モモンガさんはナザリックでスローライフをおくるようです   作:名無しちゃん

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モモンガさん、名付ける

 太陽が燦々と照りつけるトブの大森林で、俺は黙々と汗を流して働いていた。正確にはアンデッドだから汗をかかないのだが……

 

 俺が運んでいるのは魔獣の糞や 野菜屑等がたくさん入った桶である。

 

 そう。俺が今、挑戦しているのは有機肥料作りである。

 

「……モモンガ様、本当にこんなもので宜しいのですか?」

 

 副料理長は申し訳なさそうに野菜の屑を桶に入れる。階層守護者達は配下のシモベに運ばさせようと言ってきたが、断った。

 

 自分自身、あまりにも暇だったから、というのもあるがこうして太陽の下で働くのがとても気持ちが良かったからだ。記憶はまだ戻らないが、なんとなく太陽の光が差さないあまり良くない環境で生活していたような気がする。だからこそのんびりと野良仕事をするのも楽しいのだ。

 

「モモンガ様ぁ!」

 

 双子のダークエルフがシモベの魔獣に乗ってやって来た。

 

「モモンガ様は肥料作りですか? マーレはドルイドなので魔法で肥沃な土地にさせましょうか?」

 

 アウラが提案してきた。

 

「うーん。そうだね。いつかは頼むかもしれないけど、今はいいや。ゴメンね」

 

「……モモンガ様、そんな、あの、もったいないです」

 

 マーレが慌ててみせる。

 

「所でどうして此処で肥料を作るんですか?」

 

「……えーと、それはね……」

 

 俺は二人に説明する。トブの大森林一帯を異形種動物園にするにあたりそこで暮らす住人の食料になる果樹園や畑を作るつもりだ、とね。

 

 二人も協力を申し出てくれた。

 

 もう少しイメージが固まってきたら彼女達に任せてしまっても良いかもしれない。

 

「あ、そうだ。モモンガ様、あたし達、ちょっと変わった樹木のモンスターを見つけたんですけど、見ます?」

 

 俺は早速双子の案内でトブの大森林の奥に向かった。

 

 

 

「……スゴいな。大きい……」

 

 それは巨大な樹木のモンスターだった。いわゆるレイドボスとかいう類いみたいだった。

 

 従わせるのが少し手間がかかったが、アウラとマーレの働きもあって、なんとか手なづける事が出来た。

 

「……結構大変でしたねモモンガ様」

 

「……ぼ、僕も頑張りました」

 

 二人の頭を撫でてやると嬉しそうな顔になった。あ、そうそう。俺のパッシブスキルの死のオーラや触れるだけでダメージを与えるやつとかは最近になってようやくオンオフが出来るようになった。

 

「それでモモンガ様。このモンスターの名前、どうします?」

 

 俺の脳裏にある光景が浮かぶ。真っ直ぐ続くハイウェイ。広大な地平線。何もない世界。そんな中にポツンと立つ巨大な木。その一本は旅人にとって道しるべであり、また、その木で立ち止まり──

 

 

 

 

 今日も大樹に水と肥料をやりに行く。自らが名付け親となったからか、なついてきたようだ。

 

〈モモンガ様。あたしです。アウラです。そちらに数名の怪しげな人間が向かっています。たいした強さではありませんが、念のためお気をつけ下さい。あたしもすぐに向かいます〉

 

 アウラからの伝言(メッセージ)からしばらくすると六人程の人間が気配を殺しながら近づいて来た。

 

「……ぬう。やはり破滅の竜王(カタストロフィードラゴンロード)は復活しておったようじゃな。それにあのアンデッド……恐ろしい強さのようじゃが……」

 

 俺は思わず目をそらす。老婆が年甲斐もなく大きなスリットがはいったチャイナドレスを着ていたからだ。萎びた大根を思いださせるその足はグロテスクだった。

 

「──使え!」

 

「──どちらじゃ? 脅威となりそうなアンデッドに、じゃな?」

 

 老婆が粗末な槍を持った男とのやり取りの後、前に出た。

 

 ──と、次の瞬間──

 

「うお! まぶしッ!」

 

 老婆のチャイナドレスの龍の模様が光った。と、その光を反射するかのように俺の肋骨内部に収まっていた赤い玉が光る。

 

 気がつくと老婆が倒れ、男達は慌ただしくしていた。

 

「──いかん。撤退するッ!」

 

 動かない老婆を残して男達は去っていった。

 

 

「モモンガ様。大丈夫でしたか?」

 

 男達と入れ替わるようにしてアウラがマーレと共にやって来た。

 

「……ああ。大丈夫だ。この老婆の服はどうやらマジックアイテムのようだから脱がしてしまおう。老婆はトブの大森林の外に捨てにいってくれ」

 

 アウラはてきぱきと服を剥ぎ取る。そしてシモベの魔獣を呼ぶと裸で気を失ったままの老婆を乗せ、捨てに行かせた。

 

「──さっきのは何だったんですかね?」

 

 アウラが首を傾げる。

 

「きっとあれだ──」

 

 俺はとびきりの笑顔で答えた。

 

「『たちしょんの木』って名付けたから立ちションしにきたんだろうね」

 

 

 

 そして今日も日課となっている『たちしょんの木』への水やりと肥料まきをする。残念ながら俺にはアレがないので立ちションは出来ないが。それだけはちょっとばかり残念だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 漆黒聖典隊長はひたすら逃げ続けていた。ただひたすらと。

 

 あのアンデッドはヤバイ──そう本能が告げていた。

 

 神人の血をひく彼もスレイン法国では上位に位置する実力者ではあった。

 

 だが、あのアンデッドは別格だった。次元の異なる恐怖を与える存在だった。

 

 トブの大森林をひたすら逃げ続ける彼の前に忽然と馬車があらわれた。魔獣に襲われたのか逃げ出したのか、馬の姿はない。

 

 彼は残念に思いながら馬車の中を覗いてみた。

 

 中には猿轡をされ、ロープでぐるぐる巻きに縛られた骨と皮のように痩せこけた身なりの良さそうな男が力なく呻いているのだった。




ピニスン「ねえねえ、聞いてー。その魔樹はねぇ、ザイトルなんとかって名前なんだってばぁー。そんなオシッコの木じゃ駄目だよぉー」
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