すごいお待たせしました!
待ってた人いるのかな……。こんな駄作…。
今回は、進展してません。いつものこと…。
神野事件から原作を一気に脱線したので、全然進展しない!
それでもOKって方だけどうぞ。
いいですね?
サー・ナイトアイの事務所内には、今現在甘い果実の香りがしている。
りんご以外の物も混じった甘く酸っぱい匂いの根源は食堂からだ。
「黒い巨人さん、…美味しい?」
食堂の椅子に座った6歳児の壊理が隣で果実に齧りついているザギに声をかける。
その様子に恐怖心はなく、小さい女の子なりに無邪気ながら気遣いをしているように見える。
彼女が言う黒い巨人さんとはザギのことだ。正確には彼女の隣の椅子に座って果物を食べまくっているのは、出久の体を借りて表層化したザギである。
なので髪の色が黒くなり、目の色は赤く染まり、顔や首などの見える肌にザギの赤い模様が浮かんでいる状態だ。
皮も種も取らないでそのままの状態の果実を手掴みで齧り、咀嚼し、口の周りや腿、机の上を果汁まみれにしている様は人間よりも熊などの獣のような印象がある。
ブドウなどは、粒だけじゃなく粒と繋がった部分まで喰う。最初見られたときはギョッとされたし、そこは食べなくていいと言われたがザギは聞く耳持たない。人間にとっての可食部ではない部分はザギには関係ないらしい。家畜の肉だって骨ごと喰っていたのだから今更なのだろう。
ナイトアイが根津に伝え、そして流通経路や果物の確保の手続き諸々をザギ担当を任させるために国が立ち上げた専門組織が整えてくれたのでインターンが始まって数日とせずに事務所内に果物の甘い匂いが立ち込める状態になった。
基本肉食であるらしいザギであるが実は出久に宿った時からエネルギー不足による飢餓状態にあり、それを紛らわせるために家畜の肉や内臓を食べていたが、エネルギーの補充にならないことから味に飽きてしまった。
そんな時に壊理のために彼女の好物だというりんごをふるまうこととなったのだが、そのりんごにザギの食欲が刺激されたのだ。
そして箱詰めされていた十個以上のりんごを全て平らげた。普通なら残す芯と種もヘタも残さずだ。
この光景を目の当たりにしたナイトアイは、すぐに自分の頭をフル回転させ、りんご……、つまり果物と分類される食材をザギが欲していると推理した。
そうして自分が築いてきた人脈を使い、翌日の朝一で市場から旬の果物と輸入品の様々な果物を事務所に届けさせた。
そしてザギに試してもらった結果を根津に報告し、根津がザギのことを担当する国の組織に連絡してザギに果物が渡る体制をすぐに構築したのだった。
ザギが取り寄せた果物を食べまくるものだからすっかり事務所内に果物の甘い匂いが充満することになったのである。換気はしているがそれ以上に食べる量が多いせいか匂いの除去が追いつかない。
事務所のサイドキックや事務員などが食べる量を見て、胃袋どうなってるんだ?っと純粋な疑問と出久の体の心配をしているほどだ。
あらかた食べ終えるとザギは引っ込んで出久に意識が浮上する。エネルギー摂取に必死なザギを優先して出久が肉体の主導権をザギに渡しているから出久は口の周りや両手が果汁でベチャベチャになってもザギが一生懸命食べたんだと軽く受け止めて嬉しそう。
壊理がお手拭きを渡すと出久はお礼を言って口周りと手を拭き、果汁が飛び散って汚したテーブルも布巾で拭いて掃除した。
「お腹、平気ですか?」
「だいじょうぶ。食べた分はザギがすぐにエネルギーに変換してるらしいからお腹が膨らまないんだ。」
「それって…、お腹いっぱいにならないの?」
壊理が首をかしげて聞くと出久は頷く。途端、壊理は心配そうな顔をする。
「じゃあ、ずーっとお腹ペコペコ?」
「ザギは、大きいからね。本当は全然足りないけど、何も食べないよりはマシなんだってさ。ずっと我慢してたから少しでも満足感があって助かってるみたい。ザギは、自分のペースでやりたいって言ってるから、だから壊理ちゃんが自分の分を分けてくれなくてだいじょうぶだから。」
壊理に食べさせるために箱ごとりんごを見せた時にそのりんごを全部ザギが食べてから壊理は気を遣って、自分に提供される食事に果物がつくと出久に渡してこようとするようになったのだ。好物のりんごでも、缶詰のみかんや黄桃などでもだ。
缶詰の果物については、ザギが加工品より生のがいいと言って断っている。
出久も出久で食べ盛りの子供に食事を分けてもらうのはさすがに気が引けるし、無理に気を遣わせるのは体に障るからと出久もやんわり断るようにしているが壊理が何かとザギを気にするし、出久にも懐いてやっぱり気を遣おうとする。
こうしてやたら気を遣おうとするのは、あのペストマスクとの男の元に返されるかもしれないという潜在的不安と、無意識であるが媚びることで周囲に自分の価値を見出させて居場所を作るという自己防衛しているのではないかと事務所の医者やカウンセラー資格持ちの事務所職員が診ている。
まだ6歳程度で知識も経験も少なく、保護した時にもう体中……、両手両足、首など見える個所を包帯で覆って隠さなければならないほど大量の新しい縫い傷が白い入院着のような服の下にまで大量に残っていたことや最初に事務所常駐の医師が対応したときにトラウマから酷いパニック状態に陥ったことを考えると当たっている可能性が高い。つまり心の傷から来る自分を守ろうとする本能が無意識に彼女をそう突き動かしているということだ。
どれだけ肉体の治療をして傷は無くなっても心の傷と傷を負わされた時の辛い記憶は色濃く残っている。しかも幼い子供であるから余計に無意識でも心を許せると判断できた大人に媚びる……、必死に気を遣うという子供らしくない行動として現れているということだ。
こればかりは専門家の治療と時間経過で和らぐのを待つのと、専門家の指導のもとで辛い記憶を上書きするように楽しくて良い経験を積んで過ごせばなんとかなるかもしれないが、大人になった時に何らかの形で人格面に大きな影響を与えて歪ませる可能性がある。だから壊理自身の努力だけじゃなく、周りのフォローも必要となるだろう。
「ただいまー!」
「通形先輩。」
そこへ通形がパトロールから戻ってきた。
事務所へのパトロール中の報告も終わらせて、すぐに壊理と出久がいる食堂に駆け込んできたのだ。
「お、おかえりなさい…。」
「うん! ただいま! 壊理ちゃん、お昼ごはん食べれた?」
「ちょっと…残した…。」
「うんうん! だいじょうぶ! 食べれないのに無理して食べるのは苦しいからね! 俺もオーバーワークして食べなきゃならないのにほとんど食べれなくなって先生やサーにもメッチャ怒られまくったし、壊理ちゃんくらいの頃も早く大きくなりたいって思って無理してたくさん食べてゲーゲーしっちゃったこともあるよ! なんでも無理は禁物さ! でも、ご飯食べたのは偉いよ!」
まだちょっとオドオドしてしまう壊理の頭を撫で、通形は笑顔で壊理が食事を少し残したがほぼ食べれたことを褒めた。
それから通形は出久に顔を向ける。
「ザギは満足してるかい?」
「う~ん…、全然足りないけど、お肉よりはマシって感じてるみたいです。」
「あれだけ大きかったら仕方ないか…。」
本当の大きさが50メートルだから、ちょっとやそっとの量じゃエネルギーを満タンにはできないだろう。
本当に食べたいものが食べれないから代替え品として果物を食べてるだけだから仕方がない。微量であるがエネルギーが得られるから満足感を少し得られるから、血肉の味だけを味わう嗜好品にしていた家畜の肉や内臓よりはずっと良いようだ。
複雑な感情を持つ知的生命体を生きたまま食べたくても、ザギの味覚基準だとこの地球の人間はゲロ不味すぎて頑張っても喰えないから……。
「先輩、ナイトアイは…。」
「サーは忙しくしてるよ。今日もあっち、こっちってやることがあって定時までに帰ってこないかもしれない。」
「そうですか…。」
「もどかしいけれど俺達はまだ本当の意味でプロじゃないし、そこまで詳細に事件の調査に関われる権限がないから我慢して待つしかないんだ。インターン制でサイドキックと同等扱いだけど免許の関係で……。」
「分かってるつもりですけど、こうして実戦になったら、いつでも動けるように待機しておくのも大事ですよね。」
「そう! いざって時にいつでも動けるようにするのもヒーローには超重要なことさ! 耐え忍ぶのも立派な仕事になる時だってある!」
「さすがです! 先輩はナイトアイのもとで長いんですか?」
「そう! すっごくお世話になってるからね! 僕がここまで来れたのはサーのおかげだから、必ずその期待に応えたいって思ってるよ!」
「ぼ、僕とザギだって負けません!」
「うん! だからどーんと真っ向から来い!」
「待って待って! それで初日の夜に大変なことになったじゃないですか!!」
「あれは……、俺が未熟だった! 猛省してるし、今後の課題にもなったからザギには感謝してる!」
「前向きー--⁉」
ザギに何を見せられて、疑似体験させられたのかをだいたい把握している出久は前向きに自分の課題としてしまう通形の前向きさに驚く。
これほどの前向きさも精神性も№1ヒーローに最も近いと相澤達からもお墨付きをもらうほどの要素なのだろう。
……間違いなく心に消えない傷になっているはずなのに。
『〔あの程度じゃ折れないか…〕』
「折ろうとしないで⁉」
「例え折れてもいくらでも元に戻るよ! どんと来い!」
「先輩も乗らないで!」
いつの間にか出てきてたザギのホログラムの呟きを聞いて出久は思わず声を上げて制止したが軽い調子でザギの言葉に乗っかるようなことを言う通形にツッコミを入れた。
元々職業ヒーロー嫌いも相まって通形への好感度はマイナスなのもあって意地悪でザギが過去に経験し、記憶していた情報をもとにしたスペースビーストと別の地球での人類の手段を選べない生き残りをかけた戦いを疑似体験させたが結果論であるが通形は打ちのめされて深く深く傷ついても立ち上がって見せた若き逸材だった。
ザギの評価であるが確かにこの地球での職業ヒーローの№1をやっていたオールマイトの座に据えても問題ない肉体の強さと精神性を持ち合わせているし、光の巨人達が好みそうな思考回路や生き方をしている。
もし……、自分が完敗したあの地球にこの男がいたら?
そんな過ぎたことのIFをつい考えてしまうが、それほどの逸材だ。あまり時間が経ってないが見れば見るほどそんなことを考えるぐらいに。
デュナミストになっていたか、デュナミストにならずとも違う形でデュナミストと光の巨人の力になるために力を発揮していたかもしれない。最後のデュナミストとなったあの男もデュナミスト達を間近で見て、ザギの手で死んでいながら生きているように見せかけた状態で利用されていた恋人の真実を目の当たりにしても立ち上がり、凪が予定通りデュナミストとなれば予定通り絶望に堕としてエネルギーを根こそぎ奪われたあとの価値が無くなった凪を救い出した。
何度転んでも立ち上がり、泣いても笑い、諦めない心を持ち続けた結果最後に光を受け継いでノアの完全復活の触媒となった。過程を経て築き上げた絆が地球上に散らばった全てのスペースビーストを弱体化させる大きな希望を生み出した。絶望が希望に転換すること。諦めずに絶望に屈さななければスペースビーストに負けないという事実にも行きついたのだ。
あの男とは全く違う経歴や性格をしているが、通形のこの不屈さは過去に光の巨人達と関わった人間に通じるものがある。どん底から堕ちても戦い、どれだけ転んで傷ついても立ち上がり、ザギを倒した英雄達に。
そうしてザギがイライラしていたが、ふとある考えが浮かんだ。
〔出久がヒーローデビュー時に十分すぎるほどコイツ(通形)が有名になっていれば、出久がすぐに引退しても大して影響なく済ませられるか?〕
今の段階で最も№1ヒーローに近いとプロヒーローに認知されるぐらいに実力があるのだ。だったらすでに引退したオールマイトの代わりが務まるはずだ。
ザギが見た未来予知に通形の姿はなかった。つまり通形をどういう形でトップに据えられるし、出久はヒーローになる未来は確定していたが№1ヒーローにならない。
出久の理想としてはきっと上れるだけ上りたいだろうが、ザギは出久をヒーローでいさせたくない。
だったら通形を目立たせて、出久のデビューも即引退も公の場で広まる前に終わらせればいいのではないか?
A組の学級委員に飯田を据えて目立たせたり面倒事を避けさせたように。
〔っとすれば……、この男をみすみす死なせるのも再起不能にするのも得策じゃない。なんとしてでも№1ヒーローの座につかせて、しっかり支持を集めさせるか〕
ザギの記憶から作った仮想体験で通形を再起不能にしかけたことを棚に上げて、ザギは通形をオールマイトに変わる超目立つ№1の座に据えようと考える。
そうすることで出久がプロデビューして即引退となっても差ほど影響はなくなると考えてだ。
〔……なら、暴かれない八百長があって、あいつ(通形)が№1にさせた方が都合良い〕
ザギは、ふと壊理を見た。
壊理は、その視線に気づいてない。
〔ちょうどいい、大手柄が目先にあるじゃないか〕
思い浮かぶのは、あのペストマスクを口に着けた男。
壊理に非人道的な所業をした反社会勢力の指揮官だ。
壊理の記憶を読み取った際に得た情報はすでにナイトアイに伝えてある。
あとはナイトアイが準備を整え、あのペストマスクの男こと、治崎の根城に捜査令状を出せばことが動く。
病的で破滅的な思想家は何が何でも逃げようとするだろう。研究で得た物を抱えて逃げることは分かっている。
なにより己の野望に不可欠な素材となる壊理がこちら側にいる。だとすれば何が何でも壊理を取り戻したいはずだ。
だがここはヒーローの事務所。それも元№1ヒーローの元サイドキックの事務所だ。
簡単に手出しできないし、更に情報捜索によるヒーロー活動を主としているため下手に動けない。
おまけに、ザギが壊理を保護したことは治崎の前で明らかにした。だから余計に物理的な強硬手段に打っては来れない。
少しばかり脅かしすぎたとザギは、ため息が出そうになった。
向こうが来てくれて、今の段階ですでに№1ヒーローに最も近い男とプロヒーローから認められている通形が大金星を挙げれば、№1ヒーローとしての足場は盤石となるのに。
その過程で少しばかり手を貸して、仕上げは通形がすればいい。それで十分だ。
そうして通形が社会から脚光を浴びている陰で出久がプロヒーローとなってすぐ引退しても影響は残らないはず。
そのあとは……、ザギが見た未来予知による制限は消える。
不用意に未来を見なければ運命の確定もしない。自由になる。
〔その方が出久を守りやすい。それがいい。それが一番だ〕
どうでもいい。ザギにとっては。
ヒーローも。非人道的行為で地獄を体験した幼子も。今の世を憂いて危険思想に染まった男の野望も。それを止めるために動く正義も。
例え、それが出久にとって望まぬことであっても、ザギにとっては出久以外はどうでもいいのだ。
なのに……。
「……あの…。」
「どうしたの? 壊理ちゃん?」
「ザギさん…が……。」
「えっ? ザギ? どうかした? ザギ?」
『〔……ん?〕』
「もしかしてボーっとしてた? それとも考え事? 調子悪いとかで、しんどかったら無理して出てなくていいよ?」
『〔……〕』
「う~ん…、好きにするのがいいけど、無理はしちゃだめだよ?」
ザギは腕組してそっぽを向き、出久は苦笑しながらそう声をかけた。
〔気にかける必要があるのか? オレが確定させた未来が実現するまでの単なる足掛かりだ。そうだろう? 本当に……、何を気にする必要がある? あのガキが味わった以上のことをこの手でやってきただろうが。文字通り、星の数ほど〕
壊理を抱きかかえた時に読み取った壊理が味わった地獄の記憶。
そのせいか妙に壊理が気がかりな感じがする。
おかしい。過去にそれ以上のことをして、喰らって、滅ぼしてきたくせに……、今更?
救う余地のないほど罪を積み上げすぎた大罪人の罪が、ちっぽけなひとりの子供を救うだけで何か変わるわけがないがないというのに。
その日の夕方、ついに動きがあった。
焦りからだろう。治崎が事を起こしたのだ。
全然進展してなくて申し訳ない…。
ヴィラン連合を早々に退場させたから盛り上がりが上手くできず…。自分の執筆力の無さに絶望中。
とりあえず最後の方で治崎がついに動き出したという流れにはしました。
狙いは壊理ちゃんですが、治崎本人が来ているかと言ったら……?
ナイトアイは、捜査令状とかの準備のために奔走中。
ザギからもらった情報をもとに証拠集めや、各機関との連携とかに忙しい。
まだプロヒーローじゃない出久と通形は、制度の都合で参加資格がないため待機中。
主にパトロールと、空いた時間に壊理ちゃんのケアのために動いている。
壊理ちゃんの身の上を考えたら、そんな目に遭った子供がどう動くかは完全に想像です。
現実の心理学や実際にあった事とは違うと思いますが、壊理ちゃんは治崎のもとに返されるかもという恐怖から無意識に出久達に媚びる行動をしているということにしました。必要とされれば返されずに済むと。
でも無理に止めさせると精神状態が悪化する恐れがあるので様子を見ている感じ。
ザギは、何やら変化が生じているがそれが無意味だと自分に言い聞かせている。
壊理の身に起ったこと以上のことを過去に数えきれないほどやって悪党なのに、今更と。