銀翼の下、芝青々と砂塵舞う。-蹄鉄飛行場の6ヶ月-   作:キルメナイム

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投稿が自分でも思った以上に遅くなってしまいました。申し訳ありませんm(_ _)m


第7話 彼方の戦い 

 その日の昼、テレビのワイドショーでトゥインクル・シリーズに関する特集企画が放映されていた。

「さぁ、今週も始まりました、トゥインクル・トピックス!今週のテーマはこちら!」

司会のアナウンサーの声と共に、画面一杯にテロップが表示される。

『重賞レースも続々中止!?暗雲立ち込めるトゥインクル・シリーズ。今次戦争が今後のレースに与える影響を徹底検証!』

 テロップが画面から消え、アナウンサーが再び口を開いた。

「対某国戦争。日本が久方ぶりに直面したこの戦争は、多くの国民の生活に多大な影響と不安を与えています。そしてその暗雲は、青春を捧げて夢を追うウマ娘たちにも及ぼうとしているのです。取材班は、中央競馬界を取り巻く現状を直撃しました」

 そこから始まった特集の内容は、某国との開戦の経緯や戦時特措法の概要について解説した後、その影響を受けた重賞レースを紹介し、最後に街頭インタビューを用いて政府や自衛隊の対応を批判する、というものだった。

「皆さん、私たちは残念ながら、あの大戦以来となる戦争の当事者となってしまいました。この未曾有の事態の中で、政府が下している判断は的確なものだと言えるでしょうか?自衛隊の行動は、はたして国民のためのものでしょうか?我々は、この戦争の当事者として、この国の明日について考えていかなければなりません」

 不安げな表情のアナウンサーの言葉に締め括られて、特集は終了した。

 

 

「うわぁ〜、叩かれ放題。嫌われてるなぁ、俺たち」

 航空隊の仮設待機所に、そんな声が響いた。

「緒月、そう腐るな」

 椅子に跨がりテレビを見ながらぼやく男に、加賀は雑誌を読みながら答える。

「そうは言ってもよぉ……」

「前向きに考えろ。今の日本には、まだ自衛隊叩きをやるだけの余裕が残ってるってことだ」

「相変わらず冷静だな、お前は」

 二等空尉、緒月素良。加賀とは同期の、502航空隊で二番機を務めるパイロットだ。

「そういうわけじゃない。マトモに考えだしたらアホらしくてやってられなくなるってだけだ。ただ……」

「ただ?」

「俺たちの力不足があの娘たちの暮らしを壊しているのは、申し訳ないとは思っている……」

「その優しさも相変わらずだねぇ」

 緒月の言葉を背に受けながら、加賀は読んでいた雑誌をテーブルに放った。

「そろそろ行くぞ。機体の準備も終わる頃だ」

 その直後、待機所にブザーの音が響き渡る。

「おうおう、もう仕事の時間か。それじゃあ、お仕事を頑張りますかね……」

 そうぼやきながら、緒月も椅子から立ち上がった。ヘルメットを手に取り、滑走路の方へと歩き出す。

『定時哨戒機が発進する。関係者以外の滑走路への立ち入りを禁止する』

 そんなアナウンスとともに、二機の戦闘機が東京の空へと飛び立っていった。

 

 

 同じ頃、トレセン学園の食堂では、中等部のダイワスカーレットとウオッカが昼食を囲みながら言葉を交わしていた。

「ったく……気に入らねぇな」

 ウオッカが、壁に設置されたテレビを見ながら呟いた。

「今のワイドショーのこと?」

 ダイワスカーレットがそう問いかけると、ウオッカは苛立ちを見せながら答えた。

「おう。今の特集、ウマ娘の競技についてなんてロクに解説してなかったじゃねぇか。俺たちの話題にかこつけて、政府とか自衛隊を叩いてただけだ!」

「そんなこと、昔からよくあることじゃない。アスリートやアイドルの言動が、強引に政治問題とくっつけられるなんて……」

「それはそうだけどよぉ……なんていうか、アイツら卑怯じゃねーか!政府とか自衛隊のやつらが何も言い返せないのが分かってるから、あんな叩き方ができるんだぜ?」

「マスコミなんて、大体そんなもんよ……」

 ウオッカの言葉に対して冷めた口調で答えるダイワスカーレットだったが、その内心では彼女の言葉に強く共感していた。

「でも、アンタの言いたいことは分かるわ……アタシたちのことを無理やり悲劇のヒロインみたいに演出して利用するなんて、面白くないわね」

「だろ!?」

 たしかに、対某国戦争に関する政府や自衛隊の行動が、ウマ娘たちのアスリートとしての人生に影響を与えたのは事実だ。しかし、だからといってそれを口実に政府や自衛隊を好き勝手に批判し、あまつさえ侮辱するようなことは許されるはずがない。

「それに、自衛隊の人たちだって現状をなんとかしようと必死で頑張ってるじゃない……」

 ダイワスカーレットは、自衛隊について特別に知識があるわけではない。しかし、学園内で目にする自衛官たちの紳士的な生活態度や、己の任務に対する誠実さなどを感じ取っていた。それ故に、彼らがマスコミの話題作りのために利用されていることに言葉にできない憤りを募らせていた。

「こんな戦争、さっさと終わればいいのに……」

「……そうだな」

 その時、食堂に昼休憩の終わりを告げるチャイムが響いた。

「ヤベェ!もうそんな時間か!とっとと片付けて教室行かねぇと……」

「そんなこと分かってるわよ!」

 二人はテーブルを素早く片付けると、教室へと走っていったのだった。




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