暖かな日差しが降り注ぐ、ここは都会のオアシス、森林公園。
公園では親子連れやカップルなど、人間とキカイノイドがのんびりと憩いの時を過ごしていた。
「ダックダック!」
「ダックダック!」
その穏やかな時間を破壊するが如く現れたのは、トジテンドの兵隊クダック。
クダックは公園にいた者たち──人間、キカイノイド問わず──に、問答無用で襲い掛かった。
トジテンドとは、あらゆる並行世界を侵略してきた悪者の集団であり、キカイノイドでありながら同族のキカイノイドを虐待するキカイノイドの屑である。
そのトジテンドは
だが、トジテンドに対し果敢に戦いを挑む者たちが、この世界にはいる。それこそが──
「そこまでだ、トジテンド!」
親子連れに襲い掛かろうとするクダックを殴り飛ばしながら声を上げたのは、五色田介人。
トジテンドと戦い、いずこかに消えた両親の行方を探す好青年である。
介人に続いて続々と公園に到着したジュラン、マジーヌ、ブルーン。
そしてガオーンも、クダックから市民を遠ざける。
一般人がすべて逃げ去ったあと、残されたのは介人と四人のキカイノイド。
そして敵であるトジテンドの兵士、数十体のクダック。
「やはり現れたね、ゼンカイジャー」
クダックの群れを割って姿を見せたのは一人の人間。
この男、誰が言ったか『魔界の王子』と呼ばれるトジテンドの戦士。名を『ステイシー』。
ステイシーは、男から見ても非常に美しいと思える顔立ちをしていた。
まるでげいじゅつし……品、芸術品のような端正な美顔からうかがえる外見年齢は、二十四歳、学生くらい。
そして、キカイノイドの帝国であるトジテンドに属していながら、その姿は普通の人間となんら変わらない格好をしている。
彼は自分を、『キカイノイドと人間のハーフ』であると言った。
父親はトジテンドの軍を率いる隊長、バラシタラ。母親の詳細は分かっていないが、人間であるらしい。
ゆえにステイシーは、キカイノイドなのか、人間なのか、これもうわかんねえ曖昧な存在なのである。
彼を生んだのは、人間の母親なのか。
それともバラシタラが造り出した……これ造ったんかな? いや造ってないかもしれへんわ、断言すんのやめとくわ、確信がないわ。
現れたステイシーを見て、介人は首を傾げた。
トジテンド側の戦力が、ステイシーとクダックの二者しかいないことに対しての反応だ。
「って、あれ? ステイシーだけ? いつもの、『なんとかワルド』はいないの?」
「なんで、毎週やられるために出てくる雑魚を引き連れてくる必要があるんだい。今日の君たちの相手は、僕一人で十分だ」
ステイシーの言葉にジュランが反応する。
「ずいぶんと余裕だな、笑っちゃうぜ。おい介人! こんな奴、速攻おしおきしてやろうぜ!」
「うん。あんたたち、いくわよっっっ!」
「「「「「チェンジ全開!!」」」」」
『ババン! ババン! ババン! ババン! ババババァン!』
変身銃ギアトリンガーから放たれたエネルギーを体に受けて、介人たち五人の姿が世界を守るヒーローのものへと変わる。
彼らこそ、トジテンドの脅威に唯一対抗できるスーパー戦隊、『機界戦隊ゼンカイジャー』なのである。
「秘密のパワー! ゼンカイザー!!」
「恐竜パワー! ゼンカイジュラン!!」
変身を終え、それぞれ名乗りの見えを切るゼンカイジャーたち。
敵を目の前にしてもお約束をかかさないヒーローの鏡がこの野郎。
ステイシーはというと、五人が名乗りの最中にもかかわらず、一切の興味を向けていない。
ヒーローものの醍醐味を無視して、ステイシーは懐から一枚のトジルギアを取り出した。
通常のトジルギアとは一種違う、異様などす黒さをもったそれを、自身の武器であるギアトジンガーにセット。
トジルギアの力を溜め込めるだけ溜めっ、溜め込んだギアトジンガーを、決めポーズ中の無防備なゼンカイザーに向け、引き金を引いた。
名乗りの最中に攻撃するなんて、ヒーローもののお約束を破る悪役の屑がこの野郎。
「百獣パワー! ゼンカイ……って、介人危ないッ!!」
「あぁ、オォ↑ッ!?」
ゼンカイザーに向けて、暗黒のエネルギーをまとった光弾が飛んでいく。
そのことに気づいたゼンカイガオーンはとっさに駆け出した。
立ち位置的に横でポーズを決めているゼンカイジュランを突き飛ばし、ゼンカイザーと光弾との間に割って入る。
「グワ゛ー゛!!」
「あ、ガオーン!?」
ゼンカイザーの身代わりとなって、ステイシーからの攻撃を食らってしまったゼンカイガオーン。
叫び声をあげて倒れ、意識を失ったのか姿も元のガオーンに戻ってしまう。
ゼンカイザーたちはガオーンの周りに駆け寄り、声をかけるがまるで反応がない。
「邪魔が入ったか……。だが、次こそ当てる」
再び銃口をゼンカイザーに向け、トリガーを引くステイシー。
が、今度はなにも起こらない。
「チッ、どうやらこのトジルギアは、強力な代わりに一発でエネルギーを使い果たしてしまうらしいな」
わずかな腹立たしさをにじませ、そうこぼす。
仕方ない、とステイシーはゼンカイジャー達に背を向けた。
どうやら目的が達せないため、一度解散! 閉廷! するつもりのようだ。
帰ろうとするステイシーの背中に向けて、ゼンカイザーが声を上げる。
「待て、ステイシー! ガオーンに一体、なにをしたんだ!?」
「…………」
「訊いてんだよなぁ、訊いてんだよ小僧、コラァ、コラ」
ゼンカイジュランも詰問した。
ステイシーは振り返ることもせず、淡々と答える。
「……僕が今使ったのは、あらゆる並行世界の中でもとびきり最悪で最低な世界、『インムトピア』の力を持つ『インムトジルギア』」
「インムトピア? はて、私も聞いたことのない世界ですが……」
トジテンドで雑用をこなしていたことのあるゼンカイブルーンにも、インムトピアという世界は知識にない様子。
「インムトピアはあまりの恐ろしさから、ボッコワウスが真っ先にギアの中に閉じ込めた世界なのさ。五色田介人。その恐怖、身をもって知るといいよ」
捨て台詞を残し、今度こそステイシーは去っていった。
「ダックダック!」
「ダックダック!」
「あわわ、こいつらは残るんすね」
残された四人のゼンカイジャーに群がるクダック。
それに対して、ゼンカイマジーヌが慌てたように言った。
「ダックダー!」
「ガオーンのことが心配だけど……とりあえず今は、目の前のことに全力集中!」
武器の槍を振りかぶり、クダックが襲い掛かる。
ゼンカイザーはギアトリンガーを撃ち、これに応戦。
ゼンカイジュランたちもそれぞれの武器を手に、クダックとの戦闘に入った。