唯我独尊じゃじゃ馬娘   作:コンスタンチノープル

21 / 29
第21球

「私にカケラもないピッチャーの才能、それはね・・・」

 

「ごくり」

 

一同息をのむ。

 

「この指よ」

 

「指?」

 

今度は声が重なる。

 

「そう、正確には指先の感覚。それがピッチャーとしての才能がカケラもない最大の訳」

 

「そうか、そういうことか」

 

「怜どういうことなの?貴女だけ分かってないで教えて」

 

「いい、いい、理沙っち自分で言うから。てか他のメンツは分かんないの?」

 

「いえ、どういうことなの?」

 

「私もさっぱり」

 

「私も、息吹さんと理沙先輩が普通に投げていたのにどうして春李さんがと」

 

「あぁ・・・白菊と息吹はまだ経験値足りてないから分かんなくても責めないわ」

 

そういうと春李は再びロジンに手をやりボールを握りながら静かに語り始めた。

 

「菫たち、私の球を速い球って言ったわよね」

 

「えぇ・・・」

 

「私の球、通称"棒球"っていうの。打撃投手(バッティングピッチャー)にはもってこいの、私がピッチャー続けてても恐らく中学止まり、プロはおろか野球名門高校からは鼻にも掛けられなかったハズよ」

 

「棒球・・・」

 

その言葉を聞いて野球経験の浅い息吹と白菊以外は納得した顔をする。春李は言葉を続ける。

 

「珠姫が言ったでしょ?明らかにノビもないし威力も無い、スピードはそこそこ出てると思うけど、打者にはそれほどには感じられない典型的な棒球よ」

 

息吹が口を開いた。

 

「でも、コントロールは。コントロールは悪くなかったじゃない。コーナーに投げ分けて変化球も混ぜれば・・・」

 

「手投げでコントロールするぐらいならね、私は母さんやおばさんたち、お婆ちゃんたちやひいお婆ちゃんたちの影響で小さい頃からプロを間近で見てきて、プロにもただ速い球を投げれたり、コントロールのいい野手ならいくらでもいるってことを教えてもらったわ」

 

そう言いながら春李はベンチに腰掛けた。

 

「だけど本当にノビ、キレ、威力のある速い球をコントロールできるのはほんの一握りにも満たないわ。それがピッチャーになれるヤツの条件。それはわずか0コンマ0何秒かの絶妙の時間差で球を切り(・・)ながら離すことができる神業的な指先の感覚の持ち主だからよ」

 

白菊が重たそうに口を開く。

 

「れ、練習すれば・・・」

 

春李は首を横に振り答える。

 

「うんうん、その研ぎ澄まされた感覚はそう簡単に補えるものじゃないわ。野球の前に剣道でその道を極めた白菊なら、なんとなく分かるんじゃない」

 

「そう・・・ですね・・・」

 

白菊は今にも泣きそうな顔でそう答えた。他のみんなもバツの悪そうな顔をしている。最初に口を開いたのは芳乃だった。

 

「春李ちゃん、それだけ詳しいってことは、ピッチャー目指していたの?」

 

「ええ、でもこの有様よ」

 

「ごめん、辛いことさせちゃって・・・」

 

「いいっていいって、会議で二番手ピッチャー作るって話出た時に覚悟はしてたわ。でも、」

 

「ばってん?」

 

「息吹と理沙っちがいきなりピッチャーの球投げた時はちょっと悔しかったのと、羨ましかったな・・・」

 

「私たち、そんなにいい球投げてたの?」

 

「ええ、もちろん。投げることはないけど、私が稽古つけてあげようか?」

 

「春李が?」

 

「そうよ、自分に投げる才能がなっくても受け売りで教えることは出来るわよ」

 

「受け売り?」

 

一同その受け売りという言葉が気になった。その言葉の意味に最初に気付いたのは芳乃だった。

 

「ま、まさか・・・」

 

次に珠姫、ヨミ、怜、稜、理沙、菫、白菊、希、息吹と順に気付いていく。

 

「そう、私にピッチャーの手ほどきをしてくれたのはキャロライン婆ちゃんとセオドラ婆ちゃんにマルティナ叔母さん」

 

「うーっ、3人とも二刀流で通算370勝、2,500奪三振、2,400安打、350本塁打、1,400打点以上を挙げた大選手たちっ!、中でもトニー選手はキャッチャーとピッチャーを兼任しながら通算503勝、4,364奪三振、4,137安打、420本塁打、2,073打点を記録したスーパースターっ!」

 

「芳乃の情報力にはたまに引くわ。そう、それで私にピッチャーじゃプロへ行けないと言ってくれた人たち・・・」

 

理沙が聞く。

 

「仲が、こじれてしまったの?」

 

「うんうん全然。むしろ私の進む道を明確にしてくれて感謝してるくらいよ。で、3人から教えてもらった技術なんかを三人に教えてあげる」

 

三人という言葉に最初に反応したのは珠姫だった。

 

「三人って、ヨミちゃんも?」

 

「わ、私も!?」

 

「そうよ?息吹と理沙っちって控えピッチャーが出来ても大事な所を任せられるエースはヨミ、あんたしかいないんだからね。そのためには一層のレベルアップが必要よ」

 

「そ、そうだよヨミちゃん。私も手伝うから」

 

「あ、ありがとう」

 

ヨミは二人からの思わぬ言葉に顔を赤らめる。

 

「そーれーとっ」

 

「?」

 

一同の頭に?が灯る。

 

「もう投げちゃったから隠すつもりはないわ。私の空いてる時に言ってくれれば打撃投手してあげる」

 

「よかと!?」

 

「もち、でも希には私の死んだ球じゃ満足できないと思うわ。遅くても活きた球投げる理沙っちか息吹の球打った方がいいと思うわよ?」

 

「ばってんマシンよりは活きた球やて思うけん打ちたか!」

 

「わ、わかったわ。さ、私のことはこれまでにして練習再開しましょ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。