やはり俺たちが看病するのはまちがっている   作:陽陰 隠

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責任

「ヒッキー、入るよ」

「お、おう」

 

服を着て、さてどうしたものかと思考を巡らせていると、由比ヶ浜が戻ってきた。

 

「あれ、いろはちゃん部屋に居たんだ」

「遅かったですね結衣先輩」

「ゆきのんと一緒にご飯作ってたの。今ご飯持ってくるけど大丈夫そう?」

「少し頭痛がしますけど、大丈夫だと思います」

 

どうやら二人が遅かったのは晩飯を作ってくれていたからのようだ。じゃあそんな時に俺と一色は......いや、これ以上考えるのは止めておこう。

 

「先輩はお腹空いてますか?」

「おおおう。俺はそんなにチョコ食ってないしな」

 

突如話題を振られたせいで少し声が震えてしまった。正直あまり飯を食えるような心境では無いが、人間食わねば生きていけないので食うことにする。八幡、体は正直なの。

 

「ご飯できたわよ」

「ありがとう、ゆきのん!」

 

雪ノ下がお粥とお茶漬けを持って部屋に入ってきた。おそらくお粥は一色の物だろう。

 

「これは一色さんのね。お茶漬けはあなた達のよ」

 

予想は正しかったらしく、お粥は一色の前に、お茶漬けは俺と由比ヶ浜の前に置かれた。

 

「時間が無くてこんなものしか作れなかったけれど......」

「いやいや作ってくれただけで十分ですよ!」

「そうだよゆきのん、作ってくれてありがとう!」

「そ、そう言ってもらえると助かるわ」

 

恥ずかしそうに赤面する雪ノ下に抱き付く由比ヶ浜と手を握る一色。あー、百合百合してきたなー。え?お前は何かしないのかって?ばっかお前そんな事したら『百合に交わる男殺しの剣』とかで殺されちゃうだろ!

 

そんなくだらないことを考えていると、もう既に三人共離れていただきますの体勢になっていた。俺もそれに倣って両手を合わせる。

すると、一色が俺の様子を見て口を開いた。どうやら一色が音頭を取るようだ。

 

「それじゃあ、すべての食材に感謝を込めて......いただきます!!!

「「「いただきます」」」

 

ト○コ知ってんのかよ......好きなキャラ誰かな?ちなみに俺はスター○ュン。

そんな事を考えながら、目の前のお茶漬けを黙々と食い進める。

 

「先輩」

 

お、鮭か。てか普通に美味いな。

 

「先輩?」

 

家で作るお茶漬けと全然違うぞ。いくらでも食える。

 

「せんぱーい」

 

今度作り方教えてもらおうかな。

 

「......先輩?」

「......な、なんでせう」

 

一色の声に少々怒気が混じり始めたので、仕方なく一色の方を向く。いろはすマジ堕天使。

 

「ちょっと腕がダルいんですよね~」

「おう、無理すんなよ」

 

俺は再び目の前のお茶漬けと対峙する。

すると、一色に脇腹を思いっきり殴られた。

 

「何すんだよ......」

「いやー、腕がダルくて動かないなー。どこかにご飯を食べさせてくれる目の腐った先輩はいませんかねー?」

 

一色はそう言いながらこちらをチラチラと見てくる。そんな事しなくても目の腐ったってところでもう選択肢が絞られてるんですけどね。

でも流石に俺がそんな事するのは問題があるので、雪ノ下と由比ヶ浜に目線で助けを求める。

 

「いろはちゃん、流石にヒッキーはちょっと......」

 

ナイスだガハマさん!少し俺が傷付いたけど普段から空気を読んでいるだけはある。良かったな一色。由比ヶ浜があーんしてくれるってよ!

後は由比ヶ浜に任せようと思い、視線をお茶漬けへと戻そうとしたところで、一色が予想外の言葉を放った。

 

「あれれー?結衣先輩、もしかして嫉妬してるんですかぁ?」

 

こ、こいつ挑発しやがった!由比ヶ浜は俺と仲が良いことを全力で否定したことがある女だぞ!あと煽り耐性も無い。

 

「な、そんなことない......こともないけど

 

ほらやっぱりこうなる!最後の方とか何言ってるかわかんなくなってるじゃん!

 

「えー?何ですかぁ?ちょっと声が小さくて聞こえなかったのでもう一回言ってもらえますぅ?」

「......むぅ」

 

怖いわー、この子怖いわー。先輩に対してこの煽り方はえげつないわー。もう由比ヶ浜黙っちゃったじゃん。

 

仲間が一人やられてしまったので、雪ノ下の方を見る。

すると、何故か雪ノ下は下を向いたまま小刻みに振動している。そこに一色が近寄り、雪ノ下の耳元に顔を寄せ何かコショコショと話したかと思えば、雪ノ下はなにかボソボソ言いながら動かなくなってしまった。

 

私が......比企谷くんを......」

「さあ、逃げ道はもう無くなりましたよ。どうしますか?先輩?」

「くっ......」

 

一色は嗜虐的な笑みを浮かべながらこちらにスプーンを差し出してくる。後ろには視線だけチラチラとこちらを見てくる由比ヶ浜と、微動だにしない雪ノ下。目の前にはニヤニヤといやらしい笑みを浮かべる一色。

 

「......ます」

「え?なんですかぁ?」

「......やらせていただきます」

「はい、お願いします!」

 

堕天使には勝てなかったよ......




隔週投稿になりつつあるこの二次創作ですが、気付いたら10000UAを突破してました!ありがとうございます!
感想なども貰えて、大変ありがたい限りです。
でも僕は強欲な壺なので感想・評価の二つをドローしたいです。
こんな作者ですが、今後ともお願いします!

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