「もぐもぐ……おかわり」
「も、もう無理だ……ぐふっ」
「まだだ、ここで折れるわけには……やっぱ無理……がくっ」
『おおっとここでついに脱落! 底なしの胃袋と思われた「暴食」グラトニーイートが沈んだァーッ!! それを見た「強欲」アワルティア起き上がろうとするが再びダウン! 第35回大食いグランプリ! 勝ったのはやはりオグリキャップだぁー!!』
歓声が辺りに響き渡る。
イナリワンの迫真の実況を、オレは箸を片手にテーブルに突っ伏しながら聞いていた。
──どうしてこうなった。
それを説明するためには、時間を少しばかり遡ることになる。というわけで遺憾だがミラダンテ、一発頼んだ。
「……ん。ファイナル革命、起動」
その場の思い付きで行ってみただけなのにマジでやるんかい。ってか居たんかい。あと頼まれたからって軽率にファイナル革命使うな、切り札じゃねぇのかそれ。
──
──数時間前。
「……大食い大会?」
「応さ!」
ジト目で問いかけるオレに対して、目の前の
コイツは
話はやや逸れるが、こんな風にオレ達のようなクリーチャーが世界線を問わずウマ娘として続々とやってきている影響か、明らかに超獣世界を意識したような名前のレースがいくつも存在する。
例としては、G1の
話を戻して、
「……で、その話をオレにしてどうしろってんだ。一応言っとくがオレは今月末レースだぜ?」
「G2のグレンモルト記念だろ? 知ってるよ、アンタがどんなレース走るかってのはチーム内で迅速に共有されてるからな」
「初耳なんだが?」
「ちなみに情報源はトレーナーだ」
よしあの野郎シバく。久方ぶりに俺の音速を超えるパンチが火を噴くぜ。こちとらことパンチのスピードに限ればヤエノムテキだって目じゃねぇからな? なめんなよ?
そんなことを内心決意するオレをよそに、グラトニーイートは続ける。
「まあアンタのことだ、どうせ後続とは大差付けて勝利だろ……短マイルはアンタの独壇場だからな。それに有力バが出場するって話も聞かねぇ、適当に流して終わりじゃねぇのか?」
「サクラバクシンオーが出走に意欲的な姿勢だってのは知ってるか?」
「最強のスプリンターか。もしかしてアンタ、負けるつもりなのかい? ともすればアワルティア以上に勝利に対して強欲なアンタが?」
「まさか」
グラトニーイートの問いかけにオレは首を横に振る。
相手が何者であれオレに負ける気なんぞ更々ない──求めるのは最速の称号だ。
「なら良いじゃねぇか、折角だ、ちょっとした腹ごなしと洒落込もうぜ」
「……まあ、いいだろ。その代わり腹ごなしには付き合えよ?」
「上等。普段忙しいチームリーダーに引率してもらえるなんて願ってもない幸運だ」
「最近忙殺度合いが跳ね上がった気もするがな……」
脳裏をよぎるのは、ホープフルステークスで3人同着1位という前代未聞の結果を残した例の革命軍3トップ。
白熱を極めた大接戦の末、掲示板の上半分が同着で埋まった瞬間にトレーナーと一緒に頭を抱えたのは未だ記憶に新しい。息ピッタリって次元じゃねぇぞオイ、3人揃って全力の上限値がイーブンってどういうこった。何が悲しくて自チーム内で八百長疑われにゃならんのだ、勘弁してくれ。
「……で、誰が出るんだ?」
「まず私だろ? それから
「気が変わった、やっぱオレ出ねぇわ」
「まあ待て! まあ待て! まあ待て! まあ待て!」
サッと踵を返して立ち去ろうとするが、すかさず腕をつかまれて引き止められる。くっそコイツ力強ぇ! 伊達に元デーモン・コマンド・ドラゴンだったわけじゃねぇな畜生!
「ふっざけんなオグリキャップが絡んだ大食いとか絶対まともじゃねぇだろ! しかも大罪龍が勢揃いとか冗談じゃねぇ、オレは降りるぞ!」
「まあ待て! アンタのことだから絶対そう言って逃げようとすると思ってな、実を言うとアンタの分の出場登録はもう済ませてある」
「テメェやりやがったな!?」
「そんな訳だから行くぞ! あとはアンタが来れば準備は万全だ!」
「オレの方が心も体も準備ができてねぇっつってんだよ離せ! くっそ無駄に馬鹿力しやがってやめろ引きずんなテメェコラァ!!」
……そうして、抵抗虚しくオレは大食い大会の会場に連行された。
辺りに喧騒が満ちる中、ステージ裏で簀巻きにされて転がされた俺を椅子にふんぞり返っているプライドスペルビアが見下ろす。
「ふっふっふ、音速の侵略者と名高き貴様とて我ら大罪龍の手にかかれば赤子も同然よ。さあ、覚悟は良いか?」
「……お前も出場すんじゃねぇの? そんな余裕ぶっこきまくってていいのかよ。あとその椅子どっから持ってきた」
「ふふふ……甘い、甘いぞレッドゾーン。強者というのは不遜に振舞うべきなのだ。卑しくも『傲慢』の名を冠していた悪魔龍であった妾だ、その程度は心得ているとも。あとこの椅子は私物だ。大会にあたって自分で持ってきた」
「そんなだからお前ファンに恵まれねぇんじゃねぇのか? 努力の方向性が間違いすぎてんだろ」
「ぐうの音も出ないド正論やめて? 自分でもちょっと気にしてるんだから」
火の玉ストレートにスペルビアが思わず素に戻る。
コイツ、女王みたいなキャラ付けは良いんだけど肉付けが雑なせいで軽く小突いただけであっさり地金が見えるんだよな……。
「ああやだやだ、勝ちを獲るといっても面倒くさい。私は腰が重いんだ……いっそ、周りが勝手に負けてくれないものかねぇ……」
「お前もお前で出場すんじゃねぇのかオイ! なんだ、七つの大罪ってのはこんなんばっかりか!? っつかお前も布団持ってきてんじゃねぇよサボりの準備万端じゃねぇか!」
「何を言うんだい、私は『怠惰』だぞ? 自分の職務に忠実なだけさぁ……」
「昔のお前なら通っただろうがお前今ウマ娘だからな? 職務っつーならとっととコース行け」
「えー……」
「えーじゃねぇわこのタコ! うだうだ言ってねぇでポテチとコーラから手ェ離せや!」
「はーい勝つのは俺だけど諦めて出場しような~」
「お前もお前で離せーッ!!」
ウエストイズヘヴィに苦言を呈していたところに今度はアワルティアに引きずられ、ステージへと引っ張り出される。
水揚げされた魚のようにびったんびったん暴れまくるオレを目の当たりにしてあたりが微妙な空気に包まれるが、しかしそれをカバーするように司会のイナリワンが声を張る。
『さあやって参りました第35回大食いグランプリ! 今回はチーム・ランドより大物ゲストを招いての開催となります! さあ盛大な拍手をーっ!』
「待て! オレは出な「はーいいい加減腹決めて席に着こうなぁ」だからアワルティア離せテメェコラァッ!!!」
「うっせぇぞテメェ静かにしねぇか!!! クリークの姐御んトコに突き出されてぇのか!! あ゛ぁ!?」
「分かった後生だからそれだけは勘弁してくれ!!」
決死の抵抗も実らず、最終的にはガナルドナルに脅されて渋々席に着く……オグリキャップの右隣に。そして、オレの右にグラトニーイートが座った。
よりによってこの位置関係かよ。冗談じゃねぇ、勘弁してくれ。だがスーパークリークのところに連行されて
「……レッドゾーンか」
「うおっ急に声かけてくんじゃねぇよビビったわ」
オグリキャップがこちらに顔を向ける。
「今日はよろしく頼む」
「燃え尽きるほどよろしくしたくねぇが今回ばかりは受け入れてやる……音速の侵略者の速さ、とくと御覧じな」
「私も負ける気はない……お互い全力を尽くそう」
「ハッ、上等」
固い握手を交わす。
その様子を見ながら、グラトニーイートがポツリと呟いた。
「……素直じゃねぇなぁ」
「あぁん!? 今なんつった!」
グラトニーイート:暴食の悪魔龍 グラトニー
芝:A ダート:C
短距離:C マイル:B 中距離:A 長距離:D
逃げ:D 先行:D 差し:A 追込:A
ウエストイズヘヴィ:怠惰の悪魔龍 コシガヘヴィ
芝:A ダート:G
短距離:A マイル:B 中距離:B 長距離:G
逃げ:A 先行:D 差し:D 追込:A
アワルティア:強欲の悪魔龍 アワルティア
芝:A ダート:G
短距離:D マイル:A 中距離:A 長距離:C
逃げ:A 先行:B 差し:C 追込:E
プライドスペルビア:傲慢の悪魔龍 スペルビア
芝:A ダート:G
短距離:E マイル:C 中距離:A 長距離:A
逃げ:B 先行:D 差し:B 追込:A
ガナルドナル:憤怒の悪魔龍 ガナルドナル
芝:A ダート:B
短距離:B マイル:A 中距離:A 長距離:D
逃げ:D 先行:B 差し:A 追込:E