世間一般で言うカップルっぽい行動とはなんだろうか。手を繋いで歩く?お揃いの服装でデート?
これらがカップルっぽい行動であることは間違い無いだろう。だが、これらをするには、他人のバカップルとして見られる危険性が高いので、少々ハードルが高い。
では、最も容易くリア充感が出る行動とは何か。それは、俗に言う『あーん』である。ただ食べ物を相手の口に運ぶだけのことなのに、何故か人生を最高に楽しんでいる気楽なカップルの様に見えてしまう。そんな俺には無縁な恐ろしい動作のはずなのだが―――
「あ、あーん」
「あーん。......美味しいです!」
―――あ…ありのまま 今起こっている事を話すぜ!
『おれは奴の家で看病をしていたと思ったら、いつまにかリア充になっていた』
な…何を言っているかわからねーと思うが、俺も何をしているのかわからなくなってきた...。頭がどうにかなりそうだ...。催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わっているぜ...。
俺は軽いポル◯レフ状態に陥るほど、今の状況が飲み込めていなかった。いや、何をしているか理解はしているつもりだが、俺が女子に『あーん』をしているという事実を脳が拒んでいる。
「先輩?手を止めないでくださいよ」
「あ、おう、すまん」
色々考えているうちに手が止まっていたようで、一色に咎められてしまう。だが、もうかれこれ10分はこんな状態である。少しくらい止まっても良いのではないだろうか。ダメですかそうですか。
頼みの綱である由比ヶ浜と雪ノ下を見やるが、由比ヶ浜は自分のご飯を頬張りながらチラチラとこちらの様子を確認しているだけだし、雪ノ下に至っては、ト◯コもびっくりの勢いでシバリングしながらブツブツと何か呟いているだけで反応が無い。
つまるところ、俺に逃げ場は存在していないのだ。
そんなこんなで諦めの境地に達した俺は、無心で一色の口に食事を運ぶ機械となり、ようやくその役目を終えた。
「いやー、お腹いっぱいです!」
「そりゃ良かった」
責務を全うしたので、自分の飯を食うために一色の方に背中を向ける。多少冷めてしまっているが、それでも美味しいと感じるほどに雪ノ下は料理が上手いことを再確認する。
「あ、先輩」
「......なんだ」
黙々とお茶漬けを味わっていたところ、後ろから一色が声をかけてきた。すいません、ゆきのん特製お茶漬け味わうので忙しいんですけど。
何を言い出すのかと待っていると、おもむろに俺が先程まで向いていた方向を指差した。もちろんその方向には、食べかけのお茶漬けがある。
「それ、食べさせてあげましょうか?」
「は?」
「だから、食べさせてあげましょうか?」
「は?嫌だが?」
笑顔でなんてこと言ってんのこの子。年頃の女の子が軽々しくそんなこと言っちゃいけませんよ。うっかり勘違いしちゃうだろ。
そんなわけで、当然の如く断る。
「えー、折角こんな美少女があーんしてあげるって言ってるのになー」
「いや、お前さっき腕がダルいとか言ってただろ」
「おかげさまで治りました!」
「治ってすぐに動かすのは良くないと思います」
「大丈夫ですって!あ、それともお二人に見られるのが恥ずかしいんですかぁ?」
「い、いや、そういう問題じゃねぇだろ......」
一色と応酬を繰り広げていると、流れ弾が由比ヶ浜と雪ノ下に飛んでいってしまい、若干うろたえてしまう。
シバリングしてる雪ノ下は安全だと思われるので、由比ヶ浜の方にゆっくり視線だけを動かしたのだが、それと同時に由比ヶ浜が口を開いた。
「ヒッキー......その、私がしてあげよっか?」
「「......は?」」
由比ヶ浜の口から放たれた予想外の言葉に俺と一色が呆然とする。 なんで今の流れでその答えに辿り着いたんだよ。いつもの空気読みスキルはどこ行ったんだよ。
呆気にとられている俺たちをよそに、いつの間にか復活していた雪ノ下が恐る恐る尋ねる。
「その、由比ヶ浜さん、お茶漬けに変なものでも入っていたかしら?」
「いや頭がおかしくなったとかではないし!」
手と顔をブンブンと横に振りながら否定する由比ヶ浜。そんなはずないわとお茶漬けの中を確認する雪ノ下。口を半開きにしたまま動かない一色。そして、それを見守る俺。うん、平和だね!
まあ仮に雪ノ下の料理に何かおかしなものが入っていたとしたら、由比ヶ浜だけじゃなく、俺や一色もおかしくなっていないと不自然だ。いや、一色はおかしくなっているのかもしれない。その...セッ......先輩の寝込みを襲う...くらいだしな。
先程まで平和だった俺の脳内が曇り始めたので、思考を止めて由比ヶ浜の方を見ると、もう既に雪ノ下を説得できたのか、スプーンと俺の顔を交互に見ている。
「由比ヶ浜、別にお前がする必要はないんだぞ。てか一人で食える」
「そういうのじゃないし!ただ、ちょっと迷ってるだけだし......」
いや迷うくらい嫌ならしない方が良いんじゃないですかね。普通に一人で食えますしね。
由比ヶ浜はそれから少しの間スプーンを見つめ続け、そろそろいいかなと思い、目線を外そうとしたところで、由比ヶ浜の持っていたスプーンが俺のお茶漬けへとダイレクトシュートされた。
そしてそのお茶漬けを乗せたスプーンが、俺の目の前へと運ばれてきて、少し頬を赤らめた由比ヶ浜と目が合った。
「ヒッキー......はい、あーん」
気づいたら前話の投稿から一ヶ月が経っていました。大変申し訳ないです。ここにきて見切り発車の弊害が出てしまいました。
この二次創作はプロットというものが存在していないので、その時のテンションで書いています。なので遅れました(言い訳)
あと、息抜きで書いてたはずの二次創作の続きを書くのが楽しくなっちゃったのもあります。二つ同時更新は無理やったんや......
次話はいつになるか分かりませんが、完結までは持っていきたいので、気長にお待ちいただけると幸いです。