遥か東方に生きる   作:NoRAheart

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大変長らくお待たせしました。
学生フォーミュラー大会の方が終了し、無事に熊本に返ってくることが出来たので執筆を再開します。


それと誠に勝手ながら、前回出てきた豊姫の台詞を大幅に変更、他にも各話タイトル、千鶴の必殺技等にも変更を行っております。


『時よ止まれ』だけが何故か有名

「ようこそいらっしゃいました、加藤人事部長」

 

 

薄暗い一室の奥より低い、低い、男の声が入り口に立つ加藤と呼ばれた男に投げかけられる。

加藤は小さくうなずき一歩、自身の開けたドアをゆっくりと閉めた。

 

 

「いえ、前原企画部長。お待たせしましたね」

 

 

加藤の言葉に前原と呼ばれた男は笑みを浮かべた。

 

 

「例の件は上手く行ったようですね」

「無論です……と言いたい所ですが」

 

 

加藤は手に持っていた書類を前原に差し出す。

書類には「人事異動令」とその下に短い文章が打たれているだけ。

 

 

「ほう、『政府技術開発室室長』ですか」

「私の人事権でも今はここまでしか」

「いやいや十分ですよ加藤さん」

 

 

満足そうに頷いて書類を横に置いた前原は、手元に置いてある黒豆(コーヒー)を一口。

飲んで、思い出したように加藤にも黒豆(コーヒー)を進めるが、加藤は手でそれを断った。

 

 

「や、自分はすぐに戻りますので」

「そうか、それは残念だ」

 

 

そう言ってもう一口。

今度は黒豆(コーヒー)の熱気を口から逃す様に一息。

 

 

「愚かなものだ、こちら側に大人しくついていればいいものを」

 

 

前原は近年部下になった彼女を思う。

彼女が部下になった当初こそ外界者と彼女を見下してはいたが、その真面目さ、勤勉さ、優秀さを見て、しかもそれらを鼻に掛けずに他者を立てようとする彼女を見て、前原は優秀な、そして使いがっての良い部下を手に入れたと彼女に対する心象を改めた。

そして彼女は自分の言う事を表面から捉えるだけでなく多角的に捉え、いつでも望んだ以上の成果を出してくれる。

そんな彼女を前原は部下としてかなり気に入っていた。

数年すれば自身の右腕として、そしていつかは自分の後を継いでもらう事も前は考えたがそんな考えは今は無い。

 

 

彼女は派閥と言うものに興味が無かった。

 

 

今この科学省は二つの派閥が権力争いを繰り広げている。

一つは「旧八意派」と呼ばれる所謂前トップの代から重役についている者達による保守派。

もう一つは「革新派」と呼ばれる現八意当主を神輿にした、その実「旧八意派」から権力を奪取しようとする者達。

因みに前原と加藤は前者、「旧八意派」のトップにあたる。

 

 

話が戻るが、前原が彼女を「旧八意派」に属するように促した時、彼女の返答は「興味ない」だった。

それはいい。

彼女の普段の様子、言動、性格を鑑みるに彼女の言っている事は嘘では無く、そういった派閥云々について、本当に興味が無いのであろう。

ならば「革新派」に彼女を取られる心配もなく、自身にとっての彼女は優秀な部下の一人である事に変わりはない……筈だった。

重ねるようだが、彼女はとても優秀である。

仕事ももちろんだが、気配りや人間関係においても彼女は一目を置くに十分なスキルを有している。

だからであろうか。

彼女の同僚の中で彼女を崇拝するような動きが見られるのは。

しかしそれは分からないでもない。

容姿も、性格も、仕事も、人間関係さえも完璧な彼女は、遥か遠い存在である八意を崇拝する輩よりまだ理解できる。

しかしそんな彼女は自身の意思ではないとはいえ、その崇拝を「革新派」に利用され、「革新派」の急先鋒にされようとしている。

そんな動きがある以上、可哀想だとは思いこそすれ、故に前原は彼女を潰す。

彼女が自身の部署から抜ける穴は確かに大きいが、それを塞ぐ事は他の優秀な部下数人を持ってすれば何とかなるだろう。

本当はここで後顧の憂いを絶つため、彼女をクビにするのがベストなのだろうが、問題を起こしていない、優秀な彼女を簡単にクビに出来る程組織は甘くはない。

ならば何処か出世に繋がらない、派閥争いに遠い部署に異動させようと人事部長の加藤に持ちかけた訳だ。

そうして加藤が持ってきてくれた「政府技術開発室室長」。

加藤は「ここまでしか」と述べたが、前原にとってはベストな人事だと思った。

「政府技術開発室」は科学分野において新たな技術を開発し、『高天原』の科学水準を向上する為の部署なのだが、蓋を開ければ他の部署で弾かれた研究ヲタクの集まり、しかも近年はトップである八意自身が様々な、利便性のある技術を生み出している為、開発室の重要性は低く、しかもその部署が地下の隔離された場所にある事から他の部署との交わりも皆無。

詰りは島流しに等しい人事なのである。

 

 

「恨むなよ白嶺、恨むなら才能を持って生まれた己が不運を恨むがいい」

 

 

前原が呟き、加藤は役目を果たしたと静かにその場を後にする。

程なくして前原が再び口に含んだ黒豆(コーヒー)は、少しばかり冷めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然受けた人事異動、昇進。

千鶴は突然の人事に驚き、戸惑いながらも自身の異動先である「政府技術開発室」へと足を向けていた。

 

彼女の目指している開発室は地下五階にある。

しかし彼女は科学省にその様な部署がある事以前にこの建物に地下五階があった事さえも知らずにいた。

地下五階という表記は、科学省の地図には何処にも存在していないのだ。

その地下五階を目指すにはエントランスにある普段使うエレベーターでは無く、エントランスの奥にあるロックの掛かったドアを抜けた薄暗い通路の先、専用のエレベーターを使わないと降りられない。

なぜそのような造りになっているのか。

恐らく最先端の技術を研究する場所故、秘匿されないといけないのだろうと彼女は思ったが、科学省の内情に詳しい先輩に聞くと笑いながら「最初こそはそうだったんだろうな」と言った。

そして彼曰く「今現在の開発室は奇人変人の掃き溜めの為の部署」であると。

 

 

 

そんな部署に飛ばされる私を先輩や同僚たちの見る目は明らかな同情、心配。

「彼女は終わった」と誰かが陰口。

 

 

 

終わった?

それは出世の事だろうか?

そうであるとしたら心外だと千鶴は思う。

少なくとも彼女には出世欲は無く、只々与えられた仕事をこなすだけ……と言うのは語弊があるが、彼女は毎日の仕事をゲームの様にこなしていく事に楽しさを覚えている。

新たな職場がどういったモノかは聞き及んだ限りでは良くは無さそうだがそこは行ってみないと、見てみないと、蓋を開けないと分からない、「百聞は一見に如かず」。

兎も角、彼女は異動自体に大した戸惑い等は無かった。

 

 

千鶴がエレベーターを降りた先には真っ白な長い、長い通路があり、その先にポツリと一つ、扉が見える。

どうやらあれが開発室の入り口だろう。

余りにも白すぎる長い通路に不安を覚えながらも彼女は歩き出す。

……何かある。

何故かは分からないが、彼女はそんな不安感を覚える。

生前、彼女がこういった不安感を感じる時は大抵車が死角から飛び出して来たりと身の危険に関わる事が起こるので用心しておくに越したことはないのだが……一体何がこの先に待っているというのであろうか?

疑問に思いながらも長い廊下の端、扉の前まで来てしまった彼女は自分のIDカードと事前に部長に教えられていたパスワードを打ち込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしたら何故か扉が吹き飛んだ。

 

 

「……うぇ!?」

 

 

これには流石の千鶴でも目の前で起こった現実に戸惑う。

何故扉が吹き飛んだ!?

これは私の、私のせいなのか!?

と、そんな事をグルグル考え、呆然としている彼女の目の前、扉の奥からヌッと大きな何かが顔を出す。

 

白と黒のツートンカラー、真四角の何か。

真ん中の窪みに添えられたモノアイが、グワァンと音を立てて明らかに私を視界に捉えているのが分かる。

 

 

『よう姉ちゃん、俺と茶しない!!』

「へ?……わ!?」

 

 

まるでナンパするかのように彼女に声を掛けてきたそれ。

返答もままならぬ彼女の意思などそれは最初っから聞いていないとばかりに扉の向こうから唐突に伸びてきた腕に、彼女は混乱で対応が遅れ、そのまま何もできずに捕えられて部屋の中に引きずり込まれる。

 

 

「おい、誰だか知らないけど捕まっちまったぞ!!」

「やばいよ、これ以上あいつに暴れられるとマジで俺たち首が飛ぶ!!」

 

 

私を捕えた犯人は胸部に開閉できる扉が供えられた長方形の胴体、六足の大きい足と二本の腕を持った大型ロボット。

私は必死にロボットの腕から逃れようともがくが、如何せん力が強くて身動きが取れない。

 

 

「むぎゅ!?苦しいです……異動初日でこれとは、先が思いやられますね!!」

『わっはは、貴様をぉ、ロウ人形にしてやろうかぁ!!』

 

 

……何ですと?

ロボットが私に向かって放った言葉に耳を疑う。

あれですよね、それ冗談ですよね?フリですよね?

 

 

「おいそこの女!!」

 

 

声を掛けられ、そちらを振り向くと白衣を着た無精髭を蓄えた男がスパナと、鉄板で作ったらしい即席の盾を構えながら「そいつの言っている事は全部マジだからな!!」と宣った。

マジですか……

 

 

『恋心が分からない奴は馬に蹴られて地獄に落ちやがれ!!』

「ぎゃあ!?」

 

 

あ、件の男に本当に馬蹴りしやがったぞこのロボット。

というかロボットが恋心ってどういう事?

そのまま言葉の意味?

もし本当にそうだとしたら、実に面白い。

 

 

「つかぬ事をお聞きしますが、なんで私に恋心を?」

『一目ぼれなんて言わせるなよ恥ずかしい!!』

 

 

そう言って真四角の顔を赤らめているロボット……というか赤らめるとかロボットのくせに器用すぎるでしょ。

このロボットのAI、一体どうなっているのか?

可能ならば後で解体して調べてみたいのだが。

 

 

『やめて!!それだけはやめてぇ~!!』

「ちょっ!?振り回さないで!!怖い!!怖いですから!!」

 

 

そんな事を考えていたのを読まれたのか、暴れ出すロボット。

しかしそんな状態でも私の事はしっかりと握って離さないので、私は振り回され、振り回され、振り回され……正直吐きそうになる。

 

 

「何か知らないけどチャンスか?」

「何時やるか?無論今でしょ!!」

 

 

暴れるロボットの周りのディスクにいつの間に潜んでいたのか?

これまた白衣の男たちが四方八方囲うように現れ、各々が太い円形の筒をこちらに構えている。

 

 

「各班トリモチ弾装填。目標、前方のTDR―2。撃ち方始め!!」

「「「アイ・サー!!撃ち方始め!!」」」

 

 

ぐちゃぐちゃと、べちゃべちゃと飛び交うトリモチの集中砲火。

流石のロボットもーーーどうやらこれはTDR-2と言う名称らしいーーートリモチの弾幕の前には為す術も無く動けなくなっていく。

 

 

「さあ、あいつをぐちゃぐちゃにするぞ!!」

「え?」

「え?」

「お前、おまえ、オマエ……せっかく作ったTDR―2を壊すって言うのか!?」

「馬鹿たれ!!さっき見ただろ、あいつが安達を蹴り殺したのを!!これ以上死人を出す前にこいつをぐちゃぐちゃにするんだよ!!」

「げほっ……勝手に、俺を、殺すなよ……」

 

 

折角動かなくなったロボットを、私を余所に喧嘩を始める白衣集団。

一応そんな彼らに助けを求めてみたが、「部外者は黙ってろ!!」と怒鳴られた……何で?

私、部外者違うよね?

寧ろ被害者、関係者だよね?

それなのに「黙ってろ」って酷くないですか?

 

「ああ、駄目だこいつら」と、私は彼らに助けを求める事を諦め、何とか自力で脱出できないかと身を捩ったり、もがいたりしてみるが、さっきよりもがっちりロボットの手が閉められていて脱出できない……と思っていたらロボットの手にトリモチがくっついていて、自力での脱出がより困難になっていた。

 

 

嘆息

 

 

さてどうしようかと改めて考えてみるが、結局自分には何もできないので他人に助けを求めるしかなく、そしてこの場にいる他者は白衣集団しかおらず、私は彼らの喧嘩がおさまるまで待つしかない。

待つしかないのだが……

 

 

グワァン

 

 

ロボットの方からついさっき聞いたばかりで耳から離れることの無い起動音が聞こえてくるのはきっと気のせいだ。

ふと、上から何か粉の様な物が降っているのに気付く。

雪の様な柔らかさで、しかしそれの様な冷たさはなく……試しにぺろりと舐めてみると、私の舌は、それが小麦粉かそれに近いものだと教えてくれる。

なんだ、ただの小麦粉かと安堵すると同時に、私は嘗て大学の先輩が教えてくれた雑学を不意に思い出す。

 

 

『トリモチの粘着力を無くすには小麦粉を塗すと良いそうですわ』

 

 

……まさか

そう思い、私はゆっくりとロボットの方に首を向けてみる。

 

 

『I’m back!!』

 

 

ロボットは頭から小麦粉の粉を吐き出しながら、目標を容赦なくターミネトする生前の某超大作映画のセリフを吐きながら動き出していた。

 

 

「う、動き出したぞあいつ!!」

「一体全体どうやって……」

『高天原の技術は世界イチィィィイイィィイィ!!』

「「「ぎょわあぁあ!?」」」

 

 

そこらで慌てる汚れた白衣(男たち)が宙を舞う。

そこらに積まれた機材が宙を舞う。

何処の戦○無双ですかと私が問えど、答えが返って来る筈も無し。

 

数十秒か、何分か、もしかしたら何時間かーーー思考を途中から止めていた私が気づいたころには暴れていたロボットは動作を止めて、私の方を見ていた。

周りを見渡せば荒れた機材に書類に死屍累々。

 

 

『さあ、貴様をロウ人形にしてやろう!!』

「あ……」

 

 

忘れてましたよ此奴の目的。

 

 

「というか何故にロウ人形ですか!!」

『時よ止まれ、汝はいかにも美しい』

 

 

『時よ止まれ』

確かゲーテの作品『ファウスト』において、主人公であるファウスト博士のセリフだった筈……とか言っている場合じゃないでしょ私!?

死ぬの!?私、ここで死ぬのか!?

こんな……こんな訳も分からない必死の危機が私の人生の中で今までにあっただろうか、いやない(反語)。

というかそんな死に方、絶対に嫌だ!!

しかしロボットは自身の胸のドアを開き、私を捕える手はその中へと、暗闇の中へと私を誘おうとする。

 

 

「くっ、どうすれば……」

 

 

焦る私。

どうにかしなければと、何かないかと辺りを見回して、一人の白衣男がこちらに何かを言っているのに気付く。

声は、声こそは聞こえなかった。

しかし読唇術を心得ていた私には、その白衣男が何を言っていたのかを全て、危機的状況だからこそ一語たりとも違う(たがう)事無く分かった、分かってしまった。

アドバイスか?

最初こそ私はそう思ったが、実際には違った、寧ろ逆だった。

 

 

「何処のどいつかは知らないけど、まあお前の犠牲は忘れないぞ……多分」

 

 

プツンッ

私の中で何かが切れる音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付けば、私は煙を吹いている何かのスクラップに上に、綺麗に整列して土下座をしている白衣集団を見下ろす形で立っていた……何それ怖い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさか開発室室長に任命された私の初仕事が今回のロボット暴走事件の報告書作成と被害を出した機材のチェック、それと上司に謝罪しに行く事になるとは思いもしなかった。

それにしても、あれだけ巨大なロボットが暴れて、それでも研究員の死傷者がゼロで済んだのは幸いか。

 

 

「っ……」

 

 

書類にサインする為にペンを握っている右手が大変痛い。

私が気づいた時、あの場でスクラップとなっていたあのロボットを壊したのはきっと私で、そしてロボットの壊れ具合を、凹み具合を、私の両手が血だらけなのを鑑みるに、私は素手でロボットを壊したのだろう……我が事ながら、恐ろしいなおい。

今は両手共に厚く包帯を巻いてはいるが、血が包帯ににじんでかなり痛々しい。

一応両手の自己再生の速度は底上げしてはいるのだが、他人が見ている中で一瞬でこれを治すわけにはいかないので再生速度は緩やかにせざる負えない。

とりあえず今日の仕事が終わったらすぐに病院に行くつもりである。

 

 

「はぁ」

 

 

嘆息

私はペンを一度置き、眼鏡も外し、目頭を指で押さえてリラックスする。

 

私がこの部署の室長として課せられた問題は沢山ある。

特に問題なのは科学省内で開発室が評価されていない事と資金不足の二つ。

後者は前者の延長なのだが、こっちについての解決方法は既に考えてある……しかしこれは結局前者の状態次第(・・・・)になるだろう。

 

コンコン

 

 

控えめなノックが叩かれ、私は眼鏡を掛けなおして入室を許可すると、入ってきたのは沢山のファイルを抱えた研究員。

 

 

「は、白嶺様。言われた資料をお持ちしましたぁ……」

「ああ、ご苦労です。そこに置いて「ひぃ、ごめんなさい!!存在してごめんなさいぃ!!」……はぁ」

 

 

ファイルの置き場を指示しようと腕を上げようとしたら怯えられた……いや、原因は分かってはいるのだが、それでも少し傷つく。

 

 

「様は不要です。私の名を呼びづらいなら室長と呼びなさい」

「は、はひぃ」

「……」

 

 

私が元男だったせいだろうか?

怯えてなよなよしている男を見ると段々とイライラしてくる。

もっとこう、男ならしっかりしてもらいたいものだと思うのは私の勝手な男性像を抱いているせいだろうか?

 

気づけば男は許可も無しにそそくさと、「失礼しましたぁ……」と何とも小さく情けない声を引き連れて退出しようとしていた。

そんな男の後姿を見て私は一計を按ず

私は立ち上がり、男を引き留めると男に近寄り

 

 

「喝っ!!」

「ひぃ!?」

 

 

怒鳴りつけた。

 

 

「貴様、それでも(おのこ)か!!」

「へ!?あ、はぃ……」

「嘘を吐くな!!その様な返事の仕方をするものが(おのこ)である筈あろうか、否!!否、否、否!!」

「えぇ~!?」

 

「背筋を曲げるなしゃんとしろ!!」

 

「下を向くな前を向け!!」

 

「ええい!!そんななよなよした返事をするな!!口答えするな!!それでも貴様は(おのこ)か!!」

 

 

相手に有無を言わせず言葉早に叱り、怒鳴り、叱り、怒鳴り、叱り、怒鳴り。

相手がしゃんとするまで続ける事数分。

恐怖か、はたまた怒りのためか、震える、しかし真っ直ぐに背筋を伸ばした男がそこにいた。

 

 

「……いいでしょう、戻って結構ですよ」

「は、はい。ありがとうございました室長!!」

「お疲れ様」

 

 

今度はしっかりと受け答えをした男の肩に、私はポンッと軽く手を叩き「そうやってしゃんとしていた方が男らしくて、私は好きですよ」としっかり労い、私は男を退出させた。

退出するとき、心なしか彼の顔が赤かった気がするが……やはり一方的に怒鳴った事が顔を赤面させるほど不快に思ったのだろう。

私の勝手な男性像を押し付けるのはこれっきりにしよう、うん、押し付けよくない。

 

 

「さてと……」

 

 

私はディスクに座り直し、机の上に山積みにされた分厚いファイルの山を見上げる。

私が彼に、彼ら(研究員全員)に頼んだのは今まで行ってきた中で最も出来のいい研究を私に提出する事だ。

それを見れば、本当に彼らが無能か有能なのかが図れるだろうと思って頼んだ事だが、このファイルの山を見て「これは失敗したな」と今更内心で苦笑いをしてしまう。

とりあえずこれは家に帰宅した時に人形(並列思考)にでも手伝ってもらおう。

そう判断した私はファイルを、開いた四次元空間の穴にまとめて落として室長室の外に出る。

 

室長室の外は今だに荒れている研究室。

そんな研究室の復旧作業を続ける研究員たち。

 

 

「まずは目の前の問題からですね」

 

 

そんな彼らを見て、私はそんな事を呟きながら腕まくり。

頑張ろう。

私はそれだけ思い、彼らの片付けに加わるのであった。




千鶴「貴方が、泣くまで、殴るのを、止めない!!」

ロボット『ア”--!!?』

研究員たち「「「あわわわ……」」」
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