唯我独尊じゃじゃ馬娘   作:コンスタンチノープル

4 / 29
第4球

みんなと別れて、春李ちゃんと新しい練習スケジュールについてお話ししました。やっぱり選手目線の意見があると有意義なメニューが組める。その後、息吹ちゃんと希ちゃんの素振りとランニングにも付き合ってもらったんだけどやっぱりスイング1つとってもレベルが違う!それにしても、春李ちゃんみんなと一緒の練習はやらないけど、こういう自主トレはちゃんとやってるんだ。ちょっと安心した。

 

「・・・しの、芳乃」

 

「えっ?」

 

「さっきからボケっとした顔で私のこと見てるけどそんなにいい女かしら?知ってたけど」

 

「もう、違うよ。普段の練習には出ないのにこういう自主トレには付き合ってくれるんだと思って」

 

「しっつれいしちゃうわね。私だって練習くらいするわよ、私に必要な練習じゃなきゃやったって無意味なだけ、新越谷(ここ)の練習は無駄が多いのよ。でも安心したわ、芳乃のおかげで有意義な練習ができるんだもの」

 

「じゃあ」

 

「えぇ、明日から練習に出てあげる」

 

「ありがとう!好き!」

 

思わず春李ちゃんに抱き着いちゃった。

 

「ちょ、芳乃」

 

「芳乃ちゃんっ!?」

 

「全く芳乃ったら、あれ・・・ヨミと珠姫じゃない?」

 

「隠れて!」

 

「なんで隠れるのよ」

 

息吹ちゃんと春李ちゃんが同時に聞いてきた。

 

「なんとなく」

 

「私・・・最初はね、ヨミちゃんとなら、勝ち負けとか関係なく、楽しくやれればいいかなって思ってたんだよね」

 

「もし人数が集まらなかったら、キャッチボールするだけの部でもいいと思ってた」

 

「頑張っても頑張っても、上には上がいたり、レギュラー外されたり」

 

「誰より頑張った人が一回戦で消えてしまったり、そういうのは中学でやめたはずだったから」

 

「でもね、いざ人数が揃って本格的な部活をするようになって、全国制覇という言葉まで聞いちゃったら」

 

「なんでだろ・・・中途半端は嫌なんだ、いつの間にか本気になってる」

 

「それはタマちゃんが知ってるからでしょ」

 

「みんなで勝った時の味を」

 

「そうだね・・・勝ってみたい・・・このチームで、私も好きだから」

 

「とにかく!」

 

「これから練習時間増えていくだろうし、ヨミちゃんはついて来られるのって話だよ」

 

「まさか心配してくれたの?」

 

「ほんとは帰らずにずっと練習していたいくらいなんだよ、その上勝てたらどんなに楽しいんだろうね」

 

「だから」

 

「私を連れてってよ、きつい練習でもなんでもするから」

 

「うん」

 

「わかった」

 

「一緒に行こう」

 

「ついていけるかしら」

 

「安心しなさい、ヘタりそうになったら引っ張り上げてあげるわ」

 

「素晴らしいよ~混ざりたい~」

 

「明日からやることいっぱいあるよ、クイックとか守備とか」

 

「イエッサー」

 

「基礎トレも増やさないと二倍くらいに」

 

「えぇ!?」

 

「ふふっ、当然よ」

 

「春李ちゃん?」

 

「ようやく面白くなってきたわね」

 

「なんでもするって言ったよね」

 

「基礎トレって一人だからあんま楽しくない・・・」

 

「息吹ちゃんと一緒になるように調整するから、あの子も足腰足りてないし」

 

「ぎくっ」

 

「大丈夫よ、疲れた時は後ろからソッと押してあげるわ」

 

「春李ちゃん、引っ張らせたり押させたりごめんね」

 

「大丈夫よ・・・ふふふっ」

 

「春李ちゃん、楽しそう」

 

「そうかしら希?」

 

「うん、とっても」

 

「総合メニューは芳乃ちゃんと相談してから・・・」

 

「呼んだ!?」

 

思わず芝の斜面を滑り降りていく芳乃、ちょっと待ちなさい!

 

「この自転車どうすんのよっ!?」

 

「みんな・・・なんでここに?」

 

「ランニングしてたんだ、私たちの家すぐそこだし」

 

「へぇ」

 

ヨミが「はっ」とした顔をして珠姫の方を見る。珠姫はバツが悪そうに顔を赤くしている。

 

「どこから聞いてた!?」

 

「そんなの最sゲフっ」

 

息吹、何で肘を入れてくるのかしら?

 

「さあ・・・今来たばかりよ」

 

「そんなことより練習の話しよう!」

 

フッ、みんないい顔してるじゃない、せいぜい私の引き立て役に・・・いや、このままじゃ私が引き立て役になりそうね。ちょっと本気出してあげるわ。

 

―――――――

 ―――――

  ―――

   ―

 

数日後のこと。

 

「みんな集まって~、新しい練習スケジュール配るよ~」

 

「文句がある人は遠慮なく言ってね」

 

「これはこれは・・・」

 

「なかなかハードね」

 

「やった!守備連携が増えてる」

 

「・・・・・・」

 

「練習内容はともかく・・・食事の献立まで決められてるんだけど」

 

「もし無理なら私が作ろうか?」

 

「食材が買えないんなら言って、鱒川家のルート使って私が提供するわ」

 

「そういう問題じゃなくて!」

 

「ふふ・・・1年生、頼もしいわね」

 

気持ちも新たに練習が始まる。

 

「ふたつ!」

 

「ナイッスロー」

 

「珠姫のやつ気合い入ってるじゃん」

 

「なんかあったのかしら、でもいい感じじゃない?」

 

「まぁ声は小さいけどな」

 

「はい集合」

 

怜ちゃんが手を打って集合の合図を掛ける。

 

「先生、お願いします」

 

「引き継ぎが遅れてしまいすみません、顧問の藤井(ふじい)です。みなさん自主的に練習されていて偉いです!」

 

「よかったやさしそう」

 

「家庭科の先生ですよ」

 

「あんちゃんおっそ~い!」

 

「あんちゃん!?」

 

「おい春李!先生なんだからあだ名で呼んだりするな。それからちゃんと敬語を使え!」

 

「私は私のしたいようにするだけよ」

 

「ふふ・・・構いませんよ。春李さんの他にももう授業で会った子もいますね」

 

「さて・・・」

 

「どうやら全国を目指しているようですね」

 

およ?

 

「そこで1週間後に練習試合を組みました」

 

「試合!?やった!」

 

「どこまでやれるか見せて下さいね」

 

「早速きたね」

 

「うん!」

 

「絶対勝とうね」

 

「ふふふっ遂にこの鱒川春李の高校野球デビュー戦よ!」

 

「あ、春李さん。春李さんはスタメンではなく控えを考えております」

 

「えっ!?」

 

「およよっ!?」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。