朝起きて、学校へ行って。友達といっぱいおしゃべりして。帰って、明日の事を考えながら寝る。
それがわたしの日常。だけど、そんな日常はある時終わった。
目の前には大きなブリキの怪物と意識を失った男の子。わたしの傍にはケガをした小さな動物。
「小娘、この男が大事なのであろう?ならば、勝負を受けるしかないのである」
大きなブリキはわたしに問いかける。その人を取り戻すかという意思を。
「ボクと契約して力を手にして欲しいんだ」
小さな動物はわたしに問いかける。その人を取り戻せる力を手に入れないかと。
その日、わたしは決意した。目の前の大事な人を守る為に。そして、理想のわたしになるために。
そう、わたしの。
─バトルスピリッツ マジカル☆レナ─
★★★
授業も全部終わった放課後。クラスのほとんどは部活動にいそしんでいる中。
ここ
「はぁ……」
ふと漏れたため息が憧れの人を更に遠ざける。
「上條さーん!頑張ってくださぁい!」
声援を受ける短髪の男の人はそのままゴールまで駆け抜けてゆく。そして、勢いよく蹴ったボールがゴールへと入った。
「キャーッ!!カッコいいー!!」
スポーツ万能、成績優秀。現役の生徒会長で学校中の生徒が頼りにする人気者。
サッカー部で活躍している彼の周りには、応援の為に駆けつけた多くの女子が集まっている。
そんな彼をわたしは二階の窓から眺めているだけ。
「……私も可愛くなれたらいいのになぁ」
「あら、竜音さんはこんなのにも可愛らしいのに。貴女と交際したいと思ってらっしゃる殿方もいるはずですわ」
わたしの呟いた言葉に反応して、私の髪の毛を撫でる目の前の女の子。
銀色の髪の毛をなびかせながら、まるで聖母のような微笑みで私のことを見つめてくる。
なんで彼女のようなお嬢様がわたし達のような普通の子が居るこの学校に通っているのか分からない。
前にも理由を聞いたことはあるんだけど、この学校にはとても面白い存在がいるからだそうだ。
「あーあ、俺ももっと女子らしくなりゃいいんだけどなぁ。そうすりゃ男子どもからモテるのによー」
不貞腐れながら、お尻をポリポリ掻くショートヘア―の女の子。
この子は
女子陸上部に所属する
本人は無自覚らしいけど、ストイックに生活する仕草のカッコ良さからクラスの女の子人気も高い。それに後輩の女の子からラブレターを貰ったくらいだ。透ちゃん本人は凄く困っていたけどね。
「ふふ。そんなに卑下することはありませんわ。ありのままの藍井さんでいいと思いますわよ」
「そ、そうかな?まぁ夕美が言うなら間違いないよな!」
夕美ちゃんの言葉に励まされたのか、透ちゃんは慌てて髪の毛をかきはじめる。
わたし達3人はこうして放課後お話をするために集まっている。話す内容はいつも決まっているワケじゃないけど、3人集まれば自然と話がはずむんだ。
「そういえば、夕美ちゃん。こないだ貸して欲しいって言ってた漫画、持ってきたよ!」
「まぁ、楽しみにしてましたの!」
「へへっ、レナ好きだよなぁ。メルヘンチックだけど」
わたしがカバンから取り出すのは漫画の表紙にはフリフリの可愛い服を着た女の子と元気よく手を振っているハムスターが描かれている。
わたしの憧れ。それは─。
「『魔法少女アゲハ☆キラハ』の最新刊!読んでみて!」
そう、上條さんと同じくらい憧れている存在。それが魔法少女。
わたしも中学生。魔法少女が
だけど、わたしに勇気をくれる存在なんだ。それが作り物でも否定はしないよ。
色んな魔法少女の漫画やアニメ、小説があるけどやっぱり『アゲハ☆キラハ』が一番かな。子供の頃から読んでるってのもあるけどね。
夕美ちゃんは真剣な表情で読み始める。時々ものすごく肩が上がったり、口を必死に抑えたりするけど、それが夕美ちゃんなりの読み方なんだと思う。十数分後。夕美ちゃんが読み終えて、満足そうな顔をしていた。
「ふぅ……この巻の話も面白かったですわ!」
「でしょでしょ!この話は夕美ちゃん気に入ると思ったんだ~」
「特にルナアーク・カグヤのバーストが決まった時は最高でしたわね!相手の驚いた表情ときたらたまりませんわね」
「ん?ルナアーク・カグヤってバトスピのカードじゃないのか?」
疑問に思った透ちゃんがわたし達に聞いてくる。さっき話していたのは主人公の魔法少女の隣に着物を着た女の人が出ているシーンの事だ。
「うん。『アゲハ☆キラハ』はね、バトルスピリッツのカードを使って戦う、魔法少女モノなんだ」
そう。アゲハ☆キラハの特徴……というかウリなのが魔法少女というジャンルにカードゲームであるバトルスピリッツを組み合わせているトコかな。
「けど、何でバトルスピリッツで戦ってるんだろ。不思議だよね」
「それはバトルスピリッツがとっても楽しくて人気のカードゲームだからでしてよ?」
夕美ちゃんの言う通り、バトルスピリッツの人気は他のカードゲームの群を抜いて凄い。
カードゲームにハマりやすい男の子だけじゃなくて、クラスの女の子もやってるぐらいだ。当然、ルナアーク・カグヤに興奮していた夕美ちゃんもバトスピをしている。
「おふたりはバトルスピリッツをはじめませんの?」
「オレはパスかなー。だってカードゲームって色んなこと考えなくちゃいけないだろ?それで脳みそパンクしちまいそうになるんだよ。レナはどうなんだ?昔から好きなんだからやったことあるだろ?」
「じ、実は……あんまりやったことないんだ……」
「えーっ!?そうなのかぁ!?」
「ルールは分からないけど描写を楽しんでいるって感じかな。だから読むときはだいたい雰囲気で……」
「なるほどなぁ。オレは兄貴達が毎晩遅くまでやってて、騒いだ挙句おふくろに怒られてるイメージだなぁ」
「おふたりが始めるのでしたら、ワタクシがルールを教えて差し上げますわ。いつでも始めていいのですよ?」
夕美ちゃんがソワソワしながら、目で輝かせてわたし達を見てくる。夕美ちゃんをこんな風にさせてるのも彼女がわたし達と一緒にバトルスピリッツで遊びたい気持ちでいっぱいなんだろな。
「そういえば、上條さんもバトルスピリッツをプレイしているカードバトラーだとお聞きしましたわ。確かとなり町のカードショップの大会で見かけたという噂もありますわね」
「へーっ、あのかいちょーがねぇ。意外……いや、あの人なんでもやる人だからそうでもないか……?」
それは全然知らなかった。わたしもバトルスピリッツを始めたらまた上條さんと……。
そう考えていた時、透ちゃんと視線が合った。
「んん~?レナ、今、かいちょーのこと考えてたろ?」
「へっ!?」
想定外の言葉に変な声が出る。まるでエスパーのようにわたしの考えてることを当てちゃったんだもん。
「なんだ、図星かよー。今日こそかいちょーに告っちまいなよ!」
「……ゲホッ!な、なに言ってるの透ちゃん!」
「そんな悠長な事してたら誰かのもんになっちまうぞ~!それでもいいのかァ~?」
「だってレナさ。かいちょーとはご近所さんなんだろ?そんなことクラスの女子が聞いたら羨ましがるぜ」
「そ、そうだけど……」
透ちゃんの言う通り確かに上條さんとは家が近いし、子供のころはよく二人で遊んでいた。けどそれも昔の話だ。
いつからだろ。友達じゃなくて先輩として。憧れの人として見るようになったのは。
「そんなに不安がることないって!レナにはこれがあるだろっ!」
瞬間、透ちゃんの手のひらがわたしの胸を掴んだ。そしてそのままわたしの胸をモミモミと揉んでくる。
「ひゃんっ!?な、なにするの!?」
「こんなにデカいおっぱい持ってんだから大丈夫だって!」
「からかわないでよぉ!それに他の人が見てたらどうするの!?」
「皆とっくに居なくなってるっての。しっかし、本当にデケェよなぁ。こんなの兄貴達が持ってるエロ本に出てくるような大きさだぞ」
そ、そんなエッチな本と比較されても……。透ちゃんは時々こんな感じでセクハラ行為(?)をわたしや夕美ちゃんにしてくる。
こうなったワケは三人のお兄さんの影響だって透ちゃんは言い張るけど、男のヒトってみんなこういう風にエッチなのかな……?
こういう風にセクハラをしてきた透ちゃんは少しおかしくなっちゃうんだ。
「だ、だめですわ……。竜音さんと藍井さんはまだ中学生……そんな仲になってはワタクシ……!!」
そういえば夕美ちゃんも時々おかしくなることがあるんだよね……。すごく独り言が多くなっちゃうみたい。
「そうだよな……。レナと俺は同じ中学生だよな……。なのに……!!なのに……!!」
ドンっと大きな音を立てて、机を叩いた透ちゃん。そして、窓側へと近づいて窓を開けると。
「どうして俺の乳はデカくならないんだァァァァァ!!」
彼女は窓から思いっきり叫んだ。その声がグラウンド……いや、学校中に響きわたる。この学校の名物にもなって(しまって)いる透ちゃんのおっぱい叫び。透ちゃん曰く、突発的に起こるものだから止めようがないらしい。
先生が何ども注意しに来た事あるけど、途中から注意することを諦めちゃってたみたいだ。
「なんでだよぉ……。兄貴が三人も居るから神様、俺のことも男だと思って育たないようにしちまったのかぁ……?あんまりだぜ……」
「藍井さんの三人のお兄様は一体どういったご関係なんでしょう……。ハフ…ハフ…」
透ちゃんは胸にコンプレックスを持っている。だから、胸の事になると自我を忘れちゃうときがある。
わたしはあっても困るときが多いんだけど、前にそのことを言ったら……。
『あるやつにないものの苦しみはわかんねェ!!女はな女子力と乳なんだよ!』
って怒られたっけ。何を言ってるのかはちょっと分からなかったけど……。
……さっきからものすごく興奮している夕美ちゃんはもう気にしたら負けなのかな。
落ち着かなくなってしまった二人を元に戻すかのように六時を知らせるチャイムが鳴った。
「はっ!もう六時かよ!帰えんねぇと!」
「そうですわね。お迎えに来ている
夕美ちゃんの提案で今日はお開き。帰る準備を終えたわたし達はそれぞれ別れることにした。
「夕美ちゃん、透ちゃん。また明日~!」
「じゃーな!」
「ごきげんよう。また明日お会いしょう」
手を振って、夕美ちゃんと透ちゃんにバイバイする。
さてと。わたしも帰らなくちゃ。教室を出て、帰ろうとしたその時。
「待って、レナさん!」
わたしを呼び止める声。それはわたしのクラスの担任の中谷先生だった。
「中谷先生、何か用ですか?」
「帰るところを呼び止めてごめんなさいね、レナさん。今日の日直日誌なんだけど貴女の報告とサインがなかったからもらいにきたの」
そうだった!他の事に夢中で今日の日直日誌をやることを忘れてた!
中谷先生はそれに気づいて、わざわざ教室まで来てくれたんだ。
「す、すみません!今から書きます!」
「大丈夫よ。誰にでもミスはあるもの。簡単でいいからお願いするわね……。イテテ……」
中谷先生はお腹を抑えながら、その痛みを耐えていた。
「無理しちゃだめですよ。わたしが出来る事はわたしがやりますから」
「大丈夫よ。みんなと少しでも多くの時間を過ごしたいからギリギリまで頑張るつもりよ」
先生の体の心配をしながら、わたしは今日あった事とサインを日誌に書いて、中谷先生に手渡した。
「ありがとうね、レナさん。気を付けて帰るのよ」
「そうします。中谷先生さようならー」
「さようなら、レナさん」
先生と別れた後、階段を降りて真っすぐ下駄箱へと向かう。その時だった。
(う、うわぁぁぁぁぁああああ!!)
……悲鳴!?その声はわたしがよく知っている人の声に間違いなかった。
「上條さん……!!」
大きな叫び声だったのに、グラウンドに居るサッカー部や野球部は何事もなかったのかのように自分の部活動に打ち込んでいた。
何かワケの分からないことが起きていると考える暇もなくわたしの体は動き始めていた。
(助けて…!誰か……!!)
今度は上條さんとは違う声が聞こえていた。しかも、さっきとは違って頭の中に響く感じがした。
(早くしないとこの男の子が死んじゃう……!!)
「えっ……!?」
わたしの心に不安の二文字が浮かんできた。
何が起こっているのかは分からないけど、上條さんが危ないんだ…!だけど場所が分からない。
「そうだ……」
一つ思いついた。正直、成功するかは分からない。というよりかはそれが出来る事なのかが怪しい。
けど、わたしはそれ以外の方法が思いつかない。だから。ダメ元でもやってみるしかない……!!
(あのっ、わたしの声が聞こえますか!?)
(良かった……!!ボクの声が届いたんだ!)
いわゆるテレパシーといわれるもの。
(それは後から話すから!とにかくその男の子の場所を教えて!)
(分かったよ!このテレパシーを通じてキミにボクが見えている風景を見せてあげるよ!)
目の内側にわたしが見ている景色とは別の風景が映し出される。その風景を見てわたしは確信した。
「体育館近くの物置小屋……!」
(今すぐそっちに行くから、待ってて!)
(ありがとう!だけど、出来るだけ早く来て欲しいんだ。アイツが来る!)
(アイツって誰!?誰なの!?)
慌ててテレパシーを送り返すけど返事がない。
もしかすると何かが起こってテレパシーが切れちゃったんじゃないかと思ってしまう。
「まってて、絶対に助けにいくからね、しーくん……!!」
わたしは全力で走る。人生で今までにないくらいの速さで校舎から離れた物置小屋を目指していく。
大きく目立つ体育館の近くまできて、わたしの想いも加速する。早くしーくんを助けたかった。
「もう少し……!!」
そこには倒れている一人の男の子がいた。
「しーくん!しーくん!しっかりして!」
「……レ、ナ……?」
わたしの呼びかけに対して、目を覚ました男の子はケガをしているのに笑っていた。
「しーくんって久しぶりに……聞いたよ」
「……!」
今気づいた。必死だったから。つい昔の名前で呼んでいたんだ。
「ははっ。俺が中学入ってから、お互いなんか変わっちまったよな……。近くに住んでいるのに、ものすごく離れちまってさ」
「そうだね……」
「なぁ、また会ったらしーくんって呼んでくれないか。俺もレナっちって呼ぶから……」
……!!レナっち。昔、しーくんがわたしに付けていたあだ名だ。覚えててくれたんだ。
「うん……。絶対呼ぶから……!!」
「なら良かった……。早く、逃げろ……!デカい怪物が……おそって……」
その言葉を残して、しーくんは瞳を閉じてしまう。
「うそ……。しーくん!しーくん!」
「大丈夫だよ。気を失っただけみたいだ」
「誰!?」
謎の声。その方向へと思わず振り返る。物置小屋からちょこんと現れたのは白い毛並みの動物。
大きさは子犬や子猫くらいで背中に小さい羽が生えてる。
「あ、あなたは……?というか……喋った!?」
「ボクはエヴォ、妖精さ。キミがさっきボクとテレパシーしていた子かな?」
「そっ、そうだよっ。というか妖精!?」
「そんなに驚くことかなぁ」
「普通は驚くよ!」
妖精って本当に居るんだ……。空想の生き物だと思ってたからビックリしてる。けど、驚きはそれだけじゃない。
「そうだ……しーくんを保健室に連れていかなくちゃ!」
わたしは小さな肩にしーくんの腕を乗せて、起こそうとする。当然、しーくんの体はわたしより重たいけどなんとか運ぶしかないんだ。
「待って!アイツがまだこの辺にいる!」
「ねぇ、さっきからあなたが言ってるアイツって誰なの……?」
「ボクを追ってこの世界に来た危険なヤツなんだ。その名もアンガー将軍。ボクと同じ妖精界から来た存在さ」
妖精界。また一つ不思議な言葉が増えた。そんなことを聞く暇もなく目の前の妖精さんは話を続けていた。
「ボクを連れ去ろうとするアンガー将軍の攻撃からキミの友達はかばってくれた。その時の攻撃で彼は倒れちゃったんだ」
……しーくん。妖精さんを守るために頑張ってたんだ……。
「そのあと、ボクはアイツから逃げる為に必至で応戦したんだけど、今度はボクがケガしちゃってね」
よく見ると妖精さんの体には切り傷や砂がいっぱいあった。
「た、大変……!!あなたも保健室に連れてかなくちゃ……!」
「ボクは大丈夫さ。それよりアイツだ。アレが切れたから補充しにいっていると思うけど、それも時間の問題。そろそろ戻ってくるはずだ……!」
その言葉をちょうど言い終えた時。突然大きな揺れが起こった。
ズシン、ズシンと鳴り響く振動がこっちにだんだんと近づいてくる。
「気をつけて、アイツだ!」
「っ……!!」
「ムッ。補給から戻ってきてみればまた人間。しかも女であるか」
わたしの目の前。そこにはブリキの人形を何倍にも大きくした存在が立ちはだかっていた。
エヴォが言うには同じところから来たらしいけど、ここまで違っているとは思わないよ……。
「小娘、そいつを渡すのである」
「……嫌だ。しーくんは絶対渡さない!しーくんはわたしが守るもん!」
「……我が輩が欲しいのは人間ではなくて、ソイツなのであるが……」
そうだった。エヴォ自身が言ってたっけ。……じゃあ今のは完全にわたしの勘違いじゃん!
気付いた時には顔が真っ赤になっていた。どうしよこんなに恥ずかしい事しちゃった……!
周りの女子にバレたらどうなるか分からないよぉ……。
「……?」
その時、違和感に気づいた。体育館の近くなのに人の気配がぜんぜんしない。
少なくともここは学校……私たちの居た世界じゃない。
目の前に広がる荒野の景色がわたしに起こっていることは現実だということを証明するかのようだった。
「気づかなかったであるか?我が輩の空間に取り込まれていることに」
「バトルフィールド……!アンガーまさか!?」
「フフフ……。エヴォ、お前の考えている通りなのである。だが、そのまえに……。フン!!」
大きなブリキの人は地面に拳を打ち付ける。その衝撃がこちらへと伝わってくる。
「きゃあっ……!!」
だけどその衝撃はわたしを狙ったものじゃなかった。この空間に一緒に取り込まれていたしーくんだった。
衝撃がしーくんの体を大きく浮かびあがらせて、それをキャッチした。
「手荒な真似になってしまってすまないであるな。だが、命はちゃんと保障するのである。我が輩の衝撃待魔法の精度に狂いはないのであるからな!」
ブリキの人は自慢げに高笑いをする。そして咳ばらいを一つしてから、こちらを見つめて来た。
「小娘、この男を取り戻したいのであろう?」
「そうだよ。その通りだよっ!しーくんを返して!」
「ならば、我らが世界の取り決めに則り……。貴様にバトルスピリッツによる
「バ、バトルスピリッツってあのカードゲームの?」
「そうである。我が輩とのバトルに勝てばこの男を返してやるのである」
どうしよ。『アゲハ☆キラハ』は読んでいるけど、バトルスピリッツのやり方なんて分からない。
けどバトルしなかったらしーくんは戻ってこない。一体どうすればいいの……!
「レナ、キミの友達を守る方法が一つだけある」
わたしが悩んでいる最中、エヴォが声を掛けてくる。
「方法って……?」
「唐突で驚くかもしれないけど……」
「ボクと契約して力を手にして欲しいんだ」
「えっ……?」
「そして彼とのバトルに勝ってほしい」
エヴォの突然の言葉。驚かないで……?驚かない方が無理あるよ……!!
「け、契約!?そんなこといきなり言われても困るよっ!バトルスピリッツをするだけだよね!?」
「落ち着いて聞いて!僕らの世界のバトルはお互い、大切なものを賭けて行う勝負。あくまでも勝負だから死にはしない。けど、ライフを削りあう中で大きなダメージを受けちゃうんだ。」
「レナ、キミは人間だ。そんな攻撃をくらっちゃったらキミもタダじゃすまない。死なないとはいえ、重傷を負う。そうなったら誰が彼を守るの?」
「……っ」
「ボクならキミに力を上げて、守って上げられる。この力があればキミだけじゃない、キミの大切な人だって守れる!」
大切な人を守る……。
『なぁ。また今度あったらしーくんって呼んでくれないか。俺もレナっちって呼ぶから……』
そうだ。わたしは絶対に取り返さなくちゃいけない。しーくんを取り戻して、あの時みたいに名前を呼ぶんだ……!!
だから……わたしは。
「……エヴォ。わたし、決めた。あなたと契約する。誰かを守れる力が欲しい!」
「レナ……ありがとう!なら、このデッキを受け取って」
エヴォが目を閉じて、何かを呟く。するとわたしの手の上にカードの束、デッキが現れた。
「デッキを受け取れば、ボク達の契約が成立する。ボクはキミの力になるよ!」
紫色に光輝くデッキをわたしは両手で受け止める。手にした瞬間、わたしの中に何かが流れ込んでくる。
何だろう、体中から凄い力を感じる……!!
「それがボクがあげた力さ!レナ!なりたい自分をイメージするんだ!それがキミの大事なモノを守る力になる!」
わたしがなりたいモノ。そんなの決まっているよ。子供のころから憧れ続けたもう一つの
それをイメージした時、わたしの髪の毛が伸びていく。そして、現れた紫のリボンが髪の毛をまとめて、ポニーテールに整えてくれた。
服もさっきまで着ていた制服とは違って紫を基調としたフリルとドレス。
ミニスカートから下は黒色のオーバーニ―ソックスと赤いハイヒールを履いていた。
着てみて実感する。なれたんだ、憧れの魔法少女に。
「それがキミの望む姿なんだね。レナ」
「魔法少女……これがわたしの
バトルスピリッツをやるのは初めてだし、正直に言うともの凄く不安。
だけど、『バトルスピリッツをやったことない』。
そんな理由で逃げたくはなかった。必ずこの
「準備ができたようであるな。それでは始めるのである」
始める時、言うべき言葉が頭の中に浮かんできた。
「「ゲートオープン、界放!!」」
はじめましての方ははじめまして。
筆者の作品を読んでいただいた方はお久しぶりです。
置き物です。この度始めました新連載『バトルスピリッツマジカル☆レナ』。
本来別の作品の連載を計画していたのですが、そちらの方の制作が難航しており、アイデアが浮かんだこちらの連載をスタートいたしました。といっても手を決して抜くつもりはありません。完結まで全力で臨む所存ですので、お付き合いいただければ幸いです。
次回は主人公・レナとアンガー将軍とのバトル開始です。お楽しみに。
それではまた次回。それでは。