憧れのウルトラマン(旧ウルトラマン転生短編集)   作:あっ察し

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今日もなんだかやる気が起きないけど初投稿です。


戦いの後と夢

司会

「本日のワイドショー未知との遭遇では…先日現れた怪獣とそれに呼応して現れた未知の巨人について、実際に他惑星の方々との外交窓口を勤めて居り、あらゆる種族の方々のお相手をされて居られるマキミネさんと、この星に10年間在住されており、GF内で他惑星の技術研究や新装備開発なども担当されているクール星人のジーニアさんにも来て頂いております。」

 

マキミネ

「紹介に上がりましたマキミネです。先に言われた通り私は他の惑星とのやり取りをする為の窓口兼交渉   役を行っております。」

 

ジーニア

「私はGFヒノモト支部の技術顧問であるクール星人だ。どんな事をしているかと聞かれれば機密事項が多い為、この星の言葉が上手く身についていない私では失言をする可能性があるからこれくらいにしておくよ。」

 

最近はどの番組でも巨人の話題で持ち切りだ。

 

司会

「あの巨人は一体何者だったのでしょうか?」

 

マキミネ

「確定情報が少ないのですが詳しくは何とも言えませんね。今の所は正規の手続きを受けてこの星に入って来た訳ではないので、こういった番組や他媒体で彼自身に情報が伝わっているのであれば、何らかのリアクションが欲しい所です。」

 

司会

「確かにそうですね。まあ、あの状況では手続きどころでは無いと思いますが。」

 

マキミネ

「まあ、これもルールですから。」

 

ワイドショーの流れは今回は彼について現実的に向き合う様な方向性で進むみたいだ。

何処の星かは分からないけれど彼も異星人ではあるのだろう。

この星の住人と比べて容姿に余り違いは無いが、少なくとも肉体面の回復は尋常じゃない速さだ。

 

ジーニア

「確かにベムラーを討伐したのは彼だが、地球にベムラーを落としたのも彼だという事。ベムラーを倒してくれた事は確かに有り難い事ではあるが、我々としてはただ彼は責任をもって行動しただけだと思うがね?」

 

司会

「ジーニアさんの意見としてでしょうか?」

 

ジーニア

「この場ではそうだと答えるが、故郷の同胞も同じ事を言いそうなものだがね。自分の蒔いた種だ、しかし、宇宙でベムラーに襲われたという船を助けたというじゃないか。」

「この事は地球や私の星で言うところの善行だ。見返りも無い、ましてやあのベムラーとの戦い、下手をうてば自分の命も危なかったろうに。」

 

司会

「確かにそうですね。映像の中では墜落した戦闘機を庇う様子と潜水艇を救い出してくれた事からも彼が敵では無いと言うのは伝わって来た気がします。」

 

今回のワイドショーに出ている虫みたいな宇宙人の意見は大方正解だと思う。

 

けれど、ただの責任感で今目の前で傷だらけの体をベッドに横たわらせているこの青年は…、

命をかけてあの怪獣と戦ったこの青年は何を思って戦っていたのだろうか?

 

 

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目が覚めるとそこはいつも自分がいたアパートの一室だった。

 

使い古した布団はボロボロで、流行りのゲームをやる為に買った中スペック程度のパソコンはいつしか仕事を家でやる為に使われていて、今日もつけっぱなし。

とてもリアルな夢を見た気がするけれど、自分があんな風になるなんてあり得ないよなって洗面所の鏡に映る自分を見て思う。

 

この日常も昨晩の夢のおかげか、久しぶりで新鮮な感覚を味わっている気がする。

夢の中で自分は何週間もウルトラマンをやっていたのか。

 

手早く朝食を済ませ、歯を磨き、服を仕事着に着替えて出社する。

今日も退屈な一日が始まるんだろうな。

 

「行ってきます。」

 

誰もいない自分の部屋からは当然何も返って来ないが、靴箱の上に飾ってある小さい頃から大好きだったメビウスとティガのソフビ人形が見送ってくれているのでまあまあ気分は上々だ。

 

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会社迄は徒歩でも15分圏内…、たまたま一つ目の仕事先が潰れてしまった時に、ご近所付き合いのおかげで紹介してもらった仕事先はそこそこ名前のある企業で、金入社同然で入った自分にも同僚はそれなりに良くしてくれている。

 

同じウルトラ好きの後輩もいるし、上司は気さくで優しいし、仕事が終わらない時はしんどいけど、それでも皆んなで大口の受注を達成した時は達成感があってまた次も頑張ろうと思える。

 

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会社の前で立ち尽くす。

 

全部壊れてる。

 

道ゆく人はみんなボロボロで、何かから逃げる様に必死の形相で走っている。

 

皆んなは!会社の皆んなは無事だろうか!?

 

後輩の奴は確か近々結婚するからって言ってた。

 

上司毎日誰よりも早く出社してていつも最後まで仕事をしてる自分と一緒に帰るようになってた。

 

なのに、何で…。

 

空を仰ぐと戦闘機だろうか?

 

気付けば周囲は煙と焦げ臭い臭いが外だと言うのに充満していた。

爆発音が辺りから何度も響いて思わず耳を両手で覆う。

 

不意に音は止んで周囲の風景は固定されているかの様に動かない。

時が止まった様なそんな世界は地獄が満ち溢れていた。

 

瓦礫に押し潰されてしまっている人。

 

母親を求め炎の中で泣き叫ぶ子供。

 

今に全身を炎に包まれそうにしなっている人。

 

何故?何でこんな事が起こっている?

 

背後から呼びかけられる様な感覚がした。

 

振り向けば、そこには横たわる巨大な影があった。

 

止まった時間の中で()は、倒れ伏す光の巨人(自分自身)を見ていた。

 

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キリマ

「流れ星…か。」

 

オオダ

「ええ、あの巨人が怪獣を倒した後には宇宙へと上昇し反応をロストするのですが、周囲を観測していた展望台があり、その録画映像にて地上に落ちる銀色の光が確認されているのです。」

 

キリマ

「落ちた場所は?」

 

オオダ

「予測計算からするとコンゴウ山の中腹辺りにある集落のすぐ近くだそうです。」

 

キリマ

「そこにあの巨人がいるかも知れんのだな。」

 

オオダ

「ええ、サイズは1/30になっていますが、宇宙から降りてきて周りに気付かれずに着地出来る者などそうはおりませんからね。」

 

キリマ

「私とお前だけで向かうぞ。まずは相手に危険性が無いのか確かめる。会えるから分からん事に優秀な隊員は避けんからな。」

 

オオダ

「隊長は…流石に残られるべきでは?一人くらい別の隊員でも…。」

 

キリマ

「何か言ったか?」

 

オオダ

「い、いえ…。(偶に仕事で好奇心を優先させる時あるよな…この人)」

 

キリマ

「では車を回して置いてくれ。手続きは私がやっておく。」

 

オオダ

「了解しました。」

 

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バサッ!!と自分にかけられていたシーツを振り払う用に乱暴にめくりあげながら勢いよく上体を起き上がらせる。

 

ここは?さっきのは夢?見た事のある部屋だけど自分の部屋ではない?

 

『ではあの巨人は・・・からやってきた・・・。』

 

どこからか聞こえる音はテレビか何かの音か?

 

 

マコ

「あんた、目覚めたんだね。」

 

「あ、あぁ・・・はい。」

 

マコ

「別に異星人なんて珍しく無いんだけどさ。二回も空から降って来る奴はあんた以外そうそういないだろうね。」

 

マコさんの顔は笑っていたが、”光の巨人”であるこの体は彼女の顔が本当に少しだけひきつっている事と組んだ腕をギュッと手で握ってしまっているのがわかる。

この宇宙がどの時空かはわからないけれど、もし、ウルトラ戦士が認知されていなかったり、存在しない世界であれば巨大な自分のような存在を知った時には、恐怖や警戒の感情を抱くものなんだろうか。

とりあえず正直に嘘をついていた事を謝ろう。

 

「嘘をついてしまって、すいませんでした。」

 

そう言うとマコさんの警戒が少しだけ緩んだ気がする。

 

ーあんたは何者なんだい?-

 

次にでたマコさんの問いに自分はなんと答えていいかわからなかった。

今までの自分の名前は××××だけれど、それを名乗るのは何か違う気がする。自分は多分もうその人では無いから。

新しく生まれた光の巨人が偶然前世の記憶を持っていただけ。

夢でそれがわかった。いや、最初からわかっていたけれど、夢を見て現実を受け止めさせられた。

 

「自分もわかりません。」

 

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ーあんたは何者なんだい?-

 

どうしても聞かずにはいられなかった。未知は恐怖であり、目の前にいる青年の姿を取っているそれは強大な力を持っている。

それこそGFの戦闘機すら倒す事の出来なかった怪獣に対して単体で勝利出来る力だ。

 

初めてあった時やリリと絵を描いていた時の青年はごく普通のどこにでもいそうな青年だった。

記憶を失っていても習慣や長年培った技術を忘れない者がいるように彼もそうなのだろうと思っていた。

あの森に墜落していたという異質な状況さへ、どうせ何処かの異星人が何かの事故で落ちてきたのだろうと思って軽い気持ちで手当てをした。

 

だが、目の前の青年には個人にしては恐怖を抱いてしまうほどの”圧倒的な力”が備わっていた。ただそれだけで今までと同じ様に接する事が出来なくなってしまった。

 

余裕が無かった。思わず語気を強めて言い放ってしまった言葉に青年がピクりと反応しただけでそれだ。完全に彼を警戒してしまっている。

 

「自分もわかりません。」

 

足にかかっていたシーツをどけると体をこちらに向きなおした青年が手当てに使ったガーゼや包帯を取っていく。

2日程前には擦り傷や痣があった体には傷跡一つ残っていない。

 

「ただ、やらなきゃいけない事は何となく解るんです。」

 

青年は言う。

自分の力は何の罪も無い人々を助ける為にあるのだと。

自分の力は目の前で生きようとする人に希望を与える為にあるのだと。

それがこの力を持った者の成すべき事だから。

 

その時の私はどんな顔をしていたのだろうか。どんな目で彼を見ていたのだろうか。

突然彼は立ち上がった。思わず一歩後ずさる。

 

「ただ、そんな事言ってる奴が治療費を払わない訳にはいかないので仕事でもなんでも手伝わせてください!!」

 

突然頭を下げられてしまった。それだけの事に私は驚き、そして、思わず力が抜けてしまいため息を漏らす。

 

マコ

「何なのよ、ほんとにもぉ・・・。」

 

どうかしました?何てきょとんとした顔で聞くものだから思わず乾いた笑いがフッと漏れ、もうどうにでもなってしまえばいいと思う。

 

マコ

「正直あんたの事は警戒してるよ。あんなでっかくなるわ怪獣と戦うわでそんだけの力を個人で持ってるあんたが正直私は怖い。」

少し青年の顔が曇る。

「でも、あんたは悪いことはしてないし、今は学校だけどリリの話相手にもなる。正直こんなとこに住んでるからあの子は中々友達と遅くまで遊ばせてやれて無いしね。あんたに使った治療費が払い終わるまでここで働く事を許すわ。」

そう言うと青年はパッと明るい顔になって”ありがとう”と笑いかけて来る。

 

これからの日々を思うと頭が痛い。だが、今だけはこの誠実そうな青年の顔に免じてあまり深く考えないことにした。

せいぜいこき使ってやろうとその時はこの先の事を簡単に考えていた。

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オオダ

「そろそろ目標の地点に到着しますね。隊長」

 

キリマ

「ああ、そういえばここには従妹がやっている診療所がある。」

 

オオダ

「こんな所にですか?」

 

キリマ

「シーズン中はコンゴウ山によく登山者が来るらしくてな、休憩所もかねているそうだ。客が多い時に一年分稼いで後は趣味に回す。というのがマコのライフスタイルらしくてな。」

 

オオダ

「はぁ、器用にやるものですな。」

 

キリマ

「確かにな。私たちもそれなりに給金はいいが使う時間が無い。誇れる仕事ではあるが、やはりその辺は要改善だな。実働部隊の増員を申請せねばな。」

 

オオダ

「確かにそうですが、今のメンバーも一から磨いてきた原石達ですから、そうすぐに集めるのは・・・。

あの巨人にどうにか協力を頼めないものですかね?」

 

キリマ

「相当あの巨人を気に入ったようだな。雑誌やら何やらを買い漁ったり、戦闘時の映像何度も繰り返し見てもいるようだしな。」

 

オオダ

「そりゃあ、こうも異星人が起こす事件や怪獣が暴れる度に現れては解決に協力してくれるんですから感謝してますしね。こちらに協力的に動いてくれるし何度も隊員の命を助けてくれてもいます。」

 

キリマ

「確かにな。だが、我々は彼を信頼しているが、彼は我々を信頼仕切ってはくれていないようだがね。」

 

オオダ

「それは、まぁ・・・。」

 

キリマ

「強大な力で私たちを助けてくれる未知の巨人、その存在はこの惑星に住む人々の希望にもなるが、毒でもある。大衆の中には彼を神の使途や守護神であるなどと言って宗教団体を作る者もいるようだしな。」

 

オオダ

「先日発生したあの事件ですか。」

 

キリマ

「ああ、被害者の身元を洗ったら元々詐欺師の男だったらしい。光の巨人に偶然救われ、その我々に対して献身的な姿に感動して彼を支援できる団体を作る事を目標にしていたらしい。元詐欺師とは思えない程に全うな団体だったらしいがね。」

 

オオダ

「しかし、男は自宅で意識不明の状態で見つかった。現場には文字のような記号が並べられていた材質不明の紙と炎に包まれるあの巨人の荷姿がおかれていたらしいです。」

 

巨人の降下場所を目指す途中、最近発生した怪事件について話す。

この事件の裏では新たな脅威と大いなる存在が関係しており、それは間もなく明るみにでるだろう。

 

 

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キリマ

「到着したようだな。」

 

不自然に開け、周りとは明らかに木の高さが違う場所にキリマとオオダは立っていた。

綺麗に整えられているが、根本の方から新しい皮が出来ており、何らかの損傷があったと見られる木や、綺麗に切られた切株と感想の為にまとめられた丸太の束もあった。

 

さらに辺りを見回して見れば雑草が踏まれて出来た道があった。しかも思いっきり靴で足跡が出来ている。

 

キリマ

「この先に行こうと思うが、どう思う?」

 

もしこれがあの巨人が使っている通り道だとするなら、正直危機管理が出来ていなさすぎでは無いかと思いつつも、実は正体を隠しているつもりも無いのか?いやいや、ならば出現するたびにわざわざ宇宙までいって反応をロストさせてから地上に降りる必要も・・・などと思考を巡らせながら他の人の意見も聞こうとオオダに問いかける。

 

オオダ

「うーん、た、確かにここに彼が下りて来ていると予測では出ているのですが・・・。まあ、確実に何者かがここを通っている痕跡が残っていますね。」

 

微妙な表情でオオダがデバイスをかざすと足跡からその生物の情報を解析し始める。

 

オオダ

「ふむ、どうやら一般的なこの星の成人男性よりも少し高い程度の身長と体重を持つ生物の用です。というか、解析情報が人間を指していますね。」

 

キリマ

「一般人が単純に木を切りに来ているだけの可能性もあるが、そお遠くない場所に植林上もある。不自然ではあるな。」

「止まっていても仕方が無い。この先にいくぞ。」

 

そうしてGFの実働部隊隊長のキリマと副隊長のオオダは足跡を辿り森の中を進んでいく。

数分程歩くと開けた道に出る。その後も解析により同じ足跡を追う道中キリマはある既視感を覚えていた。

 

そう、従妹の診療所へ続いているのだ。

 

そう、何を隠そう森の診療所に住むマコとキリマは従妹どうしだったのである。

確か、スタッフが一人増えたと聞いていた気がする。働き者で少し変人だと聞いていたが、もしや?しかし?

 

こうして隊長の顔が険しくなっていき、それを見たオオダがどうかしたのかと聞くとキリマは一言「従妹の診療所へ向かっている。」と険しい表情で答えた。

隊長は疑問だらけで顔が険しくなっただけであり、決して他意は無いのだが、変な所で気にしすぎるオオダは、キリマの表情から色々勘ぐってしまい、思わず歩調を早める。

 

ほどなくして彼らはマコの営む診療所へと到着する。

 

これから、彼らGF隊員と光の力を持つ青年とのファーストコンタクトが始まっていく。その裏で、強大な存在がそれを観測している事を誰も知らずに。

 

 




3か月ほど時間が経過しております。

その間に7回ほど巨人が出現しています。

どんな事があったのかはなるべく次回から触れられるようにしますが、一期を通しての敵見たいな存在を出しておきたいなと思ったのでこの話を入れました。

次回から新章です。
今回は会話の前になるべく誰がしゃべっているか解るようにして見たのですが、文字数かさましでボリューム不足にならないように頑張ります。

今月中に新章終わらせる勢いでやりたいですね。

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