熱く轟け、音速のその先へ   作:りおんぬ

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読んでたウマ娘ssが一気に2つくらい打ち切りになっちゃって悲しみに包まれた
殿堂レギュレーション更新で手持ちのデッキがご臨終するのに通ずるものを感じる……
まあでも私はそんな経験ないんですがね。いやほんと、まともに影響被ったの白青九極におまけ感覚で突っ込んでた天門ミルザムくらい。


コスト指定除去とパワー指定除去だと一長一短だけど最終的に信じれるのはやっぱりデモハン

『晴天に恵まれましたトレセン学園、絶好の良バ場となりました! 実況は私イナリワンがお送り致します!』

「レースじゃねぇんだからバ場関係ねぇだろ」

『本日は解説1号としてタマモクロスさんにお越しいたしました! どうぞ!』

『今日はよろしく頼むで! 名勝負を期待しとるわ!』

 

背も胸もちんまりした白いウマ娘がマイク片手に意気揚々と言い放つ。イナリワンと並ぶと差がすごいな。具体的にどこがとは言わねぇけど。

 

『あぁん!? 今人の背と胸見て変なこと思ったやつ誰や! いてこますぞこら!』

 

おっとバレてた。真面目に振舞うとしよう。

 

『そして解説2号はこのウマ娘! 自称レッドゾーンと双璧を成すチーム・ランドの戦略担当、ラスベガスダラーズさんです!』

『待ちたまえ! 自称とは何だ自称とは!? 私はラスベガスダラーズ、トレセン学園にその人ありといわれる由緒正しき賭博師だぞ!』

「でも平気でイカサマすんじゃんお前」

『……てへっ☆』

「ふんっ!!!」

 

マイク片手にダイスを弄んでいたドアホめがけてたまたま制服のポケットにあったボールペンを投擲。

素晴らしい軌道を描いたそれはスカーン!! という快音とともにラスベガスダラーズの額に直撃し、奴は「バーストッ!?」と悲鳴を上げてひっくり返った。ざまぁみやがれ。

 

『……そ、それでは選手紹介に移りましょう! 一番人気は彼女をおいて他にいない、7番オグリキャップ!』

『過去最高と言っても過言ではない仕上がりやな。料理が来るのを今か今かと待ち構えとる、マチカネメシキタルって感じや』

『二番人気は5番グラトニーイート、おっとこれは余裕の舌なめずり!』

『オグリに負けるとも劣らん大食バで有名なグラトニーやで、もしかしたらもしかするかもしれへんな!』

『この評価はやや不満か、三番人気は6番レッドゾーン!』

『持ち前の速度で突っ切ることができるかが一番の問題やな。てかレッゾが大食いって話聞かんけどホンマに大丈夫なんか?』

 

大丈夫……ではねぇかなぁ……。別に食が細いってわけではねぇがそれでも人並みにしか食わんぞオレ。

 

『各バ準備が整いました! それではルールを説明させていただきます!』

 

そうして説明されたルールはいたってシンプル。

指定された時間の間食べて食べて食べまくり、最終的に一番食べた量の多いウマ娘が勝利! 以上!

……うん?

 

「オイちょっと待て! 確か前の大会だと定量の早食いだったよな!? 聞いてた話と違うぞ!!」

『はて。今回は時間ではなく量で競うと通達したはずでしたが』

「グラトニィイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!」

 

衝撃の事実をこのタイミングで公表された怒りを胸に右を見ると、グラトニーは『のヮの』と表現したくなる表情を浮かべて拳をこつんと頭に当てていた。謀ったなこの野郎……!!

 

『えっ!? もしや音速の侵略者ともあろうものが大食いにビビってらっしゃる!?』

 

いつの間にか復帰していたベガスダラーがここぞとばかりにオレを煽りにかかる。

そんなやっすい挑発にオレが乗るわけないだろう、冷静に反論を試みる。

 

「こちとらレース控えてんだぞオイ! そんなタイミングで暴飲暴食したらトレーナーにどつきまわされるわ!」

『……、』

「……、」

 

 

……やってやろうじゃねぇかこの野郎!!!!!

 

 

ダメだった。さすがオレ、挑発に乗るのも音速だ。

どっと観客が笑う。

 

『さあさあノっていきましょう! 今日の品目はこれだーっ!!』

 

イナリワンの言葉とともに電光掲示板に表示されたのは──“カレーライス”。

確か前々回がドーナツで前回はシュークリームだったか? 一気に趣向を変えてきたな。

 

『なんとこちら、ただのカレーライスではありません! あのメジロマックイーンが気に入って食べまくり、後日半泣きでグラウンドを駆け回ったという逸話のある、ある意味で伝説のカレーライスなのです!』

『スイーツ中毒と名高いマックイーンがスイーツ要素が全くないのに認めたカレーやで、そこらのやつとは格が違うわ』

『というか、体質的な問題もあってちょっと食べただけでも絶望的に太りやすいんですよね彼女。名家の令嬢にあるまじきエコ体質といいますか……見てて手に汗握る点はルーレットを彷彿とさせますね。次の賭けはそれでいこうk『ほう、どうやらまだ懲りていないと見えるな』げぇっ、エアグルーヴ!? 待てやめろ離せ、シニタクナーイ……』

 

下手なことを口走ったラスベガスダラーズが連行されていく。雉も鳴かずば撃たれまいとはよく言ったものだ。

始まる前から解説が一人消えたわけだが……まあアイツだし別にいいか。イナリワンの奴もアイツが下手な事言うの見越してタマモクロスを連れてきてるんだろうしな。

 

『……さて、ではこれ以上被害が出る前に始めてしまいましょう!』

『あのアホの場合残当って感じやけどな』

 

コトリ、と目の前にカレー皿が置かれる……予想はしてたが多いな。目分量だが1キロくらいあるんじゃねぇのか?

オグリキャップの奴は基本的に食べるペースを一定に保つ事で胃腸の順応と並行しながら膨大な量を詰め込むタイプのはず。

──ってぇ事は横でオレが速度に物を言わせて食って食って食いまくれば勝手に掛かって沈むはず! オレが燃え尽きるのが先かテメェが潰れるのが先か、勝負と行こうじゃねぇか!!

 

『それではっ! ──デュエル開始の宣言をしろタマモォ!!

デュエル開始ィィィーーーーッ!! ……って何言わせんねん!?』

 

その言葉を聞いた瞬間、オレ達は一斉にカレーにがっついた。

 

『先頭に立ったのはレッドゾーンやはり早い! 快調に飛ばしていきます! しかもこれは……箸です! なんとカレーを箸で行っていますレッドゾーン!』

『自滅覚悟でかっ飛ばして周りを掛からせる作戦みたいやな。実際オグリもグラトニーもアホみたいな腹の容量しとるし単純な食う量じゃ勝ち目ないやろ。速度で事故らせるのは悪い選択肢じゃないと思うで……箸で食うとる理由は分からんが』

 

正直な話これといって理由はない。たまたまスプーンよりも箸が手元に近かったから使ってるだけで。

マッハで腕をと口を動かしていると、横からプシュッという空気の抜ける音が聞こえてきた……ちょっと待て『プシュ』!? どういうこった!?

 

『ここでボトルのコルク栓を開けましたプライドスペルビア! 大食い大会にあるまじきゆっくり丁寧な食べ方です!』

『マナー大会と勘違いしとるんちゃうやろなアイツ』

「ふふふ……強者たるものいついかなる時も優雅たれ、がっつくのはあまり褒められたことではないね」

『などといっております! 解説のタマちゃんいかがでしょうか!』

『いやアイツやっぱアホやわ。ってかタマちゃん言うなや』

『そしてその横ではおっとウエストイズヘヴィ机に突っ伏しています! なんだ大罪龍はこんなんばっかなのかーっ!?』

『むしろ自分なんでコイツら引っ張ってきたん? 大罪龍ってチーム・ランドの中でも随一の問題児集団やろ?』

『グラトニーイートが先導してくれるかなと思いました!』

『その結果がこの惨事やないかい! 見てみぃ参加者の1/3勝つ気ないで! 大丈夫なんかこれ!』

『問題ありません! 最悪タマちゃんに代打になってもらいます!』

『アカンに決まっとるやろがい!』

 

案の定大会は混乱の様相を呈していた。ちらりと横目で見てみれば、プライドスペルビアは吞気にハンカチで口周りを拭いているしウエストイズヘヴィはスプーンとカレー皿を掴んだまま力尽きている。スプーンはまだしも間違いなく寝落ちしてるはずなのによくカレー皿落とさねぇなお前。握力どうなってんだ。

そんな訳でまともに参加しているのはオレ、グラトニーイート、オグリキャップ、アワルティアの4名。大丈夫か本当に。

空になったカレー皿をテーブルにたたきつけて叫ぶ。

 

「お代わりだッ!」

『おっとレッドゾーン早くも一皿目を平らげた! これは早い!』

『オグリは……まだ2/3位やな。滑り出しとしては最高に近いんちゃうか?』

 

2杯目が脇から差し込まれて目の前に置かれる。このペースなら行ける!

そして新たなカレーに口をつけた直後、横から信じられない言葉が飛び出してきた。

 

「──お代わりを」

「『何ィ!?』」

『なっ、なんということでしょう! 一瞬です! 大皿に1/3は残っていたカレーが一瞬にしてなくなりました! 信じられません、魔法のような光景です!』

「「お代わりッ!!」」

『さらにワンテンポ遅れてアワルティア・グラトニーイート両名も一皿目を完食! レッドゾーン、これは相手のペースを大きく見誤ったか!?』

 

ウッソだろお前そんな食うの早いタイプだったか!? もっと速度を上げろオレ、ってもあいつにこのペースを維持されるとこっちが保たねぇぞ! マジか完全にミスった!!

慌てて箸を動かす速度を速めるオレだったが──しかし奴は平然と食らいついてくる。

そして、オレが3杯目を半ばまで制覇したとき……決定打が来た。

 

 

──あまり葦毛の怪物(わたし)無礼(なめ)てくるなよ」

 

 

その言葉とともに、オグリキャップは悠々と4杯目のお代わりを宣言する。

……なるほど、どうやらオレは相当に見誤ってたみてぇだ。そうか、これが地方の実力か……!!

そして、オレは限界まで食い下がるが6皿目を半分平らげた辺りでダウン。アワルティアは8皿、グラトニーイートは最後まで追いすがったが10皿目で遂にひっくり返った。

こうして優勝賞品はオグリキャップの手にわたり(何も聞かされていないので詳細は知らないが、どうやらどこかの高級レストランのチケットらしい。まだ食うのか……)、めでたく太り気味になったオレはレース前に何やってんだドアホとトレーナーにしこたま怒られることになるのだった。

なお、ぽっこりと腹が出た状態で正座して懇々と説教をされる光景はドギラゴンによってきっちり写真に収められたため、革命軍連中に握られた弱みもまた一つ増えた。冗談じゃねぇ。




実際レッドゾーンはドギバス・プチョ・ダンテにパワー負けしてるので分からされるのはもはや必定。
最速で出したレッドゾーンが返しのターンでプチョヘンザに消し飛ばされるのなんてもう見慣れた。
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