遥か東方に生きる   作:NoRAheart

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前回の詩の説明


『我が言は衆を教え導く神の言なり』
⇒能力の効果アップ
『悪人は我が言を聴いて、悔い改めよ』
⇒穢れなどに対する効果アップ(ただし神性を持つ者に対する効果は減少)
『しかし我が言を聞き能わずこと無きにしも非ず』
『故に我が言よ、言霊と成りて千里を走れ』
⇒能力の射程距離の増加


となります。


私の名

妖精というのは基本的に陽気で悪戯好きというのが基本である。

彼らは一見、自分のテリトリーに侵入した獣をからかったり、迷わせたりして獣の困り果てる姿を楽しんでいる様にも見える。

しかしこの行いが、彼女たちの仕事である事を知っている者が何人いようか?

 

そもそも妖精とは自然自体の持つ微弱な思念が集まってできた集合思念体の様な存在であり、花の授粉を手伝ったり、若い植物の成長を手伝ったりを無意識で行っている。

無意識と述べたのは、それらが彼女たちにとっての遊びの一環だったり、陽気を振りまく事で植物に元気を与える事であったりするからである。

そして獣は木の実を食べたり、森を荒らしたりする為、自然は妖精を使ってテリトリーを護るように妖精の深層心理に指示する。

それが悪戯という行動で出る訳である。

 

 

そして妖精の中には妖精の上位種、大妖精という存在がある。

ここまでなると、テリトリーに存在する自然からの思念を受け取って活動している為にその場から離れられない通常の妖精とは異なり、ある程度の単独行動を可能としている。

進化条件は個体によってさまざまだが、元々の依代が巨大な存在で最初から大妖精として産まれてくる個体も中には見受けられる。

大妖精とまでになると、思考や意思疎通等が可能となるが、そこら辺の程度は環境に因る。

知能は、平均的には小学二年生程度が一般的だが賢い妖精となると、そこら一帯の妖精を統制するような個体もいる。

 

 

とある湖

ここに例として挙げるのに適した二つの個体がある。

一人は湖を依代として産まれた妖精、名をチルノと言う。

この湖は、周囲の森林の大半に妖精が存在していた為、湖の神性は非常に高かった。

それ故に彼女は元から大妖精の中でも強力な存在としてこの世に産まれ落ちたが、産まれて間もない為、思考も幼く、言葉もまだ話す事が出来ない赤子の様な存在である。

 

もう一人の大妖精、彼女の名前は現時点でまだ無いが彼女を狭義的に区別する為にここでは「大ちゃん」と呼ぶことにする。

彼女は湖に近い土地で最初に産まれた妖精で、それなりの経験を積んだ上で大妖精となったため思考力も高い。

そして彼女はその穏やかな性格故か、自分の力に驕る事無く、湖の周りに住んでいる妖精たちのまとめ役、と言うより保母さんの様な立ち位置でよく他の妖精たちのお節介をやいている。

妖精同士の喧嘩を仲裁したり、元気のない妖精の世話をしたり、怪我をした妖精を治療したり………

そんな彼女だからこそ普段は他人のいう事を聞かない妖精たちも、彼女のいう事だけは聞いてくれるのかもしてない。

 

 

 

 

さて、そんな大妖精こと「大ちゃん」はつい最近、湖の妖精として産まれたチルノのもとに向かっていた。

用事の一つはチルノの教育である。

このあたりの妖精で大ちゃんとチルノ以外には大妖精がいない為、彼女が意思疎通法や知識を教えないといけない………早急に。

チルノは依代のおかげで元から大妖精として産まれた為か、既に大ちゃんの半分程度の神気の量を持ち合わせている。

そのことについては、大ちゃんは時期尚早を感じて教えてはいない。

しかし将来彼女が無意識にその力で他の妖精を傷つけまいかと心配しているのだ。

だからこそ彼女の教育に力を入れないといけないのだが、彼女も誰かに物事を教わった訳でも無いし、ましては教えた事もないので、感覚的な事しか教える事しか出来ずに教育はチルノ自身のやる気の問題も相まって難航している。

 

そして彼女はもう一つの用事を思い出す。

最近この湖に近いテリトリーの妖精たちが黒い存在によって殺されたという噂を知り合いの動物に聞いたのである。

妖精は彼ら自体が一度は消えても、依代がある限り復活し続ける。

妖精が殺されるという事は、その土地が何らかの方法で穢され、不毛の土地となってしまったという事だ。

しかも大ちゃんはここでは無い何処かで、多くの妖精たちの気配がごっそりと無くなったのを感じていたので信憑性が高いだろう。

その事を妖精たちに伝えないといけないのである。

 

 

 

 

 

 

湖の周辺を飛んでいると、目的のチルノを発見することが出来た。

いつものようにお友達と遊んでいる最中のようだ。

大ちゃんがチルノを呼ぶと、彼女は嬉々として彼女の胸に飛んできた。

普段よりも興奮気味の彼女、どうやら何か良い事があったらしい。

 

 

「どうしたのチルノちゃん、とても楽しそうだよ?」

 

 

そうチルノに話しかけると、チルノは話せない言葉の代わりに沢山のイメージを送ってきた。

 

 

新しいお友達が出来た事

 

そのお友達とたくさん遊んだ事

 

色々な遊びを教えてくれた事

 

一緒に笑いあった事

 

 

「よかったね、チルノちゃん」

 

 

そこまで伝え終わると、チルノは「勉強を教えてほしい」と言うイメージを伝えてきた。

これには大ちゃんも驚いた。

いつも勉強の事になると、チルノは嫌な素振りを見せるか、逃げるかであった。

一体どんな心境の変化があったのか?

疑問に思った大ちゃんが質問を返す前に、チルノは新たなイメージを送ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

時はほんの数十分前に遡る

 

 

「あなたは妖精にしては大きな力を持っている事に気が付いているかしら?」

 

 

私は去り際、気になった事を尋ねる。

チルノは首をフルフルと横に振った。

どうやら知らないようだ。

 

 

「気づいていないならそれでもいいの……でもね、あなたは知らないといけない。その力を自覚して、コントロールする事を

 

 

そうしないと、あなたはその純粋さ故に知らず知らずの内にお友達を傷つけてしまうから」

 

 

今度は分からないと言いたげに首を横に振った。

ならばと彼女はチルノに、チルノがお友達を傷つけてしまうというイメージを送ると、チルノは顔を青くして泣きそうな顔をする。

少々自責の念を感じたが、無知は罪だから……

だからこそ、チルノに教えてあげないといけない。

 

 

「大丈夫」

 

 

私はチルノの手を握る。

チルノはとても驚いた顔をするが構わない。

このような事は包み隠さず彼女に真実を丁寧に教えてあげる事が一番だと私は思った。

子どもだからと言って大切な事を後々に先延ばしするのは、もしもの事態になった時に本人が知らなかったじゃ済まされない事だと私は思うから。

 

 

「あなたには素晴らしい先生がいるじゃない。彼女に力のコントロールを教わりなさい」

 

 

彼女が教えてくれた心優しい大妖精。

彼女の言葉(?)の通りの妖精なら彼女を正しく導ける筈だ。

イメージを交えつつ、私がそう伝えると、チルノは満開の花の様な笑顔になって私に抱き付いてきた。

どうやら上手くいったようだ。

分かりやすい鮮明なイメージを伝えつつ話すというのはかなり難易度が高かったが、友達思いの友達の為だ、私頑張った、うん。

 

え、お礼?

いやいや、大した事なんかしてないからお礼なんて………何その木の実の量!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな事が」

大ちゃんはそのチルノの新しいお友達に舌を巻いた。

名も知らぬ彼女には大ちゃんが本来担うべきである嫌な役を押し付けてしまったが、チルノがこうして勉強に積極的な姿勢を見せてくれるようになった事はとても喜ばしい事である。

 

いっその事、その彼女にチルノの教育を任せてしまおうか?

妖精の悪戯を笑って許せる器量を持ち、優しさを兼ね備え、更には知恵もかなりありそうだ。

私よりも余程チルノの先生に適しているに違いない。

ならば話は早い方がいい。

彼女がここを去ったのはついさっき、きっとまだ間に合う筈だ。

 

大ちゃんはチルノに、そのお友達がどちらに向かったのか聞いてみるとチルノは南東の方角を指していた。

 

 

「あれ?」

 

 

あの方角って確か噂の化け物がいるって言っていた………

大ちゃんがそう考えていると、まさにその方角から地鳴りとともに大きな土煙が起こった。

 

 

彼女が襲われている!?

 

 

「チルノちゃんはここで待ってて!!」

 

 

大ちゃんはそうチルノに叫ぶと、その土煙の起こった方角へと急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チルノちゃんのお友達を助けなきゃ!!」

 

 

木々の間を縫うように飛ぶ大ちゃん。

彼女にとってこの森は彼女の庭に等しく、目をつぶってでも進むことが出来る。

更に彼女は妖精であるおかげで、この森から情報を聞き取って彼女の位置も分かっているため、最少距離で進むことが出来た。

 

そうして進んでいくと、ゴウッという音と共に唐突に前方から見えない何かに弾き飛ばされる。

大ちゃんは制御を失ってバランスを崩してしまうが、何とか体制を立て直す。

 

 

「今のは一体?」

 

 

今はそんなの気にしている暇は無いのだと首を振って進もうかとすると、不意に後ろから何者かが近寄ってきた。

大ちゃんが振り返ると、そこにいたのは留守番を言いつけた筈のチルノの姿であった。

 

 

「なんで来たの、チルノちゃん!!」

 

 

大ちゃんは叱りつけるように怒鳴り声を上げた。

その声にビクッと身体を縮ませて立ち止まるチルノ。

しかしチルノはそれに負けじと大ちゃんに強いイメージを送り返す。

 

お友達を助けたい!!

 

 

「それでもダメ!!」

 

 

嫌だ、お友達助ける!!

 

 

「チルノちゃん!?」

 

 

チルノは大ちゃんの静止を振り切り、彼女のもとへ飛んでいく。

 

初めてチルノが私に反抗した。

 

その事実に一瞬呆けていた大ちゃんは、慌ててチルノを追いかける。

チルノは大妖精故に空飛ぶスピードは妖精よりも早いが、大ちゃんも大妖精、しかも森の中を飛ぶ経験も豊富な為、あっという間に離された距離を詰める

 

 

私だって……私だって!!

 

 

大切な友達のあなたを失いたくないの!!

 

 

チルノちゃん!!

 

 

「「捕まえた(ツカマエタ)!!」ァ!!」

 

 

ようやく捕まえたチルノの先には、チルノがお友達と呼んでいたであろう女性が黒い化け物の三本の腕に貫かれるという光景が待っていた。

あまりの光景に大ちゃんもチルノもただただ呆然とする。

 

 

「がっ……!?」

 

 

貫かれた女性は吐血しながら、その眼はなおも反撃の意思は折れていない様に見えた。

しかし大ちゃんの意識はそこで途切れている。

大ちゃんは咄嗟にチルノを引き寄せて女性から発せられた何かから、チルノを身を挺して護るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからチルノと大ちゃんが目覚めたのは、ほぼ同時だった。

どうやら草むらに飛ばされたおかげでそれらがクッションとなったようだ。

互いに怪我が無い事に安堵しながら、例の女性がどうなったのかを確認しに元の場所へと戻る。

そしてさほど時間を掛けずに彼女を見つける事が出来た。

彼女は木に寄りかかりながら目を閉じており、それは死んでいる様にも見えた。

 

 

「お姉ちゃん!!」

 

 

チルノはそんな彼女に声を荒げながら駆け寄り、泣きながら彼女を大きく揺さぶる。

大ちゃんはそんなチルノを止めようと近寄るが、ここで疑問が生まれる。

 

 

何故チルノちゃんが声を発する事が出来るのか?

それにチルノちゃんの背丈が大きくなっているのは何故か?

 

 

そこまで考えて大ちゃんは、今度は自分自身の変化に気づく。

 

 

「背丈が少し伸びてる?」

 

 

以前より少しであるが、視線が高くなっているので間違いない。

それにどうやら力が若干底上げされている。

 

 

「がっ………こふっ!?」

 

 

積もる疑問はさて置き、大ちゃんはチルノちゃんに起こされた彼女の介抱の為に慌てて駆け寄るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん!!」

 

 

眠っていた私の意識が覚醒する。

ゆさゆさと強く揺さぶられ、今度は私の感覚が覚醒する。

私の感覚が戻るという事は……

 

 

 

 

………痛ぁ!?

 

 

 

 

痛覚が戻るという事だ。

 

 

ちょっ止め、痛い痛い!!?

そんな揺さぶらないで、痛いって、ほんとギブギブー!!

 

 

私は、私を揺さぶる誰かに静止を呼びかけようとするが、上手く声が出ない。

声が出ないだけで無く、呼吸も出来ない。

まるで水に溺れている様なそんな感覚。

どうやら肺に血が溜まっているせいで呼吸が出来ないようだ。

というか地上で溺れるとか頭で理解できても普通はあり得ない事だから、混乱してしまって前後不覚になっている。

 

 

「がっ………こふっ!?」

 

 

落ち着け私の身体!?

そんな慌てて酸素を求めても呼吸できんって!!

ビークール、ビークール……よし。

私がやるべき事、それは肺に溜まった血を吐き出す事だ。

早速神気を使って肺に溜まった血を操り、気管を逆流し、外へ吐き出した。

 

 

「~~~~!?」

 

 

みっともなく四つん這いでげえげえと血を吐き出す私。

しかしそんな私の背中をさすってくれる誰かさんの心遣いはとてもありがたかった。

 

 

「げほ、げほっ」

 

 

ようやく肺の中の血を出し切り、呼吸が出来るようになる。

大きく深呼吸、そして吐き出す。

次に身体の傷を癒す為、更に神経を集中させる。

細胞の一つ一つを創りだし、繋げ、再生する。

何度も失敗しつつもようやく傷は完治した。

立ち上がって傷が他に無いか確認するが、傷跡どころか服の欠損さえ見受けられない。

服については神気を纏っていた為か、勝手に自己再生したみたいだ。

これについては、今後の服作りに役立てる事にしよう。

 

 

「お姉ちゃん!!」

「げふゅ!?」

 

 

私は突然どてっぱらに重い一発を喰らって情けない声を出してしまった。

何事かと見てみると、さっき別れたばかりのチルノが涙目を浮かべながら私に抱き付いていた。

 

 

「駄目だよチルノちゃん……ごめんなさい、チルノちゃんがご迷惑を」

「大丈夫、問題ない」

 

 

淡い緑色をし、透き通った二対の羽を持った135㎝程(因みにチルノは130㎝程度)の大人しそうな女の子が申し訳なさそうに頭を下げる。

妖精にしては知的な感じがするな……あっ成程、彼女がチルノの言っていた先生かな?

 

 

「あなたがチルノの先生?」

「いえ……私は、その……」

 

 

私がそう尋ねると、彼女は暗い顔をして俯く。

一体どうしたんだろうか?

 

 

「違う、先生違う」

 

 

その彼女の言葉をチルノは片言で否定しながらぶんぶんと首を横に強く振った。

はて、いつの間にチルノは喋れるようになったのだろうか?

 

 

「彼女、友達……大事な、お友達!!」

「チルノちゃん……」

「そう、チルノちゃんのお友達なのね……なら」

 

 

私は彼女に手を差し出し

 

 

「私のお友達になってくれませんか?」

「えっ?」

 

 

彼女は目を丸くして、私の顔と差し出された手を見比べる。

こんな時に私の表情筋はうんともすんともいってくれない事がこんなにも、もどかしい。

微笑み一つぐらい見せる事が出来ないなんて。

そうしたら、相手も緊張する事なんてないのに。

ええい、動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け……………

 

 

「おかしな顔」

 

 

私の葛藤をつゆ知らず、彼女はクスリと笑ってそんな事を宣わった。

気づけばチルノも口を押えて笑いを堪えている。

 

 

「気づいてますかあなたの表情、口角が変な風につりあがって大変な事になっていますよ」

「それは知らなんだ。何分長年、表情など使う様な身体ではなかったからな。微笑み一つがこんなにも難しいとは……」

「不器用なんですね」

「手厳しいな、まあ練習が必要なのは分かってはいるが」

 

 

私は彼女に、動かない表情の代わりに不機嫌をアピールするように膨れて見せた。

 

 

「もっと固い方だと思っていました」

「人を見た目で判断するものでは無い事がよくよく分かったか?」

「ええ、とても勉強になりました」

 

 

彼女はそういって私の差し出された手を握る。

 

 

「あっ」

「こちらこそ、私とお友達になってくれませんか?」

「ああ、宜しく頼む」

 

 

二人はしっかりとお互いの手を握り締めて新たな友情を誓い合う。

まるで絶対に離さない意気込みを握手で表現している様にも見えた。

そして握り締めあう事数秒、おもむろに彼女たちはどちらからともなく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「貴女の名前なんですか」でしょうか?」

 

 

と言ったそうだ。

数秒後、二人の女性が自らに名前が無い(一人は忘れた)事に頭を抱えて座り込み、一人の幼女がアワアワしている光景があったというそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日は既に深夜だった事もあって、また後日に日を改めて彼女たちと湖で待ち合わせる事にした。

そして私は約束の日に、日の出前に家を出た。

言い忘れていたが私の家より湖までの距離は約十km弱、歩いて幾分には相当な距離が掛かる。

かなり湖から離れている事が気にくわない私は、湖の近くに居を構える事にした為、元の住居は出発前に跡形もなく処分した。

そしてこの短期間で寝ずに練習した浮遊術を使って湖周辺へと飛んでいく。

 

 

「やっぱり徒歩の方が良いな。この何とも言えない浮遊感は好きになれないし……移動は緊急性が無い時以外は歩くか」

 

 

そんな事を呟きながら、私は湖の周りをグルグルと周っていた。

何故こんな早朝から湖の周辺で飛んでいるかと言うと、私の家を建てるのに最適な場所を見つける為だ。

要望は小高い山の上で平らな土地、それと出来れば山の麓に開けた土地が欲しい。

山の上に住めば急いでいる時に目的地に空を飛んで行きやすいし、山の麓では野菜や米などの農業をしてみたいと思っている。

 

 

「なんて……そんな都合がいい土地、ある訳無いよね」

 

 

そんな事を思っていた時期もありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

湖から一km弱、私が望んだ土地がそこにはあった。

山の方は少々手を加える必要があるが問題ない。

問題は麓の開けた土地が不毛である事か。

その土地の土を掬って、私は言う。

「穢れている」と。

ここは嘗て妖精が例のクモモドキによって殺された土地である事を彼女は知る由もないが、彼女にはこれに対する解決策を思いつく。

それと土地探しにはもっと時間が掛かるものだと思っていた彼女にはまだ約束までに時間が十分にあった。

 

 

「時間は十分、ならばやるか」

 

 

まず彼女はその地に触れ、その土地の穢れを自身の器いっぱいまで吸い上げると、信仰のバイパスを開いて神気を身に取り入れて穢れを無毒化し外に放出、それを二時間かけて繰り返し、この土地の穢れを除去した。

次にその土地の疲弊を回復させる為に、神気を土地に振りまいてまわる。

ポイントは土地にストレスを与えないように少しずつ、丁寧に神気を与える事である。

 

 

「これで良し」

 

 

三時間あたり、その作業を続けたあたりで作業を一時中断する。

そろそろ日が空の頂点に達する時刻、彼女たちと約束した時間である。

 

 

 

 

 

 

「待ったかな?」

「いえ、時間ピッタリです」

 

 

湖に向かうと既にチルノと彼女が待っていた。

私たちは湖の淵に腰かけ、まずは木の実を交えながら談笑する事にした。

木の実の内容を軽く確認してみると、野イチゴや枝豆みたいなのも見受けられた。

 

 

「どうですか、私が育てた物は。お口に合うといいのですが……」

「どれも美味しいよ」

「お姉ちゃん、作った、当然!!」

 

 

どうしてチルノが胸を張っているのかよく分からないが、彼女の作った物はどれもこれも美味しかった。

どれもこれもが形良く、よく肥えており、一つ一つが宝石の様に見えるのはきっと私の気のせいではないだろう。

 

 

 

 

そうして和気藹々と雑談を続けるのも一興だが、そろそろ本題に入らないといけない。

 

 

「ところで、それぞれ私と彼女の名前は考えてきましたか?」

 

 

私の言葉にチルノは勿論と応え、彼女は逆に落ち込んだ。

 

 

「私は残念ながら思いつかなかったです、ごめんなさい」

「構いませんよ、貴女だけでなく他人の名前まで考えるのは難しいでしょうし」

「不甲斐ないです」

「その件はこのとても美味しい木の実を頂いた事で帳消し……寧ろお釣りをあげたくなりますね」

「そんな、ありがとうございますぅ~」

 

 

私の褒め言葉に頬を緩めながら喜ぶ彼女。

そのせいか、無意識で言ったであろう語尾が……可愛い。

 

 

「どうしたんですか、突然黙っちゃってぇ~」

 

 

しっかり者のお姉ちゃんキャラである彼女からは考えられない、甘えた声に上目づかいで私を見つめてくる。

 

 

何この可愛い生き物、むっちゃお持ち帰りしたい!!

 

 

はっ……私は何を考えているんだ。

落ち着け、そう餅つけ………餅つきしてどうする!?

くそ、なんと恐ろしや「ギャップ萌え」!!

 

 

「ち、チルノは考えてあるのよね?」

 

 

私はその視線から逃れるように、今度はチルノに話を振ると「もちろん」という自信たっぷっりな返答が返ってきた。

 

 

「それでは私の名前は?」

「お姉ちゃん!!」

 

 

……はぁ!?

えっと、何そのドヤ顔。

いや、お姉ちゃんは固有名詞ちゃうからな。

 

 

「ち、因みに彼女の名前は?」

「お姉ちゃん!!」

「「………」」

 

 

やめて、そのやり切った様な清々しい顔!!

間違っている事、指摘しづらいよ……

私は助けを求めるように彼女に視線を送るが

 

ぷい

 

目を背けられた。

そんな殺生な!?

 

 

その後、私は名詞、代名詞、固有名詞の違いを懇切丁寧にチルノに説明するのに三十分も費やしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

気を取り直して彼女が話を戻す。

「そういう貴女は考えたのですか?」

「いえ、全く」

「即答!?」

「いえ、自身の名前の方は考えてあるのですが……そうですね」

 

 

彼女の持ってきた木の実などを見、私は一つの名前に至る。

 

 

倉稲魂命(うかみたまのみこと)なんてどうかしら」

「倉稲魂命?」

 

 

倉稲魂命

「日本書紀」の第六の一書に載っている伊弉諾尊と伊弉冉尊が作りだした自然の神々の一人で、穀物を司る神であったと記されている。

私は彼女の木の実などを大切にしている彼女を思い、ふとその名を思い出したのでそのまま述べてみた。

 

 

「正確には「魂」が神霊である事を、「命」が神、又は貴人の尊称を指すから名前は倉稲になるのだけど」

 

私は地面にその字を書きながら説明しつつ、区切る為に稲と魂の間に線を入れる。

 

 

「ウカ、名前、女の子らしく無い」

「ええチルノ、私もそれは思うところです」

 

 

う~ん

 

倉稲魂命、うかみたまのみこと、うかみたまの………?

 

うか……の?

 

 

「ウカノ?」

「あっいいですね、それ」

「ウカノお姉ちゃん!!」

 

 

二人には思いのほか好印象だったようで一安心である。

逆に私は書物に載っている神の名から勝手に名前を使った事を情けなく感じていた。

 

 

「チルノ、これ、欲しい!!」

「ん?」

 

 

何をと思ってチルノが指さす方を見ると、先ほど地面に書いた「倉稲魂命」を指していた。

成程ね、チルノは自分の名前の書き方が分からないのかと思い、地面に「チルノ」と書くと怒られた。

何故に?

 

 

「もっとかっこいいのがいい」

 

 

どうやら漢字で書いてほしいそうだ。

しかし困った。

チルノのまま、その存在を表す漢字なんかあるのか?

私はあーでもない、こーでもないと呟きながらようやく完成したの名前が「池留荷命(ちるののみこと)」。

当て字ではあるが、しっかりと「池(湖)の留まるを荷う」と、チルノの役割を表した名前になる。

 

 

「池留荷命!!カッコいい!!」

 

 

これも喜んでくれたので肩の荷が下りたと私は小さくため息を吐いた。

 

 

「それでは、各々『今より倉稲魂命ことウカノ、池留荷命ことチルノと名乗り、今後その名に恥じない生き方を』」

 

 

私はこの時、無意識に『言霊を操る程度の能力』を使って世界に宣誓をした事によって、彼女たちの運命はこれを契機に大きく変わってくるが今回は触れないでおく。

 

 

「でも、いいのでしょうか?」

「何がでしょう」

「勝手に神様の尊名を語ってしまって……」

「心配ないよ、その神ならここにいるじゃない」

「え!?」

「え?」

「ひ、ひとまずその話は置いといて、また追々聞きます」

 

 

置いとくんかい

 

 

「今は貴女の名前が決まるのが先です。自分の名前は決まってると先ほど言いましたよね」

「ええ、名前はね」

 

 

名前はとあることわざより「長生きでもこれからの人生、楽しくめでたくあって欲しい」との思いを込めて付けたが、苗字は決まっていない。

何かいいものは無いものかと顔をあげると、標高のある山の嶺に少しばかりの残雪と、白い雲が掛かっている。

その景色を見、私はようやく苗字を作る事が出来た。

 

 

「ウカノ、チルノ、聞いてくれますか。私の名前」

 

 

私は二人に向き合い、身なりを正す。

それを察してか、二人は私の言葉を待つ。

 

 

「命名」

 

 

私の名前

 

 

「私の名は……」

 

 

これからの私を示す記号、それは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白嶺千鶴(はくれい ちづる)であると

 




やらかしたbootyです。

今回の話は勝手に大ちゃんの名前を勝手につけて、それこそ非難の嵐が目に見える様な話でした。
ここまで来たら、私は腹をくくりましょう。
さあ、一思いにやるがいい(作者土下座中)


今回のあとがきは短いですが、ここまでです

それではまた次回のあとがきで


追記

主人公の
「長生きでもこれからの人生、楽しくめでたくあって欲しい」
のくだりについて

これは「鶴は千年、亀は万年」から来ています。
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