ドクターとして目覚めてからだいぶ時間が経ったな。このロドスにもたくさんのオペレーターが増えて組織としてはかなり強くなったように思う。そろそろ少し気を抜きたいところだ。私は宿舎のソファに腰掛けると秘書であソーンズに呼びかけた。
「ソーンズ、悪いが少し休憩させてくれ。目が疲れてな。」
ソーンズはこちらを向くと感情の見えない顔で口を開いた。
「ドクターはそこで休んでいてくれ。後は俺に任せてくれていい。」
申し訳なく思いソーンズを見ると目が合う。すると彼は、立ち上がり歩き出そうとする。
「ソーンズ?何処に行くんだ?」
振り返ったソーンズは曇りのない凛々しい笑顔で言った。
「目が疲れたんだろう?医療班に何かないか聞いてくる。仕事も勿論大事だが、ドクターが一番大事だからな。」
な、なんだよ。ソーンズってやっぱり天然たらしなとこあるよなぁ。どことなく熱い頬を抑えながら宿舎に置いてある鏡を見ると、耳まで赤く染まっている自分が写っていたのだった。
ソーンズが宿舎を出ていくと入れ替わりでシルバーアッシュが入ってくる。シルバーアッシュは私を見ると小さく口角を上げてこう言った。
「盟友、変わりないか。」
他にも空いている席があるにも関わらず私の隣に腰掛けてはにこりと微笑んでくる。しっぽは嬉しそうにゆらゆらと揺れていた。随分懐かれたものだなぁ、と思うと感慨深い。
「ああ、少し目が痛いが他は変わりないかな。」
そう言うとシルバーアッシュはなにを思ったのか私を抱きしめてくる。
「シ、シルバーアッシュ・・?どうしたんだ、私は抱き枕じゃないぞ。」
困惑しながらそう言うと彼は私の目を見て少し拗ねたような表情をする。
「分からないか、盟友。俺が守っていてやる。だから、安心して眠れということだ。どうせまた、徹夜でもしたのだろう?」
私は驚くと同時に笑ってしまった。
「はは。なるほどな。シルバーアッシュ様は何でもお見通しというわけか。」
シルバーアッシュはにやりと微笑んで何も言わず私の腕にしっぽを巻きつけた。
「安心して眠るといい。私が必ず命に変えても守ることを約束しよう。」
言葉が相変わらず固くて重いなぁと思いながら不覚にも安心して顔が緩んでしまう。ああ、やっぱりシルバーアッシュは暖かくてもふもふで安心するなぁ。私はいつの間にか意識を手放していたのだった。
目を覚ますと何やら険悪ムードが漂っていた。シルバーアッシュと二人だけだったはずの宿舎の一部屋に男達が集まっている。シルバーアッシュにソーンズ、ヘラグおじさん、ファントム、イグゼキュター、エリジウム、クーリエにアンセル、グレイ、アレーン。ドアの外には愉快そうに見物するアやレオンハルト、ミッドナイトらが集まっているのだ。
「ちょっと待て。誰かこの状況の説明をしてくれないかな??」
私がそう言うと真っ先に口を開いたのはクーリエだった。
「シルバーアッシュさんがドクターに膝枕をしていて不躾ではないかと思って少し注意をしていたんです。ドクターは私達にとって一番と言っていいほど大切なお方ですから。ね、皆さん。」
クーリエがみんなにそう呼びかけるとみんなが次々に頷く。
「あー。気持ちは嬉しいんだが、一人に対してこの大人数は些かどうかと思うな。シルバーアッシュは自分なりに疲れている私に対して出来る事を考えてくれたんだと思うし。実際、シルバーアッシュ暖かくてもふもふで寝てて気持ち良かったしさ。ね?みんな一旦落ち着いて。」
シルバーアッシュはその言葉を聞いてしっぽをまた揺らしている。ふふ、可愛いな。そんな事を呑気に考えているとアレーンが口を開く。
「てことはさぁ、センセ。もしかしてセンセが許容してのあれだったってこと?」
いつもは不思議めいていて分からないアレーンの感情の乱れを感じる。何となく焦っていて、怒っている。そう思うと答えるの少し緊張してしまう。
「え、きょ、許可はしたけど。っていうか、許可なんて必要なの・・・?ただの膝枕じゃん。」
私がそう言うとアレーンだけでなく他のオペレーター達も驚いたような表情をする。
「センセ、危機感なさ過ぎ。馬鹿なの?センセ、自分が女の子ってこと忘れてる?ここは男もたくさんいる。男は危険なことくらい少し考えれば分かるでしょ。センセの力じゃ俺やアンセル、グレイみたいな男の中でも華奢なのにも勝てっこないんだから少しは自覚して。」
みんながアレーンの言葉にうんうんと頷く。レオンハルトやミッドナイト達も頷いていた。
「き、危機感と言われても・・・。だってみんなは私を傷つけたりしないでしょ?」
どうしたってみんなに襲われたりとかは想像できないのだ。信用しすぎだと前にドーベルマンやチェンにも言われたんだよなぁ。そんなこと言ったって一緒に戦う仲間なんだから信用関係にあるべきじゃないのか・・・?みんな各々ため息をついたり困ったような表情になってたり、怒っていたり・・・。わ、私そんなに駄目な事言ったかな?みんなの視線が痛く刺さる。
「え、えっと、私何か変な事言った・・・?」
みんなは私をまた見るとため息をついて下を向いたのだった。
読んでいただき有難うございました。次も2000字くらいのものをあげる予定です。