ロウきゅーぶ 下級生あふたー!   作:赤眼兎

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遅くなった割に3000字程度なんでかなり短めです。。。

仕事の合間を縫って執筆しているのですが、今週ちょっと忙しかったです。


■第十二話 すばらしき腐れ縁2

「見たかよ、今のカーライルのフェイクからのレイアップ! やっぱフォワードたるものどんな状況からでもシュート決められるようになりたいもんだよな、真帆!?」

 

「そうだなー」

 

 俺の問いに対し、真帆は興味なさそうに自分のケータイを弄りながらそう返答した。

 

「くっ……………………。ちょ、直前のカリーのアシストも見事だったよな! やっぱポイントガードとしてはあーいう一瞬のスキを突いたパスにあこがれるよな、紗季!?」

 

「そうねー」

 

 紗季は行儀よく黙々と弁当を食べつつ、どうでもよさそうにそう呟いた。

 

 

 

 ——四時間目が終了し、迎えた昼休み。

 

 

 

いつものように真帆と紗季と机を囲んで昼食を取り始めたのだが、そこにはなぜか全く会話はなかった。いつもならやれゲームの話だの、バスケの話だの、勉強の話だの、おすすめの本の話だの話題は尽きないのだが、今日はなぜか二人とも一言も言葉を発さず黙々と食事をし続けていた。

 

流石に気まずすぎる、と思った俺はケータイを取り出し、一緒に見ようと思って用意してきたNBAの試合の動画(いつもは食後に見ている)を流し始めたのだが、結果は御覧のあり様だった。

 

 十中八九、こうなった原因は先ほど教室に乱入してきたミミの爆弾発言が原因なのだろう。俺としては、てっきり昼休み開始と同時に質問攻めをされると思っていたのだが、結局二人は押し黙ったまま特に何も言わなかった。そのうち聞かれるのか? とも思い様子をうかがっていたのだが、一向に質問が飛んでくる気配は無い。ただ態度でビンビンに圧は感じるのでタチが悪い。ってか、こうなると今更俺からはスゲー切り出しにくくて仕方がない。

 

 額に脂汗を浮かべながら、俺は弁当箱の中の玉子焼きに箸を伸ばし、口に放り込む。………ちなみに、ミミの作った弁当は少し普段より味付けが濃い感じがしたものの、普通に美味かった。というか、濃い味付けの方が好みな俺としては、下手したら普段より美味く感じるまである。………こういうとこ、案外器用なのな、あいつ。

 

 そう思い、俺がふっと口元を緩めると、急に紗季が鋭い視線を向けてきた。な、なんだよ………。

 

「そのお弁当………」

 

「お、おう………」

 

「おいしい?」

 

「お、おう………ちょっと濃いけど、まあ割と好きな味だな」

 

「ふーん………………………………」

 

 それだけ言うと紗季は再び自分の弁当箱に視線を向け、食事を再開した。

こ、怖え………なんだったんだ今の。

 

 紗季から顔を逸らし、再び弁当に舌鼓を打つ。ふと視線を感じ、顔を上げると、今度は真帆がこちらをじーっと見ていることに気付く。よく見ると俺の顔でなく俺の弁当箱をじっと見ていた。

 

「とりゃ」

 

「あ、おいこら!」

 

 真帆は俺の弁当箱に箸を伸ばし、残っていた最後の玉子焼きを摘まむと、俺の制止も聞かずそのまま口に運んだ。こ、こいつ………!

 

「もぐもぐ……………。お、普通においしい」

 

「くっ………………。さ、紗季! なあコイツ人の弁当箱に勝手に箸突っ込みやがったぞ! 行儀悪くね?」

 

「ごめん、見てなかったわ」

 

 紗季はそう言ってシレっとした顔で黙々と自分の弁当を食べ続けた。いつもなら目ざとく見つけて口うるさく行儀がどうの言ってくるくせに………!

 

「だ、大体なんなんだよお前ら、さっきから変な態度ばっか取りやがって!! ………は、ははーん、分かったぞ。もしかしてお前ら拗ねてるんだろ! 俺がミミに取られんのが嫌だから、そんなそっけない態度取ってるんだろ!」

 

 そう、ヤケクソ気味にやや挑発するように言い放つと真帆と紗季はきょとんとした表情で顔を見合わせた。そして俺の方に向き直り口を揃えて言葉を発した。

 

 

 

「「ナツヒ(夏陽)に彼女ができるのが単純に生意気でムカつくだけだ(よ)」」

 

 

 

「お前ら最悪だな!!」

 

 要するに単なる俺に対する妬みが原因らしかった。気を使って損したわ!

 

「てかナツヒ、ひなはどーすんだよひなは。まさか相手にされねーからってあっさり乗り換えたのかよー」

 

「多分、お人形さんみたいな見た目なら誰でもよかったのよ。最低ね」

 

「人聞き悪りーこと言ってんじゃねーよ! ってか、勝手に憶測で話進めんな。別にホントにミミと付き合ってるわけじゃねーよ……。これには事情があるんだっつーの!」

 

「「事情……?」」

 

 訝し気に俺を見る真帆と紗季に、俺は簡単にこれまでのいきさつを説明した。

 

 ミミがフランスへ帰ることになったこと。

 俺がそれを止めるため竹中家へのホームステイを勧めたこと。

 母さんを納得するためミミが俺のガールフレンドであると嘘をついたこと。

 

 ………………半ば勢いで事情を説明した後で、ミミに断らず勝手に話してよかったのだろうか、という不安が浮かんだ。まあでも遅かれ早かれ露呈するし、真帆はともかく先には心配を掛けていたから、早めに伝えておいた方が良いよな……。

 

 俺の説明を聞いて、真帆は納得したような顔を浮かべて、

 

「なるほどなー、そういうことだったのか。ミミミミがフランスに帰らずに済んでよかったな!」

 

「………ま、誤解が解けたみたいでよかったわ」

 

「よく考えたらミミミミとナツヒってどう考えても釣り合ってねーもんな! そこでまず違和感に気が付くべきだったか………」

 

 ほっとけ。

 

 納得した様子の真帆とは対照的に、紗季はやや申し訳なさそうな表情を浮かべていた。

 

「………なるほどね、夏陽なりに私のお願いをちゃんと聞いていてくれたのね。ありがと」

 

「………ま、お前には普段世話になってるしな。ミミに帰られるのは俺としても困るし、感謝される筋合いねーよ」

 

「それでも、ありがと。………なのに、茶化すようなこと言っちゃって悪かったわね」

 

 ………………………………………………。

 

 こういうとこ律儀だよな、こいつ。

 

「………別に、お前らが俺のこと茶化すなんていつものことだろ。今更気になりゃしねーよ」

 

「う………………あ、あたしも、ごめん。後ありがと、ミミミミのこと引き止めてくれて」

 

 紗季に倣って、真帆もバツが悪そうな表情を浮かべて俺に謝って来た。

 

「い、いやだからもういいって言ってんだろ。お前らがそんなだと俺も調子狂うっつーの!!」

 

 俺は気まずさから顔を背けた。揶揄われるのも面倒くさいが、急にしおらしくなられるのもそれはそれで面倒くさい。こちらはどういう態度をとったらいいのかわからなくなってしまう。

 

「おら、もうその話はやめにして、いつもみてーにバスケの動画でもみよーぜ! せっかく家でダウンロードしてきたんだからさ」

 

俺がそう言って真帆と紗季を促すと、二人は顔を見合わせて嬉しそうにクスクスと笑った。な、なんだよ………!

 

「ま、その方があたしたちらしいしな!」

 

「そうね、いつもみたいに夏陽先生に色々バスケのこと教えてもらいましょうか」

 

「………最近はもう俺が一方的に教えるって感じでもねーだろ」

 

 俺は気恥ずかしさからそう言って、再生ボタンを押した。先ほど途中で中断したNBAの試合の続きが流れる。人をあっと言わせるようなプレーの数々に、俺も真帆も紗季も同じバスケプレーヤーとして心を躍らせる。

 

 

 ………低学年のころからずっと一緒に遊んできたこいつらと、今こうして同じスポーツで盛り上がることのできるこの時間は、悪くねーな、と思う。口に出したらぜってーからかわれそうだけどな。

 




割と前から考えていた下りなのですが、しょっちゅう筆止まってしまった。。
その場で考えた展開とかの方がすらすらと書ける気がするのは何故なんですかね。。。

なるはやで次投稿します。

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