ロウきゅーぶ 下級生あふたー!   作:赤眼兎

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微妙に落ち着かなかったので二話目さっさと投稿しちゃいました。
書き溜めが減ってくのは後がなくなってきている感あって怖いですね……

ロウきゅーぶの二次創作って今もうあんま需要無いのかなーとか思いつつ、半分以上自己満で書いてしまっています。


■第二話 ワタシほこりたかきフランス人

「………………むー、ナットクいかん、デス」

 

 放課後の体育館内。

 バスケットゴールの真下に大の字に倒れ、ミミ・バルゲリーは不満げに呟いた。

 

 現在の時刻は十五時二十分過ぎ。六時間目の終了時刻が十五時丁度、放課後の部活が始まるのが通常、十五時半からなので、授業が終わってから部活が始まるまでは三十分程度空き時間が存在する。

 

 四月に部が新しくスタートを切って以来、その三十分の時間を使って俺とミミは三本先取の1on1の試合を毎回行っていた。

 

 本日の結果は俺の勝利。ミミが不服そうなのはそれが理由だ。スコアは六対四なので別に完敗というわけではないのだが、それでも悔しいものは悔しいようだ。

 

「二月くらいマデは毎回ワタシが勝っていたハズ。その時は、男バスのエースと言ってもショセンワタシにかかればこのテイド……と勝利のヨインに浸っていたというのに」

 

「おい」

 

「それなのに今となっては五分五分、イエ、前回もワタシの負けだったので寧ろ若干ワタシが負けているように思いマス……もしかしてワタシ、弱くなってる……?」

 

 そう言ってミミは愕然とした様子で自身の両手のひらを広げてワナワナと震わせた。ショック受けすぎだろ。

 

「ちげーっての。お前が弱くなったんじゃなくて、俺が強くなったんだっつーの。……ま、俺もいつまでたっても年下の女子に負けてらんねーってこった」

 

 そう言って余裕の表情で笑ってみせると、ミミはその碧い瞳に悔し気な色を滲ませた。最初はポーカーフェイスで何考えているか分かんねーやつだと思っていたけど、慣れてくるにつれ表情を読めるようになった気がする。てか、寧ろコイツは感情表現が豊かな方なのでは、とすら思えてくる。

 

「ていうか、いい加減やめようぜ、この対決。練習前のウォーミングアップでいきなり全力1on1はどう考えても飛ばしすぎだろ。怪我したらどうすんだよ」

 

「ム、ワタシに言わせればタケナカとの1on1などショセン準備運動に過ぎまセン。バンメシ後デス」

 

 負けた奴の言うセリフじゃねーからな、それ。色々間違ってるし。

 

 

 ———とはいえ、言うだけあってミミの実力が確かなのは事実だった。

 

 

 元々フランスのクラブチームに所属していて幼いころからバスケの練習に励んでいただけあって、現女バスの中で圧倒的に1番上手いのはコイツだ。

 

 去年の六年生———つまり俺と同学年でミミの一つ上の代で一番強かった湊智花と殆ど互角の勝負を繰り広げていたいのを覚えている。その湊は全国でも有数の選手であることは間違いないので、去年の時点で渡り合えていたミミの実力は確かだった。

 

 実際俺も最初は全く歯が立たなかった。それが何とか今現在勝ち越せているのは、色々あって必死こいて練習しまくったのと、ミミのオフェンスに俺の目が慣れてきたことが大きい。

 

 ミミの一番の強みは、筋金入りのポーカーフェイスから繰り出される初動の見えないジャブステップ———つまり足踏みフェイントなのだが、言ってしまえば慣れによって初動を見切れるようになればその強みの大部分を無効化できてしまう、というわけだ。

 

 まあ要するに、俺が今ミミに勝てているのは、実力向上の面ももちろんあるのだが慣れによる部分が大きいため、単純な1on1の性能で言えば今でもミミの方に分があるのだろう。公式大会で戦う相手の殆どはミミの初見殺しが通用するからな。チームプレイなど含めた総合力で言えば俺の方が上だと思ってるし、調子に乗りそうだからからミミには直接言ってやらねーけど。

 

「ほら、文句言ってねーでいい加減負けを認めて他のやつらみたくお前もストレッチして来いよ。練習始めらんねーだろ」

 

「そうだそうだ! いい加減ミミは負けを認めろ!」

 

「あんまりにーたんをバカにするな! 今度はボクたちが相手だ!」

 

 俺が顎をしゃくってミミにストレッチを促すと、横からストレッチを終えた黒髪の部員が2名、こちらに近づいてきてミミに詰め寄った。

 

 竹中椿と竹中柊。

 

 俺の双子の妹でミミと同じ小学6年生。

 肩の近くで切り揃えられたおかっぱ頭と、家族ですら驚くほど互いにそっくりな容姿が特徴。

 

 この二人は数年前から俺が練習相手としてバスケを教えてきたので、ミミには劣るものの基礎力では部内でもトップクラスだ。とはいえやたらと騒がしいのと人の話をロクに聞かない面があるため、自慢の、というよりは不肖の妹といった感じだ。母親の言うことすらまともに聞かないクセに、俺の言うことだけは比較的素直に聞くようなのでさっきまでは大人しくストレッチに取り組んでいたのだが、完了した瞬間鎖から解き放たれた獣のように暴れまわるのはどうにかならんのか、と毎回思わされる。

 

 自分に詰め寄ってきた二人を見て、ミミはむくり、と上体を起こすと、

 

「おのれタケナカ、三対一とは卑怯なり。でも構いまセン。誇り高きフランス人、挑まれたタタカイからは決して逃げないのデス。さあ、いざ尋常にショウブ!」

 

「おい話聞けよ。3on1とかやる気ねーし、もう練習始まるからストレッチしとけってさっきから言ってるだろ……。椿も柊も、勝負なら練習中のミニゲームでやってくれ」

 

「ぶー。はーい」

 

「にーたんが言うなら仕方ないね」

 

 そう言って、椿と柊は踵を返して大人しくコートの外に出た。妹二人は言えば聞いてくれるからまだ楽だな……。

 

「そちらがその気なら仕方がありまセン。ではワタシのフセンショウなので、今回は一勝一敗で引き分けということで……」

 

 ちゃっかりしてんなコイツ……。まあそれで大人しくなるならもうそれでいいわ。

 俺が呆れた表情を浮かべていると、隣からクスクスと笑う声が聞こえてきた。

 

 そちらに視線を向けると、長身でショートカットの女子と、髪の毛をサイドに束ねた勝気な瞳をした女子が二人並んでこちらの様子を眺めていた。

 

 長身の方が袴田かげつ、サイドポニーの方が藤井雅美。

 どちらも女バスの六年生だ。

 

 ミミと、俺の妹とこの二人を足した五人が今年の六年生部員のフルメンバーだ。

 

 持ち前の長身と運動神経の良さを活かしたゴール下争いのできるかげつ、驚異的なロングシュートの成功率を誇る雅美の二名は粗削りながらバスケ選手として確かな素質を持っているため、前述のミミ、双子を合わせた五人の総合力は全国でも通用するのではないか、なんて若干期待しているのだが、それはまた別の話。それよりも今気になるのは……。

 

「お前ら、笑ってないで止めてくれよ……」

 

「す、すみません竹中先輩。わざわざ練習を見に来てくださっているのに……」

 

 俺がジトッとした視線を向けると、かげつは笑みを引っ込め、申し訳なさそうな顔で軽く頭を下げた。う……なんかそんな反応されると逆にこっちが悪いことをした気分になってくるな……。

 

「えー? 別にいいじゃないですか、竹中さん。妹の扱いは私たちよりずっと得意でしょ? さっきも見事にその場を収めてましたし、私たちの助けなんか必要なかったと思いますけど」

 

 素直に謝ったかげつとは対照的に、なおも笑みを浮かべて雅美はそう言った。

 

「………まあ妹についてはそうだけどよ、ミミの暴走は止めてくれても良かったんじゃねーか?」

 

「えー別に暴走してなかったと思いますよ? それにミミが竹中さんに勝負を挑むのなんていつものことじゃないですか。先輩なんだから、カッコよくサクッと勝って自分で何とかしてくださいよ。竹中さん♪」

 

 そう言って雅美はクスクスと笑った。

 

 うぐ……確かに言われてみれば確かにその通りな気もしてきた。まあなし崩し的に今までミミの勝負を受け続けてきたのは俺だし、ミミを挑発した側面もあるし、このくらい自分で何とかしろと言われても当然だ。くそ、後輩の女子に口で負けちまった……。

 

「ほーい、じゃあ時間になったから今日も元気に練習始めんぞー。まずはフットワーク練習から始めるから、全員コート際に一列に並べー」

 

 俺たちがそんなやり取りをしていると、いつの間にか姿を現していた女バスの顧問、篁美星が手を叩き、大声で部員たち全員に呼びかけた。それを聞いて、かげつ、雅美は俺に軽く目礼してコート際へと速足で向かっていった。とっくにストレッチを終えた椿、柊と手早くストレッチを済ませたらしいミミも急いで列に並ぶ。

 

 俺はそんなミミの横顔を見て、教室で紗季に言われたことを思い出す。

 『ミミが元気なさそうにしていたら、相談に乗ってあげてくれると助かるわ』

 

「……つっても、いつも通りにしか見えねーけどなあ」

 

 

 微妙にもやもやしたものを抱えつつ、フットワーク練習の邪魔にならない様、俺はコート脇の方に足を向けた。

 




 筆者の好きなロウきゅーぶの二次創作は、ニコニコでともにゃんさんが投稿されている人狼動画の「狼きゅーぶ!」です。(人狼あんまり詳しくないけど)

私の書く雅美とかは割と「狼きゅーぶ!」に引っ張られている気がする。

どうでもいいけどメインタイトルがセンス×ですね……
なんかもっといいのがあればいいんですが

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