駅前の商店街のはずれに、そのラーメン屋はあった。
「麺や マナブ」の看板を掲げるその店は、シンプルな醤油ベースのスープに落花生油を浮かべ、厚切りのチャーシューとたっぷりの焦がし玉葱をトッピングするラーメンが名物で、芸能人がお忍びで訪れることもある人気店である。
「はあっ…はあっ…」
今日も、昼下がりの商店街をラーメン屋に向けて駆けてゆく芸能人がひとり。
(ぬかりました…わたくしとしたことが…っ!)
765プロダクションに所属するアイドルで、業界でも指折りのラーメン好きとして知られている。
近場で朝からドラマの本読みがあり、昼休憩を利用して「マナブ」のラーメンにありつこうと考えていたのだが、役に没入しすぎてしまったためいつの間にか休憩時間を過ぎていることに気づかず練習をしてしまっていた。
全速力で商店街を突っ切り、店の前に着いた時には2時になろうとしていたが、まだ大勢の客が行列を作っていた。
(にぃ…しぃ…ろく……。9人、ですか…。微妙なところですね…)
貴音は行列の10人目に並び、呼吸を整えながら状況を分析した。
この店のランチ営業は3時までとはなっているものの、人気店故にラスト・オーダーより前にスープが切れて閉店してしまうことも多いという。
(さすがにここまでの出遅れは致命的…こんなことならば携帯のたいまぁを使うべきでした…)
(しかし、それではまるで、わたくしが練習中も昼食が待ち遠しくてたまらない女なのかと他の皆様に誤解されて…いえ、事実ではあるのですが……)
そうこうするうちに店員がひとり、店の外に出てきて行列の人数を数えはじめた。
明らかにスープ切れでラーメンを提供できない客を「足切り」するための確認だ。
(ああ…お願いします…どうか……!)
貴音はオーディションの合格発表さながらの様子で両手を合わせ、ごくりと唾を飲み込んだ。
心音の高まりで周囲の音が小さくなっていくのがわかる。
一歩、また一歩と近づいてくる店員の姿がスローモーションになって見える。
「8…9…」
ちょうど貴音のところまで数えた店員が、ぴたりと足を止めた。
(~~~ッ!!)
心臓から冷水が溢れ出し、一瞬で背中を通って脳天に抜けていくような感覚に陥る。
今まさに、店員の顔が申し訳なさそうな表情を浮かべ、その口から死刑宣告が放たれようとしている――。
「――すいません、ここでスープ終わりなんですよ」
間一髪。
足切りされたのは、貴音のすぐ後ろに並んでいた客だった。
「はあぁぁぁ~~っ」
思わず、安堵のため息がでる。
呼吸することを忘れていた脳が、思い出したかのように酸素を要求してくる。
すう…と空気を吸い込みながら、貴音はなんとなく後ろを振り返った。
「あ…」
そこでまた、息が止まった。
後ろに並んでいたのは、背の高い中年男だった。
上下黒のシャツとズボン、革のコートを羽織り、髪はオールバックにまとめている。
服の上からでもわかるくらいの分厚い筋肉が全身を覆い、よく見ると両目の下に鼻の上を横切る真一文字の長い傷跡があるのがわかる。
しかし、貴音があっけにとられたのはその表情だった。
眼球がこぼれ落ちそうなほど目を見開き、マネキンのように固まった顔――。大の男が滅多に見せないであろう絶望の表情。
人によっては滑稽に見えるかもしれないが、貴音の目にはなんとも哀れで、放っておけないものに見えた。
貴音は急いで携帯電話を取り出し、画面を見て悔しそうな表情をしてみせた。
まるで、誰かからメールで呼び出されたかのように。
「あの、すみませんが、急用ができまして…今日は失礼させていただきます」
「え?…ああ、そうですか」
ちらりと背後に目を向けると、信じられないといった顔で振り向く中年男と目が合った。
「どうぞ」
貴音が列から外ると、男は軽く会釈をしてそこに加わった。
「また、日を改めて参ります」
「はい、お待ちしていますね」
店員が言い終わらないうちに踵を返した貴音は、来た道を全速力で引き返した。
既に空腹度は限界を超え、今にも腹の虫がヒステリーを起こしそうになっている。
(まったくなにをしているのですか、わたくしは…!!)
先ほどのありえない行為に対する後悔も、摂食中枢が奏でるけたたましいアラートであっという間にかき消されてゆく。
(とにかく急いでなにか食べなければ…!)
(この際なんでも……いえ、ここまで来てらあめん以外を摂取することはできません!)
結局その日の貴音は偶然見つけたチェーン店に飛び込み、ラーメンセットと餃子2皿を平らげたのだった。
ハーメルンにアイマス二次創作を放てっ
PS3ソフトのDL販売が終了と聞いて久々にOFAを起動してDLCのシナリオを買ったんだ
全部で8000円くらいになったけど新しいゲーム1本買ったと考えればまあ、許容範囲かなと…普通に面白いのでよし
まあそのあとDL販売終了自体が撤回されたんやけどなブヘヘヘ
そんな中で思いついた今回のお話、書いている最中に自分でも変なクスリやってるような気分になったりしたけど、なんとか完成させることができたんだ
アイマスとタフというハーメルンでは初(たぶん)の組み合わせだけど、二次創作はルール無用なのでマイ・ペンライ