魔法ガチャしかできない魔法使いの日常   作:アオイマスタング

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 ナナハー


第7話 カンナ

 中に入ると、少し大きめのエントランスだが、所々にシックな印象を受ける内部になっており、ナナハによく似た人物が受付を行っている。

 

「貴方、ナナハ?何故こんな所に?」

 

 トリアはそう言うが、もはやこれは何度目かのお約束の展開だなと私は頭の中で思い、飽き飽きしていた。

 

「私はナナハでは無く、カンナと言います。以後お見知り置きを」

 

「双子?」

 

「いえ、いとこのようなものですよ」

 

「ええぇ…。双子みたいに顔がそっくりなんだけど」

 

 まあ、トリアの言いたい事は分かる。私も正直、初見でギリギリ別人かもと気がついたぐらいなのだから。

 

 そんなカンナの見た目は、顔はそのままナナハと同じ顔をしているが、カンナの方は目立たないオッドアイで、左目がナナハと同じく金色なのに対して右目がうす茶色なのだ。

 髪の毛は腰まで届く程のロングの金髪で、艶やかに輝いている印象を持つ。

 服装は、白いブラウスに緑のトップス、緑に白が混じったデザインをしたスカートに、お世辞にも似合っているとは言えない黒をベースに赤をアクセントにしたロングコートを羽織っている。

 そして、その左手の薬指には、銀色の様にも金色のようにも見える指輪を()めている。ナナハの方は、右手の薬指に、黒色に挟まれるような形で紫色の線が入ったデザインをした指輪を嵌めている。

 

 因みに私は、左手の薬指にはカンナの付けているのと似たようなデザインの指輪を。右手の薬指には、ナナハのと同じようなデザインの指輪をはめている。

 

「まあ、そんな事より、この頭の弱い血の魔法使いに中を見せてやって欲しいんだ」

 

「あたっ、貴方ねぇ!」

 

「付いて来なさい。貴方には早く帰って貰わないといけないから」

 

 スタスタとカンナは歩いていき、内部へ続く鍵で重厚そうな扉を開け、中へと入っていく。トリアもそれに着いて行くような形で入っていく。警備の人もトリアの後に付いて行っている。

 

 私は一人になったが、彼女にとってあそこでは私は居ない方が良いので、私はあえて行かない事にする。

 

 ***

 

 私はナナハに似た外見を持つカンナを追いかけ、その分厚い扉の中へと入った。

 

 監獄と彼が言っていたから、中の状態は酷いものだと予想していたが、どうやらそれは思い違いだったらしい事を、内部にある建物の様子から私は感じた。

 

 普通、監獄には鉄格子やコンクリートなどがあり、殺風景で居るだけで精神がやられそうな場所をイメージするが、実際には監獄の砦の内側には、至って普通な家々が並んでいた。

 

「これが監獄?ただの住宅街に見えるんだけど」

 

「居住者は食堂に集めています。早く移動して」

 

 セカセカと歩くカンナに対して、トリアーネこと私は疑問を抱かずには居られなかった。が、今はそんな事より、大罪人であるマグナが見せたいものが何なのかを知る方が先だ。

 いつもだったら罠かもしれない所に足を踏み入れるなんて滑稽だと思って立ち止まっていただろうが、不思議と大罪人である筈のマグナからは、罪人が持つ特有のオーラを感じないので、信じたいという気持ちが私自身の中に芽生えたのだろう。

 

 そんなぐちゃぐちゃな頭の中を整理する為にも、食堂に集められている人達に私は問い詰める必要があるんだから!

 

 

 

 食堂に着くと、老若男女様々な人が食堂の席に座っているのが分かる。一般的にロリと呼ばれるような見た目をした可愛らしい少女から、ヨボヨボなおじいちゃんまで、まるで共通点の無い人達の集まりだった為、私は困惑した。

 しかも、皆が皆、私を見て嫌そうな顔をしている。まあ、wmgsなのでそういった目には慣れているが、慣れているからといって、そう見られて嬉しい訳では無いので、複雑な気持ちだ。

 

「この人は、見ての通りwmgsです。ですが怖がる必要はありません。この人は執行部では無く調査部ですし、マグナがここの事は言わないように言ってあるので」

 

ほんとう?

 

 さっき見かけた可愛らしい少女が、私の事を見て壁に寄り添って震えながら声を出している。

 

「私は、ここがどんな場所か知りに来ただけだから」

 

「いや、イヤ!イヤーーーーー!」

 

 少女はそう言うと、どこかへ逃げて行ってしまった。

 

「あぁーーー」

 

 私は彼女の為に伸ばした手をゆっくりと、しかし強く握りしめた。


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