モモンガさんはナザリックでスローライフをおくるようです 作:名無しちゃん
「……ちょっと外に行きたいんだけど……」
俺の何気ない一言が全ての始まりだった。
「それならばわたくしが御供致します」
アルベドが背中の羽根を小刻みに羽ばたきながら答えた。
「モモンガ様。それは執事たる私めの役目。どうぞお連れ下さいませ」
優雅に45度のお辞儀をしながらセバスが答える。
「セバス、モモンガ様のお供ならこのわたくし、守護者統轄のアルベドにまかせるべきだわ。守護者統轄としての大切な役割を貴方は理解しているのかしら?」
「アルベド様、モモンガ様の側回りこそ執事の勤めで御座います。守護者統轄殿はモモンガ様の留守中を守る事こそが肝要なのではございませんか?」
アルベドとセバスがにらみ合いを始める。
「わかった。わかったから。二人とも俺に着いてきてかまわないから……」
「「はっ──」」
俺はやれやれといった風で首をすくめてみせる。
「……うん? ここが第八階層か……次は第七階層……うわ! 暑いなここ……いや……暑くはないが熱そうな場所だな」
第七階層──〈溶岩〉──見るからに熱そうな辺り一面熱気で被われている。正直な所、身の危険すら感じる。
「これはモモンガ様。我が階層にようこそおいでくださいました」
恭しく長身の男がお辞儀をする。彼は階層守護者のデミウルゴスである。
「ああ、デミウルゴスだったな。ちょっと外に行こうと思ってね」
俺の言葉にデミウルゴスの目が光る。
「なるほどなるほど。お出かけでしたか。それでは私もご一緒いたしましょう」
かくして一行にデミウルゴスも加わる事になった。
「うわ! 外か?」
第六階層まで登って来ると青空が広がっていた。辺り一面は青々とした植物が広がっていた。
しかし、これらはあくまでも地下の空間なのだという。凄いな。ナザリック。凄いぞ。アインズ・ウール・ゴウン。
キョロキョロしながら歩いていると、目の前に二つの小柄な人影が立ちふさがった。第六第五階層の守護者のアウラとマーレの姉弟である。
「みんなして何処に行くのかな? ねえ、モモンガ様。あたしもご一緒しても良いですか?」
「……モモンガ様、あの、僕もご一緒したいです」
小さな身体をせいいっぱい大きく見せるかのように胸をそらす姉と、とても男の子には見えない愛くるしい瞳で上目使いで見上げる弟──これを断れる人間が存在しようか? ──そう思った俺はなにか言いたそうにしていたアルベドを制して力強く頷く。
「よし。一緒に行こう」
二人は仔犬のように瞳をキラキラさせて俺にまとわりつく。うん。可愛いは正義だ。
さらに第五階層を過ぎて階段を登っていく。それぞれ次の階段まではフロアをよぎらなくてはならない為、結構時間がかかる。ゲート等といった転移系の魔法を使えばすぐに目的の階層に行けるそうだがノンビリといくのも悪くない。
なにしろ俺にとってはここは初めての場所だ。こうしていろいろ説明を聞きながら、ナザリック地下大墳墓を眺めるのも大切な事だ。
「……寒っ……」
第五階層は辺り一面氷原だった。思わず身を屈めてしまったが、実は寒くはない。寒そうな景色に思わず「寒っ」と言ってしまっただけだ。
アンデッドの最高位であるオーバーロードは寒さに対しての耐性があり、かつ、装備やスキルから完全耐性を得てしまっているらしい。
と、白無垢の女性達と青白い異形の巨漢がひざまづいた。
「……モモンガサマ。ドウゾ私モオ連レクダサイ」
うん。あれだ。桃太郎だな。これは。 吉備団子はないけれど……
第四階層を抜けて第三階層にやって来た。うん。予想はしていた。
「モモンガ様。妾もお供せんとお待ちしていたでありんす」
第三階層守護者のシャルティアが配下の女性を従えて待ち受けていた。
「仕方ないよね。一緒に行こう」
気色ばむ若干一名の守護者統轄をなだめながらシャルティアを合流させる。なんだか凄い人数になってしまった。おそらく敗因はアルベドとセバスの二人を伴にした事だろう。
次があれば気をつけよう。
そういえばシャルティアって……まだ少女だけど凄い巨乳だよな……いやいや、別にスケベ心とかそういうのではなくて単なる知的好奇心ってやつで……
ふと、横でパラソルを差しながらすまして歩くシャルティアを盗み見る。ちなみに反対側にはアルベドがいる。
「……?」
シャルティアの巨乳の位置が……
「──あ……」
ふと周りの雰囲気が変わってきた。第二階層から第一階層になると冷ややかでジメジメした薄暗い空間となる。壁は古びた石を積んだもので、あちこちに石棺が……そうだよな。ここってナザリック『地下大墳墓』、つまり墓だもんな。今まで忘れていた。
石棺の中には蓋がずれて中が少し見えるのがあるので、とっさに視線をそらす。
やがて見事な彫刻で飾られた巨大な門にやって来た。
門は静かにゆっくりと開いていき──
──外は満天の星空だった。
俺はしばらく立ち尽くしていた。星は手を伸ばせば届くかのように近くに見えた。
「…………まるで宝石箱のようだ……」
そういえばボンヤリとした記憶ではいつも曇り空ばかり見ていた記憶がある。
「……モモンガ様。お望みならばこの世界をモモンガ達にお届けいたしましょう」
デミウルゴスが優雅に一礼しながら答える。
「……いや、星はこうして見上げているから美しいんだよ。俺は眺めるだけで充分だな」
墳墓の周りは一面の草原だった。一歩足を踏み出そうとするとアルベドが制止した。
「モモンガ様、お待ちください。ここは沼地だったはずですが、いつの間にか草原に変わっています。まずは周辺を調査して安全を確保するべきでございます。それまで御身をさらすような事はされないようにお願いいたします」
アルベドが余りにも真剣な表情なので思わず頷いてしまう。結局アウラとマーレがシモベの魔獣と共に調査する事になり、俺はまたしてもナザリックに戻る事になった。
今度は守護者に会わないようにコッソリ出かける事にしよう、そう決意するのだった。
モモンガ「……ふう。どうにか守護者の目をすり抜けて外に出られそうだ……」
目の前に巨大な門が見える。と、何やら歪んだ空間が……
ユリ「モモンガ様。地上に行かれるならば私達、プレアデスと──」
ユリ達戦闘メイドの後ろにずらりとメイドが並ぶ。
ユリ「──一般メイド全員をお連れ下さい」
モモンガ「……」