ヒロアカ×ダークザギ  ネタ   作:蜜柑ブタ

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あれ~~?
やっぱり予定通りに書けなかった……。
いつものことですが…。



今回もインターンが進んでません。いい加減にしろって感じですが申し訳ない。



前回の翌日の話?



通形とナイトアイの会話。
出久とザギの会話の二つが主。







それでもOKって方だけどうぞ。





いいですね?


第76話  それぞれの決意と祈りを新たに

 

 

「ルミリオン! ただいま戻りました!」

 翌日の早朝。

 昨晩緊急搬送された通形がナイトアイの事務所に元気よく帰ってきた。

 病院は事務所から離れていたから送迎を出す予定だったが通形が断って早朝ランニングついでとばかりに自力で走って帰ってきた。

「本当に…だいじょうぶなのですか?」

 真っ先に彼を出迎えに来たナイトアイは、疑いの目で通形の顔を見つめた。

「はい! ちょっとまだ頭がグワングワンしますけど!」

「ダメじゃないですか。」

「ちょっと船酔いっぽい感じなんでだいじょうぶですよ! 少しずつ治ってきてますし!」

「…ならいいですが。」

「それでなんですが、あの……。」

「ああ…、緑谷くんとザギのことですね。心配せずとも一切のお咎めなしとはいきませんが…、雄英に叩き送ることも、刑事事件にもしないことにしましたから。」

「ああ、良かった…。」

 心底ホッとしている通形に、ナイトアイは納得がいかない気持ちを表情に出さずに問うた。、

「なぜそこまで…ザギを擁護するのですか? あんな酷い目にあって…。」

「あれは自分が望んで受けたことと……、あの体験は俺の常識と今までの積み重ねを根底から木っ端微塵にするほどの衝撃のある経験だったからです。それを教えてくれたのがザギだから。」

「いったい何を見て体験したんですか?」

 ナイトアイがそう聞くと、途端に通形の顔色が一気に青ざめ笑顔が引きつり、体が震えだす。

 言葉にできないほどの体験をしたのだとナイトアイはその様子からすぐに理解した。

「でも……、これだけは理解しました。」

「なにを?」

「あれは……、あり得たかもしれない…地球での出来事だってことを。」

 それは、“もしも”、パラレルワールドなどと例えられるもの。

 あり得たかもしれない地球での出来事。

 通形が思い出すだけで笑顔が崩れて震えあがるほどの内容だったのだ。自分達のいるこの地球よりも圧倒的に過酷な状況下にある地球だったのだろう。

「もしもだから関係ないで言ったら、はいそれで終わりですで済みます。でも…、他人事じゃないってことを疑似体験ですがこの身で味わって、それで終わりで済ませちゃダメだって、俺の心がそう叫んだ。遠い知らないところで本当に起こった出来事だから余計に。あの地球のあちこちに現れるようなった敵は、どうしようもないほど強かった。人間を襲うために存在して人間を襲えば襲うほど強くなり続ける恐ろしい敵でした。この手を伸ばしても…、どれだけ足を動かしても、拳を振るっても、体がボロボロになっても、仲間や一般市民が巻き込まれて死んだり一生残る傷が残っても、倒さなければならい敵をやっと倒せたら100点満点。その戦いの最中に助けを求める声にも助けを求めて必死に伸ばされる手にも手を差し伸べることもできなくて…、そんなことをしている時間がなくって…、つい助けようとした隙に仲間が死んだり、手足を……、それどころか敵が逃げてしまったら、敵を誘き寄せて今度こそ倒すために何も知らない市民を囮に使うしかなくて……、敵が人間を襲うだけの災いのような奴らだからそれ以外に手段がなくて…、敵が恐怖心や絶望の感情で進化して数を増やすって分かったら、これ以上強くなることも数も増えないように一部を除いて一般市民や国をまとめる偉い人達まで敵に関する記憶を消して、すぐそこに敵がいることも知らなくて、何の予告も理由も知らないまま囮にされてまた記憶を消されて……、そんな繰り返しで敵を調べて理解してやっと敵に有効な攻撃手段や攻略方法が見つかれば、そのおかげで助けられる人の数が増えて囮にする回数も減っていく……。俺が今まで信じてたヒーローの理想も、自己犠牲も……なんの意味もなくて、ましてや助けることなんて…全然、できません…でした。」

 通形は、語る途中で体験したことを思い出したせいで耐えきれず涙をボロボロと零した。

 その涙が通形が疑似世界で体験した悲しみと絶望と不甲斐なさから来るものだとナイトアイは見抜いた。

「宇宙から突然…、地球に流れ着いた謎のエネルギーが地球に住む生き物に寄生して怪物に変異したのがあの敵の正体だった。どこからエネルギーが来たのかは分からなくて。でも、人間が持つ恐怖と絶望の感情がある限りいなくならないし、人間を襲うのに恐怖と絶望を手に入れて自分達がもっと進化するためだから、絶対に和解も共生もできない……、どんな手段を用いてでも駆除しないと地球が…人類が滅びるしかない最悪の環境の中で、奴らを知っていて戦いに身を投じる人々の中に俺がその一員として戦うって体験をしました。」

 通形は、腕で強引に涙を拭いナイトアイに背筋を伸ばして顔を向けた。

「俺の理想のヒーローとしての在り方が文字通り粉々になる体験でした! けれど…、体験しなければ気づけなかったこともありました! 俺はそれを心に…、自分自身に誓いを立てたいと思います!」

「その誓いとは?」

「もし…、地球に終わらない災いが降りかかった時、その災いから人々が助かるために手段を選べないのならどれほど周りから罵声や怒りや悲しみをぶつけられても、俺はその最前線で多くの人々を助ける方法を探すために尽くしてみせる! 誰かがやらなければならないなら、俺がまず手を挙げて誰よりも前に出る! そして災いを倒して生きて帰ってくる! それを繰り返せば、いつか誰も望まない手段を選べない状況を変えられるんだと……明日を信じる誓いです!!」

「…その災いとは、先ほど話していた宇宙からの謎のエネルギーから生まれる怪物のことですね? この地球にも飛来して来るとみているのですね?」

「あの体験が現実に…、どこかにある違う地球で起こったことならあり得ない話じゃないと思ったんです。」

 新たな固い誓いを胸に抱いた通形の表情を見つめ、ナイトアイは眼鏡を指で押さえ、ひとつ息を吐いた。

「ミリオ。それは私としては反対です。」

「なぜ⁉」

「いいですか。そういう命を捨てる、命を縮めることには、先の短い人生の先輩がまだ先の人生がある若者達のために前に立つべきだと私は考えているからです。君が真っ先にその手段を選べない作戦に挙手したなら、私がどんな手を使ってでも阻止して、私がその役目を果たしますから。」

「なっ…、そんな…⁉」

「舐めない方がいい。いくら加齢による肉体の衰えがあろうとそれを補って余りある年の功に経験の浅い若人が勝てる見込みが薄いのに、後先考えずにどうして未知の敵がいる危険な最前線から命を落とさず五体満足で帰ってこれると自信を持てるのですか?」

「うっ…。」

「多くの年寄は、先が短いと分かっていても生にしがみつく者も多いでしょう。それは若い者も同じことです。ただ、老い者が醜く生にしがみついて、世の中を知らない若者が率先して死ぬような状況には絶対にさせません。ミリオ。あなたのその誓いが完全に間違っているとはいいません。ですが……、私のようにあなたのように先のある若者が危険に身を投じることを良しとしない人間が少なくないことを忘れないでください。そして頼るべき人間を見抜き、より良い選択肢を選べる環境を作ること。少しでも早く災いから人々を救う近い道を見つけるには、ひとりでは絶対無理だということを覚えて起きなさい。その倒しても倒しても終わらない災いのような敵を倒す手段を探すのも、それを実行する組織があって戦闘で得た調査記録を解析して研究する担当部署と専門家達がいたんじゃないですか?」

「あっ! ありました! いました!」

「でしょう? ですから…、先ほどの誓いは早計ですよ、ミリオ。あなたひとりが最前線に向かうだけじゃダメです。」

「うぅ…すみません、サー…。」

 落ち込む通形に、ナイトアイは微かに微笑んだ。

「若いのですから失敗は何度でもするもの。これもひとつの経験値としてこれからのあなたのヒーローとして在り方にどう活かすか考える糧にしなさい。」

「…俺、こんなんじゃ全然№1に最も近い男なんて呼ばれちゃいけない気がしてきました。申し訳なくて。」

「実力があるのは本当なんですから、好きに言わせておけばいいんですよ。」

「うう…。情けない。」

「ザギが見せた体験世界の経験で精神が疲弊しているんでしょう。インターンを続けるにしても、学業を続けるためにも適度に休みなさい。必要ならカウンセラーを頼るのも選択肢に入れなさい。」

「はい…。」

「長々と話してしまいましたが…、ひとまずインターンでの任務の内容は少し控えめにして継続するとしましょう。」

「あの…、俺、二人の指導を…。」

「それについても計画表を作りますから。」

「はい!」

 通形の顔に笑顔が戻り、声にも張りが戻った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 通形が病院から戻てくるまでの間の話。

 

「ザギ……、先輩になにを体験させたの?」

『〔……〕』

「ねえ、ザギ。君は…、僕の記憶を見てる?」

『〔?〕』

「もしかして見ないでいた? 見られているならもっと違う行動をしてたと想像できるから、やっぱり見てなかったんだね。」

 出久はザギの挙動から彼が出久の記憶を覗き見していないと理解した。

 幼い頃はヒーローにさせないために記憶をいじっていたことを踏まえると出久の記憶を覗き見ることはいつでも可能なはずだ。

 だがそれを最近ではしていないらしい。

 恐らくザギの存在を出久が認識してから見なくなったと出久は考える。

 だから、出久がザギの過去を夢で見たことをザギは知らない。

 出久はザギの顔を見上げてまっすぐその赤い目を見つめた。

「僕は…、君の過去を……何をやってきたのかを…眠るたびに夢で見たよ。」

『〔!〕』

「知られたくなったよね? ずっと自分のことを話したがらなかったんだから…、そうだよね、あんな……あんな…こと……、何回も何回も…強くなるために…。」

『〔お、オレは……〕』

「うん。君が強くなるにはそれが一番良い方法だったんだ。あのスペースビーストって怪物も……、進化するために恐怖と絶望の感情を引き出すために……。だからスペースビーストを支配する力を手に入れた君にも同じことができたから、同じことをしてたくさんの屍の山を作り続けて、星ごと滅ぼすことだって躊躇がなかった。全部…、そう全部……、君にとって一番憎い相手…、君が造られた理由になったノアに勝つために。」

『〔いつから……、いつからオレの記憶が…〕』

「割と最近だよ。全部っていうか、ダイジェストって感じで、重要な箇所だけ夢で見た。君がついに見つけたノアと戦ってノアが放った技…かなにかで二人とも消えてしまったところぐらいまで…。」

『〔ああ…。まったく…忌々しい…!〕』

 ザギがホログラムの姿のまま片手で額を抑え、忌々しいと声を荒げる。

『〔あそこでノア・ファイナルを使って実質相打ちに持ち込みやがって…! 宇宙丸ごと巻き込む大技じゃあ逃げ場がねえ! まあ…そのかげでアイツも大幅に消耗してまともに動けなくなったがな…〕』

「ノアって…、本当に神様みたいに強かったんだね?」

『〔光の巨人族どもが、奇跡の使者だの、本当にいるかどうか存在がハッキリしていないような伝説で語り継いでいるような奴だ。光の巨人が他の時空に移動する時に他数人の仲間の力をかき集めてやっとこさできることを、アイツはひとりで自由にできるって反則級だ。それと確か30万年以上は生きているって聞いたな…〕』

「さんじゅうまん…⁉」

 ザギから聞いていた光の巨人達の視点から見ても、いかにノアが規格外な存在であるかがザギの語り口から分かった。

『〔それでも正確な情報じゃない。奴はどこから来たのか、どれくらいの力を持つのか、普段はどこで何やってんのか、そもそも光の巨人と同類かどうかも何も分からない謎だらけだからな。そんな野郎を再現しようとしてもできるわけねーな。ったく…〕』

 ザギは、自分を造った創造主達の浅はかさを嘲った。

 外見の再現もイージスだけは無理だったことや、力を近づけるために予定外のことが発生する可能性がある自己進化能力をつけたのだ。それが結果的に自分達の望むノアの形から遥か遠ざけたのだから彼らの行いが愚かで浅はかだったとザギは思い出してクスクス笑う。

「…それでも。」

 出久が俯いて、声が少し弱くなる。

 ザギが出久を見た。

「それでも君は…、強くなる手段は酷かったけど……、ノアを見つけて戦った。」

『〔……完敗だったがな〕』

「うん…。悔しかったよね?」

『〔……〕』

「自分なりのやり方で強くなり続けて……、君はノアの身代わりじゃない何かになろうとノアを探して挑んだ。君は、誰よりも相手を恐怖や絶望に陥れることに長けている。スペースビーストの性質を利用して自分を強くさせるために身に着けた。君はそれに対して罪悪感も後悔も持たなかった。だってそういう感情が必要ないからそんなことを考えて感じることがなかったから。そうして二回目の戦いで……、君が苦しめてきた別の地球の人間達の希望がノアを完全復活させて、君は圧倒的な差をつけられて負けた。君がやってきたことが逆にノアをパワーアップさせたって……、まるで因果が巡って君が犯した罪が罰として還ってきたように。」

『〔……愚かだろう?〕』

「僕は…、ザギに返しきれない恩があるよ。君がいたからヒーローなりたいって夢への道を歩けるようなれた。君がくれた力で誰かを助けることができるようになった。君のことを知って、井の中の蛙大海を知らずって諺の意味をよーく理解した。僕は……、僕だけは君の罪を許したいって誓いたい。もう分離できないから一蓮托生だってことも受け入れてずっと一緒にいることも。その気持ちは嘘じゃないってこと。嘘にしなくないことを。どうすれば現実にできるかって、君の過去を夢に見て考えてた。君に……、僕は何をしてあげられるか、もらってばかりで何をお返しできるかって、考えてた。何も思いつかないけど、考えてる。僕みたいなちっぽけでロクなこともできない木偶の坊が……、君のために何かしたいって思うのは、命知らずで愚かだと思う?」

『〔出久…〕』

「どうすれば、ザギのために、ザギが喜ぶことをしてあげられるかって……、考えてるよ。もしかして…迷惑かなぁ?」

 出久が困ったように笑うと、ザギはブンブンと首を横に振った。

 先ほどまで過去の積み重ね過ぎた大罪によって力を手に入れてもノアに完全に負けたことに荒れていた様子はない。

 正座して親の言葉に怖々としている幼い子供のようだ。

「君の罪を…受け止めるって決めたのに……、心が、体が引き裂かれるかと思った。あんな……あんなことを…。見ているだけなのに。自分が壊れそうだって…感じるほど辛かった…!」

 出久は自分の胸。心臓の辺りを片手で鷲掴み、ザギの過去の行いを見た時の衝撃と苦痛を思い出して耐えていた。

 正常な思考と地球基準の常識の人間があれを見たら恐らく耐えられない。それほどの惨い過去の出来事。

 出久が耐えられたのは、出久とザギがもう分離が不可能な状態だからかもしれない。

 いっそ狂った方が楽になるんじゃないかと考えるほどの血まみれのザギの過去。

 仮に地獄に堕ちていくら罰を与えても足りないほど奪ったものの多さ。命を奪うまでに与えた苦痛。

 理由があったからなんて言い訳では済まされない。

 しかしそれでも出久は自分だけはザギを許したいと願う。

 ザギから自分の夢が叶う力をもらった恩があるか。ザギの苦しみに触れたから。ザギと一緒に生きると決意したから。

「それでも……、君が過去に何をやったのかを知っても……、僕は……、君と一緒にいられたらって、自分勝手に思っちゃうんだ! きっとこの世の誰もが君は裁かれるべきだって口を揃えて言われるほどのことをしてる。僕だって言う側になる。絶対なる。でも……、僕だけは、君を許したいって気持ちが僕にはあって…。ごめん。ごめんね…。どう伝えたらいいか……、どうしようもない役立たずの木偶の坊で…。」

 出久は言葉にして上手く伝えらえれないもどかしさと、心と頭の中の混乱で涙をボロボロ零した。

 そんな出久をザギは見ていた。

 言葉を聞き逃さないよう聴力を全力で使っていた。

 ザギは、出久に近寄り涙を流す出久の肩に自分の額を乗せるように上体をもたれかからせた。

 ホログラムだから重さも感触もない。だから出久の体をすり抜けるのだが、ザギがその体勢を維持している。

「ザギ?」

 涙でグシャグチャの出久が顔を上げて自分の肩に頭を乗せる仕草をしているザギを見た。

 その行動が何を意味するのか。出久には分からなかった。

 だが……、悪い意味ではないことをなんとなく理解した。

 実体のないホログラムでなければ、腕を力いっぱい回して力いっぱい抱きしめたい。けれどそれはできない。

 出久の右目から左目より多く涙が零れだした。

「ザギ? 泣いてるの?」

 自分の右目から涙が勝手に出る現象がザギの感情からくるものだと理解していたから出久はザギに努めて優しい声音で聞いた。

 ザギは、出久の肩に頭を乗せたまま、軽く首を横に振った。

 自分でも分からないという意味だろう。

 

 

 〔確かに出久の頭の中を覗くことはなくなっていた……。オレの存在を知られ…、ヒーローにさせない未来が確定されているから必要ないと感じた。それだけだ。オレの記憶が流れていたとはな……〕

 

 

 たまたま轟にザギの記憶の一部が流れ着いているのだからザギが直接宿っている出久にザギの記憶が見える状態にならないとは限らないのだ。

 あれほど最初は出久に知られたくないと考えていた自分の過去の行いをあっさり知られて、スッキリと、そのせいで出久に心身を引き裂かれる思いをさせてしまった罪悪感も同時に湧き上がる。

 自分の過去の行いを受けてもらえたことに対する湧き上がるこの感情の意味をザギにはうまく理解できない。

 出久なりに必死にザギと向き合い、ザギのためにできることを考え続けている。

 それが……、それを自分(ザギ)のためにしてもらえることに対して感じる感情が……。

 

 

 嬉しい

 喜び

 

 

 そう分類できる感情だとザギは知らない。

 孤独なまま他者を喰いつくして滅ぼして強くなり続けたザギ。他者と接するのは自分のご馳走に仕上げるまでの下準備に過ぎず、別の地球で完全な復活のために人間を乗っ取って仲間のふりをしていた時も表面上の人付き合いをして信頼を得て自分が行動をしやすくしただけで自分に向けられる感情なんて相手の心情から動きを予測する要素にとしてしか認識していなかった。

 完全復活を果たした時の解放感と満ち足りた感覚は味わった。

 だがそのすぐあとに、次のデュナミストとして力を引き継いだ男が光の巨人に変身して戦いに発展した。

 その最中に復活のために利用した記憶消去装置だったレーテから漏れ出た記憶を取り戻した地球人達が恐怖の記憶と一緒に光の巨人に救われた記憶を思い出し、恐怖と絶望の感情が光の巨人へ向ける感謝と希望に転換し、不完全だった光の巨人を真の姿であるノアとして完全復活させた。

 そしてノアの復活に繋がった希望は、ザギを軽く上回る力の差をも生み、ザギは圧倒的な差でノアに完全敗北した。

 何度思い出しても己の手で己の体を引き裂いても足りない悔しさがこみ上げるが、同時にもうどうでもいいという虚しさが心を大きく蝕んだ大敗だった。

 あの時…、出久に見つけてもらえなければ…。

 あの時…、出久に自分がノアの模造ではなくザギはザギだと認められなければ…。

 

 

 〔欲深さに底はないな……。我ながら…〕

 

 

 4歳の出久から満たされただけでのお釣りが大量に出るほどのものを出久からもらえた。

 だがザギの存在を認識されてから、もっと…もっと…っと、満たされる快感は底なしに満タンにはならない。

 自分がどこかの星で知的生命体にその欲望を逆利用して言葉巧みに陥れて自分の餌に仕上げてから殺したことだって数えきれない。

 自分が今、自分が陥れて側の心情になっているという皮肉。

 悪いことをすればその罰を受ける。そんな因果が巡って自分に還ってくる教訓は知的生命体のいた星に形は違えど似通ったものが存在していた。

 自分が犯した罪の罰は、ノアに完全な敗北で還ってきたかもしれない。表向きは。

 だが、それだけで償えるほどの罪が多すぎる。

 今の自分は、関係のない出久と同化していて分裂は不可能で、ザギになにかあれば必然的に出久も巻き込まれる関係にある。

 だからザギは改めて心の内で決める。

 

 

 〔オレのせいで…、出久が不幸にも地獄にも堕ちさせるわけにはいかない〕

 

 

 ウルトラ一族には、その気になれば短命な他者に自分の命を譲渡して蘇生や回復を術を持っている。

 それは長命な自分達の命をドブに捨てる行為にも等しいし、無駄に終わる可能性も少なくないがそれでもやるのがアイツらだとザギは認識している。

 なにせあの星の長い長い歴史で悪に堕ちたウルトラマンがひとり二人程度しかいないというほどだ。覚悟ガンギマリ過ぎてある意味で恐怖だ。

 風の便りで耳にした別のルーツで生まれたウルトラマンは、個人差や存在意義の都合で何らかの危ない問題があったりするようなので光の国のウルトラマンとは別物と考えていいかもしれないが。

 それは置いといて、今のザギなら出久のためになら宇宙を永遠に呪うことも厭わないし、なんなら自分の命を譲渡して自分を消滅させてしまっても構わないと考えている。

 

 

 〔一緒にいたいと出久は望んでいるのに……、それを反故にしたら……〕

 

 

 きっと出久は泣いてしまうだろう。

 それが容易に想像できてしまうが、ザギの考えは変わらない。

 それが最善だとザギが信じているから。

 

 

 




通形がどういう形で疑似世界で体験した悲劇と苦痛とトラウマを自分のヒーローとしての在り方に活かすかを考えて考えて……。
師であるナイトアイとの会話で今の段階での自分なりの答えを語るけど、ナイトアイはそれをするなら自分が何が何でも止める側に回って自分や老いたベテランが最前線に向かうと語る。
実際に起こった世界大戦末期に若者達が負け戦と分かっている上層部の特攻作戦のために散って行った歴史を踏まえてのナイトアイの発言だったのですが、分かりにくいですねこれ…。
通形に犠牲になってほしくないのもありますが、通形を含めた若い種が先に散ってしまう風潮や環境にしたくないのがナイトアイの考えがあって覚悟を決めようとする通形を引き留めるような発言をしたりしたというか…、難しいですね。


出久とザギの方は、出久がザギの過去の行いを夢で見たことを告白。
そしてザギが出久の記憶を覗き見しなくなっていることを指摘したときのザギの挙動で確証を得た。
ザギが誰にも許されないほどの罪を重ねたことを知ってなお、自分だけはザギを許したい、一緒にいたい(分離不可なことも踏まえて)、力をくれたことに対して何かお返しをしたいことを伝える。
でもどうすれば強すぎるザギにちっぽけで弱い自分がザギのために何ができるか分からず感情がグチャグチャ。
一方のザギは、自分のことをそこまで考えてくれている出久に対しての感情が湧くけど、その感情がなんなのかいまいち理解してない。
ずっとひとりで手段を選ばず強くなり続けた反動で出久から疑似的に感情を得ているとはいえ感情の種類や意味を理解できていない。
相手を陥れて喰って思い通りに力を得られた時の感情とは似て非なるものだと思うので。
今のザギにとっては、出久が最優先にすべき対象だから自分がどうなろうと別に構わないとさえ考えているけど……、出久を泣かしたくないけど、やっぱり自分を捨てる必要があるならやる気満々。
両者の気持ちの理解をしつつ、すれ違いになってるかな?
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