唯我独尊じゃじゃ馬娘   作:コンスタンチノープル

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第24球

「それは違うわ希」

 

その言葉に最初に反応したのは芳乃であった。

 

「春李ちゃん?」

 

「何が違うと?これでも私なりに考えてんことなんやけど・・・」

 

春李は心配しながら、諭すような口調で続ける。

 

「なにもかもよ、まず私とはレベルが違うから自分の分を弁えてる。っていうけど、確かに私と希じゃレベルが違うのは誰もが認めるところだけど、希は今の自分のレベルを見誤っている。自分のこと卑下しすぎ、まあ、私という規格外の天才と毎日一緒にプレーしてたら自信を失ってしまうのもうなずけるけど・・・」

 

芳乃が話の途中だが少し怒りながら食い気味に春李に迫る。

 

「春李ちゃん何が言いたいの?希ちゃんのこと励ましたいの?潰したいの?」

 

「そう怒りなさんな。ほら、こうやって芳乃は希の事思ってくれてるんだよ。芳乃だけじゃない、他のみんなもあんちゃんも、みんな希のこと頼りにしてんだよ。もちろん、私だって・・・」

 

希がおずおずと聞く。

 

「春李ちゃんが、私ん事ば?」

 

「ええ、私がいくら優れた選手でも、前に走者(ランナー)がいないんじゃ良くてソロホームランが関の山、希がリードオフで塁上にいてくれれば攻撃にも幅が出来るってもんよ。そうでしょ芳乃?」

 

「うん、場合によっては希ちゃんを1番、春李ちゃんを2番に置いて、2人で1点を取る攻撃パターンも考えているよ」

 

それを聞いた春李が少し驚く。

 

「そのプランは初耳ね。希、聞いてた?」

 

「少し・・・」

 

「あら、そんな重要なプランを希にだけ話してこの私に話さないなんて、お天気な話ね」

 

「春李ちゃんだったら直前になっても意図を理解してくれると思ったから」

 

「なぁるほど、芳乃はわかってるわね。あ、あとそれにね。今話したのは希が私の前打つ前提の話だけど、希が私の後ろを打つってなった時のことも考えてるわよ」

 

「私が、春李ちゃんの後ろば?」

 

「そ、これは芳乃も一緒に考えたから芳乃から言ってやって」

 

春李から説明を任された芳乃が答える。

 

「うん、希ちゃんにはまだ話していなかったけど、春李ちゃんくらい実力も名前も知れ渡っている選手になると、勝負を避けられることも多くなってくるだろうから、そういう時に必要なのは春李ちゃんに匹敵する打者の存在。つまり希ちゃんのことだよ。春李ちゃんとの勝負を避けて油断して、安パイだと高をくくっているところを思いっ切り叩いてほしいの」

 

「私が春李ちゃんに匹敵する打者だなんて・・・そげん大役・・・」

 

「のーぞーみっ、今私希は自分のこと卑下にしすぎって言ったばかりでしょ?いい?私こういう時お世辞は言わないからよく聞きなさい。希のバットコントロールは私とも向こうを張れるくらいのモノもってるわ。最低でも恋よりは上だと思ってくれて構わない、レイラ姉さんと比べてもいい勝負、ヘンリエッタ姉さんと比べるとちょっと分が悪いってくらいよ」

 

「私が、鱒川恋や鱒川レイラや鱒川ヘティと・・・」

 

「そうよ、どうして去年のU-15にいてくれなかったのかしら。いてくれたらもっと楽に勝てた試合もあったのに・・・」

 

「私がそげん大きな舞台に・・・」

 

「あら、全国行くんでしょ?全国の舞台で活躍すればU-18から声がかかるわ。まあ、今のままじゃ例え全国で活躍しても厳しいけど」

 

「ど、どこが!?教えて?」

 

「それが私の希に言いたいもう一つのこと、でも芳乃も勘付いてるだろうから芳乃に言ってもらおうかしら?」

 

と振られた芳乃であったが、

 

「いいよ、春李ちゃんが言って」

 

春李に言葉を任せた。

 

希は芳乃に言われたいと思ってるんだろうけどなあ。と思う春李であったが任された手前言葉を続ける。

 

「わかったわ。フォームが崩れるからホームランを狙わないってのは間違ってるわ。第一、後がない時には狙うかもって言ったけどホームランは普段そんな考えの打者が土壇場で急に狙って打てるような一朝一夕なものではないわ。これは私の持論なんだけど・・・」

 

「ごくり」

 

希と芳乃が息をのむ。

 

「真に怖い打者っていうのは必ずどこかにホームランを打てるツボを持ってるものなの。希はいい打者だけどその辺がまだ怖い打者になりきれてないわ」

 

最初に口を開いたのは希だった。

 

「えずか・・・打者・・・」

 

「そう、希のスタイルでズルズルこのまま続けてたら、いいs・・・」

 

「いい?」

 

春李は『いい』の後の言葉を口にするのをためらい、別の言葉で濁した。

 

「いえ、このままのスタイルでいたら、将来絶対壁にぶつかるわよ」

 

「わかった。ばってん、まだこれまで自分ば作り上げてきたスタイルでやらしぇて」

 

「勝手にしなさい」

 

頑固ね。と思う春李、その横で芳乃は、

 

春李ちゃん、何か言いかけて途中でためらって別のこと言った・・・何を言おうとしてたんだろう・・・?

 

芳乃は春李が本来言おうとした言葉を口出すのをためらい、別の言葉で濁したのを感じ取っていた。

 

3人が談義を重ねていると、そこへ杏夏がやってきた。

 

「すみません、ちょっと春李さんをお借りしても宜しいですか?」

 

「私?」

 

「春李さんに是非お手本(・・・)を見せてほしいことがありまして」

 

「手本ね、この私に求めるなんてあんちゃんもわかってるじゃない、でも今希に投げてるところなんだけど」

 

「いいよ春李ちゃん、こっちは一旦トスバッティングに切り替えるから、戻ってきてからまた投げてもらっていい?」

 

「わかったわ」

 

「希ちゃんもそれでいい?」

 

「よかばい」

 

「じゃ、行ってくるわ」

 

そういうと、杏夏は春李をベンチ前の稜と菫のもとへ連れてきた。

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