本編から外れるとここまで苦戦するとは!
入院前にこれだけは書き上げたくて頑張った。
今回もオリジナル回。
治崎編のその後。
おや? ザギの様子が?
それでもOKって方だけどうぞ。
いいですね。
「……やっぱりダメかい?」
『〔喰うくらいなら地球を瓦割りする〕』
「相変わらず断固拒否の限界レベル突破だねーーー!!」
根津からの頼みを速攻拒否しつつ、脅しも付け加えるザギに机を殴る根津。
隣にいるナイトアイも眼鏡を押さえて項垂れていた。こうなることは分かっていたが、それ以外に方法が考え付かなかったため、一応……少し希望を持って頼んでみた結果がこれだった。
***
治崎が指揮していた指定ヴィラン組織・死穢八斎會は、事実上の解散・消滅となった。
女児への虐待疑惑から始まり、個性破壊弾という個性を消し去って無個性にする兵器の開発と試作品の実験のために女児を人体実験に利用し、試作品の一部を裏社会に流通させた事件は想像以上の速さで解決した。
首謀者でった治崎は、逮捕後に数十日後に行われる裁判の場に連れ出されるまでの間に何があったのか、廃人も同然のような有様になる。
何があったのかはごく一部の者しか知らない。
死穢八斎會の組長は、今も病院で眠っている。回復の見込みはほぼない。
治崎と同じ思想の過激派のコミュニティの存在は、ザギの考えた通りに存在したらしく海外の犯罪捜査機関を通じて情報を共有し、一部逃走した者達が出たが逮捕者が続出したことでこれまで通りの活動は不可能になった。
個性破壊弾の研究データがすべてではないが、一部そのコミュニティで共有されており、世界中で個性破壊弾の量産を行うための方法を研究していたことが判明し、詳細な部分はかなり伏せられた状態で報道され世間を騒がせた。
個性を消すことができる兵器の存在を知り、日本でも少しばかり落ち着いたと思われていた個性を無くしたい派閥がまた活気づき、そんなものがあったのかと喰いつく者もいたようだが、様々な手段でその内容を知るとあまりの惨さにさすがに青ざめて、とてもじゃないがこんなことをしてまで……と考えに至り、自分の個性と向き合いながら生きる道を選ぶようになる者達が現れるようになり、半数が派閥から離れていったらしい。
だが個性破壊弾に頼らなくてもザギの頼めば…という思考になるため、いまだに完全解散はできなさそうだ。
話は戻る。
事件解決はしたのだが雄英のビッグ3のひとりだった最も№1ヒーローに近いとプロヒーロー達にも認知されていた通形ミリオが無個性になってしまった。
治崎との戦闘で治崎が個性破壊弾の完成版を使用したからだ。
だが通形は一切屈さなかった。
個性破壊弾の素材として生きたまま体を切り刻まれる惨い仕打ちを受けていた壊理という少女は、酷く責任を感じて精神が壊れるのではないかというほど追い詰められた。
しかし、解決は早かった。
ザギがいつの間にかコピーしていた通形の個性を通形に与えることで通形の個性はさくっと戻った。
それを壊理の前で実行したことで保護された当初からザギを救世主の様に見ていた壊理の精神は、ひとまず安定した。
『〔クソ不味いのを我慢してやったんだからな? ったく、クチバシ(治崎)が襲撃してくることを頭に入れてたなら、クチバシが個性破壊弾を持ち歩いている可能性も頭に入れとけ〕』
通形の個性を復活させた時にザギは、そうぶちくさ文句を言った。
通形は、頭を掻いて申し訳ないと何度も頭を下げつつ、苦笑していた。
ナイトアイだってその可能性を考えて警戒していた。だが治崎の人物像からヒーローの事務所に強襲するとは考えにくいという考えが先に出た。だから油断した。
まさか治崎が追い込まれていく中で、材料である壊理が手元にいないという焦りからプロヒーローの事務所に直接強襲するというあんな強行に及ぶとは……。
ザギがいなかったらどうなっていたか。想像もしたくない。
表向きには、通形ミリオことルミリオンの活躍で治崎を逮捕という大ニュースとして報じられたが、今回の事件の真の功労者はザギだ。
壊理を保護し、壊理の記憶を超能力で読み取って情報を手に入れ、保護した時に治崎を威嚇することで治崎がすぐに身動きが取れないようにした。
ザギがいたから事件は、想像を超える速さで解決したのだ。
ザギが協力する姿勢でいてくれたからできた。
どういう心境の変化だったのかは不明だが、壊理に多少なり気を配る様子が見られた。
だが懐かれることには、あまり良い気はしていないようで壊理への対応は轟とほぼ同じだ。
そんなだから轟と壊理で、ションボリコンビなんて言われる状態だ。
ところで壊理のことだが、保護者がおらず、かといって孤児院などの施設にも身を置けない。
理由はあまりにも強力で危険な個性の持ち主であることや治崎が個性を無くそうとする活動家コミュニティに情報を流していた可能性があり、彼女の個性で個性のみを消すよう調整して切り取った彼女の生きた細胞を詰めた兵器である個性破壊弾を新たに制作されるために狙われる可能性があったからだ。
そのため彼女の身を保護し、あわよくば……、ザギが個性を食べて彼女の身から除去するという流れにできたら…ということになったら…いいなということで雄英に身を置くことになった。雄英には個性を抹消して無効にできる個性の持ち主である相澤がいるのも理由に入る。万が一個性が暴走した時に対応できる人間が限られているため、雄英に身を置くのが最善だというのが表向きの答えだった。
ザギに壊理の個性『巻き戻し』を与えることについては、この個性の危険性を考えると余りにも危険な行為だという反対意見もたくさんあった。
だがそれでも食べてもらった方が良いという判断がされたのは、ザギがこれまで食べた個性をほとんど使わないことにあった。
使ったのは、確認されている限り神野区事件でオールフォーワンを驚かせたり、死柄木を絶望に堕とすためのパフォーマスンの時ぐらいだ。
プッシーキャッツのラグドールに個性を戻す際には、出久の体を通してザギに記録された個性AFOによって不変なものになったラグドールの個性をコピー貼り付けする方法で行っている。通形も同じ方法で個性を戻した。
インターンについては、治崎達の襲撃でサー・ナイトアイの事務所が破壊されたため復旧工事と、ナイトアイが治崎と繋がっていたコミュニティの追跡と逮捕のために動かなければならなくなったためインターンは、一時中止となり雄英に戻ることになった。
ザギは、出久のインターンが結果的に早く終わって鼻歌を歌いたいほど機嫌が良かったが、戻ってきたら壊理がいたので盛り上がっていた機嫌がガクッと落ち込んだ。
攻撃するほど嫌じゃないが、懐かれる理由が分からん、うざいという理由で嫌そうに避けるのだ。
「壊理ちゃんのこと嫌いってわけじゃないんだよね?」
出久がザギに問いかけるが、ザギはバツが悪そうにそっぽを向く。
暴力で排除するほど嫌ってはいないが、ベタベタ近づかれるのは嫌というのが伝わる態度だ。
「なんか…、轟のことを避けてる理由と同じっぽいな?」
「緑谷以外は、ノーサンキューなのは変わらないよな……。」
「……話に水を差すようで申し訳ないのですが。」
八百万がおずおずと小さく挙手して言った。
「フルーツが入っていると思しき箱がたくさん緑谷さんのお部屋に運ばれるのを見たのですが…、何があったのですか?」
「あ、それは…。」
『〔オレのだ。やらんぞ〕』
「あれ⁉ ザギが食い意地で威嚇って! 取らないよ⁉ いくら八百万さんの個性が食べ物の脂質が必要だからって、人の物を取ったりするなんてしないから!」
「生肉喰うのやめたんか?」
爆豪が疑わしそうに聞いてきた。
「それなんだけど…、味に飽きたんだって。果物には太陽光のエネルギーが多少含まれてるみたいで、家畜の肉や内臓より食べた時の満足感があるって分かったんだ。人工的に環境を整えた温室で育てたのより、国産なら温室で育てたのより、旬に実ったのとか、太陽光が降り注ぐ南国の海外産のがいいみたい。」
ツーンとそっぽを向くザギに代わりに出久が説明した。
「まあ、ですから箱に外国語と国旗の印が印字されていたのですね。」
「これで扉と壁の向こうから、ガリガリボリボリ、グチャグチャとか…、ホラー映画も脱兎な音聴かなくていいんだな? よかったー!」
「そんなホラーなことになってたのかよ…。よく耐えたな…。」
「仕方ねーだろ! 文句言いに行こうと思った時もあったけど、代わりにザギの喰われるよかマシだと思ったんだ!」
『〔不味すぎて喰えん〕』
「そう、不味くて喰え……、えっ?」
溜めていた文句を吐く峰田にザギが不服そうに声を漏らしたため、視線がザギに一気に集まる。
出久は慌てた。
ザギが本当は地球人を食べたいのだが、なぜか口に合わな過ぎて我慢しても無理な味だから食べないだけだということは教師達と外部の一部で秘密にされている情報だからだ。
『〔感情を持つ知的生命体の恐怖…、絶望…。捕食した方が摂取しやすいんだがなぁ……。テメーら味が悪すぎだ〕』
「もしかしてお腹すき過ぎてイライラしてる⁉」
『〔………寝たい〕』
「よし! 寝よう! しんどい時は休もう!」
これ以上は不味いと感じた出久の言葉により、ザギはホログラムを消して出久の中に引っ込んだ。
「……腹減ってんのか、あいつ。」
「うん…。エネルギーがずっと不足していて、神野区の時にオールマイトを個性を食べたりしてなんとか少し持ち直したけど…。」
「全然足りねーって? まあ…、あの大きさじゃちょっとやそっとの量じゃ完全回復には足りないか。」
「あれだけ生肉喰ってたのに⁉」
「あれは、味だけでエネルギーにはならなかったみたいなんだ。その味も飽きちゃってて…、そんな時に果物ならちょこっとだけエネルギーが取れるって分かったから…。」
「つまりザギは、ずっと絶食状態だったということか?」
「しかも栄養…ってか、エネルギーににならないってことは…、食べても食べても飲まず食わず状態?」
「そうみたい…。」
「うわっ、聞いただけで苦しそう!」
「さっき恐怖とか絶望とか言ってたよな? 感情をエネルギーにしたいのに、出来ねー状態なのか?」
「そうみたい。できるならやってるはずだし…。」
それは確かにそうなのだ。
ザギは、スペースビーストの要素を取り込んでその身に反映させているため、スペースビーストの習性が強く出ているのも原因だった。
直接エネルギーを奪い取るという荒業もできるが、あまりやらないのは効率が良くないか、それをやるだけのエネルギーが地球上にないからだ。
「それだとそのエネルギーになる感情だけ吸えれば……、解消はできない?」
「それは僕も考えて、ザギに言ってみようかと思ったんだけど、できるんだとしたら真っ先にやってるはずじゃないかって気づいた。できないってことは、体の作りの問題かな? 肉食動物が草食動物にはなれないよね?」
「人間に例えたら……、あれじゃない? ヴィーガンになったら栄養失調で餓死したって話よく聞かない?」
「あー、それ、すっげー胸糞悪い過去ニュースあって許せねぇって思ったのあったわー!」
「私も知ってる。親のせいで子供が…、本当に可哀想だったわ…。」
「あれは健康志向から始まった、過激な思想とか宗教みたいなもんだから論外だろ。ザギの問題と違くないか?」
「あれ? ザギさんは?」
そこへ壊理がやってきた。
「ごめんね。ザギは、ちょっと寝てるんだ。」
出久が膝を曲げて壊理に視線を合わせて答えた。
「そうですか…。」
壊理は、しょんぼりとして下に顔を向けてしまった。
ザギが壊理に懐かれるのを歓迎していないのでなんと言って慰めたらいいか出久は困った。
クラスメイト一同もどうしたらいいか困っている。
そこへ乱入者。
「緑谷くん緑谷くん緑谷くん!!」
「発目さん⁉」
ドタバタと寮の中に走り込んできたのは、サポート科の発目であった。なぜか背中に大きなリュックを背負っている。
彼女を追いかけて来たのか、パワーローダーと相澤が息を切らしてやってきた。
「先生達も…、どうしたんですか?」
「ああ…、そのことなんだが…。」
「聞いてくださいよ! パワードスーツの開発の段階から思いついてた案が形になりそうで! ザギさんにと思いまして!」
「えっ? ザギに?」
「ザギさんって、いつもホログラムの姿で出てきてますよね?」
「う、うん…。」
「そこで! ザギさんの意識を宿した状態で動くための仮のボディはいかがかと思いまして! ベイビー1号を制作しました!」
「マジですか⁉」
「あっ、もちろん省エネ対策は盛り盛りに盛り込んでますから! パワードスーツの開発記録が参考になりました! ただ稼働時間についてはコンセントを繋ぐか、後付けのバッテリーで賄わないといけませんのでそこまで長くは……。」
『〔気が利くな〕』
「わっ⁉」
「ザギ、寝てたんじゃ…。」
引っ込んでいたザギがホログラム姿で出てきた。
『〔それで? 持ってきたのか?〕』
「早速使いますか⁉ じゃあ、こちらを!」
目を輝かせた発目が背中に背負っていた大きなリュックに詰め込んでいたゴム人形のような、マネキンっぽいような物を引っ張り出して床に座らせた。
「いつでもどうぞ!」
パワードスーツの要領でマネキンにザギのエネルギーと情報を与えることで使用可能になるようだ。
その使い方はもう覚えているためザギは何も言わず、ホログラム姿をマネキンに重ねるようにしてマネキンに吸い込まれて消えた。
マネキンに紫電のような光が弾け、変化が始まる。
パワードスーツ姿と違い、ザギの姿形を再現するだけなのでパワードスーツとしての機能とそれを装着する出久への気遣いは必要ない。だから変形は早く済んだ。
ザギは、立ち上がり、両足を一回ずつ膝を上げ下げしたり、肩を回したり、手の動きを確認し、首を回したり、胴体を左右に振るように捻ってみたりなどして仮のボディを確かめた。
「ざ、ザギ…?」
出久に声をかけられ、ザギが出久に顔を向けた。
おずおずという感じの足取りで出久がザギに近づく。身長差がすごい。出久は小さすぎるわけではないのだが、ザギが190越えの長身だったからだ。
ホログラムではなく、実体を持つと急に圧が増す。
ザギが実体化する時は、出久の体を使っていたので出久と向き合っている姿はホログラム以外ではこれが初となる。
出久の右手がザギの顔に延ばされる。
そしてザギの頬を撫でるように優しく触れる。
「……ザギって、熱いんだね。右腕を変えてくれた時も思ったけど。」
こう見えて実は体温が高いザギ。
仮のボディのフル稼働の熱もある。偽物でもザギに実体を持たせている機能は働いているのだ。だから本来の温度も再現されていた。
感極まったように涙が目に浮かび始めた出久は、ザギの胴体に抱き着いた。
「あの時以来だ。君を抱きしめるの。…覚えてる?」
『〔……覚えてる〕』
林間合宿でザギが突然エネルギー不足で倒れ昏睡した時のことだ。
心の深層らしき場所で、とてつもない数の屍の上で血涙を流して狂うザギを出久が後ろから抱きしめて止めた。
ザギの右手が出久の頭を撫でた。その手つきは不器用だが、大切な物を扱うようなそんな風に力を抑えるのに必死になっているように見える。
「現実で、君を抱きしめることができた。発目さん。ありがとう。」
「いえいえ、できることをしただけですから!」
発目は、ニコニコしながら上手く稼働している仮初のザギのボディを見ながら答えた。
周りは、不思議な光景を見ている様子である。なんとなく空気を壊さないよう声を出さないでいた。
するとザギが壊理の方を見た。
壊理は、ビクッと小さく震えた。
そんな壊理にチョイチョイと手招きするザギ。
壊理は、手招きされるままゆっくり近づくと、ザギの動きに気づいた出久がザギから腕を放して少し距離を取った。
そしてザギが中腰になり、掬いあげるように左腕で軽々と小さい壊理の体を抱き上げて左腕に座らせた状態の抱っこをした。
「ザギ? 嫌じゃなかったの?」
『〔……ちょこまか金魚の糞されてもうざい。仮のボディでいる方がこのチビが出久にまとわらずに済む〕』
「ザギって、なんか素直じゃないんだよな。」
少し不貞腐れた様に答えつつ、壊理を落とさないようしっかり支えているザギ腕を見て出久は笑いをこらえられなかった。ザギのその態度が照れ隠しだと分かっていたからだ。
おかしくて笑っているのではない。自分以外に少しは感心を向け、自分から動いてくれたザギの行動が嬉しかったのだ。
抱っこされた壊理は、最初はキョトンとしていたが、ザギから受け入れられたと理解したようで少し泣きそうな、だが嬉しそうに笑ってザギの首にしがみついた。
「俺はダメなのか?」
「轟~? なんでそうなる~?」
「ザギと仲良くなりたいからってそれは…。」
壊理を羨ましそうに見ている轟がそんなことを言うので近くにいたクラスメイト達が思わずツッコむ。
轟は、自分だけザギから避けられているのが納得いかなくてそう言っただけだ。
それが聞こえていたザギが渋々という感じで、右手で轟に向けてこっち来いと手招きした。
まさか…っとクラスメイト一同と、発目とパワーローダーと相澤が察した。
手招きに気が付いた轟がやや駆け足で近寄るとザギは、空いている右腕で軽々と轟を抱えて壊理と同じような抱っこの仕方で腕に乗せた。
「よ…、よかったね! 轟くん!」
なんと言えば正解か分からなくなった出久がとりあえずそう言うと、抱えられた轟が出久の方を見て「おう。」と返答していた。壊理ほどあからさまじゃないが嬉しそうである。
どう反応すればいいか、周囲は何とも言えない空気になっていた。
『〔……………ん? 違ったか?〕』
ザギがふと我に返ったようにそう声に出していた。
「自分でやっといて分かっとらんかったんか⁉」
爆豪が思わず大声でツッコミを入れていた。
「かっちゃん、僕も思ったけど…! ザギが色々我慢してくれてるから口に出せなかったんだよ!」
爆豪の言葉に同じことを思ってたことを口に出す出久。
だが次の瞬間。
「あっ。」
轟の体が下に落ちた。
床に落下する寸前、ギリセーフで一番近くにいた出久が轟の体を受け止めたため床に落下せず、ダメージはなかった。
床に落っこちて砕けたのは、白く変色して紙粘土が砕けた物みたいになったザギの右腕であった物だ。
「アーーーー! もう限界値超えちゃった! ザギさんのエネルギーを直に流してるから耐久値が予想を超えて足りなかったーー⁉」
発目が砕けて落ちてしまった仮初のボディの腕を拾って状態確認して慌てふためていた。
その間にザギは、仮初のボディが完全に崩れる前に壊理を床に降ろした。
徐々に仮初のボディは、白くなっていくような変色が進み、ヒビが全身に入り床に崩れ落ちた。そこからホログラム姿のザギが出てきて、だるそうに体を伸ばしていた。
その前にザギの姿が壊れていく様に怯えた壊理を出久がサッと抱き上げて避難させたので、崩れていく時の破片に巻き込まれずに済んだ。
「まだまだ課題がありそうだな。轟くんはさすがに体重があるから負荷が大きかったのかもしれない。」
「それじゃあザギさんが単身で動くなんて、まだまだ先の話じゃないですかーーー!」
自信をもって設計して制作したのにあっさりダメになったのがよっぽどショックだったのか、叫ぶ発目。
『〔別にそこまで必要ない。抱きしめられたい時にいるだけだ〕』
「えっ⁉」
びっくりする出久。
「おい、出久……、テメーがこいつを甘やかすから、甘えんぼな極悪過保護になっとるだろーが…。」
そんな出久を横から肘で軽く小突く爆豪。
ザギからしたらあまり効率が良くないし、出久とボディタッチしたい時ぐらいに使えればいいやぐらいの感覚だった。
自分で戦うときは、出久の体を借りるのが一番良いのだ。なにせザギの本体は、分離不可能な状態で出久の中にいるわけで仮初のボディはリアル映像や感触を感じるために接続したドローンみたいな物だからだ。
「なるほど、そういう意向でしたら、もっと耐久値を上げて、バッテリー持続時間に重点を置いて再度造ります!」
「あっ、待て発目! すまん、相澤! あとは頼む!」
「……はあ。」
崩れ切らず白く変色したまま残った仮初のボディの腕を抱えて寮から物凄い速さで出て行った発目を追って行くパワーローダー。残された相澤は軽くため息を吐いて、床に散らばった仮初のボディの残骸を見下ろした。
「…清掃ロボットを手配する。清掃が終わるまでお前達は部屋へ戻れ。」
「先生…、すみません…でした…。」
「緑谷、お前の責任じゃない。」
『〔あの娘はなかなか将来性がある〕』
「発目さんのこと? ザギがそう言うなんて珍しい!」
『〔そうか?〕』
「テメー…、悪口か、暴力で訴えてくるだろーが…。」
『〔知らん〕』
「こんんんんの極悪過保護! すっとぼけてんじゃねーーーー!」
「ツンは、変わらずって感じか…。」
「ま、そう簡単に性格とかが変わるわけないよな…。」
「ザギさん…、だいじょうぶですか?」
壊理が泣きそうな顔で心配そうにザギのホログラム姿を見上げて聞いた。
先ほどまで自分を抱っこしてくれた実体のあるザギが崩れて壊れるのを見てしまったのだ。6歳には中々理解するのが難しいだろう。
『〔あれは、仮の人形の体だ。本体のオレは、出久の中にいる。心配する意味はない〕』
「ちょっとザギ…。」
「よかったです! ザギさんが無事で!」
ツンな物言いだっただがザギが無事であることを理解した壊理は嬉し泣きしていた。心配で目に涙がたまっていた分が安心してうれし涙ととして溢れ出てしまったらしい。
出久を始め、クラスメイト一同で壊理を落ち着かせるのに四苦八苦し、この日からザギが発目によって仮のボディ(非戦闘用)を使えるようになったのだった。
仮のボディは、パワードスーツと同じ素材と制作工程の技術を用いられた物です。
ただ中に出久が入ることを前提としていないため、制作自体はパワードスーツよりは簡単な代物。
また非戦闘用で、部屋の中で出久と絡みたい時に使いたい程度にザギが欲しがってた物です。
ただザギのエネルギーがやはり強力なため耐久限界がすぐに来てしまうのが課題。
発目がホログラム姿で出久と引っ付いているのを見て、気を利かせて作った作品ですがたまたまザギの要望に合ってた。
ザギの体温については捏造です。
実際、ウルトラマンの体ってウルティノイドも含めて表面温度ってどうなんですかね?
光の国のウルトラマン達が寒さに弱いから体温が高い気がするのですが。
壊理どころか、轟まで抱っこしたことについては、お腹空いてて頭おかしくなってた?と後でザギは頭抱えます。
壊理に対してはなんとなく不器用に子供の相手している目上な感じ。轟には、マジでなんなんだよって感じ。暴力で払い除けたいほど嫌じゃないけど、なんで懐いてくるんだって意味が分からないって思っている。
出久以外への基準はあまり変わってないですが、「まっ、これぐらいなら…」と少し寛容になってはきている?
最近執筆がおろそかになっていたせいか、このネタでのザギのキャラが上手く書けなくなっている気がしています……。