――暗い。
しかし、完全な闇ではない。ぼんやりとした明かりに照らされ、太いパイプが何本も張り巡らされた天井が見える。
「うっ…」
身体を起こそうとしたが、手足の自由がきかない。
貴音は、自分が両手両足を縛られた状態でソファーに寝かされていることに気づいた。
「悪いね、手荒なことしちゃって」
にゅっ、とソファーの背後から男の顔が現れた。
七三分けにした髪の左側を長く伸ばし、顔半分を覆い隠している。
「俺は
気味の悪い笑みを浮かべた男――水木喜太郎は貴音の体を起こしてソファーに座らせた。
(きたろう………なるほど、確かに髪形がそっくりです)
非常事態にも関わらず、ついくだらないことを考えてしまう。
ソファーの前にはスタンドに取り付けられたタブレットが置かれ、その画面がちょうど貴音の顔を映すようにこちらを向いている。
(この男、先ほど確かに鬼龍と口にしましたが…いったい、あの方とどのような関係が…?)
考えながら周囲を見渡すと、自分が今いる部屋がかなり広いことに気づく。
全体的に薄汚れ、埃をかぶっているものの、パーテーションで区切られた机と椅子がいくつも並んでいること、印刷機やPCも置かれていることから、かつては何かしらの企業のオフィスだったことがうかがい知れる。
窓は全てブラインドが下ろされ、外の様子を見ることはできない。
「気休め程度にしかならないだろうけど、君はあくまで鬼龍をおびき寄せるエサ…。俺の思い通りにことが済めば危害を加えるつもりはないよ」
「――なにやら含みのある言い方をされるのですね」
「ま、実際上手くいくかどうかはヤツの態度次第だからね」
水木が言い終えたところで、タブレットが音を立ててテレビ通話の着信を告げた。
「来たな」
画面が切り替わり、顔面に大きな傷のある男――鬼龍の顔が映し出された。
「久しぶりだな、鬼龍さんよ」
『悪いが蛆虫の顔をいちいち覚えてられるほど暇じゃない。久しぶりと言われても困る』
喜太郎はソファーの後ろから左手で貴音の前髪を掴み、首がのけぞるような形で自分のほうに引き寄せた。
「痛っ…」
「状況わかってんのか?それとも冗談かなにかだと思ってるのか?」
いつの間にか右手に持っていたカッターナイフを貴音のこめかみに軽く押し当て、すう…と頬骨と下唇を1本の線で結ぶようにそれを肌に沿わせる。
『お前はなにも変わらんな水木。女は傷つけるものではなく愛でるものだと、その身をもって教えてやっただろうに』
「はっ、お前だって女を傷つけてるだろうが。気に入ったメスブタを片っ端から抱いて孕ませて、後は知らんぷりで次の女を抱くくせによ」
『御託はいいからとっとと始めろ。俺は誰に殺されればいいんだ』
チッ、大きく舌を鳴らして貴音から手を離した喜太郎がタブレットに向けてなにやら指示を出すと、画面が切り替わって少し引いた位置から鬼龍の全身が映し出された。
背景を見るとどうやら倉庫のような場所らしい。
(今、確かに“殺される”と…)
(いったい、なにが…?)
理解不能な出来事の連続で混乱する貴音だったが、それでもひとつ、確信していることがあった。
何度もドラマで役を演じてきたからこそわかる。
これは、演技などではないと。
これは、紛れもなく現実だと。
喜太郎は本気で鬼龍を殺そうとしているし、あろうことか鬼龍はそれを受け入れようとしているのだと。
――――――
――――
――
鬼龍の背後の扉が開き、上裸の大男がひとり姿を現した。
坊主頭に長いどじょう髭をたくわえ、その体は岩のように隆起した筋肉で覆われている。
『
『鬼龍様、お久しぶりです』
彪と呼ばれた男は鬼龍から3mほど離れた場所で静止すると、右ひざを床に着けて左腕を頭上に、右腕を体の前に伸ばす奇妙な構えをとった。
『お前が俺に弓を引く日が来るとはな』
『私だけではありません。かつて貴方に師事した多くの同志たちが水木様に雇われております』
「はした金をバラ撒くだけで簡単に転んでくれたぜ。あの中華やのオヤジもそうだ。“悪魔を超えた悪魔”と呼ばれた鬼龍サマもずいぶん舐められるようになったもんだなあ?」
『その通り。もはや貴方には我々を恐怖させた力は残っていない』
彪が右手で自分の額を指さす。
『かつて貴方が刻んだ傷…“奴隷の烙印”も手術で綺麗に取り除きました。そして今日、この手で貴方を殺し、私は真の意味で自由になるのです』
「お前が虫ケラの様に扱ってきた奴隷の手で、今度はお前が虫ケラのように殺されるんだ。どうだ?プライドの高いお前にとってこれ以上の屈辱はないだろう」
カッターを今度は貴音の首筋に押し当て、喜太郎がニイ~ッと気味の悪い笑いを浮かべた。
吊り上がった口角が耳まで届きそうに見える。
『くだらんな』
「あ?」
『生に執着する姿はあさましく見苦しいものだ。武道家ならば死を選ぶ潔さを持つもの…たとえこの場で死んだとて、それは俺の敗北には結びつかない』
鬼龍が両手を広げ、挑発するかのように首をかしげてみせた。
『もっとも、コイツに俺が殺される可能性なんぞ万にひとつもないがね』
『なにっ』
『彪よ、久しぶりに見せてみろ。伝説の拳師
「殺れーーっ!!!」
喜太郎の怒声が響くとともに、残虐なショーが幕を開けた―――。
今週のプレイ・ボーイ読んだけどイケメンキー坊と優希ちゃんの甘酸っぱい関係がいい感じスね
冷静に考えると2人の歳の差が20歳くらいあることとか、鬼龍のクソみたいなダビスタ計画が成就しそうでなんかムカつくこととか、そもそも和香ちゃんはどうなったんだよえーっとかツッコミどころだらけだけど、猿漫画なのでマイ・ペンライ
バスターズ戦も終わって新展開になっていくんだろうけど、猿先生はこの物語をどう着地させるつもりなのか、今後も目が離せないんだ