「んっ…ふわぁー」
私は眠寝起きの頭を起こす為に腕を上に伸ばし、口を大きく開けた。私はぼんやりとした目で自身の手を見ると、ある違和感を感じた。
なぜなら、右手の薬指に嵌っている筈の黒と紫色の指輪が無かったのだ。私は眠気が一気に覚め、指輪を探し始めるが、取り敢えずこの部屋には無い事が分かった。
だとすると、心当たりがあるのは…城を出る時に感じた違和感だろうか。あの時は急いでいたので確認する余裕が無かったが、多分レイラの近くに落としたのだろう。
あれには思い出が詰まっている為、捨てられるのは非常に困る。レイラが拾ってくれれば捨てる事は無いだろうからまだ良いのだけれど。
指輪の圧から解放された右手に違和感を持ちつつも、あの指輪は自分で付けた指輪で、特別な物では無いのでついでに買いに行こうと考え、陽で明るい街に身を繰り出した。
***
「すまんなぁ。紫は在庫切れで暫くは入って来なさそうなんだ」
私は何度目かの指輪店に入店して指輪を探したが、どうしてかどこの店からも黒色に挟まれる形で紫色の線が入ったデザインの指輪が無くなっていたのだ。
「何故無いんですか?」
これを聞くのも、もう何回目という感じだ。しかし、どこも言えないとしか発言しなかった。
「まあ、本来は教えちゃ駄目なんだが、特別に教えると、姫さんがその指輪を右手の薬指にしてるのを見て、国王がその指輪がどこで作られた物かと探してるそうだ」
「そんな事が」
私はできるだけその話をなにも知らないという顔で聞いた。私の指輪が無くなっていない事を知れたのは良かったが、まさかこんな#大事__おおごと__#になるとは思わなかったので、微妙な心境だ。
しかも、右手の薬指というのが厄介だ。私が付けているのを真似たのだろうが、右手の薬指の指輪は"心の安定"や"恋が叶う"などの意味があり、まだ付き合っている段階での男女でのペアの間で人気だ。
レイラはその事を知ってか知らずか親である国王に見せ、相手が誰なのかを必死に国王が探しているといった状況なのだろう。
「教えてくれてありがとうごさいます」
「良いって事よ。まあ、時間は掛かるだろが絶対入荷するから、そんときは宜しくな」
「ありがとうごさいます」
私は2度店主に対して謝罪の意を込めた言葉を送り、その店を後にした。
右手が少し軽い事に未だに違和感を覚えるが、改めて自身の手を見てみると、男性にしては小さく頼りがいの無さそうな手だと感じた。
指輪を探す為に時間を食ってしまったが、
その為に私は踵を返し家へと向かおうとしたのだが、警備のゲルトが手招きしているのが見えたので、そちらに向かう事にした。
「どうしたんだ?」
「姫の指輪の件は知っておるか?」
「ついさっき知ったよ」
「やはり指輪はマグナ様のか」
ゲルトは私の右手を見ながらそう言った。
「じゃったら、この国から早めに逃げた方が良いかもしれんな」
もし指輪を探している過程でその主が大罪人のマグナだと知られれば、見つかった時に何をされるか分かった物じゃ無いので、ゲルトの懸念はごもっともだろう。
しかし私は、トリアーネの傭兵化状態を直さなければならないので、あと4~5日はここを離れる訳にはいかないのだ。
「用事が済んだら別の国に行くよ」
「わしもできるだけ手助けしてやるが、あまり期待はできんぞ」
「見つからないように頑張るよ」
外出を控えたりする必要がありそうだ。お金に余裕はあるけど流石に3日を超えるとキツイので、帰り道で今からどうしようかで悩んでいた。