やはり俺たちが看病するのはまちがっている   作:陽陰 隠

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一色可愛いよね


命令

今日の授業も終わり、いつも通り部室へと向かう。

俺の『本物が欲しい』宣言からかなり時間が経ち、今ではそれをネタに弄られることもなくなっていた。

......別に名残惜しいとか思って無いんだからね!

そんな雑念を振り払うように、部室の前に着いた俺は引き手に指をかけ、強めに扉を開けた。

すると、そこにはなぜか横になっている一色(いっしき)いろはのそばに雪ノ下 雪乃(ゆきのした ゆきの)由比ヶ浜 結衣(ゆいがはま ゆい)が座り込んでいるという光景が広がっていた。

 

「何の騒ぎだ?」

「ヒッキー!大変なの!いろはちゃんがね、部室に入ってきたと思ったらいきなり倒れちゃってね、それで――」

「分かったから一回落ち着け。雪ノ下、説明してくれ」

「別に熱があるだけで大したことはないわ。もう平塚(ひらつか)先生を呼んだから大丈夫よ」

 

どうやら一色が部室に入ってきて早々ぶっ倒れたらしい。

最近は生徒会の活動も忙しそうだったし、そのしわ寄せが来たんだろう。そんな事を考えていると

 

「おい!大丈夫か!」

 

平塚先生が勢いよく扉を開けて入ってきた。なにその入り方格好いいんですけど。

平塚先生は、そのままなれた手付きで一色の体温を測る。

 

「......うむ、37度9分か。病院は行かなくても良いな。とりあえず今日は一色を家まで送るぞ。お前達も着いてきてくれ」

「行くわよ、由比ヶ浜さん」

「う、うん。ヒッキーこれ持って」

「俺は荷物持ちかよ...」

「あなたが一色さんに触れるよりはましよ」

 

どうやら俺はこんな状況でも警戒されているらしい。まぁ、同行を許されただけましか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんとか一色を平塚先生の運転する車に乗せ、一色の家に向かう。

車に揺られながら、今俺ハーレムだなーとか考えていると

 

「ん..んぅ...ここは?」

「平塚先生の車の中だ」

「っ!?せ、先輩!?」

 

一色が目を覚ました。てか俺が居ることに驚き過ぎじゃない?八幡(はちまん)泣いちゃうよ?

 

「一色、お前が倒れたと雪ノ下から聞いてな。今お前の家に向かっているんだが、誰か人は居るか?」

「今日は誰もいないです...」

「それは困ったわね....どうしましょうか」

 

どうやら現在一色の家には誰も居ないらしい。

さてどうしたものかと、全員が悩む中、平塚先生が意を決したように口を開いた。

 

「......よし、では奉仕部に平塚静が命じる。奉仕部の3人で一色を看病しろ!私はまだ仕事が残ってるのでな。頼んだぞ!」

 

えぇ...命じるってあんたはル○ーシュかよ。せめて依頼とかにしろよ。

 

「でも、私と由比ヶ浜さんは良いとしてもH企谷くんを一色さんの家に入れるのはどうかと思うのですが」

「ああ、その辺は大丈夫だ。どうやら彼は理性の化物(笑)らしいからな」

 

おい、なんでそれをあんたが知ってんだよ。てかH企谷ってなんだよ。

 

「先輩が私を看病.....えへへ///」

 

一色さん、話聞いてた?奉仕部3人でだからね?

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ比企谷(ひきがや)くん、入っていいわよ」

「おう」

「あ、でも一色さんから2mは離れて頂戴」

「お前は俺のことなんだと思ってんだよ」

「いくら理性の化物(笑)とは言ってもいつ暴走するか分からないでしょう」

「そ、そうだよヒッキー。ど、どうせ手を出すなら......わ..私――」

「由比ヶ浜さん、タオル濡らしてきてくれるかしら」

「か、かしこまりましたっ!」

 

乾いたタオルを握りしめ、慌ただしく部屋を出ていく由比ヶ浜を尻目に一色の部屋を見渡す。想像通りの女の子の部屋って感じだ。ピンクを基調としたいかにも一色らしいあざといレイアウトをしている。あとちょっといい匂いですね......。

 

「せ、せんぱぁい...あんまりジロジロ見ないでくださいよぉ」

「そうよ比企谷くん。いくら女性の部屋に入ることが無いからって変な妄想に使わない方が身のためよ」

 

流石に視線が無遠慮過ぎたのか、雪ノ下と一色に咎められてしまった。

 

「す、すまん」

「あら、やけに聞き分けが良いわね。なにか企んでるのかしら?」

「だから俺をなんだと思ってんだよ。病人が居る状況で騒いでも迷惑なだけだろ」

「あなたが気遣いまでできたのは意外だったわ...」

 

最近の俺に対する評価厳しすぎない?お前は俺に気遣ってくれ。

 

「ところで一色さん、食材があるか見たいのだけれど、冷蔵庫の中の物を拝借しても良いかしら」

「あ、はい。是非お願いします」

「それなら俺がやるわ。昔から小町が体調崩した時は俺が看病してたからな」

「ならお願いするわ」

 

役割を与えられ、それを口実にこの少々居心地の悪い空気から抜け出せる機会を得たので、意気揚々と部屋を出ようとドアに手を伸ばした瞬間――

 

「タオル持ってきたよー!」

「うおっ」

 

タイミングが悪く、由比ヶ浜がドアを思い切り開け、そのせいで派手に転んでしまった。しかも足が痛むので挫いてしまったらしい。今日の俺、不憫過ぎない?

 

「比企谷くん!大丈夫かしら」

「ヒッキー、ゴメン!」

「ああ、大丈夫だ。だが、多分足を挫いた。めっちゃ痛い」

「それ、大丈夫じゃなくないですか!?私、湿布取ってき――」

「いろはちゃんは病人なんだから動かないで!私が取ってくる!」

「...すいません」

「.....仕方ないわね。じゃあ私は食材を見てくるわ。一色さん、くれぐれも気を付けて。比企谷くん分かってるわね」

「怪我しててもこの扱いかよ....」

 

ほんと、不憫すぎる......

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