女子高が共学になったから通ってるけど、男子俺しかいなくね? 作:kiri kiri
スクールアイドル同好会が再結成したと思われる時間。
もうすぐ日が落ちるであろう頃、部室のドアは優木せつ菜に乱暴に開けられた。
「伊波くん!?」
怒りと困惑を混ぜた表情を浮かべた優木さんを先頭に残りの4人も部室に入って来た。
つい、反射的に「おかえり」と言いそうになってしまったが…俺は違う。
俺はあくまで協力者なだけである故、その言葉をかけるのは違うな。
「終わったみたいだね」
「伊波くん…どうして先に戻ってたのですか?何かあったらフォローするとも言ってくれていたのに!」
優木せつ菜は悲痛な表情を見せて問いかけてくる。
「大丈夫だよ。ちゃんと大丈夫って確信するまでは待ってたから」
「……だとしても…なぜ勝手に居なくなってしまったんですか?」
「俺は、この同好会のメンバーじゃないから。あくまで協力者だから。中川さんが優木せつ菜さんとして初めてちゃんとメンバーに向き合う大切な時間だったから…俺はスクールアイドル同好会のメンバーである君達だけで話し合うべきと思ったし、部外者抜きで君達だけで話してほしかったから」
「…………っ」
同好会のメンバーは納得いかない様な表情を浮かべながら、納得しかけてる様な…難しい表情を浮かべてる。
本当なら、あのまま置き手紙かラインでも残して帰ろうかと思っていたをだけど…まだ最初のお願い事を解決してないからね
「さて、聞くまでもないのは重々承知だけど…もう大丈夫かい?」
「………はい。今回は本当に伊波くんには助けて頂きました。本当に…ありがとうございました」
彼女は納得いかない様子から切り替え、真剣な表情を浮かべ、深くあたまを下げて感謝の言葉を伝えた。
感謝を伝えてくれたのはいいのだけど…なんか想像と違ったな………望んでないとはいえ、もし感謝を伝えてくれるのであれば…もっと笑顔で感謝を伝えてくれる事を想像してた。
まぁ、別にいいんだけども
「無事に解決して良かったよ。これでスクールアイドル同好会はもう大丈夫だね」
「はい…確かに、廃部の危機はもうありません」
今だに納得していないのか、明るいとは言えない表情を浮かべながら言葉を言う。
ふむ…納得いかないとしても、あの場に俺がいるのはどう考えても違うと思った。
これは譲れないから仕方あるまい。
「後は彼方先輩に勉強を教える目的で来るかも知れないから、その時はよろしくお願いします。スクールアイドル同好会…応援してますよ。それでは」
そう言って俺はリュックを背負って帰ろうとしたのだが__
「先輩!ちょっと待ってください!」
かすみんに引き止められた
「先輩はスクールアイドルに興味はありませんか?と言うか、きっとありますよね?」
「……ん?」
……ん?…何か心で思った事がそのまま声に出てしまった。
かすみんは何を言ってるんだ?
「せっかくここまで協力してくれんです!是非先輩にはマネージャーとして入部してほしいんです!」
「そうだねー…ここまで関わったんだしー…このまま入部しちゃえば〜?」
「私も!先輩には演劇だけでなく、同好会でも一緒に活動してくれれば心強いです!」
「私も賛成かな?君が協力してくれなかったらどうなってたか分からないし」
「そうです!その通りです!正直私は未だに、屋上から勝手に居なくなった事に納得できてません!その理由が同好会メンバーでないからと言うのであれば、同好会メンバーになればいいんです!」
あー……このパターンか…実はこのパターンは何度か経験した事がある。
今までいくつかの部活動のお手伝いをした際に、勧誘される事は多かった。
そして誘われる度に俺は同じ事を言っている。
「勧誘してくれるのは嬉しいんですが…俺は同好会には入りません」
「えー!何故ですか!?……正直なところ、ここまで肩入れしてくれてるから、可愛い可愛いかすみんが、一押ししてあげれば、入ってくれると思ってたんですが!?」
「そんな事言われてもな…」
困惑と納得していない表情でかすみんは思惑を述べる。
何を勝手な…と思わなくないが、かなり関わってしまった自覚はある。
それこそ、演劇部と比べられる位には。
けれど、ここまで人の持つ複雑な心境的問題に協力したの初めてだった。
それに…生徒会長殿は前々から放っておけないと思っていたのもあったかもしれない。
だけど、結論を言うのであれば…ただ問題が大きかったから、ここまで関わってしまったと言うだけだ。
「かすみさんの言う通り、伊波くんはかなり尽力してくれたので…自惚れかもと思いながらも、てっきり勧誘の言葉を待っていたのかと…」
ふむ、かすみんと思考が似通っているな。
「あはは…ああ言った手前、先輩の事ですから、すぐには入部しないと思っていました」
「まぁ、しずくちゃんはね…」
流石はしずくちゃんだ。
伊達に俺と瀬奈先輩のやり取りを見てきたわけじゃない。
けど、いつもの理由だけじゃないんだよね。
「んで…何で入部に至らない理由はなんなのかな〜って聞きたいところだけど…まぁ、後輩くんはまだ同好会のちゃんとした活動見てないもんね〜」
「「「あ…」」」
「あはは…彼方ちゃんの言う通りだね」
彼方先輩が理由の確信を突く。
俺、スクールアイドル同好会のまともな活動をこの目で見ていないのである。
まぁ…正直興味の良し悪しを言うのであれば、あまり興味はない。
確かに動画などは見せて貰って良いんじゃないかな?程度には思ったが、その程度。
熱烈に好きにはならない程度で、例えるなら誰もが一度は聞いた事がある曲を「いい曲」だなと感じはするが、カラオケで歌える程リピートして聞いてはいないし、思わず口ずさむ程ではない…的な感じだ。
マネージャーになる事を許して貰えても、なる意思は微塵もない。
おまけ(ボツ案…悪ふざけ…ではないが、読む意味はない。中途半端だし。投稿が遅れた理由の一つ)
スクールアイドル同好会が再結成したと思われた当日の夜。
私事、伊波結衣さんは幼馴染の天使こと、歩夢の料理を食べ終わったころ、一件の着信が入ってきた。
相手は中川さん…もとい優木せつ菜だ。
連絡先は他のメンバーから聞いたのだろう。
『伊波くん、どうして途中で帰ったのですか!?』
もしもしの確認もなく、開口一番に疑問と怒りを含んだ声が聞こえてきた。
ふむ、御立腹の様子だなぁ
『何かあった時はフォローしてくれると言ったではありませんか!?』
「…そうだね。でも、大丈夫だったんでしょ?その様子は。それにかすみんが『戻って来て下さい』と言うまでは聞いていた。大丈夫だと確信するまで」
「………だからって、ラインメールだけ寄越して帰るなんて納得できません!だって貴方はこのスクールアイドル同好会を…」
そう、俺は一応帰る事をグループラインメールで伝えた。
内容は___
『僕は先に帰ります。このメールを見る頃には皆さんの蟠りは解消できているでしょう。
ここから先はスクールアイドル同好会のメンバー1人1人が紡でいく物語です。約束通り可能な限りの協力はしたので、文字通りの部外者ある僕はお暇させていただきます。
彼方先輩に勉強を教える目的で部室にお邪魔する機会が何度かあるかもしれませんが、その時はよろしくお願いします』
『これからのスクールアイドル同好会の活躍を僕も応援してますよ』
____と言う訳だ。
ちゃんと俺は『可能』なところまで協力したと判断し、グループを退会した
「俺は協力者であって同好会メンバーではないからね。あの先は君達だけの、スクールアイドル同好会だけで話をする特別な場。部外者の俺が聞いていい話じゃないと判断したんだ」
『そんな風に考えていたんですか……そんな事…伊波くんは今回の件の最大の功労者ですよ。私なんか伊波くんがいなければきっと今頃……きっと今頃一人で泣いて後悔していたと思います。だから……だから……伊波くんがいないと分かった時、私____」
電話越しに気づいてしまった。
彼女声が僅かに震えてる事に…泣いている事に…そして___
『悲しかったです……伊波くんがいなくて」
彼女が悲しいと、泣いていると理解したくなくて……思考が止まる。
数秒か数分か分からない時間を…彼女のすすり泣く声を何度か聞いて我に帰る。
そうか……俺が泣かせたのか………
「ごめん……」
俺は謝ることしかできない。
もしかすれば…まだ話は聞かないにせよ
でも、それでも…俺にも譲れない想いがあるのだ。