秘密兵器鋼鉄魔法少女くん   作:久夢道生

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なぜか急に頭の中にわいてきたので書きました。書きダメも展望もない、初投稿かつ完全な見切り発車です。


あさおんの感慨にふける余裕はない

 その生き物は革新を起こした。誰もがやろうとしなかった、やろうとしてもできなかった理論を実現したのだ。その生き物はすぐにその理論を実行に移した。長年絵空事と呼ばれ続けた理論であっただけに、今すぐに証明しようと興奮していたのだろう。

 ましてやそれが、人類、ひいては世界を脅かし続ける謎の魑魅魍魎と、それに対抗できる唯一の存在“魔法少女”の戦局を劇的に変えることができる画期的なものであった以上、我慢しろというのも難しいものだ。

 しかし、この時その生き物──彼らは自らのことを“フェーリ”と呼んでいた──はいくつかミスをしてしまった。

 一つは、自らの理論はどうせ他のフェーリには受け入れられないと高をくくり、確固たる実例を集めることを先としたこと。

 二つは、理論がもたらす未来に目を奪われるあまり、モラルを落としてしまったこと。

 そして三つ目は、研究に没頭するあまり、人間の文化、とりわけサブカルチャーに関する知識を全く持っていなかったこと。

 これに少しの悪運が混ざった結果、彼は彼の思う以上の激流を生み出してしまったのである。

 

 

「う……んぅ……」

 花沢大樹は、記憶にある限りでもっとももうろうとした朝を迎えていた。机に突っ伏したまま二度寝に潜ろうとするものの、胃が空腹を訴えるためどうも寝付くことができない。仕方がないのでデスクスタンドに手を伸ばし眠気を飛ばすことを選択した。

「ん~、ん~?」

 年単位で愛用している机。それに付随する物の配置もほとんど変わっていないため、記憶を頼りにすれば目をつむっていても明かりをつけることができるはずだった。しかし、感触がない。不思議なこともあるもんだと諦め、とりあえず顔を上げようとした。

「んぉぉ……おっ⁉」

 すると今度は、顔が机からずり落ちてしまった。これはさすがにおかしいと思ったその時、

「ようし! やっと起きたか! 調子はどうだ? 指が動かないとかはないか?」

 唐突に現れた浮遊する羊のぬいぐるみが目に入り、頭が追い付かなくなった。彼はぬいぐるみの正体であるフェーリという存在について知らないわけではなかったが、寝起きの頭には少々重い情報であった。

「あ~、どちら様で……」

「そんなことは今はどうでもいい! 異常はないな⁉」

「あ~、はい」

「やった! やったぞ! 大成功だ!」

 飛び回る羊のぬいぐるみを横目に、大樹は現状の理解を試みる。一人暮らしの自分の家に知らないフェーリが入り込んでいるという事実はいったん置いておいて、彼がしきりに気にしていることがわからなかった。

「あの、何かあったんですか?」

「おや! 自覚していないのか? どれ、見せてやろう!」

 そう言って羊のぬいぐるみは鏡を取り出した。そこにいたのは晴天を取り込んだような目をした銀髪の美少女だった。

「これは……」

「君だ!」

「へ?」

 大樹はますます訳が分からなくなった。自分は昨日まで男だったはずだったのに、朝起きたら女の子になっていたのである。しかもこのぬいぐるみの口ぶりからして……

「あなたが……うわ、声まで変わってる……ともかく、あなたが僕を女の子にしたってことですか?」

「そうだとも! 喜びたまえ! 君が世界に革命をもたらす私の実験、『性転換魔法少女』の第一の成功例だ!」

「えっ、魔法少女?」

 魔法少女。その存在は今日の生活において欠かせないものでありながら、膨大な魔力量を持つ女性しかなれない専門職である。

「フフフ……せっかくの成功例だ、理解できるかは別として、特別に私の理論について話してやろう!」

 ぬいぐるみの話をまとめるとこうだ、本来、魔法少女の力の源である魔力は男女問わず持っている物であるが、その魔力を外に放出する器官は女性しか持っておらず、それ故に魔法“少女”と呼ばれ、女性の専門分野となっていた。

 そこで、彼は男性を女性に変えることでこれまで使えない資材とされてきた男性の魔力を利用しようと考えたのだった。

「妙案であったが、周囲からはあり得ないと笑われてな。だが今はそうじゃない。君という成功例がいるからな!」

「はあ、でも、なんで僕なんですか?」

「一人暮らしで暇そうで魔力を大量に持っていたからだ!」

「はぁ……」

 遠回しに罵倒されたような気がして少し落ち込む。けれども、悪くないとも思っていた。彼は魔法少女というものにあこがれと好意を抱いていたし、心の底には女の子になってみたいという妄想が漂っていたからである。実感こそまだないが。とその時、

『こちらトーキア東の1! トーキア東の1! トーキア本部に増援要請! とにかく頭数をよこしてちょうだい!』

 と、くぐもった怒鳴り声が飛んできた。大樹は驚いて椅子からひっくり返りそうになったが、ぬいぐるみはむしろ興奮した様子だった。見ればぬいぐるみの胸元にはトランシーバーが付いている。

「丁度良い! 丁度良すぎてむしろ怖いぐらいだ! 殴りこみに行くぞ君!」

「えっ、殴りこみ⁉」

「実戦だよ! 実戦! 君の魔法少女としての力を知らしめるんだ! 行くぞ!」

「あっ、ちょっと、ちょっと、待ってください!」

「なんだ!」

「名前! 名前聞いてないです! えっと、僕は花沢大樹です!」

「そうだった! 後回しにしていたんだったな! 私の名前はマートン! さぁ、行くぞ!」

 直後、マートンは突然光り始め、辺りは閃光に包まれた。

 

 

 

 魔法少女がこの世界に欠かせない理由。それは、魔法少女にしか倒せない怪物がいるからである。一般的に“トラジスト”と呼ばれるその化け物は、ある日突然地球上に姿を現し、瞬く間に地上の大半を人類から奪い取った。

 しぶとく生き残った人類は、トラジストの侵略を受けなかった複数の大都市に集まり身を寄せ合うこととなる。そんな時、これまた突然生き残った人類の中に後に魔法と呼ばれる力に目覚める少女たちが出始め、それと同時にフェーリと名乗る謎の生物が現れ人類への協力を持ち掛けてきた。

 これを受け入れた人類は生存、そして反撃のための刃を手に入れることになった。それが魔法少女である。

 フェーリのサポートを受けて強力な力を行使する魔法少女には、都市の防衛、生存領域の奪還、そして孤立した大都市間を結ぶ役割が与えられたのだ。

 

 

 

 気が付いた時には、大樹は何らかの建物の屋上に立っていた。眼下にはがれきだらけの街と、それを埋め尽くす黒いトラジストの大群、そしてその大群に真っ正面から立ち向かう少女達がいた。同時に、自分の視力が上がっていることにも気が付いた。

「よし、大樹! やるぞ!」

「えっ、どうやって……」

「なんか出てこーいって思えばなんか出てくる! そういうもんだ!」

 大樹はますます困惑した。けれども、ここまで来てしまった以上、何もせず帰るというのは気が引ける。なので念じた。けれども、出てこない。深呼吸をして心を落ち着かせてから、念じる。けれども、出てこない。手を合わせて曇り空に祈る。けれども、出てこない。

「……出てきませんけど」

「本当か? 叫んでみたらどうだ?」

「えぇ……」

「迷ってる暇はないぞ! ほら!」

「わかりました……」

 大樹は大きく息を吸い込み、叫んだ。

「なんかでてこぉぉぉい!」

 その瞬間、空を覆っていた雲にいくつもの穴が開いたかと思うと、直後

 

ズドン

 

 と、腹に響く地響きが起きた。少女もぬいぐるみももそろってひっくり返った。

「な、なんだぁ⁉」

「おぉ……見ろ、大樹! あれが君の魔法、だ……は?」

 困惑したような声を上げたマートンにつられて街を見下ろすと、トラジストの大群の中に、いくつもの白い岩のようなものが見えた、ゆっくりと動き出した岩達は、寸分の狂いもなく同時に立ち上がる。その岩には手足がついており、確かめるように曲げ伸ばしを繰り返す。それを呆然と眺めていた大樹の耳元に、突如、

<fortress:殲滅を開始します>

 と、機械音声が響く。それに気を取られた次の瞬間、いくつもの閃光と爆音が広がり、少女は思わずその場にうずくまった。ぬいぐるみは吹っ飛んだ。

「なんなんだ……」

「ウェッホ、ゲッホ、ふぅ……あれが君の魔法だよ。ただ……あんなに大規模なものは初めてだ……ロボットか? えーっと、十、二十、三十……すごいなぁ!」

 マートンが感心している間に、戦場は既に終局に差し掛かっていた。ミサイルやビームが飛び交う中、必死に逃げ惑うわずかなトラジストが、あっという間にロボット達に追いつかれて轢かれていく。大樹はちょっとだけかわいそうに思えてきた。最後のトラジストが豪快に蹴っ飛ばされたのち、辺りは静まり返った。

<fortress:任務完了、離脱します>

 そう聞こえたのち、ロボット達は一斉に飛び上がり、雲の向こうへ消えていった。大樹はまだ立ち上がれず、まるで夢の中にいるような心地であった。

『東の1各員、状態報告! 怪我をしている子は増援に回収してもらうわ! 少し休憩したら動ける残りでできる限りさっきのロボットの証拠を探すわよ! いい?』

『了解!』

 マートンの胸元から聞こえる無線で大樹は気づいた。この後はどうすればいいのだろう。

「マートンさん、この後はどうするんですか?」

「そうだな、このまま見つけてもらおうじゃないか! サプライズだな!」

「そしたら、どうなるんです?」

「順当にいけば魔法少女としてどこかのチームに入ることになる! 安心しろ、魔法少女のチームはとても仲がいいから、きっとすぐに溶け込めるはずだ!」

「あそこにいる子たちみたいに?」

 そう言って大樹は下でせわしなく動く魔法少女達を指さす。彼女たちは両手をつないで話し合ったり、お互いに抱き合ったり、泣いて立てなくなった子を複数人で囲んで慰めていたりと、マートンの言う通り非常に仲が良いことが分かる。百合の花を幻視してしまうような光景であった。

「ああそうだ!」

 その返事を聞いたとき、大樹の頭は一つの光景を描いていた。自分が女の子たちの輪に入り、話し合い、抱き合い、キャッキャウフフする。つまりそれは……

()()()()()()()……」

 大樹は素早く立ち上がると目にもとまらぬ速さでマートンをつかんだ。

「マートンさん! 今すぐワープ使ってください!」

「ど、どうした急に! どこに行きたいんだ⁉」

「僕の家です! さっさとしてください!」

「何か不満でもあるのか⁉たぶんそれは杞憂だから……」

「いいから早く! ぶん殴るぞ!」

「ひえぇ! わかった! わかったから離して!」

 突如豹変した少女にせかされ、マートンは行きと同じようにまばゆい閃光を放つ。その光が収まると、後には何も残っていなかった。




先述の通り続きはまるで書いていないので完成したら上げます。いつになるかはわかりませんが。
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