バトルスピリッツ マジカル☆レナ   作:置き物

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第2話【初陣】

広がる荒野。バトルフィールドと呼ばれている(らしい)この場所で。

わたしとブリキの……将軍さんは向かっていた。その理由はただ一つ。

これからわたし達はお互いに譲れないものを賭けて、バトルスピリッツで戦う。

手元にはわたしが戦うためのデッキがある。

 

これがわたしの初めてのバトルスピリッツ。

何だろう、凄く胸がドキドキする。緊張……してるのかな。

 

「小娘!先行はくれてやるのである!」

「は、はいっ!わたしからですねっ!?」

 

将軍さんの唐突な大声に思わずビックリする。

先攻を譲ってってくれるっていうけど、わたしはバトルスピリッツのルールについてはあまり詳しくない。どうすればいいか迷っているときに、エヴォのテレパシーが聞こえた。

 

(レナ、ボクがついてるよ。キミの初バトル、ボクがサポートするよ)

「ありがとう、エヴォ。まずはどうしたらいいのかな……?」

(各ステップを進めていこう。今、ターンの流れをキミの脳内に送るよ)

 

そうして、頭の中にイメージが送られてくる。このイメージ、まるでゲームの取扱説明書みたいだ。

 

(先攻では行わないステップもあるからね。今回は省略するよ)

 

「スタート……ドローステップ。……これはカードを引けばいいのかな?」

(その通り。ドローステップではカードを1枚引けるんだ。ドローしてごらん)

「ド、ドローっ」

(いいね!その調子だ!じゃあまずはこのスピリットを召喚してみようよ)

「この子?」

(うん。やってみて!)

 

「わ、私はナイト・ブレイドラを召喚っ!」

 

召喚の宣言と共に置いたカード。その上にリザーブからコアが自動的に乗せられる。

 

「う、うわっ!?」

 

紫のコアが目の前で光輝いて、砕ける。そしれ、そこから荒野に身体が紫で翼の生えてる小さな翼竜が現れた。

 

ナイト・ブレイドラ Lv1(1)

 

「スピリットが出て来た……!?」

 

(ここはバトルフィールド。召喚したスピリットは使ったカードは全て実体化するんだ)

 

す、すごい……。これがバトルフィールド……!!

 

「ほう。最初からスピリットを出してくるであるか」

 

(次に一番右のカードも使ってみよう)

 

エヴォは次にやるべき事を教えてくれる。

 

「ネクサス……?」

 

(ネクサスはフィールドに配置されて、ボクらを有利にしてくれるカードだよ)

 

確か……左上に書かれている数字がコストだっけ。

さっきのナイト・ブレイドラはコスト0だったからコアを使わなくてよかったけど、このカードは3コスト必要になるんだ。

 

(おっと、ここで軽減シンボルの事も教えておくよ)

「軽減シンボル?」

(数字の隣に書いてあるだろう?その色と同じ数まで支払うコアを少なく出来るんだ)

「うーん……ナイト・ブレイドラが紫のシンボルを持っているから……」

(簡単に言えば引き算みたいな感じかな)

 

あっ、それなら分かるかも。つまり……紫シンボル1つ分を引くからこのカードのコストは1引いて2。なんだかお得な感じ。

 

「ネクサス、カクメイミラージュを配置するよ」

(配置した時の効果で1ドローしよう)

「う、うんっ」

このカードの効果でわたしはデッキからカードを1枚引く。

……アレ?カクメイミラージュを置いたのに全然その姿が見えない。ネクサスは実体化しないのかな。

そう思いながらバトルフィールドを見渡していると、エヴォが言葉をかけてくれた。

 

(レナ、ネクサスはボクらの後ろに現れるんだよ。見てごらん)

 

エヴォに言われるまま、わたしは後ろを見た。そこには丸いテーブルにいくつもの椅子が並べられている風景が出来上がっていた。

 

「こ、これがネクサスなんだ……」

 

スピリットの実体化にも驚いたけど、ネクサスの現れ方にも驚いちゃう。まるで一枚の大きな絵を見ているようだった。

 

(先行は相手に攻撃を行うアタックステップがないからね。ターンを終わろう)

「私はこれでターンを終了するよ」

 

【レナ】

フィールド:ナイト・ブレイドラ Lv1(1)

:カクメイミラージュ Lv1(0)

手札:4

 

 

ターン02 アンガー将軍

 

「我が輩のターンである!まずは戦場を整える!我が輩はネクサス、黄昏の暗黒銀河を配置するのである!」

 

将軍さんもネクサスを配置した。

夜空の上に全てを飲み込んでしまうそうな赤い渦が将軍さんの後ろで展開されてゆく。

 

「我が輩はターンを終えるのである。さぁ、かかってくるがよいである!」

 

【アンガー将軍】

フィールド:黄昏の暗黒銀河 Lv1(0)

手札:4

 

ターン03 【レナ】

 

「私のターン!スタートの次は……コアステップ?」

 

(先攻はこのステップはないんだ。コアステップでは毎ターン使えるコアが1個ずつ増えていくんだ)

 

「コアステップ」

 

その言葉通り、コアステップを宣言するとリザーブにコアが1個増えた。

 

「ドローステップ。次はリフレッシュステップ。これもさっきのターンではやってなかったよね?)

 

(その通り。リフレッシュステップではトラッシュのコアを戻したり、スピリットを回復する重要なステップだよ)

 

「うんっ。リフレッシュステップをしてから、メインステップ。」

 

「次はこの子……!キャメロット・ナイトⅩを召喚!」

 

キャメロット・ナイトⅩ Lv1(1)

 

ナイト・ブレイドラの隣に新しいスピリットが出てくる。

ろうそくみたいに火がともってる兜と紫色の鎧を身に着けた小さな騎士、キャメロット・ナイトⅩ。

 

「この子の召喚時効果。手札から召喚されたら1枚ドローするよ」

 

さっきのカクメイミラージュに続いて、わたしの手札を増やしてくれるカード。

『手札はとっても大切なんだからっ!』って言ってた『アゲハ☆キラハ』のセリフの意味が分かった気がする。手札がなくなっちゃうと何もできないもんね。

 

(ここはスピリットのレベルを上げよう)

 

「キャメロット・ナイトⅩとナイト・ブレイドラをそれぞれLv2にアップ!」

 

わたしの声に反応して、リザーブにあるコアがわたしのスピリット達に乗せられる。

 

(さぁ、アタックステップに入って将軍に攻撃をしかけよう)

 

将軍さんのライフのコアは5つもある。わたしが勝つためには単純に考えても、5回攻撃しなくちゃいけない。

だったらドンドン攻撃しなくちゃ。

 

「アタックステップ!お願い、ナイト・ブレイドラ!」

 

紫の小さな竜がフィールドを駆け抜けてゆく。小柄な体から放たれる蹴りを将軍さんの前に現れるコアがその攻撃を防いだ。そして、そのコアがはじけて、将軍さんのライフを1つ破壊した。

 

【アンガー将軍】ライフ5→4

 

「痛くも痒くもないのである!」

「まだだよっ!キャメロット・ナイトⅩもアタック!」

 

槍を構えながら、可愛らしい騎士が将軍さんの方へと突進してゆく。

 

「そのアタックもライフで受けるのである!」

 

再びアタックを受ける将軍さん。またライフが減ってゆく。

 

【アンガー将軍】ライフ4→3

 

「ふん。まだまだであるな」

 

二回のアタックを受けて、ライフが減っているのに将軍さんは動じない。イタくはないのかな……?

 

「これでターンエンドするよ」

 

(ねぇ、エヴォ。このカード、何?)

 

私が疑問に思ったワケ。それはさっき、キャメロット・ナイトⅩで引いた1枚のカードの事だった。

そのカードは白いモヤモヤに包まれていて、効果だけじゃなくてどんなカードかすら分からなかった。

 

(それは『王』のカード。この世界に来る途中、力を失ってしまったんだ)

 

王……?王って誰だろう。不思議に思いながらわたしは将軍さんの攻撃に備えた。

 

【レナ】

フィールド:ナイト・ブレイドラ Lv2(2)

     :キャメロット・ナイトⅩLv2(2) 

     :カクメイミラージュ Lv1(0)

 

手札:5

 

 

「小娘、教えてやるのである。ライフを減らせばその分勝利に近づく。反面、削られたライフはリザーブへと送られ、使えるコアが増える。つまり、やれることが増えてしまうのである」

 

……将軍さんの言う通りだ。ライフを減らして、勝利に一歩近づいたかもしれない。けど、相手のコアが増えたら、いろんなカードが使える。ライフを削るのは相手にもチャンスを与えちゃうってコトなんだ。

 

ターン04【アンガー将軍】

 

「我が輩のターンである!メインステップ!我が輩はピナコチャザウルスを召喚である!」

 

将軍さんの場に初めて現れるスピリット。それは……。

 

「恐竜……?」

 

ピナコチャザウルス Lv1(1)

 

「続けて、ブロンソードザウルスを召喚である!」

 

さっきのスピリットに続いて召喚されるのは長い尻尾を持った恐竜。先端が何だか剣みたいに鋭くなってる。

 

ブロンソードザウルス Lv1(1)

 

「このスピリットの召喚時効果で相手のネクサスを1つ破壊できるのである!カクメイミラージュを破壊なのである!」

 

長い剣のような尻尾が振り払われて、衝撃がこっちに伝わってくる。そして、その衝撃がわたしの後ろにあるネクサスを破壊した。

 

「わたしのネクサスが……!」

「更に【連鎖(ラッシュ):緑】を発揮なのである!」

連鎖(ラッシュ)……?」

「これも教えてやるのである。連鎖(ラッシュ)は特定のシンボルがある時に追加で効果を発揮できるのである」

「で、でもっ。将軍さんが召喚したスピリットは全部赤色のスピリットだよ……?」

「甘いな、小娘。我が輩のフィールドの黄昏の暗黒の銀河は赤と緑のシンボルを持つ。よって問題なく条件を満たしているのである。連鎖(ラッシュ)の効果でボイドからコアを1個、コイツに置くのである!」

 

ブロンソードザウルス Lv1(1→2)

 

そっか……!ネクサスにもシンボルはあるから、それで条件を達成したんだ。

……って納得している場合じゃない。将軍さんの使えるコアが増えちゃったよ。

 

「まだまだ!来い、羽竜ペドペンナー!」

 

羽竜ペドペンナー Lv1(1)

 

「そして……マジック、ジュライ・ドローを使うのである!このカードの効果で2枚ドロー。更に我が輩の赤のシンボルが4個以上あるので追加で1ドローするのである!」

 

スピリットを連続で召喚して、減っていたはずの将軍さんの手札がまた4枚になった。

一気に手札を三枚も補充しちゃうなんてすごいマジックだ。

 

「ブロンソードザウルスのレベルを下げ、黄昏の暗黒のLvを上げるのである!」

 

ブロンソードザウルス Lv1(2→1)

黄昏の暗黒銀河 Lv1→2(0→2)

 

「行くのである!ピナコチャザウルス!」

 

スピリットの攻撃が来る……!!

 

「お前に場に居る2体のスピリットは前のターンにアタックしてしまっている。疲労状態のスピリットは原則ブロックを行えない。つまり、この三体のアタックをライフで受けるしかないのである!」

 

(レナ、ここはライフで受けるしかない……。ボクの力があると言ってもかなり痛いよ)

 

「大丈夫……我慢するって決めてるからっ……!」

 

たとえどんなにイタくてもバトルしている以上は耐えなきゃ……。

 

「ライフで受けるよっ……!」

 

わたしのライフが赤く輝いて、ピナコチャザウルスの尻尾の攻撃を受け止める。

軽い衝撃がわたしの体を伝わる。

 

【レナ】ライフ5→4

 

「続け!ブロンソードザウルス!」

「これもライフで……!」

 

【レナ】ライフ4→3

 

また、わたしのライフが壊される。さっきより衝撃が強い……!!

 

「羽竜ペドペンナー!やるのである!」

 

「これもライフだよっ……!!」

 

【レナ】ライフ3→2

 

「っ……ああ!!」

 

立て続けに攻撃受けて、思わず声を上げる。エヴォの助けがあっても、その痛みは伝わってくる。

 

(レナ、大丈夫かい……?)

「……うん、大丈夫だよ。まだ行けるから……!」

「小娘、その気概は見上げたものであるな。エンドステップ時に黄昏の暗黒銀河のLv2効果!自分の系統:地竜を持つスピリット3体を回復させるのである!」

 

ええっ!?回復できるのってリフレッシュステップだけじゃないの!?

ネクサスにも色々効果があるって思ってたけど、そんな効果もあるんだ……。

さっきアタックして、疲労したはずの将軍さんのスピリット達はすっかり元気を取り戻していた。

 

「我が輩はこれでターンエンドである!」

 

【アンガー将軍】

フィールド:ピナコチャザウルス Lv1(1)

     :ブロンソードザウルス Lv1(1)

     :羽竜ペドペンナー Lv1(1)

     :黄昏の暗黒銀河 Lv2(2)

手札:4 

 

だけど、まだわたしのライフは2つ残っている。それに……。

 

「わたしはライフが3個も減っちゃったけど、将軍さん言ったよね。『ライフを減らせば、その分だけ相手の使えるコアが増える』って」

「無論である。我が輩はそのリスクを背負ってアタックした。ならば、それを受け止めるだけの覚悟はあるのである!」

「なら……全力でいくよっ!」

 

ターン05【レナ】

 

「もう一度ナイト・ブレイドラとキャメロット・ナイトⅩを召喚!キャメロット・ナイトⅩの召喚時効果で1枚ドロー!」

 

キャメロット・ナイトⅩ Lv1(1)

 

「……!!」

 

わたしが今引いたカード。スピリットの効果の所にX(エックス)の文字が書かれている。

 

(レナ、それがこのデッキの切り札(キースピリット)!ボク達が彼を呼ぶ準備はもう整ってる。さぁ、召喚するんだ!)

 

「うん!」

 

フィールドにこのカードを召喚するために必要な軽減シンボルは揃ってる。それにさっきのアタックでリザーブにもコアは溜まってる。なら、進んでいくしかない!

 

「貴方の力を見せて!聖杯の闇騎士ギャラハッド!」

 

バトルフィールドに紫色の稲妻が走る。そこから出てくるのは白銀の鎧。

名前の通り、騎士にふさわしい恰好をしたスピリットがわたしのフィールドに現れる。

ギャラハッドはわたしの方を見ると、武器を収めてその場で一礼をした。

 

「ほ、ほえ……?」

 

(ギャラハッドは礼儀正しいスピリットだからね。ボク達に敬意を表してくれているんだよ)

 

「そうなんだ。よろしくね、ギャラハッド」

 

ギャラハッドはわたしの声にうなづいてくれた。

 

「召喚に必要なコアはナイト・ブレイドラから貰うよ。ありがとね、ナイト・ブレイドラ」

 

ナイト・ブレイドラの姿がバトルフィールドから消えてゆく。残ったもう1体のナイト・ブレイドラはどこか寂しそうな仕草を見せていた。バトルに勝つためだからといって、ちょっとかわいそうなことしちゃったかな……?

 

(レナ、ギャラハッドのLv2から使える効果をみてごらん)

 

わたしはギャラハッドのカードをよく見る。Lv2・3『このスピリットのアタック時』。

 

「……!!」

 

エヴォ、あなたがわたしにしてほしい事が分かった気がする。なら、それを信じて前に進むしかない。

 

「さらにキャメロット・ナイトⅩのLvを1つ下げて、ギャラハッドのLvを上げるよ!」

 

キャメロット・ナイトⅩLv2→1(2→1)

聖杯の闇騎士ギャラハッド Lv1(1→2)

 

(レナ、気づいてくれたんだね!)

 

「うん!アタックステップ!お願い、ギャラハッド!」

 

ギャラハッドの目がわたしの声に答えるかのように、静かに光った。

 

「Lv2のアタック時効果!私のトラッシュにあるミラージュ効果を持つカードを1枚手札に戻して、将軍さんのライフのコアを1個貰うよ」

「み、ミラージュであると!?そんなカードがどこにあるというのである!」

「ちゃんとあるよ。将軍さんがさっき破壊したカクメイミラージュがね」

「……!!」

 

ギャラハッドの効果でわたしはトラッシュからカクメイミラージュを手札に戻す。

そして、手札に戻ったミラージュのカードから紫の光が出ていって、ギャラハッドをパワーアップさせる。

白銀の騎士は手に持つ槍を放りなげて、将軍さんのライフを一つ減らした。

 

「ぐぬぅ……」

 

小さい声だけど、将軍さんの口から唸り声が漏れていた。

 

【アンガー将軍】 ライフ3→2

 

(レナ、凄いよ!アンガー将軍を追い詰めている!)

 

「小娘、お前の覚悟を見たのである。ならば、我が輩も我が輩自身の覚悟を見せるのである……!!」

 

そう言って将軍さんは手札から1枚のカードを引き抜く。

 

「フラッシュタイミング!マジック、ファイアーウォールを使用!我が輩の赤のスピリットを1体破壊することで、このバトルが終わればアタックステップを終了するのである!」

 

「我が輩は……ブロンソードザウルスを破壊する……」

 

将軍さんが呟くと同時に恐竜のスピリットであるブロンソードザウルスが炎を上げて燃えてゆく。

 

「そのアタックはライフで受けるのである!」

 

【アンガー将軍】ライフ 2→1

 

「ぐ、ぐぉおおお!!」

 

さっきの攻撃では声をあげなかった将軍さんも、ギャラハッドのこのアタックは痛かったみたい。ライフが砕かれた音がバトルフィールドに響き渡る。

その時だった。さっきまで燃えていたスピリットが爆発して、将軍さんの体の周りに火の壁が出来たのは。燃え盛る炎はスピリットだったとしても攻撃をしたくないと思う。とてもじゃないけど、わたしのスピリットがアタックできる雰囲気じゃない。

 

「自分のスピリットを破壊して、耐えたの……?」

「……時には(スピリット)を犠牲にしてでも、生き残らければいけない。それが将軍というモノなのである」

 

どこか悲しげな表情を見せながら、将軍さんは呟いた。

 

「アタックステップが終わっちゃったからもうアタック出来ないよ……。これでターンエンドするよ」

 

【レナ】

フィールド:キャメロット・ナイトⅩLv1(1)

     :キャメロット・ナイトⅩLv1(1)

:ナイトブレイドラ (1)

     :聖杯の闇騎士ギャラハッド Lv2(2)

ターン06【アンガー将軍】

 

「我が輩のターン。お前に我が輩のキースピリットを見せてやるのである……!!闇より這い出で、雄叫びを上げよ!闇龍ダーク・ディノザウラーを召喚である!」

 

突然、地面が揺れて、割れ始める。そこから赤い光が漏れだして、地響きと一緒に黒い恐竜が姿を現した。

地上に現れたそのスピリットは、大きな咆哮を上げた。

 

闇龍ダーク・ディノザウラー Lv1(1)

 

(レナ、気をつけて!ダーク・ディノザウラーはアンガー将軍のキースピリットだ!)

 

「うん……!!」

 

目の前にいる将軍さんのキースピリットの迫力。それは他のスピリットの何倍もの強さをわたしに感じさせた。

 

「更に暗黒の魔剣ダーク・ブレードをダーク・ディノザウラーに直接合体(ダイレクトブレイヴ)!」

 

「剣が合体(がったい)した!?」

「ブレイヴとはスピリットに合体(がったい)することで真価を発揮するカード。このダーク・ブレードこそがダーク・ディノザウラーにふさわしいのである」

 

誇らしげに自分のスピリットとその剣≪ブレイヴ≫を自慢する。

将軍さんの有利な状況は、わたしにとってかなり厳しい状況になってる……。

 

「再び黄昏の暗黒銀河のLvを上げ、アタックステップである!いけ、合体(ブレイヴ)スピリット!」

 

尻尾に剣を持った黒い恐竜が雄叫びを上げる。思わず耳をふさいでしまう程の気迫を将軍さんのスピリットから感じた。

 

「闇竜ダーク・ディノザウラーのアタック時効果!このスピリットのBP以下のスピリットを破壊するのである!」

「そ、そんな……!!」

「コイツのBPは元々5000であるが、ダーク・ブレードを合体《ブレイヴ》しているのでBP+5000。更に黄昏の暗黒銀河の効果で我が輩の系統:地竜を持つスピリット全てのBP+3000!よって合計BPは……」

「13000……!?」

「その通りなのである。効果でギャラハッドを破壊するのであるっ!!」

 

無数の剣が展開されてギャラハッドを攻撃する。槍で必死に応戦するけど、とても対処しきれない。

ギャラハッドはそのまま爆発に飲み込まれちゃった。

 

「ギャラハッドっ……!!」

 

合体(ブレイヴ)しているダーク・ディノザウラーはダブルシンボル……つまり、相手のライフを2個減らすのである!」

 

どうしよう……ライフで受けたら負けちゃう……。

 

(残念だけど、ここはブロックするしかないよ。レナ、キミが負けてしまったら元も子もないんだ)

 

エヴォの言う通り、ここをしのがないとわたしはバトルに負けちゃう。

 

「ごめんね。ナイト・ブレイドラでブロック……」

 

大きな恐竜と小さな翼竜。大きさからも分かるようにそのBP差は歴然。

いとも簡単にナイト・ブレイドラは破壊されてしまう。

 

「さらにダーク・ディノザウラーの【連鎖(ラッシュ):緑】を発揮!BPを比べ、相手スピリットだけを破壊した時、相手のライフのコアを1個リザーブに置くのである!」

 

ディノザウラーが緑のオーラに包まれてゆき、効果を発揮する。

さっきわたしがギャラハッドの効果で将軍さんのライフを減らしたように、将軍さんのスピリットも同じような効果を持っているんだ。

輝く緑のオーラが加速して、わたしの方へと向かってくる……!!

 

【レナ】 ライフ 2→1

 

「きゃああああ!!」

(レナ!大丈夫!?)

 

なんだろう……。きゅうにめまいがする。まっくらなところがだんだんひろがってく。

 

(レ……!……ナ!)

 

エヴォの声もところどころしか聞こえない。衝撃に耐えきれなかったわたしの体はその場に倒れようとする。その時だった。

うっすらとした視界に映った彼を見たのは。わたしはバトルをどうしてしているんだろう。

誰かを……。彼を救うために決まってる。また、あの時みたいに呼び合えるって。

だけど……ここでわたしが倒れちゃったら、そんな光景は二度と見られないんだ。……そんなの、嫌だ!

しーくんを絶対に取り戻すんだ……!

 

「……わたしは諦めない!しーくんと……約束したから!だから、戦うのっ!」

 

その時だった。あのモヤに包まれたカードが紫色に光輝いたのは。

 

「こ、これって……!?」

(すごいよ!レナの想いにカードがこたえて、力を取り戻したんだ!)

 

もしかして。このカードを使えば……!

 

「エヴォ!このカード、使えばいいんだよねっ!?」

(うん!それが今のキミを救う1枚になるはずだ!)

「私のライフが減った時、このマジックをコストを支払わずに使える!【覇道】っ!!」

 

わたしはそのカードを手札から将軍さんの方へと見せる。これがわたしの逆転の一手……!!

 

「キャバルリースラッシュ!」

「何……!!」

「相手のスピリット1体のコアを3個リザーブへ!わたしはダーク・ディノザウラーを選ぶよ!」

 

漆黒の恐竜の前を紫色の何かが通り過ぎる。次の瞬間。ダーク・ディノザウラーはバトルフィールドから姿を消していた。

 

「我が輩のキースピリットがいとも簡単に……。ブレイヴは残すのである…っ」

 

合体していたスピリットが消滅して、剣はクルクルと回転しながら地面に突き刺さって残った。

 

「そして、相手のスピリットが消滅したから【転醒】を発揮!わたしのリザーブのコアを1個置くよっ!」

 

なんでだろう。使った事ないカードのはずなのに使い方が分かる……!!

わたしの呼び声に応えて、カードが空中で回転する。

さっきまでマジックカードだったそのカードがスピリットとしてわたしの目の前に現れた。

マントのような翼を広げて、凛々しく剣を構える騎士。その名は─。

 

「ソーディアス・アーサー・オリジンッ!」

 

ソーディアス・アーサー・オリジン Lv1(1)

 

「転醒スピリット……!」

「転醒した時の効果でトラッシュにあるギャラハッドを蘇らせるよ!」

 

ソ―ディアス・アーサー・オリジンがマントをなびかせる。そこからさっき破壊されたギャラハッドが現れて、また凛々しい姿を見せてくれた。

 

「我が輩にはこの状況を突破する手段がない……。ターンエンドである」

 

 

【アンガー将軍】

フィールド:ピナコチャザウルス Lv1(1)

     :羽竜ペドペンナー Lv1(1)

     :暗黒の魔剣ダーク・ブレードLv1(1)

     :黄昏の暗黒銀河 Lv2(2)

 

手札:2

 

ターン07 【レナ】

 

「私のターン!このターンで決着をつけるんだからっ!ギャラハッドをLv2、ソーディアス・アーサー・オリジンのレベルを最大レベルのLv3にアップ!」

 

聖杯の闇騎士ギャラハッド Lv1→2(1→2)

ソーディアス・アーサー・オリジン Lv1→3(1→4)

 

ここで……。わたしのありったけを将軍さんにぶつける─!!

 

「アタックステップ!ギャラハッドでアタック!」

「ピナコチャザウルスでブロックするのである……!」

 

騎士と恐竜が退治する。ピナコチャザウルスは身を挺してギャラハッドの攻撃をブロックする。

……でもっ!!

 

「この時、ギャラハッドの効果を発揮!わたしのカード名に「騎士」を含んでいる紫のスピリットがブロックされたら、相手のライフのコアを1個リザーブへ送る!」

 

ピナコチャザウルスが消えた後も、ギャラハッドの攻撃は止まらない。

将軍さんを真っすぐ見つめる、紫の瞳。駆け抜けていく白銀の騎士は、最後のライフを打ち砕いた。

 

「我輩の……負けなのである……。ぐぁぁぁあああああああ!!」

 

【アンガー将軍】 ライフ 1→0

 

やった……勝てたんだ!

 

★★★

 

バトルフィールドが消えて、わたしの元いた世界へと戻ってくる。わたしの身に着けていた魔法少女の衣装は制服に戻っていた。

 

「約束を果たすのである。この人間は解放するのである」

 

そう言って将軍さんはしーくんの体を丁寧に地面へと降ろす。

 

「あ、ありがとうっ」

「……お前、なぜ敵に感謝するのである」

「だって、将軍さんはわたしとの約束を守って、しーくんを返してくれるんでしょ?傷つけないよう色々してくれたみたいだし」

「……当然である。人質に死なれては困るであるからな」

「バトルの時も大切な事、教えてもらったからね。ネクサスにもいろんな効果があったり、ライフを削るときの重要さだったり」

「お前……そんなことまで……」

「それに……感謝をするのに敵とか味方とか関係ないよ」

 

わたしの言葉を聞いた将軍さんは意外な表情でこっちを見ている。

 

「フフフ……ハハハハハハ!!」

 

いきなり高笑いする将軍さん。そして……。

 

「お前は面白いやつであるな!小娘、名前を聞いておこう!」

「りゅ、竜音レナです」

「竜音レナか……いい名だ。覚えておくのである」

 

そういって将軍さんは目の前から姿を消した。

 

「あ、あれ!?今さっきまでここに居たのに……」

「転位魔法だね。瞬時に場所を移動できる。これでも僕たちの世界では日常的に使われている初級魔法さ」

 

すごい。わたし達の世界に戻ってきて、改めて妖精や魔法の存在が本当にあったってことに驚かされる。

こんな魔法があったら私も学校に遅れずにすむのになぁ……。

そんなのんきな事を思いながら、わたしは取り戻したばかりのしーくんの体へと近づいた。

 

「しーくん、しーくん。終わったよ」

 

「聞いてよ、わたし…バトルスピリッツ始めたばかりなのにバトルに勝っちゃったんだから。それにバトルスピリッツって楽しいんだね」

 

「しーくん、良かったら……今度バトルスピリッツで一緒に遊ぼうよ。ねぇ」

 

さっきから何度声を掛けてもしーくんは起きない。

 

「うそ……どうして……?」

 

瞳を閉じたまま目を覚まさない。しーくんが生きている唯一の証拠は時々聞こえてくる浅い呼吸。その事はわたしを焦らせるのには十分すぎるものだった。

 

「そんな……しーくん!!」

 

わたしは思わず声を張り上げた。その声が聞こえたんだろうか。近くの体育館から部活動を終えた女の子たちが慌てて、でてくる。

 

「レ、レナちゃん!上條さんどうしちゃったの!?」

「わかんない……わかんないよ……。とにかく先生を呼んでーっ!!」

 

その時、わたしはワケもわからず叫んだ。そこから先の事はあまり覚えていなかった。

一つだけ鮮明に覚えている事は、しーくんが運びこまれた救急車を眺めていたことだった。

学校から離れていく救急車を見たわたしはしーくんがどこか遠くへ行っちゃって、ずっとあえなくなるような感じがした。

 

「竜音さん、お父さんが迎えにきたわよ」

 

さっきの女の子が呼んでくれた保健室の先生がわたしに声をかける。

先生の右側にはいつもは家にいるはずのお父さんの姿があった。

 

「勝手なことだけど、竜音さんの様子が心配だったから家の方に電話させてもらったわ」

「いえ、先生。お電話ありがとうございます」

 

「お……とうさん……。わざわざ迎えに来てくれたんだ……」

「レナ、家に帰ろう」

 

優しくかけてくれる言葉に何故だか分からないけど涙がこぼれてきた。どうして……でてるんだろう。

疑問に思っても、涙は止まってはくれなかった。ただ、ボロボロと大粒の涙が流れていくだけだった。

 

「う……うう。うわぁああああああん!!」

 

わたしが魔法少女になった日の記憶はここで途切れた。

 

★★★

 

時を同じくして。姿を消したアンガー将軍。彼は妖精界の本拠地である城へと戻っていた。

自身の部屋で彼は瞳を閉じ、先程のバトルを思い出す。

 

(あの娘……竜音レナ。バトルスピリッツは初めてであるのに、カードを使いこなすあの才能。見事であったな)

 

(しかし……最も驚いたのは()()()()()。まさか皇のカードを目覚めさせるとは……。全くもって恐ろしいものであるな)

 

一人の少女と彼が目にした力の一端。そのことについて深く考えようとしていた時、部屋をノックする音が聞こえた。

 

「お休み中失礼します。アンガー将軍、会議のお時間です」

「うむ。すぐに向かうと他の奴らに言っておくのである」

 

アンガー将軍の元に来た部下の一言によって、彼の休息は終わりを迎えた。

 

(会議か。件の計画についてであろう……。おおよその予想はつくである)

 

「気は乗らないのであるな……」

「…?何かおっしゃいましたか?」

「……なんでもないのである。行ってくるのである」

「は、はっ!」

 

レナの知らないところで。何かが動き始めていた。

 




最後まで読んでいただきありがとうございました!
まずは第1話のお気に入り登録して頂いた皆様、そして感想をくださいましたバナナさん。皆様方本当にありがとうございます。
架空バトスピとしては異色の試み(だと思っている)ですので受け入れられるか不安でしたが、皆様の反響をいただき、受け入れられたと思うと、作者冥利に尽きます。
さて、無事第2話を投稿することが出来ました。いかがでしたでしょうか。
レナの初バトル。そして、目覚めない上條。妖精界に戻ったアンガー将軍と会議とは。次回も早いうちに更新できるよう頑張っていきます。
第3話もお楽しみ頂けると幸いです。
また次回お会いしましょう。それでは。
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