唯我独尊じゃじゃ馬娘   作:コンスタンチノープル

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第17球

先に沈黙を破ったのは春李であった。

 

「私も・・・」

 

「春李ちゃん?」

 

「私も、ヨミの気持ち、分からないわけじゃないわ」

 

「でも春李ちゃん、いつもトップでやってたんじゃ・・・」

 

「完全に分かるってわけじゃないわ。ただ、チームの中で孤立するってのがね」

 

「そっか・・・詳しい話、はヨミちゃんに聞かなかったんだから春李ちゃんにも聞かないでおく」

 

「そうしてくれると助かるわ。その時が来たら私から話すつもりよ」

 

「分かった。さて!お待ちかねのマッサージの時間だよ!向こうに行こう」

 

「別に待ってないんだけど・・・」

 

二人はそのままキッチンからリビングのソファへ移動した。

 

「ささ、横になって」

 

「私はソファなのね・・・まあ、いいわ」

 

芳乃のマッサージが始まる。

 

「春李ちゃんの身体も柔らかいね。さすがだよ」

 

「持って生まれたものを大切にしてるだけよ」

 

しかし芳乃には疑問に思う所があった。

 

「でも、下半身に比べて上半身が小さいね。ちょっと筋力トレーニングの割合を増やした方が良いと思うよ」

 

芳乃がそう言うと春李は少しムッとした表情で答える。

 

「私、筋力トレーニングって嫌い、っていうか野球選手には必要ないと思ってるんだけど」

 

「それは極論だよ。バランスの悪い身体は故障の原因になっちゃうよ」

 

「大丈夫よ。私は身体の大きさよりも柔らかさを求めてるから無理して怪我するようなやわな身体じゃないわ」

 

「それなら、柔軟さを保ったまま身体を大きくする方法もあるはずだからやってみよう?」

 

「確かにあると思うけど量を増やすことに問題があるって言いたいのよ」

 

「どうして?」

 

「身体を大きくすると、それに比例して重量も増えるじゃない?」

 

「うん」

 

「増えた分の重さでヒザや足首、他の足腰に負担がかかって私の最大のセールスポイントであるスピードを失いたくないのよ」

 

「私は今マッサージして、春李ちゃんにはもっと上の選手になれる伸びしろがあるって感じたよ。ねぇ、挑戦してみよう?」

 

「挑戦ね・・・分かったわ、やってみようじゃない。でも・・・」

 

「何かな?」

 

「夏が終わるまで待ってほしい、急に始めるとそれこそ身体を壊す原因よ。それに野球選手なんだから体を鍛えるんなら野球のプレーでにしたいわ」

 

「分かった。じゃあそれまでに春李ちゃんのレベルアップ計画を建てておくよ」

 

「芳乃のこと、信用するわよ。あそうだ、聞きたいことがあるんだけど」

 

ふと、春李は先程芳乃の部屋で見た『あるもの』のことを聞くことにした。

 

「どうしたの?」

 

したのだが・・・

 

「さっき芳乃の部屋で見たんだけど、壁に私のサイ・・いったぁ!」

 

芳乃に思い切り『痛い』マッサージをされる。

 

「どうしたのかな?」

 

芳乃の声は冷たく、目はうつろである。

 

「よ、芳乃さん?怖いんですけd・・いったぁいいぃ!」

 

間髪入れずに春李の身体を強く揉む芳乃。

 

「ねえ、わざとよね!?これ絶対わざいったあいっ!」

 

「だってこれはお仕置きだよ?」

 

「そんなこと言ったって・・・」

 

「ただいまあ」

 

「芳乃、戻ったわよ」

 

ヨミ、珠姫、息吹の三人が500回の素振りを終えて帰ってくる。

 

「あっ、良い所に帰ってきた。息吹、芳乃を止めあいたあっ!」

 

「よ、芳乃?」

 

「芳乃ちゃ・・・さん?」

 

ヨミと珠姫はたじろぐ。

 

「三人ともおかえりー、素振り500回やってきたよね?」

 

芳乃は冷たい声とうつろな目のまま話す。

 

「は、はいいぃっ!」

 

三人の声が重なる。

 

「よかった。ご飯できてるからすぐに食べられるよ」

 

「わ、分かったわ。で、でも一旦部屋に、バット置かせて~っ!」

 

今の芳乃はダメ、二人とも一旦私の部屋に退避っ。

 

で、でも春李ちゃんが・・・

 

きっとああなったのも春李が悪いのよ!全部春李の自業自得だわっ!

 

「あっ、息吹待ってちょっと、私を見捨てないでぇ~」

 

「春李ちゃんはまだマッサージが残ってるよ」

 

「おーたーすーけーっ!」

 

―――――――

 ―――――

  ―――

   ―

 

「いただきます」

 

五人そろってテーブルを囲む。

 

「もう、死ぬかと思ったわ」

 

「元はと言えば春李ちゃんが悪いよ。あ、このハヤシライス美味しい」

 

「カレー、ハヤシライス、ビーフシチュー、クリームシチューを4つに分けて盛り付けてみたのよ」

 

「ちょっと気をてらいすぎじゃないかしら?」

 

「面白いでしょ?それはそうと芳乃、どうしてサインのこと隠したのかしら?」

 

サインという言葉に芳乃と春李以外の三人の頭に?が浮かぶ。

 

「サインって・・・私が初めて芳乃ちゃんと息吹ちゃんに会った時に書いたやつのこと?」

 

最初に口を開いたのは珠姫だった。次いでヨミが口を開く。

 

「はむっ、タマちゃんの冷静に対応してたよね?もしかしてサインし慣れてた?」

 

「そ、そういうわけじゃ・・・はむっ」

 

「もきゅもきゅ、待ちなさいよ。なんで春李が珠姫のサインのこと知ってるのよ」

 

「そうよ、私が言ってるのは私のサインのことよ」

 

「春李ちゃんのサイン?」

 

「でも私が知る限り、芳乃が春李にサインねだったとこ、見たことないけど」

 

「はむ、そりゃそうよ。私、芳乃にサイン書いた覚えないんだから。覚えの無いものがどうしてあるのかしら?」

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