めぞん一刻 二次小説 眠れぬ夜   作:今津晶

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第7話  風邪と陽だまり

裕作は眠りから醒めると、寝惚けたまま朦朧とした意識で、辺りの様子を探った。

瞼は鉛のように重く、目を開けるのが辛かった。頭がガンガンし、何も思い出せず、全身が熱っぽくて酷くだるい。

 

鼻も詰まって息苦しかった。裕作はパンツ一枚だけの裸で、シーツに包まれ全身汗まみれで横たわっていた。

裕作は胸と下半身の上に重みを感じていた。裕作はゆっくり左手を胸に持ってきて胸の上の物を触った。

その柔らかくてすべすべした物は、女の右腕であることが分かった。

 

裕作は首を右に回し、薄目で右腕の持ち主を確かめようとした。

女は右腕で裕作を抱きかかえ、右足を裕作の腰に巻きつかせる様に絡ませ、うつ伏せに眠っていた。

シーツからはみ出た長い髪には見覚えがあった。何だ・・・・響子か・・・裕作は安心して再び瞼を閉じた。

 

やがて女は、裕作に回した右腕と右足に力を入れ、裕作の体に擦り寄って来た。

裕作は無意識に左手で女のお尻を抱きかかえ、右手を女の胸の下にこじ入れて、擦り寄るのを助けようとした。

 

ん・・・・何だか・・・胸の膨らみが、やけに小ぶりな感じがするなあ・・・・裕作は不思議に思いながらも女を引き寄せた。

 

「あっ・・・」

八神が、裕作の上に覆い被さりながら喘いだ。驚いて裕作は目を開いた。

 

「うわわわわっ!や、八神!何やってんだっ!」

 

「裕作さん・・・」

八神が恍惚の表情で、裕作に唇を重ねようとした。

 

裕作は目玉が飛び出すぐらいの驚きの表情を浮かべ、慌てて八神の体を両手で引き離した。

 

「五代先生が求めてくるなんて・・・私、嬉しい・・・」

 

「ば、ば、バカなことを言うなっ!こ、ここは・・・?何で俺は裸で八神と寝ているんだっ?・・・はくしょっ!昨日の晩は・・・あ、ああっ!」

 

裕作は昨晩のことを思いだし、頭を抱え激しく首を振った。

 

「う、嘘だっ!こ、これは、何かの間違いだっ!」

 

「そう。私達、間違いを犯してしまったのよ・・・もう引き返せないわ・・・私達、禁断の愛の果実を一緒にかじったの・・・」

 

「お、おまえ、私達ってなあ・・・お、俺は、断じて何もやってないっ!やってないぞっ・・・は、はくしょっ!」

 

「もうっ。五代先生ったら、しらばっくれて.・・・酷い・・・」

 

八神は不機嫌そうに口を尖らせた。裕作は、ごほっごほっと尚も咳き込んだ。

 

「やだあ、五代先生。風邪引いてらっしゃるの。大丈夫?」

 

「は、はくしょっ!八神、おまえが俺を裸にしたからじゃないかっ。とにかく一刻館に帰らないと・・・はっくしょっ!」

 

「だめよ、寝てなくちゃあ。それにもう夜が明けるわ・・・夜が明けたら一緒に一刻館に連れて帰ってあげる」

 

「だ、だめだっ。お前と一緒に朝帰りしたら、事態の収拾が着かなくなる!」

 

「どっちにしても、もう事態の収拾は着かないわよ。こういう場合、きっちりと話をつけた方がいいのよ」

 

「し、しかし・・・この状況は・・・ああっ、こんなに目一杯キスマークを付けて」

「ど、どうするんだよ?これじゃあ、誰がどうみても浮気と思われるじゃないかっ。は、はくしょっ!は、破滅じゃ・・・」

 

ベッドの上で身を起こした裕作は、自分の上半身を見ながら絶望的な表情で呻いた。

 

全裸のいぶきはシーツで体を隠し、裕作に寄り添うと微笑みながら裕作の背中をびしっと叩いた。

 

「だいじょ~ぶよ、五代先生。浮気じゃなくて、本気になればいいんだから・・・うふふ」

 

 

裕作と八神は寄り添いながら朝靄の中、時計坂を一刻館に向かっていた。

裕作はごほっごほっと咳き込み、八神が背中をさすっていた。

 

裕作は、ただ響子にどうやって言い訳するか、その事ばかり考えながら歩いていた。

 

””俺は何にも悪くない・・・こそこそする事は、これっぽっちも無いんだ・・・響子だって話せば、きっと分かってくれる・・・””

””堂々と帰れば・・・あんまり堂々とすることでもないけど・・・とにかく、何も後ろ暗いことは・・・ちょっとは有るけど・・・・””

 

””あれは不可抗力だし・・・とにかく、卑屈になることは無いんだ・・・””裕作は八神の存在を忘れて、自問自答を続けていた。

八神は裕作の腕を取り、べったりと寄り添いながら話し掛けた。

 

「私・・・大学やめようかしら・・・」

 

「せっかく苦労して入った大学なのに、何で?・・・はっくしょ!」

 

「だって、もしかしたら京也が怒って、しいの実保育園を潰しちゃうかもしれないし、そうなったら五代先生、生活に困るでしょ?私が働いて食べさせてあげるわ」

 

「何でそ~なるんだっ!は、はくしょっ!」

 

「ご、五代先生。あんまり興奮すると風邪をこじらすわよ」

 

「これ以上、話をこじらせないでくれないかっ。全くもう、何で俺がこんな目に遭わなくちゃいけないんだっ。くしょ!」

 

「もうっ。五代先生ったら、人を疫病神みたいに・・・」

 

「疫病神そのものじゃないか・・・」

 

裕作が小声でぼそぼそと呟いた。八神が裕作の顔を見て首を傾げた。

 

「五代先生、何か言った?」

 

「八神が気にすることは無いって、言ったの・・・はくしょっ!・・・ん?」

 

一刻館の入口に到着した裕作は、玄関先の水音に気がつき首を捻った。

 

裕作がそっと玄関先を覗き込むと、朝靄の中、Piyo Piyoエプロンを着た響子がホースで玄関先に水を撒いていた。

響子の目は一晩中泣いていたのか真っ赤だった。それを見て、裕作の青白い顔が更に青くなった。

 

裕作が一刻館の入口で固まっていると、八神が玄関先を覗き込み、響子を見付けて明るく声を掛けた。

 

「管理人さーん、お早うございます。ただいま帰りましたっ!」

 

響子は八神を、キッと睨み付けた。玄関から待ち構えていたように一の瀬、四谷、朱美が現れて、裕作を取り押さえた。

裕作が驚いて叫いた。

 

「な、何ですかっ!皆さん、こんな明け方から・・・ちょ、ちょっと、何をするんですかっ!あ、ああっ」

 

「何をするかって?それはこっちの台詞だよ。堂々と愛人と寄り添いながら朝帰りなんかして、ただじゃあおかないよっ!」

 

一の瀬は裕作の上着を脱がせながら裕作に怒鳴った。

 

「この変態。ドスケベ。浮気者!!!」

 

四谷も裕作のシャツと下着を脱がすのを手伝っていた。朱美は唖然としている八神を取り押さえていた。

裕作はあっという間に上半身を裸にされて鳥肌を立てながら身を震わせた。

 

「は、はっくしょ!ひ、酷いじゃないですか!はっくしょ!僕は風邪を・・・」

 

一の瀬、四谷、朱美は裕作の裸の上半身をしげしげと見つめ、大量のキスマークを発見し、三人は同時に首を振った。朱美が右手を挙げ、響子に向かって言った。

 

「裁判長。有罪です。死刑にして下さい・・・」

 

「異議無し・・・」

一の瀬と四谷も右手を挙げて同時に答えた。

 

響子は恐ろしい形相で裕作を睨み付けると、手に持ったホースの先を裕作に向け、氷のように冷たい水を思いっきり裕作に浴びせ掛けた。

裕作は響子に水を浴びせられたことが致命傷となり、風邪をこじらせて5号室の布団の中で寝込んでいた。

八神が濡れたタオルを裕作の額に載せながら話し掛けた。

 

「五代先生、風邪が治るまでずっと、私が側で看病してあげるから安心してね」

 

「だ、だから心配なんじゃあないか・・・八神、大学はいいのか?俺はちょうど休暇を取っていたから問題ないけど・・・ぜ~ぜ~」

 

「ご心配なく。私って学業優秀ですから。少しぐらい休んだって・・・それより、何でもして欲しいことがあったら遠慮なく言ってね」

「管理人さんに出来ないことでも、何でもしてあげますから」

 

「う、うわっ!しなくていい、しなくていいっ。ぜ~ぜ~」

 

「五代先生ったら、何興奮してんのよ。それにしても管理人さんって、本当にひっどいことするわね~。あれでも女房かしら?」

 

「あのなあ、誰のせいでこうなったと思ってるんだよ・・・ぜ~ぜ~」

 

「誰のせいでもないわ・・・そう。これは運命なのよ。神様が私達を結びつけてくれたの・・・私、もうぜ~ったい五代先生を離さないっ」

 

八神が布団の上から裕作を抱き締めた。裕作が苦しそうに呻いた。

 

「う、うう・・・よ、寄るなっ・・・触るなっ・・・近付くなっ・・・」

 

 

4号室と5号室の間の壁に開けられた穴を通じて、秘かに裕作といぶきの様子を伺っていた四谷が二階から降りて来て、管理人室の扉を開けて中に入った。

管理人室では、響子、一の瀬、朱美が机を囲んで、真剣な表情で密談を行っていた。

 

「四谷さん、それで五代君達の様子はどうだった?」

 

朱美がお茶をすすりながら四谷に訊ねた。四谷は暗い表情で答えた。

 

「それが五代君は仕事にも行く気配が無く、八神さんも大学に行かずに、朝から布団の中で二人で組んず解れつ、も~激しいのなんのっ・・・」

 

「も~いいよ、胸が苦しくなってくるねえ。まるで反省している様子が無いじゃないか」

「仕事まで休んで、女房の目の前で愛人と熱い抱擁を続けているなんて、ど~いう神経をしてるんだろうねえ?」

「全く呆れ果てて物が言えないよ」

一の瀬が煙草をくゆらせながら大きな声を上げた。

 

朱美が俯いて怒りに震えている響子に訊ねた。

 

「どうするのよ?管理人さん。このまま放っとくの?」

 

「私、二人に会って、はっきりと話をつけてきますっ!」

響子は立ち上がると、管理人室の扉をばたんっと乱暴に開けて出ていった。

 

四谷が朱美と顔を見合わせて呟いた。

 

「どうなるんでしょうか?やっぱり五代夫婦離婚記念パーティの準備を進めておいた方がいいでしょうか?」

 

「そ~ねえ・・・血の雨が降っても、地は固まらないだろうから・・・」

朱美がお茶を机に置きながら四谷に答えた。

 

 

 

「あなた、お話があります。」

 

響子が5号室の扉をノックしながら言った。しばらくして、八神が髪を整えながら扉を開けて出てきた。

 

「五代先生は風邪をこじらせて寝ています。お話なら私が伺います」

 

「な、なんで、あなたなんかと・・・私は主人と・・・」

 

「管理人さん、私とまっこう張り合いましょうよ。私に負けるのが恐いんでしょ?」

 

「誰が、あなたなんか・・・私は主人の口から直接、話を聞きたいだけです」

 

「だったら、なぜ最初からきちんと五代先生の話を聞いてあげないんですか?五代先生、風邪を引いて苦しんでいたのに、いきなり水を掛けるなんて・・・酷いじゃありませんか?」

 

「そ・・・それは・・・で、でも、そもそもは風邪を引く様なことをしたのが悪いんじゃありませんか」

 

「そもそもは管理人さんが悪いんです」

 

「な、何で私が・・・私が何をしたっていうのっ?」

 

「とぼけたって無駄ですよ。私はぜ~んぶ知ってるんですから・・・とにかく、これから五代先生の面倒は、私が見ます!」

 

「何を言ってるのよっ。いいから主人と話をさせて。あなたとの事も、はっきりさせなくちゃあいけないし・・・」

 

「管理人さん。五代先生のことを、本当に愛しているんですか?五代先生は風邪で苦しんでいるって言ったでしょ!」

「本当に大切な男なら、愛する夫なら、まず五代先生の看病をするのが妻の役目でしょ!管理人さんは、五代先生の妻の自覚が足りないんじゃありませんか?」

「きっと、五代先生より、まだ前の御主人の事を大切に思っているんだ・・・」

八神は響子の顔を睨み付けた。

 

響子は驚いた表情で八神の顔を見詰め、しばらく間を置いて言った。

 

「もういいです・・・分かりました。もう、勝手になさいっ!」

 

響子はすたすたと廊下を階段に向かって戻っていった。響子は歩きながら、ぶつぶつ独り言を言っていた。

 

『何よ・・・偉そうに・・・何で私があんな小娘に、説教されなくちゃいけないのよ・・・』

 

5号室の中では、扉を背にして八神が暗い表情で俯いていた。

 

 

「言い過ぎちゃったかなあ・・・(流石に言ってはならないことを言ってしまった気がする)・・・でも悪いのは管理人さんじゃないの!」

「何よ、一方的に五代先生だけが悪いように決め付けて、最初に五代先生を裏切ったのは自分の方じゃない」

「こうなったら動かぬ証拠を突き付けてやるわ」

 

八神は嫌がる敦子、悦子、麻美を呼んで買い物を言付け、順番に裕作の面倒を見るように強制して、自分は自宅から生活に必要な自分の荷物を5号室に運び込んだ。

 

裕作は八神達が、周りでバタバタしたのが更に致命傷となり、本格的に寝込む有様となってしまった。

4号室の四谷は始終、壁穴から5号室の様子を探り、管理人室の作戦本部へと情報を送り続けていた。

こうして、八神が一刻館の5号室に籠城して二日が過ぎた。

 

八神は、時計坂にある斗志久の家の前に来ていた。彼女は赤のセーターにジーンズ姿で、傍らにカメラを準備し、斗志久の家の前の茂みに隠れていた。

彼女はジーンズのポケットから赤い手帳を取り出し、本日の日付のページを開いた。

 

そこには””K子、午後2時から自宅で写真撮影””と斗志久の予定が書かれていた。

 

「間違い無いわ。K子なんて伏せ字にして、自宅で撮影なんて。バレバレじゃないの・・・こんなんで禁断の不倫行為を隠せるとでも思ってるのかしら?」

 

八神は響子が現れるのを、じっと待ち構えていた。

やがて玄関の扉が開く音がして、斗志久が外に出てきた。斗志久は玄関先の犬小屋の前で、尻尾を振るサクラの頭を撫でていた。

 

すると急にサクラが、彼女の隠れている茂みに向かって吠え出した。

斗志久は不思議そうな表情をしながら、八神のいる茂みをじっと見つめ、茂みの方に向かってゆっくりと近付いた。

八神は身を縮めて隠れていたが、茂みの側まで来た斗志久に見付かってしまった。

 

「あれ?君、そんなところで何しているの?」

 

「あ、あの・・・私・・・」

 

「あ、ああ。分かった。君、慧子さんですね。待っていたんですよ。そうですか、やっぱり初めての時は恥ずかしいから、決心が着かずに隠れていたんですね?」

 

「い、いえ・・・私は・・・」

 

「まあ、とにかく遠慮せずに家に上がって下さい。ここじゃあ寒いでしょう。風邪を引きますよ?」

 

「は、はあ・・・」

 

八神は斗志久に促されて、何が何だか良く分からないうちに斗志久の家の中に案内されてしまった。

まだ段ボール箱が置かれているリビングルームのソファーに座った八神は、斗志久の出した紅茶をすすりながら、彼女の目の前に座っているハンサムな斗志久の顔を呆然と眺めていた。

斗志久が秋の陽だまりの様な笑顔で、八神に微笑みかけながら言った。

 

「御免、御免。まだ越してきたばかりで家の中がゴタゴタしていて。君、さっきから何も話さないけど、とっても大人しい人なんですね。何だか、紹介を受けた時のイメージと違うなあ」

 

「い、いえ。私、普段はみんなから、煩さがられるくらい騒がしい人なんです。ただちょっとドキドキしちゃって・・・」

 

「分かりますよ、君の気持ち。初めての時はドキドキするのが当然です。とにかく、焦らないで自分の家だと思ってリラックスして下さい」

「あれ?自分のカメラを持参してきたんですか?君、モデル志望だけじゃあなくて、自分で撮したりもしているんですか?」

 

「こ、これは・・・ええ、趣味でちょっと・・・芸術写真に興味があって・・・」

 

「へえ。感心だなあ、君。なかなかモデル志望で、きちんと写真に興味を持っている人って少ないから・・・」

 

「は、はあ・・・」

八神は言葉に詰まって俯いた。

 

ふと、机の側に置かれていた口の開いた段ボール箱に目が行き、箱の中の写真立てに目が釘付けになった。

その写真立ての中には、一刻館の管理人室で見た斗志久の手帳の表紙の裏に貼り付けてあった写真と同様に、美しい女性の肩に手を掛けた斗志久の姿が写っていた。

八神は思わず段ボール箱から写真立てを取り出すと、ティーカップを片付けようと席を立ちかけた斗志久に訊ねた。

 

「こ、この写真・・・」

 

「え。その写真は、別に作品でも何でもないんだけど・・・」

 

「いえ。この写真の女性、どなたなんですか?モデルさんでしょうか?とても綺麗な方なんで・・・」

 

「僕の亡くなった妻です。サクラって言うんですよ。ほら、玄関先に犬がいたでしょう。犬小屋にサクラって名前が書いてあったと思うけど、あれは亡くなった妻の名前を付けているんです」

 

「亡くなった奥様・・・」

八神が驚いた表情で、斗志久の顔を見詰めた。

 

「ほ、本当に綺麗な奥様だったんですね。だ、だったらきっと美しい奥様をモデルにした作品とか、いっぱい残っているんでしょうね?」

 

「それが、サクラはモデルどころか、カメラマンの女房のくせに、写真に撮られることを余り好まない女だったんですよ・・・」

「だからサクラの写真は、ほとんど残ってないんです、残念ながら・・・・」

斗志久はティーカップを持ったまま暗い表情で俯いた。

 

八神は斗志久の顔を見詰めながら、斗志久が今でも亡くなったサクラを、本当に愛し続けていることを確信した。

 

((あの黒い手帳も、きっと手帳の中の内容よりも、表紙の裏に貼り付けてあったさくらさんの写真の方が大事だったんだわ・・・))

((あの秋の陽だまりの様な笑顔の裏に、こんな辛い過去が隠されていたなんて・・・とても悪い事をするような人のようには思えない・・・))

((で、でも管理人さんとの事は、どういうことなの?・・・妻を亡くした寂しさから人妻の色香に惑わされて、つい・・・いえ、違うわね・・・))

((それじゃあ、管理人さんの方から、斗志久さんを誘惑したのかしら?・・・それもちょっと変ね・・・ああ、ホントに何だか分かんなくなってきちゃった・・・・))

 

「ち、ちょっと君、大丈夫?」

 

斗志久が自分の世界に入っていた八神に訊ねた。彼女は、はっと気が付くと明るく斗志久に答えた。

 

「え、ええ。大丈夫です。そろそろ写真撮影をしましようか」

 

 

八神は斗志久に案内されて、斗志久の家の二階を改造したスタジオの中に入った。

スタジオと言っても、普通の部屋の様にダブルベッドと側に様々なアンティークの小物が置かれ、撮影用のライトと反射板と撮影機材が用意されただけのものだった。

 

八神は斗志久に促されてダブルベッドの前に立ちすくむと、衣装とかメイクの準備はいらないのかと、周りをきょろきょろ見渡した。

不思議そうに立ちすくんでいる彼女に向かって、斗志久が首を傾げながら言った。

 

「何をしているんですか?さあ。服を全部、脱いで下さい」

 

「えっ!服を全部、脱ぐんですか?」

 

「どうしたんですか?服を全部、脱がないとヌード写真にならないでしょう?」

 

「ヌ、ヌード写真?!」

 

そう言うと、八神は唖然として斗志久を見詰めた。

 

 

 

 

(次回へ続く)

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