「悪いな雪ノ下、部室使わせてもらって」
「へ~、雪ノ下さんていうんだ」
「は、はじめまして、北条さん」
「私の方が年下みたいだから、加蓮でいいよ」
校門から逃げようとしたら、加蓮に『八幡が入った部活見たい』と言われたので来たんだが、俺は部員になったつもりないからね。
「こほん。では、加蓮さん、貴女の恋人に対して失礼なことを言ったことをお詫びするわ」
「八幡が気にしてないみたいだからいいよ」
「ありがとう」
「それで、失礼を承知で聞きたいのだけど、どうして比企谷君とお付き合いを?」
加蓮が雪ノ下を睨んでる。
「勘違いしないでくれるかしら。アイドルといち高校生が付き合うなんて、考えられなくて」
「ああ、そういうことね」
加蓮がこちらを向いたので、目で合図した。
「我が眷属・八幡とは前世との…」
加蓮にチョップする。
「いた~い」
「なんで、蘭子なんだよ。それに痛くねぇだろ」
「まぁ、破瓜の痛みに比べたら」
「え?」
「え?」
なんか、雪ノ下にゴミを見るような目で見られてるけど…。断じて俺ではない。
「加蓮…おまえ…」
「八幡たら、あんなに激しく…」
いやんいやんしてるけど、嘘つくな。
「比企谷!加蓮とヤッたのか!」
扉が勢いよく開き、神谷が叫んだ。
「神谷さん、ノックを」
「ヤッてねぇし、女の子がヤッたとか言うな」
「ま、冗談なんだけどね」
「質が悪い。どこぞの知恵の神みたいなこと言いやがって」
ふたたび加蓮にチョップする。
「ごめんごめん」
「んで、神谷はどこに行ってたんだよ」
「加蓮の入校許可もらってた」
「さんきゅ」
「さすが奈緒」
神谷が座り、加蓮が話し始めた。
「えっと、私と八幡の馴れ初めだよね?」
「ええ、差し支えなければ」
「私も聞きたい。なんとなくは聞いたけどな」
神谷も雪ノ下に同調した。
「私が中学2年の時にね」
「過去編です。どうぞ」
「神谷、誰に言ってんだ?」
「気にしたら負けだ」
「あ、そ」
………
……
…
比企谷八幡・中学3年
北条加蓮・中学2年
夏休み中
暑い…。受験勉強の息抜きに秋葉原に来て、そのあと都内をブラブラしてるんだけと、暑い。これは帰ってクーラーの効いた部屋で冷たいマッカンだな。
…ん。あそこで座り込んじゃってる娘、大丈夫かな?誰も声をかけないんだけど。東京のひとは冷たいなぁ。
「あの…」
「はぁ、はぁ、はぁ」
呼吸が荒い。
「大丈夫ですか?」
「はぁ、あんまり、はぁ、大丈夫、じゃない、かも…」
「と、とりあえず、日陰に行きましょう」
女の子に肩を貸し手近な日陰のベンチへ。よくあったな日陰のベンチ。
「水、買ってくるから」
「はぁ、あ、ありがとう、はぁ」
買ってきた水を渡す。
「ゆっくり飲んで」
「うん」
ゆっくりとペットボトルの水を飲む女の子…。なんか色っぽい。いやいやいや。
「ありがとう、少し落ち着いた」
「それはよかった」
大丈夫だと思い、立ち上がろうとしたら、シャツの裾を掴まれた。
「え?」
「あ、ごめんなさい」
こんな可愛い娘、放っておけないよな。うん、可愛いは正義。
「不安なのか?」
「えっと、病院に行く途中で…それで…」
ふむ、なるほど。
「病院まで遠いのか?」
「そんなには…」
「じゃあ、付き合うよ」
「そんな、悪いです」
「いや、付き合わせてくれ。途中でまた倒れたら、困るからな」
「ありがとう、ございます」
「動けるか?」
「はい」
彼女と一緒に病院に向かうことになった。
名前は北条加蓮、俺よりひとつ下の中二。少し病弱らしく、入退院を繰り返してるらしい。今日は病院の検査でひとりで向かっていた途中だったそうだ。
病院に着き、検査。心配だったので、検査が終わるまで待つことにした。
検査が終わり、病院服の北条が来た。
「しばらく入院だって」
「そっか…」
こんな時、なんて言えばいいんだろうか。
すると、看護師さんが来た。
「ちょっと、彼氏だったら、こんな暑い日に歩かせちゃダメでしょ!」
「い、いや、かれ…」
「問答無用!ちゃんと彼女のこと心配してあげなさい!」
「は、はぁ…」
そう言って、看護師さんは去っていった。
「あはは、彼氏だって」
「その、なんだ、すまんな」
「ううん、貴方みたいな彼氏だったら、大歓迎だよ」
「あ、ありがとよ」
「じゃ、私は病室行くね。今日はありがとう」
「あの…」
こんなこと言うの俺らしくない。けど、言わないと後悔しそうだ。言え、言うんだ八幡。
「み、見舞い。来ても、いいか?」
すると、北条は満面の笑顔で…。
「うん、待ってる」
そう言ってくれた。