ある日の夜、青年は魔法の力に目覚める。
力に目覚めた青年は数多の出会いや困難の中で、何を思い、何を成すのか……
これはその始まりの物語……
魔法少女リリカルなのはLOST FORCE、始まります。
ジュエルシード集めは順調に進み、照人となのはは深夜の学校で五つ目のジュエルシードの封印を行っていた。
「デャァァァァァッ!」
≪stand by ready.≫
「リリカルマジカル。ジュエルシード、シリアル20。封印!!」
≪Sealing.≫
封印が完了し、レイジングハートの排気ダクトから魔力の残滓が放出される。
しかし、慣れない魔法の連発になのはの顔には疲労の色が見えていた。
次の日の朝、なのははベッドに仰向けになり、レイジングハートを取り出した。
≪Confirmation.≫
レイジングハートを中心に浮かぶ五つのジュエルシードを眺めるなのは。
すると、なのはの部屋のドアがノックされる。
「俺だけど、入っても大丈夫?」
「いいよ~」
どうやらドアをノックしたのは照人のようで、なのはの返事を聞くと部屋に入ってくる。
「ジュエルシードを見てたの?」
「うん。でも、もっと頑張らないと……」
照人の言葉になのはが答えると、ユーノは『休んだほうが良い』と休暇をすすめる。
それに対し、なのはは心配そうな顔をする。
「でも……」
「今日はおやすみ。もう五つも集めてもらったんだから、少しは休まないと持たないよ。それに、今日は約束があるんでしょ?」
ユーノの言う通り、今日は父・士郎がオーナー兼コーチを勤める少年サッカーチーム『翠屋JFC』の試合の日だった。
「そうだね。今日はジュエルシード集めは無し、しっかり体を休めてまた明日から頑張ろっか」
照人の言葉になのはとユーノは『うん』と返事をした。
*****
なのははユーノを連れてアリサ・すずかと一緒に試合観戦に来ていた。
「照人さんも来れたら良かったのにね」
「お父さんの代わりにお店を手伝ってるんだって」
この場にいない照人だったが、なのはの言う通りサッカーの試合で不在となる士郎の代わりに翠屋の手伝いをしていた。
「それならしょうがないよ。あ、始まるみたいだよ」
すずかがそう言うと、各チームの選手がそれぞれのポジションについていた。
試合はよく晴れた河川敷のグラウンドで行われ、翠屋JFCキーパーのスーパーセーブもあり、2対0で翠屋JFCの勝利に終わる。
その勝利に喜びの声を挙げるなのは達と翠屋JFCのチーム一同。
そんな中、一人大活躍のキーパーに優しく暖かな視線を送るマネージャーの少女がいた。
勝利を祝って翠屋での食事会となり、なのはたちもそのご相伴に預かる。
「それにしても改めてみると、この子フェレットとちょっと違わない?」
「確かに動物病院の先生も変わった子だねって言ってたし…」
ケーキを前に楽しく談笑するなのはたちだったが、改めてユーノを見るアリサとすずかは、ユーノが普通のフェレットとは少し違うという話で盛り上がってしまう。
「まぁ、ちょっと変わったフェレットってことで……ほら、ユーノくん。お手」
話題をそらすためユーノに芸をさせるなのは、それを見た二人はユーノを撫でまくる。
「あんまりやり過ぎるとストレスになっちゃうよ」
ユーノを可愛がる二人に紙袋を持って店から出てきた照人がそう言う。
「こんにちは、すずかちゃん、アリサちゃん」
照人の挨拶に二人も『こんにちは』を挨拶をする。
「それ、どうしたんですか?」
すずかは照人が持っている紙袋に指をさす。
「これ?午前中に来てた人の忘れ物だよ。さっき電話が来たんだけど、忙しくて取りに行けそうにないから届けてくれないかって」
「そうなんだ」
「うん、それじゃ行ってくるよ」
一言そう言うと照人は荷物を届けに行った。
食事会の後、今後の大会での勝利を誓った翠屋JFCのチーム一同は解散した。
そして、バッグから取り出した何かをポケットに入れ、マネージャーの少女に駆け寄っていくキーパーの姿。
その瞬間、ジュエルシードの気配に似たものを感じたなのはだったが、その場では何も起きていないことから『気のせいかな…?』と二人を見送ってしまう。
「はい、なのは」
アリサとすずかの二人に遊ばれて疲れ切ったユーノをアリサから手渡される。
「さて、じゃああたし達も解散」
「そうだね」
そう言ってアリサとすずかは地面に置いていたバックを持つ。
「そっか。今日はみんな、午後から用があるんだよね」
「うん、お姉ちゃんとお出かけ」
「パパとお買い物!!」
各々出かける場所があるという二人と別れたなのは。
一度家に戻ってひと風呂浴びるという士郎とともに、なのはは帰宅すると部屋に戻るなりベッドに倒れ込んだ。
「なのは、寝るなら着替えてからでなきゃ」
ユーノがそう言うと、なのはは目の前で着替え始める。
「ユーノくんも一休みしといた方がいいよ。なのはは晩御飯までおやすみなさ~い」
着替え終わったなのはは再びベッドに倒れ込む。
(やっぱりなれない魔法を使うのは、相当の疲労なんだろうな。僕がもっとしっかりしてれば……)
その様子を見たユーノはなのはに苦労をかけていることを気に病んでいた。
一方、二人で仲良く帰宅しているキーパーとマネージャー。
「今日もすごかったね」
「そんなことないよ。うちはディフェンスが良いからね」
「でも、カッコよかった」
今日の試合について、照れまじりに会話する二人。
そしてキーパーはズボンのポケットからジュエルシードを取り出すと、それをマネージャーに見せる。
「わぁ、きれい」
「ただの石だとは思うんだけど、綺麗だったから」
マネージャーが触れた瞬間、ジュエルシードは光を放ち、二人を包み込む。
暴走したジュエルシードは巨大な樹木となり、建物や地面を破壊し街の中にその根を広げていく。
「「「ッ!?」」」
暴走したジュエルシードに気が付いた照人たちは急いで現場へと向かった。
「レイジングハート、お願い!!」
≪stand by ready.set up.≫
ビルの屋上に着いたなのははレイジングハートを起動し、バリアジャケットを着用した。
「あぁっ!」
街を一望すると、街はすでに巨大樹木に浸食され、ひどい状態になっており、それを見たなのはは胸を痛める。
しかし、それ以上に事態は悪い方向へと進んでいく。
時を同じくして、街の中を走る照人も街の様子を見て唖然としていた。
「何あれ?」
「テレビの撮影?」
突如として巨大樹木が出現したことで、樹木の周囲には多くの人が集まっていた。
すると、樹木の一部が分裂し異形の怪物へと姿を変え、人々へと襲い掛かる。
「ヴァァァァ!!」
怪物が腕を振るうと、衝撃で地面が砕け、近くにあった車が横転する。
「「「「「わあぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」」
その光景に恐怖した人々は次々と逃げ出していくが、逃げる人たちに突き飛ばされてしまい車いすの少女が倒れてしまう。
「はやてちゃん!!」
少女の名前を呼んだ女性が駆け寄り、少女を抱きかかえ逃げようとするが―――
「先生、後ろ!!」
少女の声を聴き、背後を振り返る女性。
そこには腕を鋭く変形させた怪物が居り、次の瞬間、怪物の腕が女性と少女を刺し貫こうとする。
「ヴァァァァ!!」
女性は少女を庇うように覆い被さった。
怪物の腕が女性と少女の体を貫く直前に照人が割り込み、光剣で怪物の腕を受け止めた。
更に光剣を横薙ぎに走らせ、怪物の上半身と下半身を両断した。
両断された怪物はその場に倒れ、動かなくなる。
「すごい……」
少女は目の前で起きたことに驚き、ついそんな言葉が口から出てしまう。
「大丈夫ですか。早く安全なところへ」
怪物の活動を停止したことを確認した照人は女性の方に向き直り、避難を促した。
「あなたはどうするの?」
女性にそう言われた照人は視線を巨大樹木の方へと向ける。
「俺にはまだやることがありますから……さぁ、早く!!」
照人がそう言うと、女性は少女を抱えてその場を急いで離れた。
女性を見送った照人は周囲に人がいないことを確認すると、巨大樹木の方へと駆け出した。
しかし、樹木の一部から分裂した異形の怪物たちが行く手を阻む。
「「「ヴァァァァ!!」」」
怪物たちを相対した照人は光剣を再度構えると、ユーノに念話で問いかける。
「ユーノ君、これは一体……」
『(多分、人間が発動させてしまったんだ。強い思いを持った者が願いを込めて発動させた時、ジュエルシードは一番強い力を発揮するから……)』
照人の問いかけにユーノが説明する。
それを聞いたなのはは、あの時の感覚が気のせいではなかったことに気付き心を痛める。
『(やっぱりあの時の子が持ってたんだ…私、気づいてたのに…こうなる前に止められたはずなのに…)』
気づいていたはずの事実…事前に止められていたかもしれないという現実に、なのははしゃがみこんでしまう。
「過ぎてしまったことを悔いても仕方がない。今は、出来ることに集中するんだ」
『(できること……)』
「俺はこのまま怪物たちを抑える。なのははジュエルシードを封印するんだ!!」
『(わかったよ)』
なのは達との念話を終えると、再度光剣を構えた照人は怪物たちに向かって駆け出していく。
「ハァァァァッ!!」
向かってくる照人に対し怪物は殴りつけようとするが、照人はそれを軽く躱しすれ違いざまに怪物の首を切り落とす。
首を失った怪物はそのまま崩れ落ち、照人は次の怪物に狙いを定める。
別の怪物が腕を鞭のように振るい攻撃を仕掛けてくる。
照人は攻撃を跳躍で躱し、怪物の脳天に光剣を突き立てる。
今度は怪物の体を土台にして別の怪物に向かって高く跳躍する。
そして、空中で身を翻して上下逆転させると、そのまま急降下して怪物を両断した。
しかし、再び樹木から分裂し怪物が次々と現れる。
「キリがないな……まとめて斬り捨てる!!」
そう言った照人が剣の刀身を撫でると刀身が光り輝く。
「デャァァァァァッ!!」
掛け声と共に放たれた巨大な斬撃は無数の怪物を真っ二つに断ち切った。
*****
「分かったよ」
時は少し遡り照人との念話で意を決したなのはは立ち上がり、レイジングハートを強く握る。
事態解決の方法を悩むユーノだったが、なのはの魔力の高まりにレイジングハートが呼応していることに気づく。
「ユーノくん、こういう時はどうしたらいいの?」
そう聞くなのはに、ユーノは『封印のためには元となっている部分を探さないといけないけど、広範囲に広がりすぎてどうやって探したらいいか…』と迷う。
「元を見つければいいんだね……」
「え?」
≪Area Search.≫
「リリカル…マジカル…探して、災厄の根源を」
なのはは迷うことなく探索魔法を発動させる。
探索魔法は街中に広がり、核となっている二人を発見する。
「見つけた!すぐ封印するから!」
「ここからじゃ無理だよ!近くに行かなきゃ!」
そう言うユーノだったが、なのははレイジングハートの新たな力を発動させる。
「できるよ!大丈夫!…そうだよね、レイジングハート」
≪Shooting Mode.Set up.≫
レイジングハートのヘッドが音叉状の形態に変形し、ブームが多少伸び、光の羽根を広げる。
「行って、捕まえて!!」
なのはの声に呼応するようにピンク色の光が放たれ、ジュエルシードを捕える。
≪Stand by Ready.≫
「リリカルマジカル。ジュエルシードシリアル10、封印!!」
≪Sealing.≫
射撃形態・シューティングモードから放たれた魔法『遠距離射撃魔法・ディバインバスター』により封印は成功し、巨大樹木とヒト型の怪物は消滅した。
≪Receipt Number X.Mode Release.≫
「ありがとう、レイジングハート」
≪Good Bye.≫
レイジングハートは封印したジュエルシードを回収すると、スタンバイモードに戻る。
「色んな人に迷惑かけちゃったね」
「何言ってんのさ。なのははちゃんとやってくれてるよ」
暗い雰囲気になるなのはをユーノが慰めていると、そこへ照人が合流する。
「帰ろう、なのは」
依然として暗い雰囲気で壊れかけた街の中を歩くなのは達。
「なのは、あれ見て」
照人が指を指した先に居たのは、怪我をしたのかマネージャーの肩を借りて歩くキーパーだった。
なのはの頭に手を置き、照人は言う。
「なのは、さっきも言ったけど起きたことは変えられない。大事なのは、その後にどうするかだ」
照人の言葉を聞き、なのははジュエルシード集めに対する向き合い方を改めて決める。
ユーノの手伝いではなく、自分の意志で……
『自分なりの精一杯』ではなく、本当の全力で……
二度とこんなことが起きないようにと、ジュエルシード集めを続けることをなのはは胸に誓った。
すずかの屋敷に招待されたなのはと照人
起こるジュエルシードの事件
事件の最中、突如現れたのは……魔法少女!?
次回「金色の魔法使い」
人の想いを利用して踏みにじったことを後悔しろ!!
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次回予告とは関係ない後書き
すいません。大分お待たせしました↓↓
何本かストックがいるかなと書いていたら大分時間がかかりました
それと遅くなったのですが、この作品の主人公・高町 照人のプロフフィールです。
名前:高町 照人
年齢:14歳 身長:166.5㎝ 体重:54.5㎏
概要:
14年前に高町家に引き取られたが、本人はこのことを知らずにいる。
目の前で困っている人を放っておけない性格であり、これは幼少期に士郎から「困っている人がいて助けてあげられる力が自分にあるなら、その時は迷っちゃいけない」と教えられてきたこともあるが、照人本人が「悲しい思いや苦しい思いをしてる人を見たくない」と考えているためである。
尚、魔法についてだが、まだ日が浅いにもかかわらずデバイス無しで魔法を発動させるほど才能があり、そのポテンシャルはなのは以上かもしれない。
戦闘スタイルは魔力を使って作り出した光剣による近接戦闘。
光剣のイメージ画像:
【挿絵表示】