天与呪縛観察日記 作:てんてりす
びっくらこいたと同時にかかるプレッシャー。みろよこの執筆する腕、生まれたての子鹿みてえだろ。
出来るだけ自分らしく書こうと思うで、出来れば最後まで読んでくれると嬉しいです。
双眼鏡で見ている景色を歌姫は信じられなかった。
小学生相手に術式を使い殴りかかっている五条 悟も信じられないが、その五条 悟に恐らく術式であろう黒い球体や黒い結界を操り何とか食らいついていっている少年の方が信じられなかった。
「なんで呪力の無いあの子が術式使ってるのよ…」
体術の練度の高さもおかしいがやはり歌姫の一番の疑問はそこだ。歌姫も腐っても準一級呪術師、それなりの経験や知識で仮説を立てる事が出来るだろうが流石に『呪力が見えない』などと言う反則行為は『六眼』を持っていない歌姫には本人の口から聞く以外答えに辿り着く事は出来ないだろう。まあその本人に聞きに行こうにも五条と少年の戦闘に割り込む実力は歌姫には無い。
勿論五条の足手纏いで邪魔にしかならないと言う理由もあるが、手を抜いているにしても五条にくらい付いていける時点であの少年の方が歌姫より実力は上だ。何ともまあ情けない話である。
歌姫が一人でぐるぐると思考を巡らせていると歌姫の携帯が鳴った。
「はい、歌姫です」
『近隣住民の避難と帳を降ろし終わりました。そちらの状況は?』
「元保護対象に取り憑いていたと思われる呪霊は五条がすでに祓い終えました。ですがまだ五条と元保護対象が戦闘中のため皆さんは帳の外で待機していてください。いつ戦闘が激化するか分からないので」
『分かりました。ですが呪霊は祓ったのですよね?何故保護対象が我々に敵意を?』
「さあ?…それについては本人に聞いてみるしかないかと。ではこれで」
歌姫は少し乱暴に通話終了のボタンを押す。
「理由なんて私が一番知りたいわよ」
先日公園で歌姫が遭遇した呪霊に取り憑かれていると判断した少年。歌姫は遭遇したその日に保護したかったがあえなく失敗。だからこそ歌姫は失敗したと理解した瞬間自分のツテを全て使い失敗した翌日に少年の保護を決行した。因みに五条にも歌姫が直接援助を求めた。
何故態々最強の五条に援助を求めたのかと言うと、歌姫は少年に取り憑いていた呪霊を一眼で一級以上の呪霊と判断したからだ。それに歌姫が呪霊に認識された事、呪霊に少年を守ろうとする行為を見られた事等を見られた事により少年に呪霊から保険としてなんらかの術式をかけられる可能性が高まった。もしそうなれば保護に成功したとしても少年はその術式に確実に苦しめられる事になるだろう。呪霊が人間にかける術式はいつだって命を脅かすものだ。
それを防ぐ為、また看破する為にはどうしても五条の『六眼』が必要だったのだ。
因みに五条は貸し一つという事にして快く承諾してくれた。
歌姫としては絶対に貸しをつくりたくない人間に貸しをつくってしまうことになるが背に腹は変えられないと下げたくもない頭を下げ頼んだ。
だが現状はどうだ。自分の一番嫌いな人間にまで頭を下げて、色々無理を通して助けようとした少年は自分と五条の命を狙ってきている。
「もぉおぉ〜〜〜!!なんなのよあの子!!」
歌姫はガシガシと頭を掻きむしる。ヒステリーを起こすのも無理もない。
フゥフゥと息を切らしていると、ドガッ!と公園の方から鈍い音が響く。その音に驚き歌姫が公園の方を見るとそこでは五条が少年の術式である黒い球体を避け少年の腹に一撃をお見舞いしていた。
思わず歌姫は「うわっ」と声を出してしまう。今歌姫がいるのは公園から離れた場所、約60m程だろうか?そのぐらいの距離からでも少年の体がくの字に曲がるのが見えてしまったのだ。更に少年は余程五条の一撃が効いたのかその場で蹲り嘔吐してまう。側から見たら『大の大人が小学生の腹を殴って嘔吐させた』と言う絵面だ。帳が降りてなく周りに一般人がいたら確実に通報ものだ。
その一連の衝撃シーンを見て歌姫はふと違和感を覚えた。
「アイツが攻撃を避けた?」
攻撃を避ける事の何処がおかしい?と思う人も多いだろうが五条 悟の身体の周りには五条の無下限呪術で創られた『無限』というほぼ無敵の盾がある。この『無限』は簡単に言ってしまえば相手が五条に近づけば近づく程遅くなっていく結界の様なものだ。厳密には結界というよりも相手との間に無限の距離を発生させていると言う方が適切だ。まあ、つまり五条 悟は基本的に攻撃を避ける必要無い。
だが戯れで避ける事もあるだろう。しかし歌姫には明確な目的があるように見えた。そこに違和感を覚えた。
歌姫が五条を怪しみジッと見つめる。だがそうなると必然的に五条の近くで嘔吐している少年も視界に入ってくる。
五条に向いていた歌姫の視線は吸い込まれるように少年に向く。
黒髪黒目の目が濁った少年。何処にでも居そうな何の変哲もない小学生。
「騙されたんだよね、私…あの子に」
口から溢れた事実。その一言を皮切りに『小学生に騙された大人』と言う事実がじわじわと現実を帯び歌姫の心を蝕んでくる。たが先程のようにヒステリーを起こしたり頭を掻きむしったりせず目を瞑り大きく深呼吸を繰り返す。
何回か深呼吸を繰り返した後歌姫は拳を自分の顔に前に前に持って来て固く誓った。
「あの子絶対一発殴る」
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「ゔっ…ヴぉぇ…」
大の大人に腹をぶん殴られたおかげで胃がせり上がり少年は今日の給食のパンや味噌汁を公園の地面にぶちまける。ボコボコにされているように見えるがこの少年はこの『腹部への殴打』が今回の戦闘において初めての負傷だった。
つまり、少年はたった数分ほどではあったが呪術界最強の五条 悟の攻撃を捌き切っていた。勿論五条も手加減はしている。だがそれでも賞賛されるべき偉業だ。
「あれ?ちょっとやりすぎたかな?」
白々しい嘘をつきながら五条は蹲っている少年を見下ろす。
(練度の高い術式、呪力操作、身体さばき…こんな年端も行かない子供ができていい代物じゃない。さっき殺した呪霊の存在も、
五条は六眼で少年の呪力を見る。確かに少年の周りにはかなりの呪力が見える。
(見えるのに何故か全く呪力を感じない)
そう、五条は少年の呪力を全く感じ取れていないのだ。そのやりづらさのせいもあってか一撃をいれるのに2分もかかってしまった。
(それに術式の構造も分からない。とんでもない掘り出し物だな)
五条が思考を巡らせるているとうずくまっていた少年が急に起き上がり五条の腹めがけて殴りかかってきた。がその拳は五条の少し前でピタリと止まる。先程説明した通り五条の無下限呪術でつくられた無限だ。
「…やっぱ無理か。もしかしてアンタこの防御技って自動で発生してる?」
「おっ、やっぱりわかっちゃうんだ」
「俺も同じ様な事を手動でやってるから違いぐらい分かる。だからさっきのは速すぎて捉えきれなかったからモロにくらった」
「だよねー。君全く反応できてなかったもん」
「…聞いて答えるか分からないけどコレ何?アンタの術式って事ぐらいしか分からないんだけど」
五条は一瞬キョトンとするが直ぐに笑顔に戻る。
「コレはね無限だよ」
少年はその五条の言葉に目を見開く。
「なるほど…道理で届かないわけだ」
「理解が早くて助かるよ」
「けどコレは当たるよな」
──極ノ番 『不可進』──
少年の背後から黒い球体が五条の顔面めがけて飛び出てくる。それを五条は首を傾げるように避ける。通り過ぎた球体は五条の後ろでピタリと止まり再び五条目掛けて飛んでくる。
この球体に対し五条は常に避け続けて来た。
その理由として実は五条、この球体に一撃をもらっている。
トイレから出てきた少年に話しかけた瞬間この『不可進』を発動され腹に軽くだが一撃もらっている。ちなみに一緒にいた歌姫には少し離れていたと言うのと五条が背を向けていた為見られていない。それにくらった後直ぐに術式を使い後ろに飛んだ為とても一撃をもらったようには見えなかったのだ。
なので先程の腹への一撃は仕返しと言うのも含まれている。
(少し見極めるか)
だが五条はこのタイミングで迎撃を選んだ。少年の顔面を蹴り飛ばし距離をつくった後身体を捻り球体に向け全力で球体を殴りつけた。
瞬間五条の拳はピタリと止まった。
「は?」
拳が止まれど球体は威力を落とす事なく進み五条の拳を潰す。そのまま止まらず球体は五条の顔面めがて飛んでくる。五条は横に飛び球体を避けるが、再び球体は空中で止まり五条めがけて飛んでくる。
「そう言う術式か…って何処行った?」
蹴り飛ばした筈の少年が見えない。五条は飛んでくる球体を避けつつ反転術式で潰れた拳を再生する。
(まるであの日の再現だな)
五条は辺りをぐるりと見渡す。ここは公園、遮蔽物はあまりない。すぐに見つかる筈…なのだが少年の姿は一向に見えない。
「どこ行った…」
明らかに速度が遅くなった球体を悠々と避けつつ少年を探しているとトイレの近くの壊れたフェンスに寄りかかっている首と四肢が捻れた呪霊が目に入る。
数分前に五条が殺した呪霊だ。
「…何で消えていない?」
五条の六眼もあの呪霊は完全に活動を停止していると読み取っている。なのに消えていない。呪霊と言うのはもともと活動を停止、俗にいう死んだ場合体を構成している呪力が空中に霧散して死体は影も形も残らない。なのにあの呪霊は消えていない。
「何か…おっ?」
五条が呪霊に気を取られた瞬間背後から『トッ』と言う
振り向くと少年がいた。
この少年五条に蹴られた後、視線が外れたと判断した瞬間もう一つ『不可進』を発動しそれに乗っかるようにして空に逃げたのだ。しかも影でバレないように影が出来ないくらい高くだ。
普通なら『不可進』をもう一つ発動した時点で呪力を感じ取られ何かしたとバレる。
だがこの少年の呪力を五条は感じ取れない。
勿論少年は五条が自分の呪力を感じ取れないという事を知らない。だが少年は『術師は術式が発動する際の呪力の膨らみを感じ取れる』という事を知らない。だからこそ少年はこの策を実行し、この少年だからこそ最強に通じた。
少年は今日一番の速度で五条に接近する。
(お前がきたって何もできな…いや何かくる)
五条は少年に身体の正面を向けた。それは今回の戦闘で初めて少年に対し『警戒』をした事の証明だった。その判断は正しかった。が、それが少年の狙いだった。
少年は不敵に笑い一言、
瞬間五条の四肢が背後から何かに掴まれた。
「あ?」
後ろを見ると最初に殺した筈の呪霊が倒れていた場所から四本の腕を伸ばし五条の四肢を掴んでいた。腕が伸びている事、生きている事にはさほど五条は驚いてはいなかった。問題は五条に触れていると言うところだ。
(無限が消えている?)
振り解こうとするがその前に仕返しとばかりに腕と脚を握り潰される。しかし五条ならばその程度一瞬で反転術式で回復できる。だがその一瞬が少年はどうしても欲しかったのだ。
少年は反転術式を発動される前に五条のへそ辺りに触れる。
「間に合った」
──術式反転 『侵』──
少年は全力で五条を侵食しようとした。だが五条の反撃を警戒して2秒程しか触れ続ける事ができなかった事と、五条の呪力により阻まれた事が重なり侵せた部分は3センチにも満たない小さな黒いシミの様なものだった。もちろんこのままでは何も意味が無い。だがこれが少年の限界で、どうしようもなく埋まりようもない地力の差だった。
だから少年は五条自身に首を絞めさせる。
五条は術式でエマの腕を術式で捻り反転術式で回復した。いや、してしまった。
「ッ!?」
確かに腕と脚の傷は回復した。しかし同時に少年に侵された部分も広がり五条の左腹部を完全に侵した。
「これは…」
(呪力が上手く操作できない)
五条は直ぐに術式の仕組みを把握し、無下限術式のオートを切ると同時に自身の脳を常時回復させるための反転術式も停止する。
「やっぱり仕組みはすぐバレるか」
触れてすぐに距離をとった少年が五条に向け歩いてくる。それと同時に五条の背後からエマが近づいてくる。
「確か術式って詳細を伝えれば効果が高まるんだっけ…」
少年はどこか半信半疑で術式を開示し始める。
「ソレ『侵』って言って相手を自分の正エネルギーで侵す事が出来るんだけど、その侵食した部分の機能を停止させる効果があるんだよ。勿論呪力の流れも止めれる。まあ、アンタは強すぎるから阻害程度しかできないけど。多分今アンタは呪力操作がやりづらいと思うんだけどそれが原因ね。それとコレは最近気づいたんだけど正のエネルギー…まあ反転術式だな。それで回復しようとすると相手の回復しようとした正のエネルギーを利用してその範囲を拡大出来るんだよ。便利な術式だ」
少年は拳を構える。
五条の背後のエマも再び腕を四本にし構える。
「正直ここまで運が良かった。アンタが何故か俺を直ぐに殺さない事、アンタが何故か常に反転術式を発動していた事。本来だったら俺の術はアンタに効いてない。けど殺さなかった訳を何故かなんて聞かないし、どうでもいい」
少年は濁った眼で五条を見据える。
「俺は死にたくないから俺を殺すあんたらを殺す」
そんな少年を五条も六眼で見据える。そして溜息を吐いた。
「調子に乗るなよクソガキ」
最後まで読んでくれてありがとうございまーす。それと誤字脱字報告も同時に感謝いたします。出来るだけクライマックスや、熱いシーンでは誤字脱字を注意して書いているつもりなんですがあったら申しわ毛ないでやんす。
蛇足ですが、ここまで五条が一方的にやられているのは殺さないように手加減しているからですよ。本気出せば出会って3秒で殺されております。殺さない理由?なんででしょうね?(すっとぼけ)
そういえばみんなにショタ×高身長女性が激刺さりしていて同志って結構おるんやなって思いました。
最後になりましたが原作前のタグ追加しまーす。
窮鼠猫を…?
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噛む
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噛めない