君の声を 無視して飛べば 広がる世界は ただただ孤独で
周り見渡し 気配を感じ そこにいたのは ただの雲だった
今 今 今 今 感じる 声は ただの 妄想だ Ah
今 今 今 今 きっと この空にいるのは私だけだ。
孤独の空に 愛を叫んだとしても 誰にも届かない そうひとりよがりさ
君への声も 君からの声も 振り払って この空に飛んだのだから
今 今 きっと きっと 目に映る君は ただのパレイドリア
今 今 きっと きっと 照らされるは 無色になった僕の歌声
風音に 耳を傾け 翼広げて 飛んでいこう
この空に 存在するのは 僕だけだから。
青空に見透かされた さみしい泣き声
今 今 今
雲に包まれ 君のことを 思い出した瞬間決意した
今 今 今 この翼 捨て去って 地上に落ちていくから
今 今 今 きっと きっと 君のもとに 落ちていくから
さらば空よ 孤独の空よ 愛しい空は もう届かぬ幻想
雨粒が落ちるように 身をゆだねて 愛を叫びながら落ちていこう
歌声が聞こえる。
航空機もなく、人類がいまだ空を飛ぶ手段を持ち合わせていない時代。
空には天使が住んでいた。
空は彼女の家として
太陽は彼女に感情を与え
雲は彼女を慰める
風は彼女に活力を与え
無数の星々は彼女に体を与える
月は彼女の影となる。
空を、たった一人で悠々と飛ぶ天使が、この時代に存在した。
天使は歌うことが好きだった。
ある日のこと、それはそれは高い木の上に上ってきた人間がいました。
彼は、空に一番近い人間となりました。
大声で、空に向かって歌を歌いました。
空に、初めて彼女以外の声が乗った瞬間でした。
空に生きる天使は、最初は鬱陶しく思いながらも、誰かがいるという温度を感じることによって嬉々としてその人間の声を楽しみにしていました。
あるとき、その人間が泣きながら空に手を伸ばしました。
「翼が欲しい、重力というしがらみから解き放たれ、他人なんて振り切ってしまえるほどの速さでこの空を飛んでみたい」
人間の言葉を理解できない天使は、人間がこちらを羨ましそうに、それでいて悲しそうに見ていることに気が付きました。
彼女と人間の間には、そもそもの世界に蔓延る法則からして違う位置にありました。
ある日、空に雷が住み着きました。
天使は、雲に裏切られ、太陽に見放され、月に遮られ、風に邪魔者扱いされました。
空は、新しくやってきた雷を受け入れ、空いっぱいに虹色の歌声を届ける天使を嫌悪しました。
人間は、その日も空に向かって手を伸ばします。
時代は、航空機が空を支配する世界になりました。
それでも人間は何故か手を伸ばします。
雷が主役となった空は、それはそれは禍々しい見た目をしています。
天使は、空を見限りました。
ずっと見てきた人間のもとへ行ってみよう。
そう思った天使は、いつも人間が来る木の上めがけて落ちていきます。
泣きながら空をにらみつける彼に、空色の声が聞こえてきました。
その日、地上に空が墜ちました。
墜落しました。
天使は空と地上が一体化した世界で、人間に空色の歌を聞かせました。
全ての色が失われ、無色透明、存在のない空の歌は、彼を青い青い空へ導きました。
地上と空を境界とし、虹によって均衡を保たれていたそれが崩壊したことによって、バランスが崩れ空と地上はぐちゃぐちゃに混ぜられました。
何処が空で、どこが地上か。
宇宙空間までも曖昧となり、世界の崩壊が始まりました。
何もない空に人間が言います。
「一度でいい、僕も空を飛んでみたかった」
地上と決別する勇気を、その人間は持ちました。
法則から離れ、加護もなく、悠久を孤独とともに過ごすことを、人間は受け入れました。
その時、初めて彼は空を見ました。
いつも聞こえていた歌声の正体を、人間はようやく見つけることができました。
天子様は、その様子を見て。
微笑みを浮かべ、地上から空に落ちていきました。
地上と空が元の姿に戻っていきます。
空に還った天使を迎え入れたものはいませんでした。
全てが消えた空に、虹色の歌声が響き渡ります。
虹は再び空と地上を隔てる役目を担いました。
空の歌声を人間が引き継ぎました。
その声は虹の声と共鳴し、虹を地上に掛ける役目を担いました。
二人が歌うとき、人間は空へ行くことができます。
天子様と会話したり、太陽や雲に愚痴も言います。