出会い
一つ、オレの話を聞いて欲しい。
なに、難しい話じゃない。ただの愚痴さ。戦争に負けて敗走している傭兵の、愚痴。この世界にはありふれた話で、つまらねぇかもしれねぇが、独りぼっちになって寂しい男だ。
同情心でもいいから聞いて欲しい。聞いてくれるのか? よし、じゃあ話そう(強引)。
戦争に関しちゃ語るのが5秒ぐらいで終わっちまうから、オレの産まれから話さしてくれ。
まずオレは自分の肉親ってやつを知らねぇ、物心つく時にゃ、オレを拾ってくれた傭兵団で剣を振っていた。どうやらオレは戦争孤児ってやつだったみてぇでな、そこに家があったっつうぐれぇしかわからんような、見事な程に全焼した瓦礫の中から見つかったらしい。親と思われる、黒焦げの死体に包まって、な。
呆れるだろ? 我が親ながらどうしてそこまでしてくれるのか、オレにはわからん。そしてオレが生きている意味もわからん。
まあ、そんな不幸な経験を幼少期にしたとなれば、普通だったら引き籠ったり鬱になったりするらしいが、オレは良くも悪くも、そうはならなかった。
オレ自身がドライな性格だったから、ていうのもあるが、一番はやっぱ戦争だろう。
前にも話てるが、オレを拾ったのは傭兵団だ。それも、戦争傭兵という、一番やっかいな所に。
戦争傭兵っつうのは、簡単に言やぁ戦争する国や都市に雇われて戦う、言葉通りの意味さ。戦争ばっかやってるから、こっちは思い悩む暇もなく毎日があっという間に過ぎてまって、今やオレもすっかり大人になっちまった。
朝昼夕なんざオレにはあってないようなもんだった。昼には奇襲の可能性がない分、一般的な生活様式をひっくり返したような、そんな生活をずっと送ってきたんだ。慣れてたから別に平気だったし、そこまで思い悩むもんでもないがな。
あ、だからって別にオレたちに休みがなかったってわけじゃねぇぞ? 戦争がない時は基本暇だ。仲間内で町に行って買い出ししてきたり、剣の練習をしたりな。その暇な時間に、ふと考えんだよ。ああ、今回も生きれたんだなって。オレははっきり言って戦いは嫌いだった、特に人間同士の戦争は。そんなオレでも生き残れた、それは運もあるだろうが、どうやらオレには戦う才能があったらしい。団長や副団長、それに同じ傭兵団の仲間にも言われたことだ。
確かにオレ自身、戦場に出れば団長に次ぐらいに活躍した自負がある。が、やっぱり最後に生き残れたのは運なんだろうな~と思うようになった。オレたちがバラバラになって逃げた、あの怪物から生き残ったことで。
そろそろオレの愚痴も終わらせようか、男がぐちぐちするもんじゃねぇって団長にも言われるだろうし。
じゃ、オレが今現在敗走している理由について語ろうか。端的に言ってしまおう。
竜が戦場に現れた。
終わり。
いや、確かに言葉が不足しているかもしれねぇが、極論言っちまうとこうゆうことなんだよな~。
具体的に話すとだな、オレたちはいつも通り戦争傭兵として雇われて戦争行って、そこで戦ってた訳だ。結構こっちが押してたから勝ったな、なんて思ってたら戦場のど真ん中にズドーンッ! と黒い竜が降りてきて、戦場は大混乱よ。皆自分が生きることだけを考えて必死に逃げて、虫みてぇに殺されていっ
オレはその戦場のど真ん中にいたから、真っ先に竜に殺されると思ったんだが、さっきも言ったが運が良かった。そのおかげでオレは今日も生き延びれた。ほんと、オレはラッキー人間だな。竜のあれだけ至近距離にいて逃げのびられたのはオレくらいだろうぜ。
とまあ、これがオレの愚痴さ。ちょっと長かったかもしれねぇが、ありがとよ。話したら気分良くなったわ。
.....ま、話しても解決しねぇことがあんだけどな。ん? 知りてぇか? それはよ、
金が無ぇ
◇ ★ ◇
「はぁ...。どうしたもんかねー」
さっきまで現実逃避を繰り返してた、オレだ。
いや、割とマジでこれが深刻なんだよな。戦争行くときに身銭なんか邪魔だから行く前に全部使ってきてねぇし、武器を売ろうにもこれがなきゃモンスターに襲われでもしたら危ねぇし、マジで金がねぇ。
「やっぱ、あそこ行くのが一番なんだよな」
だから、今オレが考えるべきことはどうやって金を稼ぐかだ。
ま、実を言うと簡単に思いついたんだが。
それは冒険者になってダンジョンで稼ぐことだ。
身分証がいらず、オレみたいな戦うことしかできねぇ無法者にはちょうどいい職種だからな。成功すりゃ傭兵なんかより余程稼ぎがいいらしいし、まさに理想だな。
そんな都合の良い話であれば、最高なんだがな。
「都市外の
オレが気になるのはそこだ。
オレたち傭兵にはこんな言葉がある。
『強いやつには気を付けろ。恩恵持ちには策を練ろ。冒険者には撤退せよ』
傭兵みたいな学がない奴でもわかるようにしてるから、誰でも意味ぐらいわかる。だからこそこの言葉は有名だった。
それだけ冒険者とは危険視(傭兵や子悪党に)されているのだ。ただの
話が長くなるからまとめると、そんな厄介な恩恵持ち、以上に強い冒険者。オレがそんなのになれるのか? と不安なのだ。
いや、ダンジョンとやらに潜れば誰でもそうなれるとは聞くが、オレはそんな甘い世界じゃねぇと思う。はっきり言って不気味なのだ、オラリオは。そんな強いのがゴロゴロいるなんて信じたくないのもあるが、そこまで強さに執着する意味がわからん。
でも、一番手っ取り早く金が手に入るのも冒険者だからならないという選択肢はない。
覚悟は決めてたつもりだが、まだ甘かったらしい。オレもまだまだだな。
「オラリオまではもうすぐ、だな。それでももうちょいあるし、最後に
最後の
「こりゃあ....、馬車か? 音はオラリオからこっちの方へ近づいてくる。商人か、冒険者か、あるいはそのどちらでもないのか。.......一応警戒しておこう」
そうやって僅かな疲れの残る体を強引に起こし、少しの警戒態勢をとる。
少しの間そうしていると、声が聞こえてきた。恐らくは男女二人組、それ以外はなし、武器は~、弓か? ま、遠距離が得意なら接近してそのままのしちまえはいいから、そこまで警戒しなくてもいいだろう。それにそろそろこっちも見つかるだろうし、向こうに警戒されても敵わん。剣はしまって、腕を組み、じっと岩に腰かけていよう。
あ、ちなみにオレが武器や人数を確認できたのは、別に直接見たわけじゃねぇぞ? オレは音に敏感なんだ、地面のすれる音とか、空気の微弱な振動とか、武器特有の音色とかで、大体わかっちまうだけだ。
と、そんなこと言ってる内に来たか。オレの予想通り、男と女二人組で、女の方が多分冒険者だな。弓も持ってる。男のほうは、超絶美青年だ..が、、、あれ? もしかして男の方って、
「ん? おお、
「ミアハ様、多分違う。こいつ、さっきから私たちのこと探ってた人」
おいおい、女の方にはばれてるじゃねぇか。てかどうやって気づいたんだ? オレは変に見たり動いたりとかはしてねぇはずだが...。まあ、そんなことは今はいい。それより誤解を解かねば。
「...少し気になっただけだ。こんな森の中にくるなんてちょっと怪しいじゃねぇか。それで警戒しただけだ」
「そっちも
オレと女は少しばかり険悪な雰囲気になりながら、お互いを貶しあう。
と、そんな険悪な雰囲気を察して、男の方が間に入る。
「まあナーザよ、少しばかり待て。この男も嘘は言っておらん。
「...ミアハ様がそういうなら」
「わかったよ。てか、悪いのは考えたらオレの方だしな。不躾に探るような真似をしてすまなかった。この通りだ」
そう言ってオレは頭を下げ許しを請う。勝手に相手の素性を探り、相手を警戒させたオレが悪いのだ。初めに指摘された時点で頭を下げるべきだった。
ここは素直に謝ろう。
「別に、私もそこまで気にしてない。...私も、悪かった。その、疑うような真似をして」
「いや、アンタの言う通り今のオレは怪しいからな。疑って当然だ」
そこからお互い謝り、暫し静寂に包みこまれる。
相手は会話するのが下手くそだし、ここはオレからなんか話かけたほうがいいのか?
そんな無駄なことを考えていると、男の方から話しかけてくれた。
「さて、お互いに非を認めたところで、そろそろ聞いてもよいか?
「あぁ、それは簡単な話だ。職を失ったから冒険者になりにオラリオへ。簡単な話だろ」
オレが少しおどけてそう話せば、二人は少し目を見開き、お互いにアイコンタクトをして、再びオレの方を向く。
「それで、所属したいファミリアとかはもう決めてるの?」
「いや、まだだが。ていうか、どこが良くてどこが悪いとか、そういう基本的な情報もよく知らねぇんだ」
「そう、ならうちに来ればいい」
「ナーザ! それは性急にすぎるだろう。その青年はまだ何も知らんのだぞ」
「ミアハ様は黙ってて。労働力確保のチャンス」
「はぁ、ナーザよ。お主はなぜそうまで....」
.....いろいろと丸聞こえなんだがな~。まあ、話を聞くぐらいならいいか。
「入るか入らないかを何も調べてねぇのに簡単に決めるかよ。だが、話を聞くのは悪くねぇ」
「あなたが入らないなら、私は何も話すつもりはない。何か情報を聞き出したいならファミリアに入るかポーション買うか、選んで」
「いや、オレ無一文だし。ポーション買う金なんざねぇよ」
「....嘘。だったらどうやってここまで来たの? あまり疲れてる様子はないから、馬車で運んでもらったと考えるのが常識。それに、神に嘘は通じない。ミアハ様、この人嘘ついてますか? ついてますよね?」
いきなり女の方が饒舌に語りだした。さっきまでのがなんだったのだろうと思えるほど、はきはきと、いや、なんか認めたくないから頑張って粗探ししてるようにみえるぞ?
「ナーザよ。その青年の言葉に嘘はない。彼は本当のことしか言っていない」
「嘘。じゃあ、どうせファミリアには入らないだろうからポーションだけを買わせて、金づるにする計画が...」
「ナーザよ、またそんなことを企んでいたのか」
とんでもねぇ
性格がとんでもなくひん曲がってる訳じゃねぇだろうが、間違いなく無害とかではない。この時点で断言できる。
ん? というか、さっき気になることを言ったな。
「なぁ、なんでオレがファミリアに入らないなんて思ったんだ? オレは別に問題がねぇファミリアならどこでもいいんだぞ? 神によってファルナの効果が変わるとかもないって聞いたことがあるしな」
そこが疑問なのだ。なぜ今から冒険者を目指そうと思ってるカモを、逃がす前提なんだ? もしこいつらが大手の派閥で、雑魚はいらんというのなら理解できるが、こいつのさっきの言葉をどうもそういう感じじゃなかった。
「なぁ、なんでなんだ?」
「...別に教える義務はない。他派閥の事情に首を突っ込まない。これ冒険者のルール」
「じゃあそのルールとやらにオレは当てはまらねぇな。なんつったてオレは冒険者ですらない無職だからな」
「そんなの、屁理屈。なんであろうとファミリアの問題はそのファミリアだけの問題。部外者が突っ込むな」
「まあまあナーザよ。別に良いではないか、話しても」
「!! どうして、ミアハ様」
「いや、こんな森の中であったのだから、何か縁のようなものを感じてな。
「あぁ? いいのかよ、オレを乗せちまって。それに、なんか用があってここまで馬車できたんじゃねぇか?」
「ああ、用はあったがやはりやめにする。危険な賭けだったからな。もしかすれば、
「へぇ~、そうかい。ま、オレは乗せていってくれるんなら喜んで乗るだけだが、な!」
そう言ってオレは荷台へジャンプした。
「まだ自己紹介がすんでなかったな。オレはヴァルガ・ステークだ。元傭兵で、今は冒険者を目指してる」
「私は神ミアハだ。よろしく頼むぞ、ヴァルガよ」
「私はナァーザ・エリスイス。あんまり仲良くなれなそうだけどよろしく」
「これナァーザよ」
「ハハハッ! いや神ミアハ、そのぐらい直球な方がオレは楽でいい」
「むぅ、そうか。...いや、
「ああ、むしろそのままでいてほしいくらいだ」
「.......」
こうしてオレたちはオラリオを目指す。
今思えば、オレの冒険の始まりはここだったのだろう。この出会いが、オレを、いやオレたちの運命を大きく変えることになるとは、その時は考えてなかった。
まずは皆さま、この作品を読んでいただきありがとうございます!
最後のほうは少し駆け足気味で終わらせたのですが、どうだったでしょうか。自分的には満足いくできなのですが。まあ、楽しんでいただけたら幸いです。
あと、もしこの作品が面白ければお気に入り登録の方、よろしければお願いします。見切り発車なのでプロットなどもなく、不定期で更新するからです。更新されたときにすぐにわかるので、お気に入り登録はいろんな意味で便利です(作者もうれしいよ(笑))。
では皆様、次回いつになるかはわかりませんが、またお会いしましょう。