チャンミが複数挟まったのでさすがに危機感を覚えて大急ぎで仕上げました。
アンケート結果から、ここから3話ほどプレ殿入りしたクリーチャーたちの様子をお届けしたいと思います。
では。
一方そのころ、某県某所にて。
トレセン学園生徒会長のシンボリルドルフは、緊張の面持ちでとある場所へと訪れていた。
その横には、同じく真面目な顔のエアグルーヴとナリタブライアンが。そして、なぜかルドルフの背中にはトウカイテイオーがひっついている。
ざり、ざり、と砂利を踏む音があたりに響く。
辺りは緑に包まれており、すぐそばからは川のせせらぐ音が聞こえてくる。
……わかりやすく言うと、彼女たちは絶賛登山中だった。
「おい、本当にこの道で合ってるんだろうな?」
ブライアンが半眼でルドルフに問う。
いくら木々が太陽光を遮っているとはいえまだまだ残暑の厳しい季節、その中での先の見えない行軍は彼女たちにとって地味に大きな負担となっていた。それこそ、根性とスタミナに鍛錬効果が認められそうなほどには。
「いや、このルートで合っているはずなんだが……すまないテイオー、荷物から地図を取ってきてくれないか?」
「はーい! テイオー様にお任せあれー!」
「というか、だ。なぜお前がついてきているトウカイテイオー」
「んー? カイチョーから聞いた話だと今から行く場所にボクの走りで参考になるかもしれないウマ娘がいるって聞いたから、トレーナーに許可もらって一緒に行くことにしたんだー!」
「会長……」
ブライアンの問いかけにテイオーが笑顔で答え、それを聞いたエアグルーヴが困ったものを見るような目をルドルフに向ける。
そんなやり取りを経て、しばらく後。
「ここが、そうか……」
そこにあったのは、いかにもな和の雰囲気をまとった建物。それなり以上に年季が入っているようで、どことなく風情というものを感じさせる。
──温泉旅館『殿堂館邸』。
その玄関前で箒を片手に清掃をしていた浴衣姿のウマ娘はこちらに気付くと、下駄ばきという足回りのハンデを全く感じさせない軽快な動きでこちらに駆け寄って来た。
「ようこそ殿堂館邸へ! ご予約のお客様ですか? それとも当日?」
「予約かな。この館の主に取り次いでほしい──『皇帝が来た』と伝えてくれればおそらく通じるだろう」
「? はい、畏まりました!」
そう言って、彼女は屋敷の中に入っていく。
そして数分後、自然体の笑みを浮かべて戻ってきた彼女によって、ルドルフたちは旅館内部にある一つの部屋へと案内された。
そこは和風な外観にそぐわぬ洋室造りで、脇に置かれた本棚には小難しそうな本が所狭しと詰め込まれている。その上には、年季を感じるセピア色の写真が飾られていた。
そして部屋の一番奥、青毛のウマ娘が人の悪そうな笑みを浮かべながらルドルフたちを見ていた。彼女の後ろには、警察モチーフにしたと思われる色合いの大正浪漫な服を着たウマ娘が控えている。
「やあやあ、よく来たねぇ『皇帝』サマ御一行。僕は歓迎するよ!」
ギイ、と重厚なつくりの椅子を軋ませ、両腕を広げる大仰な動きとともに彼女はそう言った。
彼女の大仰な体の動きに合わせて耳が揺れ、右耳に付けられた金貨をモチーフにした耳飾りがチャラリと音を立てる。
「紹介しよう。この人は──」
「ああ紹介は結構、それくらいは自分でやるさ。これでもその筋ではそれなりに有名人だからねぇ、こういう自己紹介ってのは案外貴重なんだよ」
「僕はメルカトルアクアン。この殿堂館邸の支配人にして世界に名立たるウマ娘専門企業アクアン・コーポレーションのCEO……もとい、相談役さ! さあさあお三方初めに身体検査と行こうか、まずはその服を脱いで一糸纏わぬ姿の麗しい現役ウマ娘ボディを──」
「御免!」
不埒なことを口走ろうとしたウマ娘の頭にバゴン! と分厚い書籍が激突し、青毛の頭が木目の輝くな重厚な造りの机に叩きつけられる。
突然の事態に目を白黒させるルドルフたちの目の前で、アクアンの後頭部をストライクした張本人である大正ウマ娘が口を開いた。
「失礼、アクアン様は気分が昂じると変なことを言う癖がございまして。何卒この一発でご勘弁を」
「あ、ああ……」
「ご安心を、これでもアクアン様は頑丈ですのでこの程度では倒れません。非常に残念ですが」
ボソッと最後に何か聞き逃してはいけない言葉を呟いていたような気がするが、変に藪をつついて蛇を出したくはないので全員がスルーした。
そして、彼女の言葉通り1分と経たずにアクアンは起き上がり、後頭部をさすりながら大正ウマ娘を睨む。
「いてて……全く、毎度止めてくれるのはありがたいが手段が乱暴すぎやしないかい? もうちょっと穏便な手段で頼むよ」
「これが一番効果的なので致し方ありません。嫌なら自制を覚えてください」
「なんだそれは、知らない言葉だね。古代ギリシャ辺りの言葉かい?」
「……、」
処置なし、と言いたげに目を閉じて首を横に振る大正ウマ娘。そんな彼女を置いておいて、アクアンは座りなおし、
「さて、改めて。僕はメルカトルアクアンだ、アクアンと呼んでくれ。で、こっちの僕の頭を殴ってくれたのが──」
「アクアパトロールです、呼びにくければクロールとでもお呼びください。もしかすれば何かご縁があるやもしれません、よろしければ以降お見知りおきを」
「……だそうだ。全く、誰が相手でもガチガチに格式張るねぇ君は。少しは肩の力を脱いたらどうかな?」
「であれば貴方はご自身の言動を顧みるべきでは? 貴方相手に気を抜くと何をネタに強請られるか分かったものではありませんので」
「うーん、それを言われるとぐうの音も出ないねぇ!」
はっはっは、と高笑いするアクアン。その姿に、ルドルフもテイオーもエアグルーヴもブライアンも、誰もがトレセン学園の問題児である某光速の微粒子の姿を幻視した。
一通り笑った後、アクアンは腕を組み、特務機関の司令のようなポーズでルドルフに話しかける。
「さて、それで? 要件は事前に伝えてある通りだ、答えを聞こうか」
「ああ。以前連絡して頂いたウマ娘へのサポートの件だが、理事長からも好意的な返事を受けている。外せない用事によって会えないのを貴女に会えない事を残念がっていた」
「長期出張だっけ? ノ──じゃなかった、やよいも大変だねぇ。僕みたいに半隠居みたいな感じになれば彼女も楽ができるだろうに」
「院政の真似事をなさっている貴方が言う事でもないと思いますが? 知っていますよアクアン様、貴女こっそり方々にコンタクトをとっているでしょう。社長が嘆いていましたよ、『気付いたら段取りから何から全部整えられているせいで役に立てた気がしない』と」
「はっはっは、仕事柄仕方なかったが、僕個人としては衆目に晒されながら演説ぶつのは好みじゃなくてね。そういうのはメルゲの奴の方が向いてるだろうさ」
そんなことをつらつらと話すアクアンとアクアパトロール。
「さて、遠路はるばるここまで来てくれたんだ──このまま君たちを返したんじゃ少なからず我々の沽券に関わるし何より僕が嫌だ。そんな訳で、僕直々に君たちを案内してあげよう。はっはっは、伏して感謝するとい「御免」──っだぁ!? アクアパトロール! 後頭部はやめろと言ったろう!?」
「自制」
「ついに単語だけになったな!? ええい僕とてこれでもウマ娘の端くれ、肉体言語の一つは二つなんとする!」
ドタバタと取っ組み合いを始める大企業の相談役とその直属護衛。その様子をしばらく眺めていたルドルフたちだったが、事前にアクアンによって呼び出されていたと思しき従業員に呼ばれたことで、とりあえず一声だけかけて部屋を後にした。……あの分では耳に届いてはいなさそうだが。
「ねぇエアグルーヴ」
「……どうした」
「……シャチョーってあんなのでもなれるんだね」
「あれは例外中の例外だ……たぶん……」
テイオーの言葉に対する自信なさげなエアグルーヴの回答が、壁一枚挟んだすぐ近くに広がる大自然の長閑な喧騒の中に溶けていった。
『一攫千金』メルカトルアクアン
芝:A ダート:G
短距離:A マイル:A 中距離:C 長距離:G
逃げ:A 先行:C 差し:A 追込:C
アクアパトロール
芝:A ダート:G
短距離:D マイル:B 中距離:C 長距離:G
逃げ:D 先行:B 差し:C 追込:D
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