女子高が共学になったから通ってるけど、男子俺しかいなくね? 作:kiri kiri
「さあ、覚悟はできたかい?…まぁ多分そんな覚悟も何もいらないと思うけど」
「例えそうだとしても怖いものは怖いのです」
まぁ…同情出来そうな部分もあるが…勢い任せでもいいだろうめんどいし(ヤケクソ)。
てことでノックノック
「ちょ…!」
『どうぞ〜』
「ちょいと待っててよ、話はつけとくよ。あと、中川さんの姿で入ってきてね」
「ちょ、待っ…」
彼女の静止の声も聞かずに強引に話を進めて部室にはいる事にした。
酷い事をしている気もするが、俺には絶対に大丈夫だと確信があるからこそできる行動である。
「戻りました」
「おかえり!」
「おかえり…」
入室した先でヴェルデ先輩が明るく出迎えかえてくれた一方、彼方先輩はまだちょい不機嫌気味なんですが?
いや、まじすみません。本当にすみません。
ヴェルデ先輩に一瞬見惚れてしまってマジすみません!
「あ、先輩。どうでしたか?せつ菜先輩の名前はありましたか?」
「いや…それが無いみたいでさ」
「そ、そんな!じゃあ私達が見てたせつ菜先輩は一体!?」
「もしかして…幽霊とか〜?」
「あ、あわわわわぁぁぁ、ま、まままさかそんな馬鹿な話あるわけありませんよね?」
「わからないよ〜?スクールアイドルへの情熱が強すぎて〜成仏しきれなかったとか?」
あー…かすみんは幽霊とかの類は苦手なのね。てか彼方先輩はかすみんの反応みて楽しんでるよな?
残念ながら幽霊では無いんだよな…
「あー生徒名簿にはありませんでしたが…当人に会う事はできましたよ」
「嘘でしょ!?」
「えー!同好会以外に学園で見かけた人はいないって言うのに…」
「後輩くん…凄すぎだよー…」
「流石先輩です!」
案の定驚く四者四様だが、しずくちゃんだけ何か違くないか?
何が流石なのかわからないよ?
「先輩はいつも頼りになります!」
ん?俺の心を読んだのか流れで言ったのか分からない微妙な発言だな。
きっと後者だよな?何故か自信持てないんだけど。
あー…うん、今は置いとこう。
今は優木せつ菜本人を待たせてるしね
「あー…とりあえず本人も呼んでるから、本題を進めよう。もういいよ、入って」
「………………………」
あり?声が聞こえなかったんだろうか?
大きめの声を出して呼んだものの入ってくる気配なし。
まぁ、スクールアイドルの練習に音楽は必須だし防音使用になってても何ら不思議ではないか。
「声聞こえなかっただけかな?優木さん、入って…き…て」
と、言う訳で扉を開けて迎えに行った結果
………………………………
シーン…と擬音が何処からか聞こえそうなくらいには静かで誰もいなかった。
「あー…」
これあれだな…声に出すとうるさいから心で叫ぶしかないなぁ。
逃げやがったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???
マジかよ!?うわぁー…どうするかな?いや追いかけるけどさ
「先輩?せつ菜先輩は…誰もいないじゃないですか!?」
「ええ!?」
「せつ菜ちゃん…何で…」
「ねぇねぇ、後輩くん…本当にせつ菜ちゃんがいたのかな〜?もしかしたら後輩くんが見たのは本当の幽霊だったり〜?」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!彼方先輩!本当にあり得そうじゃないですか!?」
ああもう……彼方先輩はわざと…いやちょい本気かもしれないけど…
「バカ言わないでください…追いかけてきますんで待っててください」
「あっ!ちょっと__
♢
さて、部室を出て20分くらい彼女を探しているんだが………全く分からない。
だってこの学校広すぎるんだよ!この校内で隠れんぼや追いかけっこはエグすぎる。
生徒会室に戻ってるのだろうか?俺の思いつく場所は生徒会室しかないんだよなぁ…
「ああ…戻って皆にも協力してもらった方がいいかな?」
そんな一人事を呟いた時__
ピロン♪
ラインの着信が届いたみたいだ。
差出人はしずくちゃんか…内容は__
『先輩、私達はせつ菜先輩の行きそうな場所に心当たりがあります。先に屋上に向かってますね。先輩も来てください』
屋上か…まぁ1人黄昏るには打って付けでありきたりに思える場所だな。
てか、心当たりあるなら先に聞いとけばよかったな…俺ただのアホやん
♢
連絡を貰って屋上のドア前まで来たけど…
「なんでまだ入ってないんですか?」
「待ってたよ…後輩くん…」
彼方先輩からの一声は何処か不機嫌混じりだった。
理由は…優木せつ菜を上手く説得しきれてないことだろうか?仕方ないけど俺はできうる範囲で頑張ったつもりだしなぁ…くっ!強引な手段は思いつくが…セクハラだと言われたら終わりなんですよ(泣)。どうかご容赦ください(泣)
「考えたんですけど、私達がいきなり顔を合わせるより結衣先輩が先に入ってせつ菜先輩を励ました方がいいんじゃないかな〜と…先輩はせつ菜先輩の事情を知ってるみたいですし」
「なるほど…まぁ、確かに」
「と言う訳だから、お願いするね?」
「先輩、よろしくお願いします」
ふむ、俺が説得に失敗したからこの状況になってしまったのだが……まぁ、任せてくれるならもう一度話をしよう。
どの道彼女とのお話しはここで終われない
「わかりました。呼んだら出て来てください」
そう言ってドアを開けて屋上に足を踏み入れた。
僅かに沈みかけた夕日が屋上を幻想的に照らして俺の心を惹きつける。
黙ってこの夕日を眺めていたいが、残念ながら一人黄昏るために来た訳じゃない。
柵に腕を預け、夕日を眺めて黄昏てる女の子に話をするために来たんだ
「やあ、
「…………どうして此処が分かったんですか?」
優木せつ菜は夕日に顔を向けたまま問いを投げた
「さあ?君と今日が
「そうですか……皆さんには話した事がありましたね。屋上から見る夕日が綺麗で好きだと……」
俺は優木せつ菜の言葉を聞きながら彼女の隣まで向かう。
柵に片手だけ預けて彼女の横顔を見ようとしたら長い髪が邪魔で表情は見えない
「さて、夕陽に照らされて元気は出たかい?」
そう問いかけて優木せつ菜はようやく此方を振り向いた___
「…………綺麗な顔が台無しだな」
彼女は静かに泣いていた
そして俺は…なぜか嘘をついていた。
本当は……夕陽に照らされながら流している泪と哀しげな表情………そして
「……逃げてすみません。せっかく…伊波くんがお話しを場を設けてくれたのに」
逃げる…逃げるね……
「俺は…逃げる事は悪い事では無いと思うよ。逃げる事で周りにどれだけ迷惑をかけようと…俺は周りの人間にも責任は絶対あると思うし……逃げちゃいけない事から逃げてもさ…もう一度向き合えた時に人間って成長するんじゃないかな?」
「………そんな風に言ってくれるなんて、伊波くんは優しいですね」
「優しいも何も本心さ……言葉を選んだ訳じゃない」
俺は彼女の側に近寄ってまじないを…頭を軽く撫で、ハンカチを差し出した。
彼女は少しとまどいながらも「ありがとうございます」と言ってハンカチを受け取って泪を吹いた。
数十秒ほどまじないをかけ、涙を拭いた彼女は少しスッキリした顔していた。
多分もう大丈夫だろう___
「ちょっとだけ待ってて」
撫でていた手を離して屋上のドアへ向かい、ドアを開けて待っていた同好会メンバーにもう大丈夫と告げる
「せつ菜先輩!」
「せつ菜ちゃん!」
「み、皆さん………」
「せつ菜先輩!聞いてください!今スクールアイドル同好会は廃部の危機なんです!まとまった人数、活動をしていない同好会を認める訳にはいかないと生徒会長に言われました!」
「かすみさん…」
「私は…いろいろ意見が食い違って、皆嫌になって同好会に来なくなったと思っていました。でも違ったんです…皆想いや、事情がすれ違っていただけなんです!!ここにいる皆はスクールアイドルでいる事を諦めたりしていません!せつ菜先輩にどんな事情があって来なくなったのかなんて私にはわかりません。でも私達は大好きなスクールアイドルを続けていたいんです!先輩!どうかスクールアイドル同好会に戻って来て下さい!」
戻って来て下さい____
彼女達を遠目で見守っていた俺は、この言葉を聞いた時、静かに…彼女達の青春を邪魔しないため、わざと開いたままにしたドアから屋上を出て行った。
彼女達はすれ違っていただけなのだ。
優木せつ菜…もとい中川菜々が大切にしたいと思っていた「大好き」は壊れてなどいなかった。
ここから先は彼女達の青春の物語だ___
これ以上、文字通りの部外者が関わるのは無粋と言うものだ。
後は彼女達の青春がこれから先も輝く事を祈って……などと言葉にしたらちょっと恥ずい様な事を思いながら俺は屋上を去った