【完結】隣の席の田中さん   作:ハカナ

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第11話 その気持ち、心の病

 8月も後半になり、いよいよ夏休みの終わりが近づいてきた。しかし、こうも暑くては外に出るのも面倒だ。

 

「はぁ……」

 

 だからこうして自室にこもるものの、微妙なところである。憂鬱になって、思わずため息をついてしまう。というのも、先週の夏祭り以来、漣のことを考える時間が増えたからだ。

 一緒にピアスを探した時の漣の表情。普段は柔和な笑みを絶やさない彼が、人を助ける時に見せる真剣な顔。それが頭から離れない。

 それに、人のために行動するという一点において揺るがない決断力と行動力を発揮する。普段の気弱で控えめな性格と比べると、同じ人間とは思えない。まるで、何かに取り憑かれているみたいだ。悪く言うつもりではないが、その姿は常軌を逸している。思い出すたびに心がモヤモヤする。落ち着かなくなる。

 人のために積極的に行動する漣は面白い。そう思って近づいたのに、最近はそれだけではない。彼に対して“面白い”以外の感情を抱いている。様々なものがごちゃごちゃに混ざった、何とも形容し難い感情だ。それが良いものなのか、或いは悪いものなのか、何一つ把握できない。

 

「本当に何なの……」

 

 この気持ちの正体を知りたい。最も効率的な方法は────。

 

 

 

   ※※※

 

 

 

「……随分と急だね」

「別に暇なんだから問題無いでしょー」

 

 考えた結果、やはり漣と一緒にいるのが手っ取り早いという結論に至った。漣のことをもっとよく知れば、この感情を知るための手がかりが掴めるかもしれない。

 

「で、今日は何をする?」

「漣が普段やってることー」

「え……?」

「それくらい何かあるでしょー?」

「まあ、あるけどさ。でも、田中さんが楽しめるかどうかは分からないよ?」

「それでもいいからー」

 

 漣は気にしなくてもいいことを気にする。常に自分よりも相手を尊重する彼らしい。長所であることは間違いないのだが、友達が相手なら遠慮はいらないのでは、と思う。優しすぎるのも考えものだ。

 

「わ、分かった。探してみる……」

 

 漣は慌ててスマホを取り出して、地図アプリを開く。

 

 

 

   ※※※

 

 

 

「漣ってこーいうのやるんだねー。意外かもー」

 

 やって来たのはボウリング場だった。真面目な漣がこういう遊び場にいるのはあまりイメージできない。とは言え、誰だって人に見せない一面というものはあるだろう。人は見かけによらない、ということか。

 

「引っ越す前から友達とよく遊んでたよ。田舎じゃ貴重な遊び場だからね」

 

 田舎の話。思えば、私が知っているのは今年から東京に来た漣だけだ。過去の、福島にいた頃の漣を何も知らない。関わりが薄い訳ではないのに。もっとも、今まで興味が無かっただけなのだが。

 

「だから、東京でも友達とボウリングができるのは嬉しいな」

 

 ……友達。その言葉を聞く度に変な気持ちになる。漣は純粋に友達と一緒に遊べることを楽しみにしている。しかし、自分はどうか。今この瞬間を楽しんでいることは間違いではない。しかし、この気持ちを100パーセント肯定することができない。やはり、よく分からない感情がそうさせる。モヤモヤが収まらない。

 

「早くやろーよぉ」

「そうだね。ここに来たからには存分に遊び尽くそう」

 

 考えても答えは出ない。こういう時は手足を動かすに限る。

 

「ボールってどれを選べばいいのー?」

「初めてなら7くらいの軽いボールがおすすめだよ。それで軽かったら数を上げて丁度良いのを選ぶ。これは実際に持ったり投げたりした方が分かりやすいかな」

「へぇー」

 

 とりあえず、漣に言われた通り7ポンドのボールを選ぶ。持ってみると少し軽いと感じた。だけど、これでいい。軽い方が少ない力で投げられるし疲れない。今日は一日中歩き回る予定だ。後のことを想定して体力の消耗は最小限に抑えておきたい。

 

「最初は俺がやるよ。投げ方が分からなかったら教えるから」

 

 にこやかに答えると、漣は早速レーンに向かう。投球の姿勢を取り、勢い良く投げる。

 

「……!」

 

 ボールは淀み無く直線を突き進み、ピンを薙ぎ倒す。ストライクだ。

 

「凄いじゃーん」

「小さい頃からやってきてるからね。慣れてるよ」

 

 謙遜。相変わらず自分に厳しい。褒め言葉を素直に受け取らない点は自分と同じだが、理由は違う。漣の場合は褒められるのが嫌という訳ではなく、自分自身に要求する基準が高すぎるからだろう。現状に満足せず、常により上を目指していると言えば聞こえは良い。しかし、どれだけ頑張っても満足しないのでは、いつかは疲れてしまいそうだ。それはそれは面倒な生き方だと思う。

 

「それじゃ、次は田中さんだよ。頑張って」

「ほどほどにー」

 

 今度は自分の番なので、レーンへ移動する。

 漣の投球フォームを思い出し、ボールを投げる。無駄な力を入れず、最小限の動きで。それでいて、正確なコントロールで。真っすぐ、突き刺すように────。

 

「え……」

 

 ボールはレーンを中心を捉え、そのままブレることなくピンへ命中。10個あるピンを全て倒した。

 

「凄いよ田中さん! 初めてでストライクなんて!」

 

 漣の称賛の言葉が耳に入る。

 

「へー……」

 

 別に嬉しくも何ともない。こうして褒められるのは慣れている。それよりも、今回もできてしまうのかという気持ちの方が強い。それを理解すると、ボウリングもつまらないと思ってしまう。

 しかし、それが辛かった。このまま上手くできてしまったら漣をガッカリさせてしまう。漣が楽しいと思っているものをつまらないと自分が思ったら、それは漣を否定することになるのではないか。そんな恐れを抱く。

 

(何でこんなに漣のこと心配してるんだろ、私……)

 

 別に心配するようなことでもないはずだ。自分は自分、他人は他人。何を思っているかなんてどうだっていい。

 ……なのに。それなのに。漣を心配せずにはいられない。自分の考えてることがいかに傲慢で、侮辱的であるか。彼の積み重ねたものは一朝一夕で崩れるようなものではない。漣がいくら繊細で打たれ弱いガラスの心の持ち主であっても、こんな簡単に折れるほど脆い訳ではない。それを理解していてもなお、止めることができない。

 今まで、誰かの心配なんてまともにしたことが無かったのに。なぜか、目の前の彼に対してはそんな情を抱いている。自分の中で何かが変わっている。不思議な感覚だ。

 

「次、田中さんだけど」

「……え、うん」

 

 考えるあまり、周りのことが見えていなかった。漣の催促を受けて、再びボールを持ってレーンの前に立つ。さっきと同じようにボールを投げる。またストライクだった。

 

 

 

   ※※※

 

 

 

 ボウリングをやった後、昼食を食べるためにファミレスに来た。

 

「田中さんのボウリング凄かったよ。まさか1ゲーム目から100以上取るとは思ってなかった」

「そんなに凄いのー?」

「初めてだと50以下なんてこともざらにある。その中で100以上は田中さんが初めてなんだ。ホントにビックリした」

「ふーん……」

 

 他の人からしたら、何をやっても最初からそこそこできるというのは羨ましいことなのかもしれない。しかし、それは意外と苦労する。すぐに上達して褒められても嬉しくない。上っ面の肯定は何も喋らないのと同じだ。そんなものは面倒だし、退屈だ。

 

「こちらジャンボパフェになります」

「ありがとうございます」

 

 漣は店員に対して丁重に礼を言って、注文したパフェを受け取る。

 

(……でか)

 

 ジャンボパフェというだけあって、通常の2、3倍くらいはありそうな大きさだ。一人で食べきるには大きすぎる。

 

「甘いの好きなのー?」

「うん、好きだよ。だって甘いのって良いじゃん」

 

 まあ、そうだろうなとは思った。でなければこんなものは食べない。いや、そうだとしてもなぜ特大サイズなのか。普通のサイズで別にいいだろう。

 

「だからって、それは挑戦しすぎじゃないー?」

「何かそういう気分だったからさ」

 

 さっきから理屈がやたら子どもっぽい。いや、ある意味では年相応かもしれないが。普段の漣と人を助ける時の漣とのギャップが激しい。本当に同一人物なのか、という疑問すら湧く。

 

「漣って時々子どもっぽいよねー」

「ははは、それ姉さんにも言われたな……」

 

 そんな漣の反応は予想外だった。

 

「え、お姉さんいるの?」

 

 初めて聞く漣の家族の話。興味深い。思わず問い詰めた。

 

「うん、一つ上の姉さんがいるんだ。可愛いし、優しいし、頭良いし、コミュ力高いし、高校生になっても一緒に遊んだり買い物に行ったりするし、悩んでるとすぐに気づいてくれるし、相談にはいつも乗ってくれるし、……とにかく、本当に良い姉さんだよ」

 

 早口で熱弁する漣。人を助ける時と同じくらい活き活きしている。とりあえず仲が良いことは伝わった。

 

「好きなんだねー。そのお姉さんのことー」

「うん、俺をずっと支えてくれる人だからね。一番世話になってるんじゃないかな」

「……漣ってさー、シスコン?」

「え?」

「仲良いからってそんなに熱く語るー?」

「これも姉さんにいつも言われるなぁ。俺自身シスコンだとは思ってないよ。でも、姉さんを心の底から尊敬してるのは事実だし……どうなんだろ……はは」

 

 もしもこの話を10人が聞いたとしたら、10人全員が漣をシスコンだと断定するだろう。しかし、当の本人のシスコンの境界線は曖昧なようだ。これは割りと深刻な気がする。

 

「あ、でもよくイジってくるのはちょっと止めて欲しいかな。“漣は私がいないとダメダメだよね~”とかしょっちゅう言ってくるんだ。もう高2なんだから大丈夫だってのに」

 

 姉も姉で結構入れ込んでいる気がする。兄弟も姉妹もいない自分だが、三峰姉弟が互いに距離が近すぎるのは間違いない。今思えば、漣は控えめな性格にしてはやけに女子に慣れている節があった。なるほど、歳の近い姉がいたからだったのか。納得だ。

 ────でも。なぜだろう。漣が姉と仲良くしているのを想像すると心のモヤモヤが強くなる。別に、姉弟が仲良くするのは珍しいことでもないだろう。本当に、今日の自分はおかしい。どうかしてるんじゃないかと思う。

 

「どうしたの田中さん。凄い不機嫌そうだけど……もしかして体調悪い?」

「高校生にもなって姉離れができない甘えたがりの男はどうかと思いまーす」

「違う! そんなんじゃないってば!」

「ふふー」

 

 ちょっとからかうつもりだったが、感情的になってつい語気が強くなってしまった。しかし、きちんと慌ててくれたようで何より。本当に素直な性格で助かる。

 

 

 

   ※※※

 

 

 

「次はどこに行くのー?」

「ゲーセン。色々あって面白いよ」

 

 ボウリングの時にも思ったが、漣は意外と世俗的だ。自分のことなど顧みない危ない人間だと思い込んでいたが、その実ありふれた感性を持つ普通の人間だった。純粋に誰かのためにしか動かない人間でなくて安心した。人助け以外にも、好きなことは割とあるようだ。

 

「────ねえ、田中さん」

 

 歓心していると、漣に肩をポンと叩かれた。 

 

「ここでちょっと待ってて」

 

 漣の顔つきが違う。そこにはいつもの緩やかな笑みは無くて、引き締まった真剣な表情があった。こういう顔をする時は決まって────目の前に困っている人がいる。

 前を見ると、道の真ん中でしゃがんでいる女性がいた。落ち着かない動きで、慌てているのが分かる。

 

「すいません。どうかしましたか?」

「コンタクトを落としちゃって……探してるんだけど、見つからなくて……!」

「なら手伝います。こういうのは一人よりも二人の方が良いですから」

「……! ありがとう!」

 

 漣は無駄の無い自然な流れで助けに行った。相変わらず一切の躊躇が無い。

 女性の探し物は、コンタクトレンズのようだ。確かに、コンタクトは小さくて透明という探すのが難しい要素が揃っている。慌てるのも理解できる。

 

「はぁ……」

 

 にしても、呆れた。三峰漣という人間は、誰よりも何よりも自身の信念を優先する。本当にどうしようもない人助けバカだ。分かり切っていたことだが、友達と一緒にいる時でもそれは変わらないようだ。

 

(何だか腹立ってきた……)

 

 心のモヤモヤがこれ以上ないほどに高まってきた。それも、イライラを伴って。理解ができない。自分はなぜこんな気持ちなのだろうか。未知のものだからこそ余計に意識してしまう。

 

「……私も手伝いますー」

 

 無性にこの状況に対して反発心が湧き上がった。自らの意思に反して、その言葉は出た。

 こんなこと、やりたい人に任せておけばいい。自分は漣とは違う。誰かのためになんか動かない。自分のために誰かに迷惑をかける悪い子だ。こういう奉仕活動なんて柄じゃない。

 

「貴女もありがとう!」

「別にー、人数が多い方が効率良いですしー……」

 

 やりたいからやる訳ではない。漣が手伝うから仕方なく自分もやるだけだ。それ以外の理由なんて特に無い……はずだ。

 

「田中さん、どうして……?」

「胸に手を当ててよく考えてみてくださいー」

「うん、それはコンタクトを見つけた後でね。とりあえず、今はありがとう」

 

(……それだけ?)

 

 この男、人を助けることしか考えていないのか。自分の行動に驚きはしたものの、すぐに冷静になって視線を逸らす。そして再び女性のコンタクトを探し出す。

 

(……何、これ)

 

 呆れられたり、無視されたり、そういう反応をされるのは不本意だ。悪い子はきちんと叱ってもらわないと困る。構ってくれないと困る。特に、漣に限っては尚更そうでないと困る。漣にまでそんな反応をされたら、自分は一体何なんだ。結局、自分は孤独なのか?

 

『どうしてって、危険な目に遭ってる子がいたら普通は助けるに決まってるよ。それが同じクラスで、隣の子だったら尚更』

『俺だって少しは田中さんのこと知ってるし、見て見ぬ振りなんてできないよ。したら一生死ぬほど後悔するからさ。別に殴られるだとか、血が出るだとか、そういうのは大した問題じゃないよ』

『そんなに言われるほど変わってるかな。悪いことを悪いって言うのは当然だと思ってるけど』

 

 あの夜のことを思い出す。眩しくて暗い夜の街での出来事。自分に色が付いた瞬間。

 

(まみみは……)

 

 そうだ、自分に手を差し伸べてくれた人物がいる。小柄で子どもみたいで、しかし内心では大きく揺るがない、大人びた信念を持つ少年。

 彼は、夜に迷って隠れていた自分を見つけてくれた。悪い子の自分を叱ってくれた。イタズラやからかいにも真摯に向き合ってくれた。困っていたら全力で助けてくれた。

 いつの間にか、自分が孤独だと思うことは無くなっていた。それもこれも全部、漣のおかげだ。ああ、やっと気づいた。自分はあの日の夜から────

 

(────漣が、好きなんだ)

 

 自分が心の内で抱いているのは好意だ。三峰漣に恋をしている。

 思い返せば簡単なことだった。漣の傍にいたい。離れたくない。一緒にいると心の底から楽しい。だから独りは嫌だ。ただそれだけのことだった。それを認めるのにこんなに悩んで苦しんで、バカみたいだ。

 

「あ……」

 

 地面に何かが落ちていた。それは、小さくて、透明の薄い膜状のもの。間違いない。女性が落としたコンタクトレンズだ。

 

「これですかぁ?」

 

 手に取って、女性に見せる。

 

「うん、それそれ! ありがとう! 私、酷い近眼だから無くなったら目が見えなくて困るの。代わりも無いし、作るのも割りと面倒だし……」

「確かにー、それは困りますねー」

 

 目が見えない上に代わりが無いのなら必死に探すのも頷ける。その上新しいコンタクトを作るのは金がかかるし面倒だから、女性は探すという判断をしたのだろう。一理ある。

 

「見つかってよかったです。それと、すいません。俺、全然役に立たなかったですね。あんな啖呵切っておいて、恥ずかしい……」

 

 そんな中、漣には似つかわしくない自嘲をする。自分で見つけられなかったのが不服だったのだろうか。

 

「謝る必要なんて無いのに。君の助けるって言葉、私とっても嬉しかったわ。その優しさが、温かかった」

「……ありがとうございます。そう言ってくれると、少しは報われます」

「その気持ち、これからも大事にしてね!」

 

 落ち込む漣を慰め、女性は漣の頭を撫でる。

 

「……はい!」

 

 漣は満面の笑みで答えた。今まで見てきた中で一番良い表情だ。純粋に嬉しいんだと一目で分かる。困っている人を笑顔にできて、尚且つその信念を肯定してくれたのだ。彼にとってこれ以上の喜びは無いだろう。見ているこちらまで笑顔になりそうだ。

 ただ、自分に対して向けた表情ではないことが納得できない。もしかして、漣はこういう年上の女性が好みだったりするのだろうか。シスコンだし。

 

「二人ともありがと! ホントに助かった!」

 

 女性は自分と漣に感謝を告げ、去っていった。これにて一件落着、というやつだ。

 

「ありがとう。田中さんが助けてくれたおかげですぐに解決できたよ」

「別に、漣に合わせて仕方なくやっただけー」

「でも、別に俺に合わせる必要無かったのに。こういうことするのは好きじゃないだろうし」

「……どっかの誰かに“人を助けなきゃ死んじゃう病”を移されちゃったのかもー」

「はは、病気扱い、か。ちょっと悲しいけど、でも田中さんらしいや」

 

 本人にその自覚は無いが、漣の人助け精神は常識の範疇を超えている。病的と言ってもいい。自分を顧みない姿には、時々危うさを覚える。しかし、それは彼の良いところでもある。一切の迷いを抱かずに行動に移せるのは、ひとえに強い想いを持っているからこそだ。目の前で困っている人間を絶対に見捨てない────それが三峰漣という人間だから。何しろ、他ならぬ自分自身がその心に救われた。ゆえに、否定することはできない。したくない。

 

(……本当に、病気になっちゃったなー)

 

 確固たる自分の信念を持っていて、それを忠実に貫く姿勢。そのためなら躊躇うこともなく、簡単に自分を犠牲にできる覚悟。自分のような悪い子も絶対に放っておかず、ダメなことはダメだとハッキリ言える勇気。同じ高2とは思えないくらい達観した考えを持つ少年だ。その癖、普段は気弱で控えめで妙に子供っぽいのだから恐ろしい。

 総じて、変な人間だ。しかし、同時に面白いとも思う。こんな人間がこの世に一人くらいいたっていいだろう。自分は三峰漣のそういうところに惹かれた。今はそれをハッキリと理解できる。つまるところ、自分は恋という名の病に罹ったのだ。そういうものには縁なんて無いと思っていたが、存外悪くない。

 

「……ふふ」

「田中さん、今笑った?」

「き、気のせいー……!」

 

 危ない。顔に出ていた。こんなところでこの気持ちを悟られてしまったら、どうなるか分かったものではない。

 

「まみみ、体調悪くなったから帰りまぁす」

「確かに顔が赤い……もしかして、熱中症!? 今すぐ病院に……!」

「そこまでする必要無いからぁ……!」

 

 こんな状態では漣とまともに話せない。見るに堪えない表情をしている。恥ずかしくてとても見せられない。従って、家に帰る他に無い。戦略的撤退というやつだ。今はまだ、気づかれるには早すぎるから────。




 ダークソウルが楽しすぎて投稿が遅れました。作中でも特に大事な回に限ってこういうことが起こるの、何なんですかね。
 あと、新実装のSSR摩美々があまりにも良すぎて爆散しました。オマエさ、そんな顔すんの……反則。その上コミュも隙が無かったです。これだからシャニマスは止められない。いつも最高の供給をしてくれる運営に感謝です。

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