天与呪縛観察日記   作:てんてりす

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今回は少し短めです。





窮鼠猫を… 其の五

少年達がいる町から遥か北の森。そこではエマと五条の戦闘…ではなく五条と大量の呪霊達が激戦を繰り広げていた。

 その呪霊達は木の呪霊、石の呪霊、砂の呪霊、草の呪霊と種類こそ多くは無い。が、問題はその数にあった。

 上と左右、隙間が無いほどひしめき合う呪霊。涎のような何かを口のような箇所から垂れ流し、ギロギロとした目で獲物である五条を睨む。

 しかし、恐怖で震えあがりそうな光景の中心でも五条の最強は揺るがない。そもこの程度の呪霊達では五条に傷一つ付けれない。

 五条は取り囲んでいる百の呪霊を『蒼』で押し潰し、一塊になり突っ込んで来る三百の呪霊を『赫』で吹き飛ばす。それでも呪霊の津波は止まらない。五条の息の根を止めようと襲いかかる。

 

 それらを肩についた埃を払うように五条は殺し、祓う。

 

「どんだけいるんだよ」

 

 それは珍しく出た五条の愚痴。それもその筈、五条は周りの呪霊をもう千以上祓っている。それでも減らない呪霊達。寧ろ増えている気さえする。いや実際増え続けているのだろう。その元凶は大量の呪霊達をジャミングにし六眼から隠れている。

 

(しっかし、呪霊を産み出す術式ねぇ…)

 

 六眼で看破した情報を思い返しながら木の呪霊の頭と思われるところを引きちぎり、石の呪霊を叩き割る。五条に飛びかかり無限に止められ宙に浮いている木の呪霊を回し蹴りで真っ二つにする。

 

「それだけじゃない様に見えるけど」

 

「いや、それだけだ」

 

 その後ろから聞こえた声に『蒼』で返答する。

 それに耐えられる訳もなく『蒼』に抉られた声の主は足だけを残し上半身が無くなる。だがただ殺すだけではこれは祓えない。それは五条もこの闘いで嫌と言うほど理解している。

 残った足からぐぢゅぐぢゅ、ぐちゃぐちゃと生々しい音を立てながら再生されていく。口まで再生されたところで頭の内側から文字が書かれた札が現れ顔の上半分を覆う。その後頭の天辺から一気に髪が生え足のくるぶしまで伸び完全再生を成し遂げた。

 

 その姿は先程まで五条と闘っていたエマと瓜二つ。しかし、多少違う部分がある。一つは服装。エマの服装はボロボロの和服だったが、それの服は綺麗な和服で汚れなどひとつもない。二つ目は札の数。顔の全域を覆っていた札は剥がされた為に数が減り、顔の下半分が露見してしまっている。

そして最も重要な三つ目。それは術式の変化だ。エマの術式はエマ自身を変える能力だった筈だ。けっして呪霊を産み出すなんていうものでは無い。

 

 だが五条の『六眼』はそう見抜いた。

 

「礼儀のない奴だ。お前の質問に答えてやったというのに」

 

 呪霊は「やれやれ…」とため息を吐く。

 顔が完全に札に覆われている時とは雰囲気、術式は全く異なる。別人だ、と言うのは簡単だが五条の眼は同一の肉体だと言う。だったら目の前の存在は何なのか?

 

「誰もお前に聞いてなんていないよ」

 

「む?あぁ、すまんな。わたくしの知り合いが質問好きだったからな。癖だ、許せ」

 

 それはパンっと音を立て、手を合わせた。

 

 

ー領域展開 延延螺旋・蠱道ー

 

 

 それは余りにもにも自然すぎ、展開速度が速過ぎた。

 その間わずか0.01秒。それがいかに速いか、五条の対応が遅れたと言えばその速さが分かるだろう。

 しかし、真に恐ろしい所はこの展開速度はただの技術で行っているということである。なにか特殊な方法を用いての展開速度を得ている訳では無く純然たる技術。ただやる事もなく封印されている間ひたすら己の領域を磨き続けた。この技術はその何百年の研鑽と努力の結果である。それはどうしようもない状況からの逃避だったのか。それとも打開策が領域にあると考えたのかは本人にしか分からない。

 けれど、その研磨はこうして身を結ぶ。

 

 遅れながらも領域を展開しようとする五条。だが目の前にいる存在の領域は現れていない。しかし、確実に領域は展開されたはず。ならば何故?

 

「誰が貴様と今の状態で領域勝負などするものか。阿呆め」

 

 目の前のそれの術式は焼き切れる。しかし既に領域の展開と同時に術式は発動している。

 

 領域を展開されていた時間は展開速度と同様に僅か0.01秒。

 そして展開した領域の範囲は驚異の直径400m。

 

『呪霊を生み出す』術式の発動条件は触れる事。

 領域の必中効果で触れたものは五条以外の領域内全て。

 

 つまり、呪霊の爆発的増殖だ。

 

 しかし分かっている。いくら雑魚の呪霊を産み出そうとも。アレには届かない。ならば最強に届きうるモノを作るまでだ。だから領域で同時に触れた。そうすれば触れたモノの命は少なくなり、より強く、大きいモノが産まれるのだ。

 

 五条は気付く。

 この森一帯、そして大地が呪霊へと変質していることに。

 

 その瞬間大地が揺れ、割れ、纏まり、まるで一つの生命体の様に天へと昇る。

 そしてその大地は竜へと変貌していく。

 口が割れ腕が生え、牙と鱗、爪は鋭い岩で構成されていき、その長い胴は大量の砂で構成される。

 

「ふむ…『特級呪霊・土竜』とでも言おうか」

 

 「良い質だ」と頷きながら、大地を丸々竜の呪霊に変質させた為に落下していくエマと思われるモノ。その足元に領域を展開した際に触れた木々が収束していく。

 その木々は捩れ、互いに融合し巨大な腕と足に成り宙に浮く。そして脚と腕のあらゆる箇所から目が開く。

 

「おお、此方も良い質ですね。『特級呪霊・木木連』…少々駄洒落臭いですがまあ所詮急造のモノですし名前は凝らなくてもいいか」

 

 空を泳ぐ大地。宙に浮く木々。抉れた大地付近から此方の様子を伺っている低級呪霊。そしてその巨大な木の呪霊に乗っているエマの様な存在。状況は…未だ五条が優勢なのは変わらない。

 五条と呪霊達はお互い宙に浮き、睨み合う。

 

「随分と多芸だね」

 

「まあな。しかし、これだけのモノを造ろうとお前には届かん」

 

「うん。それはそう」

 

 それは非常にムカつくことだが事実だった。

 

「だから、こうする」

 

 パチンッと指を鳴らす。

 それを合図に辺り一帯の低級呪霊が南に意識を向ける。その理由は一つ。

 

 

「わたくし達の宿主を殺せ」

 

 

 その言葉を皮切りに低級呪霊は雪崩のように南へ一心不乱に進んでいく。

 だが其れを五条が黙って見過ごすと?

 

 五条は呪霊達に手を向け─「見過ごさないだろうな」─邪魔が入る。

 

「だからコイツらを産んだ」

 

 木の腕がお互いに絡み合い印を結ぶ

 

ー領域展開 森臨網羅ー

 

 木の呪霊からゆっくりと領域が広がる。

 その速度は先程の展開よりも緩慢で欠伸が出そうなほどお粗末な物だった。五条は捉えれる前に術式で離脱が可能と判断し後退する。

 

 しかし、何かが背中に当たった。

 

「『千変万化』だったかな?」

 

 それは、千切れた人の手だった。

 瞬間五条の術式は停止する。直ぐ様手を払い除けるが時すでに遅く、領域は五条を捉え閉じ切っていた。

 

「その手は先程お前が殺しまくったわたくしの分身達の手だ。お前に雑魚を当てがっている間に探して呪霊に変えておいた。いつ気づかれるかヒヤヒヤしておったわ」

 

 余程五条を領域に閉じ込めたのが嬉しいのか喜色満面で語る呪霊。

 

「ああ、領域展開はしないほうが良いぞ。わたくしの術式はまだ回復していないが『土竜』は既に外で待機している。つまり貴様が領域を発動すれば術式無しの状態で次の領域に閉じ込められる」

 

 領域の天幕にギョロギョロと目が創られ始める。

 

「ここからは時間との勝負だ。白髪よ」

 

 木の呪霊は再び絡み合い別の印を結ぶ。

 

「宿主が殺され我らの()()()()()()()()、お前がこの状況を打破するのが先か」

 

 エマと思わしき呪霊の顔から札が一枚剥がれ()()()()が二本生える。

 

 

「さあ、呪い合おうか」

 

 

 






 お久しぶりです。

 今回短くて申し訳ないです。キリが良すぎました。
 次回は言葉の矛盾してる意味やらなんやらがわかりまっせ。
 
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