遥か東方に生きる   作:NoRAheart

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注意:千鶴は親バカです




天照大御神

「ぜえぜえぜえ……ふふふ、覚悟しなさい、チルノ姉さん。今日は勝たせてもらうわ!!」

「わっはっは、甘い、甘いよ。あたいに勝とうなんて、まるで千鶴姉ぇの作ってくれるアイスクリーム並に甘いわよ、ルーミア!!」

「あわわわわ、チルノちゃんもルーミアちゃんも落ち着いて……」

「「ウカノちゃん(姉さん)は黙ってて!!」」

「あ、あう~」

 

 

真剣勝負

己を賭けた負けられない戦いがそこにはある

互いに己が研鑽した技術を、持ち得る全力全開の力を信じるからこそ負けられない

それが、それこそが真剣勝負だ

 

 

「そこよ!!」

「甘いよ、そんな攻撃じゃ欠伸が出ちゃう……ほらほら、腹の守りがお留守だよルーミア!!」

「くっ!?……でもチャンスはまだこの手の内に……『ディマーケイション』!!」

「わっ、ちょっ、あんたも中々やるようになったじゃない」

「やられっぱなしは好きじゃないわ、ここで一気に「ざーんねーん、させると思った?」!?」

「そこだ、『ヘイルストーム』!!」

「くっ!?」

「ほらほら、逃げろ、逃げろ~」

「諦めたらそこで試合終了、そうよね母さん……『ムーンライトレイ』!!」

「その勝負、のってあげるよルーミア……『アイシクルフォール』!!」

 

 

チルノとルーミアの激しい打ち合いの中、チルノの慢心が生んだであろう小さなミスをルーミアは見逃すはずもない。

 

 

「は……ハハハ!!調子に乗り過ぎた様ね、姉さん。前ががら空きよ!!」

 

 

パチッ

 

 

「ぷぷぷ……ルーミア、あたいがそんなヘマを本気ですると思ったの」

「な、まさか……」

「そう、全ては計画通り!!」

「そんな、嘘だ!!」

 

 

小さなミス

真剣勝負の中でそのミスを見つける事さえ難しいであろうそれを、あざとく見つけては起死回生を狙うルーミア。

そして見つけた小さなミス。

しかしそれは、どんなに劣勢でも相手のほんの小さなミスも見逃す事はなく一気に逆転に持ち込む事を得意とする彼女の性格を逆手に取ったチルノの罠であった。

 

 

「全ての万物よ、我が前に等しく凍えよ『パーフェクトフリーズ』!!」

「きゃあああああああああ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パチッ

 

 

「あっ、ルーミアちゃん詰みましたね」

「負け……た」

 

 

攻め手を全て失ったルーミアは、将棋盤上の駒を見てガックリと肩を落とした。

まだルーミアの王将自体は詰んではいないが、攻め駒が殆ど無く、逆にあちらの駒は潤沢な上に囲いも健在。

これでは投了するしかない。

 

 

「これで四勝一敗、チルノちゃんの勝ちですね」

「やっぱりあたいったら、将棋に関してはさいきょーね!!」

「最強?最強………ふ……ふふふ、ふふふふふ」

「る、ルーミアちゃん?」

 

 

チルノのその言葉を聞いたルーミアは俯いたまま、怪しげな笑い声をあげながらチルノをギョロリと見る。

 

 

「姉さん、母さん相手に連敗している事を忘れてない?」

「う……それは」

「それ以前に、母さんを蔑ろにして最強を語った事が許せない」

「ご、ごめんルーミア。あたい別に悪気があって言った訳じゃ……」

「いいえ姉さん、例え姉さんでも許さないわ……喰らいなさい!!」

「ひぃ!?」

「ルーミアちゃん!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『パァァアァフェクトリバァアアァァァアァァアァァァァアァス(ただの卓袱台返し)』!!」

 

 

ガシャーン

 

 

 

「ああ!?将棋盤が……あたいの勝利の栄光が!!」

「ふうっ、すっきりした。姉さん、一応聞いておくけど今どんな気持ち?」

「この、言わせておけば、表に出ろ~、ボコボコにしてやる!!」

「買った、そのケンカ。早々と姉さん負かして顔に墨ででっかく⑨って書いてやる!!」

「ムキ~!!⑨ゆ~な!!」

「あわわわ、二人ともやめなよ~」

 

 

一触即発の危険な空気にウカノはあわあわ。

年長者としてこの場をどうやって収めるべきか頭を抱える。

その間にもチルノとルーミアの争いはデットヒート。

互いの神気を全開に引き上げてあわや大惨事になる寸前。

 

 

だからだろうか

 

 

彼女たちの背後から迫る悪鬼に気づかなかったのは

 

 

「いい加減になさい」

「あべし!?」

「ひでぶ!?」

 

 

千鶴の扇子の腹で叩かれた二人は漸く千鶴の存在に気づいて顔を青くする。

二人は争っていた事など忘れてしまい、互いに顔を見合わせる。

 

 

「これは不味い」と

 

 

千鶴はいつも通りの無表情、鉄仮面

しかし彼女たちには分かる

彼女が現在進行形で激おこぷんぷん丸である事が

 

 

「将棋程度で喧嘩とは……私の教育が間違っていたのかしら。取り敢えず、三人ともそこに座りなさい」

「え、あれ……私もなの!?」

「無論です、三人ともそこに『座りなさい』」

「「「はい……」」」

 

 

言霊まで使ったお座り命令に拒否権は無く、ただ命ぜられたままに、為すすべなくその場に座らせられる三人。

この後、千鶴が閻魔大王顔負けの二時間説教コースを三人に与えて、終わった頃には三人ともゲッソリとしていたのは言うまでも無いかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、将棋で喧嘩するとは思いませんでしたよ」

 

 

家の縁側に腰を下ろした私は開口一番にウカノに嫌味を告げた。

 

 

「なんで私まで……」

「ナ・二・カ・言いましたか?」

「ひっ、ごめんなさいぃ~」

 

 

ウカノの見事な高速土下座を目の当たりにして、私はそれにドン引きしながらも「まぁいいでしょう」と、さも受け入れたかのように振る舞う私。

別にさほどは怒ってはいないが、人様の家でドンパチは勘弁してほしい。

それを目の前で止められなかった彼女。

悪いが、だからこそ説教をさせてもらった。

彼女は責任ある立場だ。

今回の様な事が止められなかったら、事を起こした本人だけでなく監督者にも責任がある事を耳にタコが出来るまでしっかりと言い聞かせたので、今回の様な事は起こらない筈だ。

私はちらりと彼女を見る。

 

 

「……」

「あぁ、そんな千鶴さ~ん、いい加減許してくださいよぉ~」

 

 

私の視線を受けて何を勘違いしたのかは知らないが、土下座状態から上目づかいで猫なで声をあげる彼女。

訂正、やっぱり心配だ。

いつまでも土下座をやめようとしない彼女を取り敢えず起こして、私の隣に座らせる。

そして手に持っていた茶を一杯、口に含んだ。

 

 

「ん、ふう……最初から私は怒っていませんよ。私がウカノに対して本気で怒っていたらああなっています」

 

 

私の指さしたその先、チルノとルーミアが罰ゲームとして私の作った泥人形と300人組手を受けていた。

レベルは全て500設定(1レベルにつき並行思考が一本。並行思考一本は一般の武道家の3倍程度の強さの換算)

因みに彼女たちが普段受けている修行は武器持ち泥人形、レベル200の100体相手の組手である。

 

 

「ほらほら頑張りなさいな二人とも、早くしないとお菓子に作ったおはぎを食べちゃいますよ」

「くっ、流石は母さん。なかなかの鬼畜っぷりだわ」

「千鶴姉ぇの鬼ぃ~!!」

「ほう、私を鬼とな。人形たちに武器を持たせない時点でかなりの手心を加えているのですが……やっぱりレベルを「「ごめんなさい本当に勘弁してください!!」」ハイハイ、なら頑張りなさいな」

 

 

泣き言を言っている割にはちゃんと避けきれている様だからこのままほっといても問題ないだろう。

……まあ避けてばかりではいつまでも終わりはしないのだが。

 

 

「千鶴さん……鬼畜です」

「おや、茶柱が」

 

 

ウカノが何か言っているけど私には何も聞こえていませんよ?

あーあー聞こえな~い、聞こえな~い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから二時間ぐらいたっただろうか?

漸く組手が終わったのを見計らって、地面に力なく倒れている二人に濡らしたタオルとお水を持って行ってあげる。

 

 

「む、母さんか。ありがとう」

「ちべた~い、ありがとう千鶴姉ぇ~」

「お疲れ様、よく頑張ったわね」

「当然の事、母さんの娘なのよ」

「最初の方は辛かったけど、段々動きについていけるようになったしね」

「そう、良かったわね」

 

 

言えない

段々見ていて可哀想になってきたからレベルを少し落としたなんて口が裂けても言えない。

 

 

「親バカですね」

 

 

うっさいやい……

 

 

それにしてもルーミアは本当に大きくなった。

最初は小学二年生ぐらいの身長だったのが、今では私と同身長くらいか……

口調は私の許で育ったせいか少し私に似てきた気もするが、それ以外は本当に綺麗になったものだ。

子どもを持った親の気持ちがよく分かるよ本当に。

子の全てが可愛く見えるのでは親バカと言われるのも当然か。

私はそんな事を考えながらルーミアの綺麗な金糸の髪を撫でる。

 

 

「どうした母さん、突然私の髪など撫でて」

「いえ、本当に大きく、綺麗になりましたねルーミア」

「ほ、褒めても何も出ないぞ母さん。それに母さん方が綺麗よ」

「おや、嬉しい事を言ってくれますね」

 

 

綺麗……か。

女としては喜ぶべきことかもしれないけど、生憎私は女(笑)だしねぇ。

喜ぶべきか、はたまた悲しむべきか……

 

 

「千鶴姉ぇ~、このおはぎ食べていい~?」

「チルノちゃん、いつも手を洗って食べなさいって千鶴さんに言われているでしょ」

「うっ……忘れてた」

「全く、チルノ……あなたにはあれ程言い聞かせて……!?」

 

 

 

ピシリッ

 

 

 

私は突如、『クナト』の一部に異常を、亀裂を探知した。

何だ?

何が起きた?

私はすぐに『クナト』に対して修復術式を走らせて結界を保持する。

 

 

「どうした、母さん。何かあったのか?」

「結界が破られそうになった」

「そんな!?」

「母さんが作った結界よ?そうそう破られる筈が……」

「いえ、確かに『クナト』は穢れに対しては絶大的な防御力を誇りますが、神気に対しての防御力はさほど無いのです」

 

 

それでも『クナト』は私がそれを破るまで一苦労するぐらいの防御力はある筈だ。

そんな結界にヒビを入れるとはいったい誰だろう?

穢れでないのは確かだろうが……

ひとまず結界内外に配置していた人形たちを派遣して、もてなしておく事にする。

 

 

「皆さん、来客ですよ。各自、私が今から渡す正装を着てください」

「い、いつの間に作ったんですかそんなの……」

「趣味です」

「趣味!?」

 

 

だってほら、みんな神様だし(ルーミアは違うが)、何時かはこんな日が来るかな~って思ってさ~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の家の客の間、そこは神殿を意識して作っているので一般的な拝殿の様になっているので、かなり場所が開けている。

そこで、私の目の前に三人の男たちを筆頭に色んな人がその男たちの後ろでひれ伏している。

しかも客の間がかなり広いにもかかわらず、私の家に入りきらずに境内の外まで平伏の列が広がっている。

 

な、何?

一体全体これは何なのさ!?

だって彼らを迎えに行ってみたら泣いて土下座してくるわ、泣いて喜ぶわでホント訳わからん!!

 

こんな私の混乱などつゆ知らず、髭がもじゃもじゃな西洋人のおっさんが「主よ、恐れながら私めに発言の許可を」と宣わった。

 

え、主?

何それ美味しいの?

ひとまず私は「いいでしょう、表を上げなさい」と言っておくと彼は「寛大な御心、感謝いたします」だとさ……私なんか悪い事したっけ?

 

 

「デウス様におかれましてはご健勝の事とお慶び申し上げまする。このたび、我ら西方の神々が主の御慈悲によって無事に誕生した事を西の神々を代表してご報告に来た次第でございます」

 

 

デウ……何だって?

お姉さん、耳がおかしいのかな?

今、デウスと聞こえたぞ……!?

いや、私ご覧の通り女(笑)ですから、今男ちゃうから。

というかあんた、どこかで見た事あるなって思ったら、高校の教科書とかの挿絵に載っとるデウスその人やんか!?

 

 

「そうか、こんな辺境の地まで態々苦労である」

「おお、なんとも勿体なき言葉」

 

 

そう言って頭を深々と下げる彼。

一人目から精神的に来るぞこれは……

 

 

さて二人目

さっき会った時から思っていたのだが、こいつ本当に男か?

男にも女にも見える顔は、ややこしい事この上ない。

それになんか頭に凄いもの盛っているし、耳長いし、難しい方の座禅組んでいるし……

そんな彼は、一人目の様に私に発言の許可を取る事から入って開口一番にこう宣わった。

 

 

「大日如来様におかれましてはーーーー」

 

 

おいコラまてや!?

今何って言ったかお姉さんにもう一度言ってみなさい、怒らないから!!

 

 

 

 

ああもう駄目だ、お腹痛い……

私は相槌を打ちつつこれ以上胃の負担にならない様に彼の話を聞き流す。

特に大切な事は言ってはいないようだし、いわれも無い事を褒められても反応もしようが無い。

 

最後に残った男、どうやら日本人の風貌みたいだし日本の神か?

も、もう驚かないぞ、さっさとかかってこいや~

 

 

「幻想郷におわします国常立尊様、またその臣であらせられる倉稲魂命様、池留荷命様にお目通りが叶いまして我ら八百万の神々一同お慶び申し上げますーーーー」

 

 

むっちゃマイナーな、とんでもないものキター!!?

ちょっ、あんた、国常立尊って日本の原初の神様やけど確か身長が日本の本州の長さと同じくらいあるっていうあれですか?

よく見てよ、私そんな身長無いって!!

あれか、嫌味か!!

女のくせに身長高い事に対しての悪口か!!

 

というかこいつウカノとチルノの事を私の家臣扱いにしたあげくにさらっとルーミア無視かよ……

しかもこいつ、ウカノたちの事を知っていた程度で他の二人にドヤ顔してやがる。

二人もそこで悔しがるなよ、ここテストに出ないから、別に重要じゃないから!!

 

私、もうこいつにキレていいと思う……

私はウカノにアイコンタクトで「こいつやっちゃっていいっすか?」と送るとウカノは首を横に振って微笑む。

こやつを許すとな……ウカノちゃんホントええ子や!!

 

 

「それではお二方、ご挨拶が終わられたのなら外に出ていてもらおうか。我らはデウス様に我々の今後の方針をお聞きしたいのだ」

「な、貴様!?」

「我らも大日如来様にお話があるのは同じこと、お主らが下がれ!!」

「ええい、貴様らが下がれ。国常立尊様にお話しするのは我らだ!!」

 

 

何なんやこいつら……勝手なこと言って勝手に喧嘩を始めたよ。

しかもそれはどんどん伝染していって、中から外までわいのわいのの大騒ぎである。

これが本当に神様か?

あまりに阿保過ぎて見ていられないと彼らから視線を外すと、チルノは唇を噛みしめてギュッと握り拳を握り締めていた。

 

 

「チルノちゃん、どうしたの?」

「ウカノ姉ぇ、あたい悔しい……千鶴姉ぇの事勝手に取り合って、勝手に変な名前付けて、ちっともお姉ちゃんの事を考えていないよ……」

「チルノちゃん……」

「分かってるよ、ここであたいが口を出すべきじゃないって。でも……あたい、我慢できない……」

 

 

ありがとうチルノ、私は……

 

 

そうしてチルノの言葉に勇気を貰った私は、彼らを止める為に口を開こうとすると、隣に座っていたルーミアが立ち上がった。

 

 

「貴殿ら、お黙りなさい!!どなたの御前にいらっしゃるのかを各々よく考えられて発言されよ!!やんごとなきこのお方がお話しされる相手を決めるのは貴殿らでは無くこの方である事を知れ!!」

「ルーミア……」

 

 

開いた口が塞がらない。

まさかルーミアが止めに入るとは思わなかった。

 

 

母さんむっちゃ嬉しいよ~。

 

 

さて私の親バカは置いといて、彼女の発言によって止まるかと思った言い争い。

しかし、静寂の後に帰ってきたのはなんと笑い声であった。

 

 

何故笑う?

 

 

「愚かな、汚らわしい闇の者が我らに意見など……身の程をわきまえよ」

「左様、主がお慈悲でお前を侍らせておったからこそ我らも黙っておったが、我ら神に意見だと?」

「了見違いも甚だしいですな」

「ああ、全くだな」

 

 

ああ、そういう事。

こいつら選民意識、高すぎなんだ。

自分らが世界で一番だと信じてやまない愚か者共。

人種で人を分けて、その人の本質を見ようとしない愚か者共。

こいつらがこの世を管理したってどうせ前の世界と変わらない結末になるだろう。

 

 

 

どいつもこいつも脳みそ腐っているのなら、いっそここでこいつらを消してしまおうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千鶴の沸点が頂点に達するかと思われたその時、隣で彼らの罵倒を反論せずに聞いていたルーミアはゆっくりと語りだす。

 

 

「確かに私は貴殿らから見れば、卑しい闇の者でしょう」

「ルーミア、一体何を……」

「申し訳ありません我が主よ、今しばし私の発言する場を……この通りです」

「!?」

 

 

私に深々と彼らと同じような礼をするルーミア。

私はそれを見て酷く心を痛める。

 

 

ルーミア、どうしてあなたが彼らと同様に私に頭を下げる必要があるか……

私を主など他人行儀で呼ばないでくれ……

 

 

一瞬、ここが公式の場である事を忘れてそんな事を考えてしまった私は、それを慌てて取り繕う様に「いいでしょう、では彼女の言を『皆、広く聞け』」と告げる。

私の言霊によって彼女の言葉はここにいる全てに聞こえるようにしたのは、私が我が子に対して出来る唯一の御膳立て。

「ありがとうございます」とルーミアは述べて、彼らに口を開いた。

 

 

 

「先ほど述べたように私は闇の者、卑しい存在である」

「普通ならば今この場にいる事も、いや、今の私もこの場にいなかっただろう」

「私は嘗て、仲間より忌み嫌われ封印され、穢れに身体を乗っ取られそうになっていた」

「しかしその様な卑しい私に手を差し伸べ、身を挺して助けてくださったのはこのお方だ」

「この方が手を差し伸べてくださらなければ、助けてくださらなければ、私は今頃穢れに落ちていただろう」

「さて貴殿らに問うが、貴殿らはこのお方の様に下の者を一度でも顧みた事はあったか?」

「救いの手を一度でも差し伸べた事があったか?」

「膝を汚して他の者を心配した事があったか?」

「自らの視線を下げてまで他の者と話をする事があったか?」

 

 

 

「神とは、仏とは、上だ下だと人を比べるものでなく、傲慢で自分勝手に威張るのもでも無く、かくあるべきではないのか?」

 

 

 

彼女の、ルーミアのその言葉に誰もが押し黙る。

そんな中、彼らの中から一人の声が上がる。

 

 

「しゅ、主よ!!お初にお目にかかりますれば、どうか矮小な私めにどうか発言の場をお与えください」

「ば、馬鹿者、主の御前であるぞ、控えろ月夜見!!」

「し、しかし伊弉諾様、私は……」

 

 

日本人っぽい人、伊弉諾から月夜見と呼ばれた白髪の少女が私に発言を求める様を見、私は彼女にそれを許す。

と言うか伊弉諾さんや、さっきまで私の前で言い争っていたのは何処の誰かをその口で言ってみやがれよ……

 

 

「まずはルーミア様、先ほどの御言葉、この月夜見、深く心に入り込む素晴らしい言であると同時に私の失言を深く、ただ深く恥じる次第であります。本当に申し訳ありませんでした」

 

 

月夜見は頭を深く、それこそ額を床に擦りつける程に頭を下げる。

それを見たルーミアは慌てて彼女に頭を上げるように催促するが、「それでは私の気が済みませぬ、どうかこのままで」と譲らないのを見て、私は「お前様は床とお喋りするつもりなのか」と問うと、「あっ」と何とも抜けた声をあげて面を上げる。

そうして初めて彼女の顔を見る事が出来た訳だが、いやはや何とも可愛らしい子やな。

顔を真っ赤にしている為、その陶磁器の様な白い肌がより強調され、顔のパーツ一つ一つが芸術品の様で、普段なら賛辞の一つでも送るところだ。

まあ、うちのルーミアの方がもっと可愛いけどね!!(親バカ

 

 

「主よ、我らはこの世に産まれたばかりのまだ赤子なので御座います」

「ふむ?」

「突然この世に産まれ落とされた我らは右も左も分かりません、価値観も道徳も分かりません、この身に宿した神力の使い方も分かりません、幻想郷にあらせられる主や倉稲魂命様に比べたら塵芥の様なものであります」

「……」

「我らは訳も分からずに立ち尽くすしかなく、互いに身を寄せ合い、穢れに怯えて過ごす毎日を送っていました」

 

 

そんなある日でした、私たちはこの大地より天啓を授かったのです。

『東にある幻想郷を目指せ、さすればそなたたちの未来は明るし』と。

私たちは声に従いここまでくれば、何人たりとも侵入を許さない結界がありました。

押せども引けども開かないその結界。

我らが右往左往している間に、一人また一人と結界に集まっていきます。

そこで私は考えました。

「ここにいる皆が力を合わせて結界にヒビを入れる事が出来たら、もしかすると主に我らの存在を知らせる事が出来るのでは」と。

「ヒビを入れる」それだけなのに、全員で掛かってもとても大変な事でした。

そうして漸く主とお会いする事が叶ったのですが、そこでも私は色々な事に驚きました。

小さなものが我らを案内したり、実をつける植物を栽培したり、綺麗に整えられた石を使った階段に広間、そして壮大な神殿。

私はそうして思ったのです。

ああ、我らは本当に無知なのだと。

 

 

「主よ、どうか無知な我らをお導きください、広く門戸を開いて我らに知識をお与えください、道徳をお与えください、力の使い方をお教えください」

 

 

私は月夜見の言葉を聴き、怒りの溜飲が下がる。

赤子に怒ってどうするか。

今この場で本物の愚か者はどちらか明白だろう。

こんな年になってまで赤子に怒るとは、私も阿呆だ。

 

 

「分かりました。しかとその願い、聞き届けました」

 

 

私は静かに頷く

自らの過ちを棚に上げて

 

 

片やそれを聞いた月夜見、私の心境など分かる筈も無く、感謝を述べる。

私はそれを心苦しく思いながらも受ける。

 

 

「つきましては、手始めに我らの主の神名を統合し、混乱を防ぐことから始めましょう」

「ふむ、確かにそなたの言う通りである」

 

 

確かにばらばらな神名で呼ばれるより、一つの神名を名乗って意識統合させた方がいい。

私は月夜見の言葉を是とし、早速彼らに私の神名を募る。

 

 

「デウスがよいと」

「大日如来がよろしいかと」

「国常立尊が良いでしょう」

「「「ぐぬぬっ!!」」」

 

 

あんたらに期待した私が馬鹿だったよ。

 

 

「しゅ、主よ」

「どうしたのですか月夜見?」

 

 

もごもごと口籠る月夜見。

さっきまでの堂々さは何処へやらである。

仕方なく私が「構うことは無いからはっきり述べてみよ」と言うと、月夜見も決心したのか、口を開いた。

 

 

「恐れながら、『天照大御神』が宜しいかと」

「して、その心は?」

「はい、『天より遍くこの世を照らす神』で御座います」

 

 

(あま)(あまね)くを掛けたのか、成程ね……

 

 

「月夜見よ、感謝する」

「へっ!?」

「それでは皆の者、『我が言を広く聞け』!!」

 

 

私は立ち上がり、一歩前へ

言霊を使って声を広く届かせる

 

 

まさか自分の考えた神名が採用されるとは思っていなかったのか、月夜見は呆けた顔をして私を見上げている。

私もまさか、かの有名な神の名を名乗る日が来るとは思っていなかったよ。

 

 

「我が神名はこれより『天照大御神』である。以後そのように呼ぶ事を、皆心得るように」

 

 

私の言を聞いた神々は深々と首を垂れ、平伏する。

ちゃんと遍く声が届いたのを確認した私は、今度はウカノたちに振り返る。

 

 

「申し訳ありませんが、倉稲魂命、池留荷命、ルーミア……お手数ですが私の補佐をしてはくれませんか?流石にこの人数に教育となると、どうしても手が足りなくなりますので」

「無論よ、母さんの為なら火の中、水の中、どんな所でもついていくわ」

 

 

ありがとうルーミア

貴女の様な娘を持てて私は果報者よ

 

 

「当然じゃないですか。だって私たち、お友達じゃないですか」

 

 

ありがとうウカノ

貴女の様な友達を持てて私は嬉しいわ

 

 

「千鶴姉ぇばかりに苦労はかけさせないよ、あたいに任せて大船に乗ったつもりでいてね」

 

 

ありがとうチルノ

貴女の様な妹みたいな友達に出会えた事は私には過ぎた僥倖よ

 

 

 

 

 

 

 

私は再び平伏している彼らに向かい合う。

そして私は柏手一つ。

 

 

「それでは皆さん」

 

 

それによって彼らの注目が私に集まり、私の発言を待っているのが分かる。

改めて思う、とんでもない事を引き受けたものだと。

神様の教育?

やってやろうじゃないの!!

私は彼らに言い放つ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お勉強の時間ですよ?」と。

 




ども、bootyです。

今回はウカノ達以外の神々との邂逅でしたがいかがでしたでしょうか?
後半の方は敬語の多様を強いられた訳ですが、一般的な小説では敬語の使用は敬遠されているようです。
書いていてその理由はよくよく分かりました。
敬語が正しく使われているのか、そこら辺が本当に不安です!!


さて、今回もこのあとがきでは思いついた順で、本編の補足説明をしていきたいと思っています。その為、本編の流れとは順番がおかしくなっている事をお許しください。


本編補足
・千鶴とウカノの勘違い

千鶴:「こいつやっちゃっていいですか」とアイコンタクト

ウカノ:ルーミアちゃん無視されて怒っているのかな、でもこの場で怒るのは良くないよ(首を横に振る)、だけど後でならいいと思うよ(笑顔)?

千鶴:ウカノちゃんマジ天使!!



・月夜見の口籠り

もしも、私の言った神名に決まったらどうしよ~!!



・大地からの天啓

無論地球の事です。
この小説において地球には少なからず意思がある設定になっています。
そして地球は前回の人類の失敗を知っている千鶴を使って神々の教育をさせ、同じ過ちが起きないようにしようとたくらんでいます。



・幻想郷について

現在の地上において、妖精が多く生存しているのは千鶴の周りだけ、その事を知っている地球はその様を幻想の如しと感じたそうです。
(ちょっと無理やりすぎますね……)



・⑨について

チルノはこの小説においてはバカではありません!!



以上になります。
それでは皆さんまたの日のあとがきで……
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