記憶はない。人間性も若干ない。元気しかない。   作:ささかま

1 / 5
吸血鬼です

何月か分からないがつ、何日か分からないにち

 

わたしはレヴナントです。

死体の心臓にBOR寄生体をぶっこんだ、不死の戦士です。たぶん。戦士してた記憶はありません。元気です。

 

生きてた頃の記憶も無いです。でもバケモノやクイーンの暴走吸血鬼の欠陥はいっぱい覚えています。

大崩壊で死んだかクイーンの暴走で死んだと思います。討伐戦は、出たかな?終わってから蘇生したかな?

なんもわかりません。でも元気です。

 

赤い霧に閉じ込められて、皆からからしてたのに、なぜか霧の外が怖かったです。

今霧は見当たりません。なので、元気ですが、とても怖いです。

 

霧もなくて棘もなくて、何処までも景色が続いているのでヴェインの外だとおもいます。どうやって出たのかは、わかりません。

むしろ何もわかりません。友達とかいたかもわかりません。いなかったら悲しいです。

でも元気です。

 

なにがあるか分からないので、クイーンや吸血鬼について知っている事は次に全部書いておきます。

もしなんかあって霧に成ってばらけたら、この手帳をよんでください。

手帳に書いた事すら空気中においてきちゃったら、諦めて元気に生きてください。

わたしは元気です。

 

 

 

 

「これで良いかなー!」

 

 夜陰の中殆どの色を白で構成した女が無駄に大きな声で、今しがた自分の綴った手帳を掲げて確認する。

 

「これで良いかー!」

 

 少し首を傾げた後に、何が面白いのかけらけらと笑い声を立てる。肩を揺らしての大笑に掲げた腕が揺れ、ぱさりと手帳から写真が一枚滑り落ちた。

 

「なんだこれ! 誰だろうこれ! わたし写ってるかな!」

 

 声量の調節機能が備わってないのか殆ど叫ぶ調子で、転がり出た写真を見て疑問を口にする。

 残念な事に女は自分の姿を確認した記憶も失くしているので、写真に写った数人の人物に自分が居るかも判断できない。

 ここには自身の姿を確認出来る物も無い。

 

 白濁した死体の様な目で写真に収まった者達を順番に見つめた後に、顔の殆どを判別不明にしていた浄化マスクを外す。

 外して、写真と同じ高さに掲げてみる。同じタイプを使って居る人物は二人。片方は男で、もう片方が女だ。

 

「わたしこれかー! あはは! 死体みたい! 死体だった!」

 

 一応寄生体の血液が体を巡っている筈なのだが、白灰の顔色に取ってつけた様な白い髪、白濁した白の虹彩に、死に装束よろしく白ばかりの服。吸血牙装まで白銀なのだから、いっそ女自身が白を好んで居ると考えた方がしっくりとくる。

 だが現在の当人は「死体のようだ」という感慨しか浮かばないらしい。

 

 一頻り発覚した自身の姿に声を上げてわらった後、手帳の適当なページに写真を戻す。

 

 

 

 

白いのがわたしです。

 

 

 

 

 手帳にもう一言書き綴った。

 

「そーだー! どっか遠くに行こう! 霧がないから、行ける所まで行こー! 怖いけど……バケモノがいるのかも!」

 

 元気よく宣言し、拳を突き上げながら立ち上がったかと思うと、すぐに続いた自分の言葉にぶるりと身震いした。が、また直ぐに駆ける様な弾む足取りでどことも知れぬ場所を進みだした。

 

 

 

 

何月かわかんないがつ、三日位経ったにち

 

気分的に明るい方を選んで進んで来ました。

凄く綺麗な樹木の花がいっぱい咲いてる山にきました。この辺は高低差が激しくて、殆ど山か盆地みたいです。わたしは元気です。

大きな建造物の残骸もやっぱり棘もないです。小さくて簡素な作りの家は見ました。人間が沢山いました。

平和です。

吸血鬼は見かけません。

 

アメトリン色の重く垂れる花が凄くきれいでした。いっぱい咲いてました。

 

あんまり綺麗なので、お花見しながら歩いて居たら山の中で迷いました。遭難しました。それでも私は元気です。

良く考えたら元々どこだか分からない場所に居たので、これは遭難ではないことに気づきました。

 

 

何月かわからないがつ、四日位経ったにち

 

ロストに襲われました。

吸血牙装しかないので、ぐーでいっぱい殴りました。勝ちました。わたしは元気です。

 

でも普通に自我?を持ったロストでした?ロストでない?

でも向かうから襲って来たし、急に沢山やって来た人間も襲っていたので実質ロストだとおもいます。

同じところをぐるぐるしている気がするので、一回高い所にのぼってみようとおもいます。

 

 

何月か分からないがつ、六日位経ったにち

 

凄い発見をしました。

微妙に自我っぽいものがあるロストから吸血すると、冥血が溜まる以外にも渇きが若干なおります。じゃっかんです。ほんのちょっとです。

何故かこの山だけやたらロストが居ます。食べ放題です。沢山吸血すればたります。

すごく元気です。

でも直で口からいくと、すっごく不味いです。なんかやばい味がします。千年消費期限が切れたトマトおでんパン的なやばさを感じます。

思い出して吐きそうです。

 

はきました。わたしは元気です。

 

 

何月か分からないがつ、七日位経ったにち

 

今さらですが、ロスト(仮)はロストでないのでは?

本当の不死身の怪物に成った筈なのに、普通に一晩経っても復活してません。そもそも時々ちょっと自我があるっぽい事言ったり、人間と喋ってたりしてました。

 

あと、人間が凄く頑張ってロストを狩っています。吸血鬼の気配は相変わらずしません。

良く分かりませんがわたしは今日も元気です。

元気にロストから吸血しまくってます。

 

 

 

 

 日本語と良く分からない言語数種が入り乱れる手帳から顔を上げ、胡蝶しのぶは力の籠った眉間解きほぐそうと、少し強めにぐいぐいと揉む。

 

「えーと……、レブナントさん?」

 

「はい! わたしレヴナントです!」

 

 これを読めば全部書いてあります! と複数回自称する通りにとても元気な死体が寄越して来た手帳に目を通す間に、忙しく日向でぐるんぐるんと回り続けていた女に声を掛ける。

 全身真っ白なせいで、地味に光を反射して眩しい。ちかちかする。

 そして声量が大きすぎる。

 

「もう少し小さい声でも、ちゃんと聞こえますよ」

 

「はいっ!」

 

 とても元気のいい、大きな返事が返って来る。

 音量は何も変わっていない。穏やかな微笑みが引き攣る。

 

「手帳の内容について、聞いてもいいですか?」

 

「はい! なんでしょう!」

 

 死体色の顔でにこにこしながら長い足で距離を詰め、踵の高い靴ではあるが六尺もありそうな背でぬっと覗き込まれる。

 不自然な程に、くきっと腰を折って覗き込んでいる。

 

「……座ってお話ししょうか……」

 

「はい!」

 

 死体の様な女は今日も元気なようだ。  




最初は、何故かブラボの狩人(狂人)とコードヴェインの吸血鬼(馬鹿)とかいうコンビでした。だって、ほら、何かどことなく似ていませんか?
私は途中から自分が拾って居るのが血の遺志かヘイズか分かんなくなりました。
それぞれ別の意味で血に飢えてそうな奴らが、血肉に餓えてるやつらと合体事故起こさせる話だったのですが、主に(狂人)のせいで収拾不能になりそうなので、まだ馬鹿だけど人間的な会話の出来そうな馬鹿を残した結果がこちらです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。