春李が芳乃と珠姫に問いかける。
「さぁ、2人の意見を聞かせてもらおうかしら?」
「私からでいい?」
珠姫が先に口を開き、春李が頷いた。芳乃は、プレイヤー目線の意見が聞けると息をのむ。
「はっきり言って全国制覇なんて無理、全国出場も出来ないと思う」
「どうしてかしら?」
「芳乃ちゃんは、
「ふふっ、そこまでヨミのこと考えてんだ」
「べ、別に・・・でも今の高校野球、1人の絶対的エースだけじゃ勝ち進むことは厳しいと思う。2番手投手、欲を言えば1試合を2人か3人で乗り切れる3番手投手、4番手投手まで欲しい。そうでなきゃ、ヨミちゃんが絶対どこかでパンクしちゃう!」
「随分神妙な言い回しね、美南の時に何かあったのかしら?」
「中一の時、同級生に凄いピッチャーがいて、入ってからすぐに試合でバンバン投げてたんだけど、チームがその子に頼り過ぎて登板過多になって、それでひじを痛めちゃったの」
芳乃が話を付け足す。
「高校と違って、中学は成長期真っ只中の骨なんかもまだ弱い時期だからね」
「そう、それでその子、野球ひじになっちゃって・・・次の年には上級生の人にエース取られちゃって、野球もそのまま辞めることになっちゃったの」
「
珠姫が深刻な顔で芳乃の手を握る。
「うん。だから芳乃ちゃんお願い、ヨミちゃんをその子の同じ轍を踏ませたくないの!中学と高校って違いはあるけど高校の方が公式戦の日程も段違いに厳しいから・・・だから、だから・・・」
「わかったよ、私に任せて。私もヨミちゃんにそんな辛い目に遭ってほしくないから」
「ちょっとちょっと、私にも任せなさいよ。言ったでしょ?私の掛かりつけ紹介するって。それに、私が打ってヨミに全試合全イニング全打者全球、全力で投げなくても良いように援護するわ」
「わ、私も及ばずながら力になるわ」
「芳乃ちゃん、息吹ちゃん、春李ちゃん・・・」
「さて、珠姫のヨミへの愛妻っぷりを聞けたところで・・・」
「ちょ、ちょっと春李ちゃん!?」
珠姫は一瞬で顔を真っ赤に染める。
「芳乃の来年再来年このチームが全国で戦えるかって意見を聞きたいんだけど」
「そうだね、希ちゃんにも言ったけど今でも私の意見は変わらないよ。そんな先のことはわかんない」
「でも、まだタラタラ身体動かしてるだけで私もいなかったあの時と違って、その『わかんない』の中身は違うんじゃないかしら?」
「うん、本格的な練習や今日の試合をみて、
中堅手問題を聞き息吹が3人に疑問を投げかける。
「中堅手って、その時になったら春李がやればいいんじゃないの?」
その問いに先に反応したのは珠姫だった。
「うーん、それは・・・どうかな?」
珠姫は春李の顔を仰ぎながら唸る。春李は若干困ったような顔で微笑む。芳乃が次いで話す。
「私としては、春李ちゃんには中堅手よりも
「どうしてよ?普段の練習や今日の試合を見る限り、春李の力は中堅手向きなんじゃないかしら?」
「確かに春李ちゃんの守備範囲は『地球の70%は水、残りの30%は春李ちゃんの守備範囲』って言われるぐらいだけど・・・」
「でしょ?それに芳乃が前言ったような5ツールプレイヤーだっけ?だったら、外野なら中堅手か
この息吹の言葉に春李の表情から笑顔が消える。
「息吹、それは左翼手の地位が中堅手、右翼手と比べて劣ってるって取っていいのかしら?」
「は、春李ちゃん!?抑えて抑えて!」
「息吹ちゃん謝って!」
「だ、だって、私もプロの試合観ることがあるけど、左翼手って中堅手と右翼手と比べて打撃優先って感じだし、守備力が落ちたベテランが守ったりするイメージがあるわ」
その言葉に春李は呆れながら更に語気を強める。
「ハァ・・・息吹、同じ外野を守る者として私は左翼手というポジションを誇りを持って守っているわ。だから言うわ、左翼手舐めないでっ!!」
「春李ちゃん、そのへんにしてあげて」
「ごめん、息吹ちゃんはまだ経験が浅いからポジションごとの大変さとかにまだ達してないんだよ」
「わ、悪かったわ。ごめん」
「この前怜ちゃんにも言われたわ。私が中堅手になって怜ちゃんが右翼手に回って息吹と白菊には左翼手を任せた方が良いんじゃないかって。しっつれいしちゃうわ」
芳乃が若干困り顔で話しだす。
「確かに、そういった意味じゃ世間もみんなも、まだ春李ちゃんの本当の凄さを理解していないのかも」