モモンガさんはナザリックでスローライフをおくるようです 作:名無しちゃん
「……これはすごいな。よく今まで誰にも発見されなかったものだ」
リ・エスティーゼ王国のアダマンタイト級冒険者チーム『蒼の薔薇』リーダーのラキュースはため息をついた。
「……規模といい、これらの装飾の見事さといい……まさに神話級の遺跡だな……」
怪しげな仮面の小柄な
「イビルアイがそんな反応するなんて余程の事ね。みんな注意して。中にどんな化け物がいるかわからないわ」
ラキュースは静かに腰の魔剣キリネイラムを抜き、構える。
彼女達が未知の墳墓の調査に来たのは表向き冒険者ギルドの依頼となっているが、実際にはラキュースの友人でもある第三王女ラナーからのたっての依頼によるものだった。
「準備はいい? ……では開ける」
墳墓の入り口とおぼしき巨大な門の前に立つ双子の忍びの手が環にかけられる。
「──そういや……あの儀典官殿には参ったもんだな……」
「──馬鹿!」
空気を読まないガガーランの呑気な一言にその場の空気が一変した。
「………………」
その場の空気が凍りつく。魔剣キリネイラムを持つラキュースの手がカタカタと震え始めた。
「──落ち着け! ラキュースッ!」
「ヤバイ……鬼ボス爆発……」
「逃げた方が良さそう……」
すぐさま踵を返そうとする双子をしかりつけ、咄嗟に四人がかりで暴走しかけたラキュースを押さえ込むのだった。
◆
「……ひでぇめにあったぜ……」
他人事のようにぼやくガガーランに眉をひそめながらイビルアイはため息をついた。
「……全く困ったものだな……」
王女ラナーからの依頼を受けたさいのラナーの最後の呟きが今更ながら思い返される。
『……儀典官のアルチェル……問題を起こさなければ良いのだけれど……』
ラナーの心配はすぐに現実のものとなる。初顔合わせの時に事件は起きた。
『ほう。貴様達がアダマンタイト級冒険者チーム『蒼の薔薇』か。ふむ。なかなかの美女揃いではないか。よかろう。貴様に今宵の伽をゆるす。感謝せよ』
高慢そうな痩せた貴族、アルチェル・ニズン・エイク・フォンドールがよりによってラキュースに向けた言葉が最悪なものだった。
『……ブツン!』
イビルアイはその時、確かにラキュースの堪忍袋が切れる音を聞いた。
結局、儀典官のアルチェルはす巻きにされて馬車の中に放り込まれ、現在に至る。
「……まったく……冗談じゃないわ。あんな人物を同行させるなんて……まあ、貴族派の連中の考えそうな事ではあるんだけれど……」
ラキュースもため息をつく。いくらか冷静さを取り戻してきたようだ。
「……問題はこの墳墓に所有者または管理者がいる場合だ……」
イビルアイは続けた。
「王命を受けた任命者は儀典官、つまりアルチェル殿となる。……しかし、まともな交渉が行えるとは到底思えないな」
「そうか? それなら、アイツをその辺に捨てていけばよいだろ? ラキュースだって貴族なんだから問題ないだろ?」
ガガーランの言葉にイビルアイは苛立たしさをかくさず反論した。
「だから考えなし、というのだ。確かにラキュースの実家のアインドラ家は貴族ではある。だが、アルチェルは六大貴族の筆頭であるボウロロープ候の息がかかっている人物だ。下手に排斥すればランポッサ王の立場を悪くしかねない」
結局、よい考えは浮かばず改めて墳墓の探索を優先する事になった。
◆
『蒼の薔薇』は地下墳墓の第二階層までやってきた。と、それまでのスケルトン等のモンスターとは明らかに難度が異なる存在が現れた。
「──な、なにもの! くッ! ティナ、ティア、気を付けてッ!」
「──不味いぞ! おそらく私でも勝てないかもしれないッ!」
「参ったぜ。とにかく逃げるにしても時間を稼がないとな」
ティアとティナは敵に対して先制攻撃をするがことごとく弾かれてしまい愕然とする。
「……ヤバイ……まじでヤバイ……」
「……もう遅い……逃げられない」
漆黒のボウルガウンに身を包んだ
「あっはっははは。久しぶりの客でありんして、充分にもてなしてしんしょう! あっはっははははは……」
◆
モモンガはシャルティアに呼ばれて第二階層の屍蝋玄室にやってきた。
(シャルティアは異形種動物園に相応しいものを手に入れたという話だったけど……楽しみだな)
屍蝋玄室に入ると、早速シャルティアが新たに手に入れた『彼女達』をお披露目する。
「モモンガ様。この者達は『猫人』でありんす。是非とも異形種動物園に加えて欲しいでありんす」
モモンガは猫耳と尻尾を付けて露出の高い衣装を着せられた『蒼の薔薇』の面々を前に、思わず言葉を失うのだった。
◆
ようやくにして我にかえった俺は冷静になろうと努力する。うん。頑張れ、俺。
「……えーと……君達は……?」
「……ラキュにゃん……です……ニャン」
「……イビルにゃん……」
「……ティアにゃんだニャン」
「……ティナにゃん」
「……ガガーにゃんだ」
うら若き乙女四人とゴッツイのが恥ずかしそうに答えた。俺の視線はついつい尻尾にいってしまう。
生えているのか? やっぱり生えているのか? …………ゴホン。
「……あのう、シャルティアさん。この方たちはどういった経緯で?」
恐る恐る尋ねるとシャルティアは目を輝かせて答えた。
「モモンガ様。この者達はあろうことかナザリック地下大墳墓に侵入してきた不届き者達でありんす。本来ならばすぐにも殺すか
……うわ。思わずひいてしまった。だが、シャルティアは得意そうに胸をはる。この娘、あどけない顔して巨乳なんだよな。
「……そ、そうか。ご苦労様。……ちなみに調教って……?」
シャルティアの瞳が妖艶に光る。
「……それはもう……あんな事や、こんな事を……」
「……アンナコト、ヤ、コンナコト……ゴクリ」
ふと猫人──猫耳尻尾娘達がシャルティアを熱のこもった視線で見つめているのに気がついた。
「……あー、シャルティアさん。その、なんだ。彼女達はシャルティア、貴女が責任もって飼うように。ちゃんと餌も与えるんですよ?」
とりあえずこの問題はこれで解決した事にしよう。うん。
アルチェル「………ムガムガ……ムガー!」