喰われて最後まで抵抗しながら死んでいく女性の姿と、自分は怪物に何一つ太刀打ちできなかったという絶望と不甲斐なさがこみあげてたまらず頭を抱えてうずくまってしまう。

 隣隣りにいた人物達が通形を助け起こして、落ち着けと声をかけてくれる。

 通形の錯乱で一時途切れた会議が再会され、この怪物の調査と共に、退治する方法について議論が交わされる。

 その中で専門家らしき人物が挙手し、とんでもない案を出した。

 

 それは人里離れたキャンプ場に今はシーズンで人が集まっているから、それを怪物をおびき寄せる餌にするというものだった。

 

 あまりにも非人道的な案に通形は当然テーブルを叩くようにして立ち上がり、反対を叫ぶが、それとは反対に周りは『それしかないか…』という空気であることにすぐに気が付き言葉を失った。

 彼らが口にする内容や、通形の知らないこの疑似世界で起こった過去の出来事からそうした非人道的な方法を用いるしか未知の怪物の調査もできないし、退治することも難しいことが分かり、通形は膝から崩れ落ちかけた。

 しかも通形はあの怪物が並大抵の力では倒せないことをすでに身を持って体験している。

 拳や脚が潰れるほど攻撃を繰り返しても傷ひとつ付けられなかったあげく、個性を用いて体内を直接攻撃すると溶解されることも体験し、なにより通形の存在すら完全に無視してあの女性を食べることに集中していたのだから。

 そしてあの怪物が昨今現れるようになったスペースビーストという最悪最強未知の生命体の一種であり、人間を好んで捕食する共通の生態を持つ上に出現する個体によって形態や能力が違ったり、途中で増殖したり進化してより強力になっていく天災やバイオハザードのような脅威であることを知った。

 地球のあちこちに現れるようになった未知の脅威を研究するには、その未知の脅威を調査するしかない。

 そのためには、その未知の脅威であるスペースビーストをおびき寄せるための餌として奴らが好んで捕食する人間が用いられた。

 倒すにしても倒す側も犠牲を払うことも多く、倒すための手段も今の段階では限られるから犠牲は尽きない。

 だが調査と研究が進み、スペースビーストに効く兵器や倒し方を発見していくことで最初の頃よりは徐々に戦いがマシになり、おびき寄せる囮の餌にされる人間も減らせる。

 未知の脅威を倒し、多くを救うために必要な犠牲。

 どれだけ非道でも、やらなければ何も救えない。綺麗ごとを並べて理想を語っている間に無駄に犠牲を払い、その犠牲すら意味を失う。どうせなら払う犠牲で得る物を最大限活用する方が圧倒的に良い選択だ。

 そうして確実に成果は出ている事実。

 戦いを経て、犠牲を出して、そこから手に入れた情報を基に新しい武器と倒す方法を発見する。その繰り返しで救える命が増えていく。犠牲にした命を上回っていく。

 その調査の過程でスペースビーストが人間の恐怖心を糧により強くなり、数を増やすことが判明して、人々の記憶からスペースビーストの存在を消す装置を作って一般社会からスペースビーストという恐怖を隠す工作が行われた。知っているのはスペースビーストと戦う組織の者達と国の一部の偉い人達だけ。

 囮にされる人々は何も知らないまま日常を過ごしていただけで、突然未知の怪物に襲われてその場所を戦場にもされて最後には再び記憶を消される。

 その繰り返し。

 

 通形が最初に遭遇したスペースビーストは、主に森の中など生活範囲にしており、強固な甲殻と皮膚を持つが一部の関節や体を折りたたんで隠している腹部分と口の中などはさすがに柔らかいようで、その弱点となるであろう部位を叩けば倒せた。

 通形の個性で甲殻の奥にある柔らかい内部を直接攻撃したときに溶解されたのは、生き物に備えられた外部からの何らかの刺激に対応する免疫機構によるものだった。人間などに例えると血液中に存在する白血球が体内に侵入してきたばい菌を飲み込んで消化して退治するのと同じだ。

 なので近距離攻撃より中距離か遠距離や設置型の兵器を使って弱点となる柔らかい部位を露出させてそこに爆弾でも突き刺すような方法を用いて退治するのが効果的だと判断された。

 しかもこのスペースビーストは、人間を主食とするが幼い人間の子供を特に好んで食する生態であったらしく、通形が救えなかった妊婦が襲われたのも腹の中の胎児が目当てだったし、キャンプシーズンで家族連れが多いことが功を奏しておびき寄せることにも成功した。

 無事に倒せたスペースビーストの腹から飛び出した内蔵の内容物に幼い子供達…だったと分かる部位がいくつも出てきたのを見た時、通形はその場で口を手で押さえて嘔吐した。

 

 スペースビーストという天災のような相手と戦う側だって人間だ。

 だれも望んで罪のない人々を囮にスペースビーストの調査と退治をしたいわけじゃない。できることならそんなことをせずに倒したいと願う。だからこそ必要なことだと無理やり言い聞かせて、必要な犠牲を積み上げて手早く効率よく、犠牲を払わずに倒す手段を求めて必死なだけだ。

 正しいとか人道に反するとか…、そんな綺麗ごとで立ち止まっている暇なんてない。綺麗ごとや理想論じゃ誰も救えない。その間に無駄に命が失われてしまい、スペースビーストがより強くなり、数を増やすだけ。

 すぐそこで助けを求める人々に手を差し伸べる余裕もない。

 それをした隙がスペースビーストに一瞬にして自分の命を奪われる原因になり、スペースビーストを取り逃してしまい一般人を利用した囮作戦をやらざる負えなくなる事態にも繋がる。

 

 こんな極限の中で、それでもこの地球で生きる人々がいる。

 記憶を奪われながらすぐ傍にいるスペースビーストのことを何も知らないで普通に生活する普通の人々。

 スペースビーストからそんな人々を救うために手段を選べない戦いをしなければならない人々。

 人間の負の感情がある限り根絶は実質不可能で、和解も共存も不可能な生態系を持つスペースビースト。

 

 

「ごめん……、ごめん…なさい…。助けられなくて…ごめ…んなざい……。」

 

 

 地面に両膝をついて項垂れるミリオの眼前には、スペースビーストの囮として蹂躙された跡地に積み上げられた顔も名も知らぬ何も知らないまま犠牲になった人々の亡骸があった。

 あふれ出る涙は地面に落ちて無意味に染みこんで消えるばかりで己の無力さを痛感するばかり。

 通形が助けを求める声に耳を傾けたせいで仲間の隊員が命を落としたのを目の当たりにした。

 そのせいで作戦が崩れかけたが持ち直し、スペースビーストを倒すことは一応できた。

 通形が助けようとした声の主は、作戦が終わった後には亡骸のひとりになっていた。あの時点でもう助からない状態だったらしい。

 その後呼び出された通形は、作戦本部からの叱責で通形がよそ見をしなければ失われる必要がなかった人命が何人もいたことを突きつけられた。

 作戦が崩れかけたことで命だけは助かったが再起不能になり退役を余儀なくされた仲間も含めると犠牲にせずに済んだはずの人数はもっと多かった。

 下手に次の攻撃までの間隔をあけたせいでスペースビーストに耐性ができてしまい、一部の攻撃が効きづらくなったのも犠牲が増えた原因だった。

 説教と処罰についての通達が終わった後、ふらつきそうになる足取りで戻る途中で幾人かの仲間に掴みかかられ、殴られたりもした、退役か命を失った仲間と仲が良かったり、通形がヘマをしたせいで無駄な犠牲が出たという怒りによるものだった。

 彼らの怒りは正しい。あそこで作戦が失敗したら一部の攻撃に耐性がついたスペースビーストを逃してしまい、増殖でもされたらスペースビースト全体にその耐性が広まって攻撃手段と武器の一部が使用不能になって色んな面で振り出しに戻る恐れがあったのだから。

 通形は、自分に向けられる様々な意味がこもった怒りをただ受け止めることしかできなかった。

 

 

 

 〔何かを救うために……、そこに至るまでの過程を知らない。すでに安全な足場が出来ている中で安心してそう言っているだけだ〕

 

 

 

 打ちのめされる通形の脳裏に、ザギの言葉が思い出された。

 

 それで思い出す。

 この世界は、別の地球で実際に起こった出来事の一部を基に疑似体験するために作られたザギが用意しもの。

 個性もヒーローも存在しないが、スペースビーストという未知の災いに脅かされた地球。

 スペースビーストという災いへの安全な対処法がまだ見つからず、手段を選べない手探りで調べて戦う方法を見つけなければならない最中の時期。

 だが調べていくと判明したのは、スペースビーストが人間が持つ恐怖などの負の感情を糧にするので実質根絶が不可能な恐ろしい存在であること。人間を好んで捕食するから和解も共生も不可能なこと。

 時に人間が触媒にされてスペースビーストに変化してしまったり、人間としての意識があるまま肉体の大半をスペースビーストに奪われた状態で人質のようにされ、しかし助け出す術がなくスペースビーストもろとも殺すしかなかったりすることもあった。

 通形が体験した物語の中でのスペースビーストの大半は、その形をずっと維持せず、大きく、より強い形態に進化を続けるので人間に擬態したままの個体は確認されていなかった。

 できるかぎりスペースビーストの増殖と進化を防ぐための対策として、一般社会に住む人々の記憶からスペースビーストの記憶を消すという強硬手段を取るしかなかったこと。

 何の予告もなく囮に選ばれる人々や町。

 払った犠牲によって得られた物で犠牲にした数を超える人々を救えるようになったいくこと。

 それを繰り返してやっと最初は無かった安全な足場が、少しずつ構築されていく。

 だがそれを作るために失った物は……。

 

 

 通形は、思い出す。

 今自分が暮らす地球でヒーローになるという夢を見ること、それを実現するまでの過程の経ることができる安全な足場は、一体誰が作り上げたのかを……。

 今は当たり前になった個性だって最初は……。

 それ以前に地球人類は……。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「ー-----ぱい! 通形先輩!!」

 出久は必死になって倒れている通形を起こそうと声をかけ続けていた。

 すでにナイトアイも呼んで、救護班も駆けつけている。

 通形は呆然と天井を見上げているだけだ。

 涙ばかりがこぼれるだけで無表情。あの明るい笑顔は消え失せている。

 だが精神は壊れてはいない。ただ酷すぎる悪夢の衝撃から戻ってくるのに時間がかかっているだけだ。

 すでにザギが見せた体験型のそれは終わっていた。

 現実にはわずか数分程度にも満たない間に、通形は数年以上もその世界を体験した。

 スペースビーストという恐ろしい災いに脅かされた極限の環境にある地球で、スペースビーストと戦う組織の一員として戦ったし、多くを失い、助けを求める声のする方へ伸ばした手では誰も救うことができなかった。むしろ逆効果になって状況を悪化させて想定以上に無駄に命が失われたり日常生活が難しくなる傷を負ったという者達の存在を突きつけられた場面もあった。

 あの時のあの地球は通形のような人間には酷な時期だっただけ。ただそれだけ。

 通形が掲げていたありったけたくさんの人々を救うということができない、そのための手段がまだ確立されていなかった。ただそれだけ。

「ザギ……、先輩に…なにを見せたの?」

『〔……オレが人間に化けていた頃に仲間として潜入していたある組織でやってたことの一部を基にしたものだ〕』

「それって……。」

 出久は、ザギが通形に見せた疑似世界が復活したノアに完敗した地球での出来事だと気づいた。

 その時のザギは復活までの間、ひとりの人間を完全に乗っ取って裏で暗躍しながらスペースビーストという怪獣と戦う組織の一員をしていた。

 その時の体験と実際に起こったことを通形が登場人物の一員として体験する疑似世界のモデルにし、通形はその出来事に打ちのめされ、心が傷ついたのだろう。

 №1ヒーローに最も近い男とお墨付きをもらうほどの実力を身に着けていても意味がなかったのだろう。ザギのことだから個性が使えることを前提にしていたかもしれない。

 数分で倒れてただ涙を流すばかりになってしまうほどには残酷な体験をしたに違いない。

「…いったい、何をしたのですか?」

 通形が病院に搬送された後、ナイトイアが青筋を浮かべてザギに問うた。

『〔救いたいものを救えるようになるまでの、過程と工程の一例を体験させただけだ〕』

 ザギは、なんてことないようにそう答えた。

 ナイトアイが歯を食いしばり、冷静さを欠いて感情のまま口を開こうとした時だった。

 ナイトアイの携帯が鳴り、我に返ったナイトアイは携帯を取り出して通話ボタンを押した。

 ナイトアイは、電話の相手に目を見開き、顔から怒りの感情がほどけていくように表情が変わっていく。

 やがて通話が終わりナイトアイが携帯をポケットに戻しながら出久とザギの方に向き直った。

 出久は顔色を悪くして震えていた。

 こんな事態になりインターンどころじゃないと考え、最悪雄英を退学処分されるとか、それよりも通形とナイトアイに害を与えた罪を問われるかもしれないと思っているのだ。

 ザギはどこ吹く風な様子でナイトアイの言葉を待っていた。

「……ミリオの意識が回復し、先ほど自分から電話をしてきましたよ。」

 ナイトアイは眼鏡を指で押さえ、心底安堵した息を漏らした。

『〔……ヒヨコ以下じゃなかったか〕』

 ザギは面白くなさそうにそう呟いた。まるで通形が目を覚ますのが早いことを予見していたように。

 出久は通形が無事であったことを知り、ヘナヘナとその場に座り込んだ。

 

 

 




あくまで私の印象ですが、通形は伊達に№1ヒーローに最も近い男と認められる雄英の3年生じゃないって思ってます。
実力もメンタル面でも原作で遺憾なく発揮して輝いていましたし、もしネクサス世界の地球での出来事に関わることになったとしてもテーマソングの『英雄』のように立ち上がるし、笑顔になる男じゃないかという勝手な想像です。
ただ若いですからね……、さすがに手段を選べない戦いへの嫌悪と助けたいのに助けられない絶望と悲しみ、人の恐怖心を糧にすることで増殖、進化を続ける、戦っても戦っても終わらない最悪の敵を前にして一度も膝をついて折れないでいられないという勝手な妄想です。
けれど、ザギから言われた言葉を思い出し、自分が先人達の血と汗と涙で作り上げられた安全な足場で悠々自適にヒーローになる夢を目指していただけだったと自覚したことで精神崩壊には至らず、むしろこの体験を糧にして立ち上がった。
病院について間もなく自力で復活して、急いでナイトイアイに連絡してその旨を伝えたのが最後の方です。
ちなみに疑似世界での体験は、現実では数分にも満たない時間ですが、通形は数年間ぐらいスペースビーストとの戦いを体験しています。
ザギは、通形の揺るぎない太陽なタイプに対してちょっと意地悪のつもりで、こんな体験(ネクサス世界での初期の頃ぐらい)をしてもその状態が保てるのかって挑発してネクサス世界をモデルにした疑似世界体験をさせました。
ザギには面白くない結果になりましたが、ネクサス世界でザギが自分の目で見て直接戦ったデュナミスト達を思い出させる部分もあったから通形の復活が早いことも想定していた。
でも好感度はどうかというと、嫌いなことには変わりません。


これを書いていて、ナイトアイならどうするか?という妄想もふと頭に浮かびました。
出久とはまた別の域でオールマイト狂ファンだけど、几帳面で生真面目で、あの顔に似合わずユーモアを尊重しているから、まったく笑えない残酷さとホラー感満載のネクサス世界に放り込まれて非道な手段を用いる以外に他に手段がないとなったらどうするのか……。
それでもやはりオールマイトの元サイドキックとして活躍した経験と実績で培った精神と、通形の師としてのプライドや意地で、己の身も心も引き裂くことを引き換えにしてでもユーモアを尊重するのか……。
辛い時ほど笑えって、なんかのヒーローものか何かの作品であったような気が…。
そういう感じになるのかな?

書いてて色々とおかしい個所がありすぎる気がするけど、どこをどう修正すればいいかも分からない有様なので、もしここがおかしいというご指摘がありましたら、メッセージか活動報告の方にお願いします。
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